ウルトラマンレオ全話解説

第4話 男と男の誓い

監督:深沢清澄
脚本:田口成光
奇怪宇宙人ツルク星人登場
 第3話の続きなので、当然冒頭は第3話の概略だった。
 夜な夜な東京の街で人々が無惨に惨殺され、その中には梅田兄妹の父や、MACの鈴木隊員も含まれていた。手口からダン隊長はツルク星人の仕業であることを見抜き、ゲンには星人に対抗する為に三段攻撃の習得を命じたのだが、撃墜されるMAC機の惨状に居た堪れなくなったゲンはウルトラマンレオに変身。しかし特訓半ばの中途半端な技量では丸で星人に抗し得ず、良い様にいたぶられた挙句、レオはその身を海中に没させたのだった。

 見た目的にレオが戦死したとも取れる状況にしばし茫然と仕掛けたダンだったが、尚も破壊活動を続けるツルク星人に、「むざむざ負けてなるものか。」と戦意を燃やすと単身マッキー3号でツルク星人に挑んだ(ここでBGMが「ウルトラセブン」に変わった(笑))。
 ミサイル攻撃でツルク星人の意識を引き付けたダンは、ホバリングと急発進で巧みにツルク星人を高圧電線に突っ込ませ、電撃を浴びたツルク星人は七転八倒して上空に姿を消した。

 だが、これは前話の真夜中の襲撃同様、「何とか追い払った。」に過ぎなかった。後の話になるが電撃はその時こそツルク星人を痛めつけたが、後にはツルク星人の両刀に貯め込まれ、星人の武器と化す始末だった。
 何より、ゲンに対する喪失感でダンは茫然自失に近い状態だった。MAC隊員達やスポーツセンターの面々が必死にゲンの名を呼び、夜中に至るまでその姿を探し求める中、ダンはそれを見守るだけだった(一応捕捉するが、ゲンはMAC隊員としてツルク星人迎撃に参戦しておらず、従軍していない彼の行方を皆で探していると云うことは、ダンが捜索を命じた可能性が高い)。
 夕暮れ時、まだ他の者達が捜索を続ける中、現場に背を向けたダンは基地にて失った右足と変身能力の代わりに自分の力となってくれたゲンを想い、居た堪れない気持ちになっていた。ダンの脳裏には地球を第2の、そして(自分に残された)唯一の故郷としてそれを守らんとする気持ちを示し共闘を誓い、微笑むゲンの姿がフラッシュバックしていた。
 同時に次にツルク星人が現れれば自分が死ぬ番だと覚悟を固めていたダンだったが、そこへゲンが生きて発見されたとの報が入った。

 ゲンを見つけたのはスポーツセンターの面々である。夜中に至り、疲れ果ててもう引き揚げようと皆が言う中、トオルだけが頑強に捜査継続を主張していた。トオル曰く、自分の大切な人達が次々と消えていくのに耐えられないとのことで、彼の身に立てば、捜査を諦めることでゲンの死が現実になるとの不安に襲われていたのだろう。

 ともあれ、ゲンの生還に歓喜したダンは即座にスポーツセンターに向かったのだが、到着したときには見るも無残な重傷のゲンを前に鬼隊長に戻っていた。まさに「仏の心を鬼にして。」だったと云えよう。まあ、M78星雲人が仏教を信仰しているとは思えんが(苦笑)。
 とにかく、生きているゲンの姿を確認したダンはゲンに自分についてくるよう告げ、重傷の身を案じて抗議する百子・トオル・カオルの声にも耳を貸さなかった。そしてゲンは無言のまま稽古着をもってダンに追随した。

 場面は替わってとある山中。
 滝を前に、ダンはゲンに何故変身して戦ったかを詰問し、MAC全滅の危機に居ても立ってもいられなくなったと答えたゲンに、MACには自分がいるのにその命を無視して独り善がりな行動に出たことを激しく咎めた。
 同時に変身前にやるべきこともやらずにウルトラマンレオとしての能力に依存するゲンの心を責め、「変身前にやるべきこと」として、技の習得、その為に背後に流れる滝の水を斬れ、と命じた(後年、『ウルトラマンレオ』がビデオ化されたとき、巻末のインタビューで真夏氏は「斬れる訳ないですよね…。」と述懐していた(苦笑))。
 そうこうする内にダンの元にツルク星人が三度東京を襲って来たとの報がもたらされ、ダンがMACを心配するゲンに「余計なことは考えるな!」と釘を刺して特訓を命じるや、自らは星人迎撃に向かった。

 Bパートに入ると、ツルク星人はいきなり高層ビルを建て真っ二つにぶった切って、それまでにまして破壊活動を続けた。
 勿論MACが攻撃を仕掛けるのだが、可哀想なぐらい効果は出ない。勇壮な「MACのマーチ」もこの時一回限りの使用で、すぐに危機を思わせるいつものBGMに変わり、赤石の報告にダンもツルク星人打倒より、住民の避難誘導を優先させる状態だった(←現場に対する状況判断や指示としては間違っていない)。

 都民達逃げ惑う中、父や、養父となる筈だった鈴木隊員、そしてウルトラマンレオまで殺された(と思っていた)トオルは完全に逆上し、自分が星人を倒す!と決意するやツルク星人に立ち向かわんとした。
 勿論自殺行為に他ならない。猛がこれを止めんとするもトオルは耳を貸さず、両者がいがみ合っている状態をマッキー3号から目撃したダンは「二人が危ない。」と断じてウルトラ念力を発動し、これを受けて放心状態となったツルク星人は丸で移送される様に上空にその姿を消した。

 勿論、第2話同様、ウルトラ念力の発動はダンに観ている方が辛くなるほどの疲労・消耗をもたらした。
 一方、その展開を知らないゲンは一向に斬れない滝を前に、「出来ない!俺には出来ない!」と叫んで泣き出す始末だった。ちなみに前述のビデオ巻末インタビューによると、撮影の順番から真夏氏が最初に挑んだ特訓シーンがこの滝切りで、真夏氏はその芸名とは真逆の真冬に体を激しく動かさないとすぐに凍える厳寒の中、焚火に当たりながら見守るスタッフ達(苦笑)の前で必死にアクションを展開していたとのことである。

 裏話はさておき、特訓が成果を出さないことを嘆くゲンの元にダンの投げた杖が襲い掛かった。憔悴状態の隊長の名を呟くゲンにダンは、「その顔は何だ!?その目は何だ!?その涙は何だ!?」との叱責を浴びせた。
 叱責以上に、ダンの憔悴状態の方がゲンには気になり、ウルトラ念力の発動を察して寿命を縮めるから止めるよう訴えるゲンにダンが返したのは強烈なビンタだった。
 そして特訓が進んでいないことを詰るダンだったが、すっかり弱気に打ちのめされていたゲンは自分には無理だ、と告げたが、ダンは心を鬼にしてその弱音を弾いた。
 モロボシ・ダン曰く、「お前がやらずに誰がやる?お前の涙で奴が倒せるか?この地球が救えるか?みんな必死に生きているのに挫ける自分が恥ずかしいと思わんか?」とのことで、言葉的にはもっともながら、無力感に苛まれている者が浴びせられるには酷過ぎる痛罵である。
 繰り返すが、自分がセブンに変身して戦えるなら若輩で、故郷を失い、ただただ平和に暮らしたいレオに浴びせたくない言葉だったことだろう。それでも第2の故郷を守るため、一切の甘えが許されないことを心身に染み込ませる為にも鬼にならなければならないダンの苦しみもまた多大なものだっただろう。
 後々になるほど、かかる苦難・苦境・苦悩のシーンがあって『ウルトラマンレオ』は高評価を更に高めていく訳だが、シルバータイタンも初めにこの第4話を見たときは居た堪れなかったし、掛かる展開が放映当初の視聴者に同作が見ていて辛い作品と映らしめた側面は否定出来ない。何とも複雑な話である。

 ともあれ、ゲンは心身ともに疲弊した身を何とか奮い立たせ、特訓を再開した。それを厳しくも温かく見守っていたダンだったが、そこへ四度星人が現れたとの報が入った。
 通報を受け、その場を後にするに際してダンはゲンに「川の流れは絶えることなく終わりのないものだ。流れを目で見えなければ水を斬ることが出来ない。いいか!流れに目標を見つけるんだ!」とのヒントを残した。同時に、ゲンがそれを為すまで自分が星人を食い止めるので早くして欲しいとの意を伝え、叱責を浴びせ、体罰を加えつつもゲンを頼りにしているからこそとの意も示していた。

 そしてMAC VS ツルク星人の第4ラウンドが展開された。
 だが当然と云おうか、必然と云おうか、MACの攻撃は決定力を欠き、ダンが言った様に時間稼ぎでしかなかった。おまけにツルク星人は相当目が良い様で、先の攻撃でトオルに目を付けた様に、地上でMACガンを連射するダンを仕留めるべき相手と目を付けた。
 そして貨車が数多くある停車場に追い詰められたダンは杖一本でそれでもツルク星人に対抗戦としたが、体格差からも勝負になる状態になかった。だが、まさにその時、闇雲に手足を奮う特訓から「流れに目標」を見つけるべく精神を集中していたゲンは激流の中流れる花弁が目標となることに気付き、飛び蹴り一閃、刹那的ながら滝を斬ることに成功した。

 技の成功に歓喜したゲンは、しかし、即座に冷静さを取り戻すやウルトラマンレオに変身した。
 前話で居た堪れなくなって変身した時とは打って変わって、不可能と思われた技の習得が自信となったのか、ファイティングポーズからして風格を感じさせるレオはツルク星人の斬撃を次々弾き(←松濤館流空手道で云うところの挙げ受け)、ローキックやショルダースルーに近い投げ技を次々と繰り出し、炸裂させ、それまでの苦戦が嘘のように勝負を有利に展開した。
 そしてグロッキーに陥ったツルク星人に追い打ちを掛けるようにその両腕に飛び蹴りを浴びせ、最後には滝を斬ることでマスターした流れ斬りの技ツルク星人の両腕を切断した!
 最大の武器を失い、大ダメージを受けたツルク星人は地面に仰向けに倒れ、その体にレオにすっ飛ばされて上空に打ち上げられていた両刀が落下して来た。勿論、両刀は横たわるツルク星人の体に深々と突き刺さり、ツルク星人は絶命したのだった。

 仇討ちが終わり、ようやく笑顔を取り戻した梅田兄妹は百子と共に暮らすことが決まった。新たな家族を得て、元気いっぱいに新居に向かう兄妹を見守るゲンに、ダンはゲンが兄妹に笑顔をもたらしたと告げて先の苦闘を労い、二人の宇宙人は肩を並べて新たな戦いに向かうのだった。


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令和二(2020)年一〇月五日 最終更新