ウルトラマンレオ全話解説

第31話 日本名作民話シリーズ! 地球を守る白い花

監督:筧正典
脚本:奥津啓二郎
昆虫星人バーミン星人登場
 「日本名作シリーズ!」も早第6弾で、元ネタは『花咲か爺さん』である。それを反映するかのように冒頭で髪も眉も髯も白い老人(仲谷昇)が腰を屈めて自転車を押しているのを数人の少年少女が追随していたところから始まった。
 子供達は『花咲か爺さん』を歌っていたが、前方から泣きじゃくる赤子を抱いた女性が現れると老人は掌から赤い花を取り出し、それを赤ん坊に与えると忽ち泣き止み、眠りに落ちた。
 そんな不思議なお爺さんに子供達(←10人以上に増えていた)がついて来たのも、『花咲か爺さん』宜しく、老人が花を咲かせるから、と云うもの。

 実際、老人は自転車に積んだ箱から銀色の金平糖の様な物を取り出すと周囲にそれ等を撒き始めた。本家本元は枯れ木に花を咲かせた訳だが、この老人が撒いた物は枯れ木のみならず、何もない道路や家の屋根や工事現場まで草花を生やさせ、その場を埋め尽くしたからチョット異様だった。
 その様子を喜び、魔法みたいだと褒めそやしていた子供達は老人に促されるままに咲いた花の匂いを嗅いでいたが、やがて全員がその場に倒れ、眠り込んでしまった。
 この事態にMACステーションでは怪しい老人の花で眠らされた子供達を「眠り病」と称し、ダンは10日以上も眠り続けている子供までいることを指し、宇宙人の仕業であることも念頭において調査することを命じた。

 その頃、カオルは道端で偶然見つけた白い花がいたく気に入り、ハーモニカを買う為の貯金を下ろして植木鉢を買ったり、目覚まし時計で時間を計ってまで水遣りをしたりして大切に世話した。
 花に関心のないトオルは食事中に咽喉を詰まらせた自分のよりも花の水を優先したカオルが面白くなく、植木鉢を割ると云う嫌がらせまでした。かつてほどではないが、不貞腐れたときのこいつはどうも始末に負えん。
 当然カオルはこれに激昂。一人花と植木鉢の残骸を持って飛び出し、ゲンのアパート前で塞ぎ込んでいた。MACから帰宅したゲンはカオルを一晩だけ泊めることにし、ゲンからその連絡を受けた百子とトオルも安堵した(←真剣に探したのか?)。
 そしてその夜、微睡むカオルの夢の中に白衣の少女(杉田かおる)が現れ、走り寄りながらカオルの名を呼んだ。少女は後にレギュラーとなる美山あゆみにそっくりだった(笑)が、まあ一先ずこのストーリーに関係はないな(苦笑)。
 少女はカオルが助けてくれた白い花の精と名乗り、カオルのおかげで元気になれたと舞い、二人は手と手を取り合って遊んでいたが、そこに悪魔に扮したトオルが現れたところでカオルは目覚めた。夢オチにしても何ちゅー描写だ(苦笑)。

 翌朝、さすがに昨夜の仕打ちに罪悪感を覚えたものか、新しい植木鉢を買ってカオルの元に向かっていたトオルは例の怪しい老人とそれに群がる子供達に遭遇した。例によって老人が花の素を投げた場所は草花に覆われ、驚愕したトオルはカオルの為に少し譲って欲しいと申し出たが老人はこれを断り、その替わりと称して例の花をトオル達に手渡した。そして子供達が花に群がる隙を見て、トオルは花の素を手にしてその場を去ったのだった(←老人の正体が人間ではないから法的には該当しなくなるが、このときトオルのやったことは窃盗である)。

 勿論トオルが手にしたのは危険極まりない物である。案の定眠り病に陥り、梶田とMACロディーでパトロール中のゲンはダンからこの事を知らされ、病院に急行した。
 既に病院には百子も来ていたが、ゲンが声を掛けてもトオルは一切の反応を示さなかった。程なく、梶田に呼ばれて病室を出るとそこにはダンがいて、ダンからシャーレに入っていた花の素を見るとゲンは即座にそれが地球外のものであることを察知し、梶田はトオルがそれを握っていたと証言した。
 だがさすがにこれらの手掛かりだけではダンにも敵の正体は掴めず、ダンは被害拡大の前に敵の正体を掴むことを命じ、MACを通じて子供達の外出を禁止した。

 これにより標的となる子供達を確保出来なくなった怪老人だったが、まんの悪い事にカオルが遭遇してしまった。
 カオルは自分にひどい仕打ちをしたトオルに「病気になっちゃえばいい。」と悪態をついたことがトオルを病気にしてしまったと罪悪感を抱き、トオルが自分の為に買ってくれた植木鉢を見て、そこに白い花を移し替えようとしてゲンの部屋と病室を往復する際に怪老人と遭遇してしまったのであった。
 怪老人はぶつかったことを詫びるカオルに例によって優しく微笑みかけ、親切を装って2本の花を渡さんとした。だが、カオルが罠に落ちようとしたその瞬間、白い花の精がそれを止めた。

 カオルは優しそうでも偶然会ったばかりの老人よりも夢で知り合っていた白い花の精を信じ、怪老人の花を「要らない!」と言って叩き落した。すると老人の顔から優しい笑みは剥がれ落ち、自分の邪魔をした白い花の精に報復するかのようにカオルから花を奪い取ると地面に叩き付けた!
 驚いたカオルが花を拾い上げようとするのを踏み付ける悪辣振りで、座り込んで後退りするカオルにもにじり寄る姿は下手したらロリコン爺だったが、さすがに子供向け特撮番組でその様な展開になる筈もなく(笑)、MACロディーで梶田と共に駆け付けたゲンは即座に怪老人にMACガンを突き付けてカオルを助けに入った。

 怪老人はMACガンを突き付けられて尚笑顔を絶やさず、トオル達を眠らせたのが老人なのか?との詰問もあっさり肯定した。だが、怪老人は汚れた東京をきれいにし、勉強に疲れた子供達に安らかな眠りをもたらしたことの何が悪い?と正当化・居直りに走った。
 ゲンは老人の主張が詭弁で、目的は地球侵略であろう?と難詰を続けたが怪老人はそれを否定し、自分は花と子供達を愛していると述べた。
 だが、この見せかけ行為はカオルによって否定された。最前カオルは白い花を怪老人に踏み躙られており、その行為は老人の愛情が偽りであることを証明していた。とたん、老人の顔からは笑みが消え、奇声を上げた老人は巨大化して昆虫星人バーミン星人の正体を現した。

 星人とは言うものの、その容姿は直立した昆虫で、見た目的には怪獣に近かった。まあ直前まで地球人に化け、話もしていたことからゲンも出現した敵を「星人」としてMAC本部に通報していた。
 計画が頓挫したことへの腹いせの様にバーミン星人は直接的な破壊を尽くし、その行動は怪獣と変わらなかった。ゲンと梶田はカオルを庇いながらMACガンで抵抗するしかなかったが、そこへマッキー3号に搭乗したダンと、マッキー2号に搭乗した白土&松木が飛来。
 両機の攻撃は倒すには至らなかったもののバーミン星人にそこそこの痛手を与えていた様ではあった。波状攻撃に苦しんだバーミン星人は鎌状の両腕から緑色のガスを噴出するとマッキー3号の窓は忽ち草花で覆われて視界を奪われた。さすがのダンもこれにはどうにもならず、触角からの光線で撃墜され、珍しくもパラシュートによる脱出を余儀なくされた。
 マッキー2号も同様に撃墜され、ゲンはカオルを梶田に託すと一人突進し、レオに変身した。

 両者の格闘はどちらが優勢ともつかない展開が為された。何故かレオがルチャ殺法のセントーンを3回食らわしていた以外は特筆すべきものも無かったが、しばらくするとバーミン星人は特殊能力に走った。
 マッキー3号・2号を撃墜したときの様に、両腕からのガスと触角からの光線をレオに浴びせた訳だが、これによってレオは草花に拘束された。
 もっとも、拘束と言っても胴を締め付ける類のもので、両手両足は自由ゆえ、苦しんでいたレオも体を転がせて拘束を振り切り、ウルトラマントバーミン星人のガス攻撃を封じ、ボコにしたところでタイマーショットを浴びせた。
 タイマーショットはなかなかに強力で、まずバーミン星人の頭部をぶっ飛ばし、ほどなく胴体も木端微塵に砕け散らせた。

 かくして戦いに勝利したレオが右手を前方に大きく差し出すとそこには白い花の精がいて、彼女がジョウロから水を撒くとバーミン星人によってもたらされた花はそのままに眠り病に陥っていた子供達は目覚めだした。
 勿論トオルも目覚め、退院し、白い花に対して軽いトラウマを抱えたことをコミカルに表現してこの第31話は終結したのだった。

 全くの余談だが、この第31話においてゲンはMAC隊員としては行動の殆んどを梶田と供に取っており、梶田の名を二度呼び捨てで呼んでいる。入隊直後は下っ端に近かったゲンが白土・梶田とは同格である描写は今まで見られたが、直に梶田を呼び捨てで呼んだのはこの第31話が最初と思われる。勿論梶田や白土が主人公であるゲンを「おヽとり」と呼ぶシーンは何度もあり、掛かる描写にもMACのアットホームかが進んでいたことが伺えるのだった。


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令和二(2020)年一〇月五日 最終更新