ウルトラマンレオ全話解説

第32話 日本名作民話シリーズ! さようならかぐや姫

監督:中川信夫
脚本:石堂淑朗
月光怪獣キララ登場
 「日本名作シリーズ!」の第7弾にしてラストで、元ネタは『竹取り物語』である。
 冒頭、舞台は城南スポーツセンターにて始まった。ゲンが見守る中、1人の女性コーチ・中島弥生(小野ひずる)がトランポリンにて妙技を披露していた。触れるまでもないと思うが、『仮面ライダーV3』のヒロイン・珠純子役で特撮ファンには超有名な方ですね。

 ゲンも褒めるアクションを展開した彼女だったが、その表情はどこか寂し気で、その夜、彼女はセンターの屋上で満月を見上げていた。そして月に向かって、何故自分に語り掛けるのか?自分の邪魔をしないでくれ、と呼び掛けていた。
 そんな彼女−2、3ヶ月前から塞ぎ込んでいたらしい−をゲン、百子、猛は心配そうにしていた。

 ゲンは弥生の実家―絵に描いたような田舎の農家―を訪ね、弥生の両親(有馬昌彦、露原千草)と会い、弥生の近況を相談したが、両親は悩み多き年頃の娘によくある話として取り合わなかった。ただ、心配していないというよりは、ゲンの干渉を遠回しに拒んでいるようだった。
 程なく、ゲンがダンからの通信でMACに戻ると、端で話を聞いていたデブい男・太郎(福田a)が両親に弥生は自分の「嫁っ子」になるんだな?と念を押し、両親もそれを肯定した。
 まあ、伏線な訳だが、両親は弥生を自分達の娘とし、太郎は二人を「お父」、「おっ母」と呼んでいたことから、弥生が二人の実の娘ではないことが類推された(言うまでもないが、弥生も太郎も両親の子なら二人は結婚出来ない)。
 ともあれ、両親の言に勇気づけられた様に屋外に飛び出した太郎は、月に向かって自分の弥生に手を出すな、と叫んでいた。子供みたいな奴だな(苦笑)。月に何かを言うなら、太り過ぎの体を絞る為にも「七難八苦」を求めた方が良い気がしたが………。

 一方、中島邸を辞したゲンは、夜の山道に弥生が佇んでいるのを見つけた。ようやくにして見つけた弥生はゲンが話しかければ振り向きはするのだが、皆が心配していた旨を告げられても無表情で、返事もしなかった。
 程なく、弥生は何かの光に誘われる様に竹林の中に走り出していった。勿論ゲンもそれを追ったのだが、やがて弥生は一本の光る竹の前に立ち、それに呼応するように満月がその明るさを劇的に増した。
 そして月からは重々しい「声」が聞こえ、弥生を「王女様」と呼び、十五夜である明晩に彼女を迎えに来る、と告げた。その説明によると月には彼等と敵対する勢力がいて(←ルナチクスか?(笑))、弥生はそれから避難する為に地球に送られたとのことだった。
 弥生が地球に送られてから15年の歳月を掛けてようやくその敵を追い払うことに成功したことで彼女を迎えに来るとのことだったのだが、生まれてすぐに地球に送られた弥生はそんな自分の出自の記憶がなく、自分が地球人であることに疑を持たず、「声」にも自分は地球人だと訴えた。


 少し話が逸れるが、月からの声によると、15年前に生まれてすぐに地球に避難させられた弥生は15、6歳と云うことになる。

 弥生を演じた小野ひずるさんは昭和30(1955)年2月1日の生まれで、この『ウルトラマンレオ』第32話が放映された昭和49(1974)年11月15日の段階で19歳だった。

 無、無理が有る………(苦笑)。
 過去に『仮面ライダーV3』で小野さんは「珠純子、18歳です。」と名乗ったシーンがあり、それを見たとき道場主は反射的に「サバ読んでない?」と思ったが、当時の小野さんは本当に18歳だった。
 つまり道場主は小野さんをもっと大人の女性に見ていた訳だが、そんな小野さんに年下の役をさせたのはやっぱり無理が有る………(苦笑)。


 ともあれ、そんな弥生に対して「声」は、自分の声が聞こえることが人間ではない証としていた(←ちなみにやはり地球人ではないゲンにも聞こえていた)。
 弥生は自分が地球人で、地球人の女性として平凡な幸せの生涯を送ると宣して「声」を拒絶したが、彼女を「王女様」と尊ぶ「声」が退く筈なかった。そこへゲンが乱入したことで「声」は明晩必ず迎えに来るので準備をして(←何の?)待つよう告げ、弥生への呼び掛けを中止し、月光の明るさも通常のそれに戻った。

 弥生に救いを求めるようにその名を呼ばれたゲンは、弥生が聴いたのは幻聴として気にしないよう告げた。半年前から満月の度に「声」を聴いて来た弥生には幻聴とは思えなかったのだが、ゲンは月に生き物などいない、と言って、弥生もようやく幾許かの落ち着きを取り戻した。
 しかし、ウルトラシリーズの世界観に照らし合わせるなら月に生き物は居ないと云うのは説得力を持たないなぁ………(苦笑)
 南夕子を初めとする月星人が文明を作っていたし、そこに棲むモチロン・ルナチクスなんて怪獣・超獣がいた訳だし、第5話に登場したカネドラスは月を地球で暴れる際の前衛基地にしていた。
 こうなるとウルトラシリーズにおける月は様々な生物が存在し得る世界、別の言い方をするなら過酷な月世界で生存可能な生物が多数存在し得る世界と云え、現実の月世界観では語れないもんなあ………。

 ともあれ、ようやく弥生はゲンに送られて帰宅の途に着き、帰宅直前にゲンに今夜のことを周囲に話さない方が良い、と云われたときには年相応の笑顔を見せていた。
 ただ、「声」はゲンも耳にしており、弥生を元気付ける為に幻聴と云ったのが偽りであることは他ならぬゲンが認識していた。MACのレーダーでも月から膨大なエネルギーが検知されており、白川はコンピュータのデータから、15年前に同じ記録があることを口にしていた。
 これを聞いたゲンは、ダンを初めMAC隊員達に先程の出来事を話した。ちなみにその時の話の切り出しは、「かぐや姫です。」だったのだが、初期のMACならこの時点で一笑に付されただろうな(しみじみ)。

 話を聞き終えた一同が月面を監視するモニターを見ていると、死火山しかない筈の月面で次々と火山の噴火が起きていた。ダンがモニターを拡大すると三筋もの噴火を挙げていた火山の中から無数の穴ぼこを持った巨岩が飛び出し、それは地球に向かっていった。
 巨岩には目があり、怪獣であることが見て取れ、レーダーに向かっていた白川は軌道とスピードからAX501地点に明日の午後8時頃に着陸すると告げた。
 ゲンはAX501地点が弥生の家のすぐ近くであることを、佐藤は午後8時が月の中天時刻であることを述べた。ともあれ、状況的に月から弥生に対して何者かが予告通りにやって来るのは疑いようのないことが確信された。

 翌日昼、中島邸では太郎が木材やトンカチでもって家の守りを固めていた(←風水害対策にしか見えなかったが(苦笑))。宅内では両親が弥生と共に囲炉裏端で正体不明の襲来者に震えていた(←恐らく弥生は昨夜のことを話したのだろう)。
 夕暮れ時、ゲンもMACロディーで駆け付け、中島邸の守りに加わり、太郎はそれに謝意を示しつつ、鍬と鎌を手に「弥生はオラの嫁っ子になるんじゃ!」と息巻いていた。だが、MACステーションの白川からゲンに怪獣が予想時間よりも早く来そうだという通信が入ると弥生の父は絶望して泣き出した。
 「月から来た子は月に還るんじゃ!」と言って泣き出した父親は妻が止めるのを振り切って弥生に15年前のことを話し始めた。それによると15年前の話は『竹取り物語』そのまんまで、父親は弥生を授かったのも、弥生が還っていくのも運命だとした。

 ゲンは経緯や出自より弥生が15年間地球人として過ごしてきた時間の方が大切として弥生を守る旨を改めて宣し、太郎も弥生は自分の「嫁っ子」になると云ってゲンに同調した(←どうでもいいが他の台詞ないのか?)。
 やがてダン以下MAC隊員達も駆け付け、特別警戒体制の元、10名近い自衛隊員らしき人員迄配置された。

 やがて巨岩は地上に着陸し、MAC隊員一同は攻撃を加えたが、巨岩は月光怪獣キララの姿を現した。
 キララはMACの攻撃を委細意に介さず、弥生の姿を認めると光を発し、それを浴びた弥生は十二単衣の姿になっていた(嬉々)。キララ着陸直後から「声」と話していた時の様に無表情となっていた弥生は両親や太郎の呼び掛けにも答えなかった。
 一方、中島邸周囲では妙な嵐が吹き荒れ、警備陣が行動不能に陥り、弥生が屋外に出るとそこには赤絨毯が敷かれていた。キララは自分の名を名乗ると改めて王女である弥生を迎えに来た旨を告げ、彼女を連れ帰るべく地面に自分の手を置いた。

 それを竹林から見ていたゲンはレオに変身。キララに戦いを挑んだ。
 この展開に弥生は争いの中止を呼び掛け、育ての両親の方に一度だけ振り返ると月に還る旨を宣言した。勿論両親は必死に弥生の名を呼ぶも弥生は答えず、佐藤はレオが勝つから心配いらない、と呼び掛けた。多分、佐藤は弥生が周囲に被害を及ぼさない為に不承不承ながらも月に赴こうとしていると見たのだろう。

 そんな宅前の声が聞こえていたのか、聞こえていなかったのか、離れた場所ではレオとキララの格闘が展開されていた。
 岩石の塊然とした体躯のキララは腕力や頑丈さに優れている様に見えたが、意外にも腹部からの発光や口腔からの火花攻撃でレオの動きを鈍らせると再度巨岩状態となって体を転がしながらレオをその下敷きにしてはダメージを重ねていった。
 勝負を優勢と見たキララは、王女は月に還るから諦めろと告げて来た。それに対してレオは巨大化状態では珍しく発言(他に巨大化時のレオが喋ったのは第38話・第39話ぐらい)し、「生みの親より育ての親」として弥生帰還に対する反発を示した。
 それに対するキララの反論は、「馬鹿!生まなきゃ育てられないんだ!」だったからなかなかに口達者な奴である(笑)。

 ともあれ、両者の主張は完全な平行線で、キララは文字通り頭から煙を吐いて怒りを露わにし、更なる攻撃を繰り出して来た。それに対してレオはウルトラマントを取り出し、キララの口腔火花、腹部発光攻撃を立て続けに封じると形勢を逆転させた。加えて満月が中天から下り出すとキララは目に見えて弱体化し、やがて地面に座り込んでしまった。
 だがこれは時間稼ぎだった。戦意喪失して尚弥生の返還を求めるキララにレオはマウントパンチで答えた(笑)のだが、弥生から制止の声を受けたレオは攻撃を止め、キララを助け起こした。キララもこれに感謝した様に見せたが、雲間に隠れていた月光が再度現れると反撃を開始した。どうも単純に語れない性格だ。

 だが半身をウルトラマントに巻かれたままのキララの不利は覆せず、レオが両腕を広げてグリーンビームを浴びせると忽ちグロッキーに陥った。だが弥生を迎えんとするキララの執念は尽きず、息絶え絶え状態で弥生=王女の帰還を求めると両眼から光線を発した。
 光線は弥生の首から掛けられていた三日月形のペンダントを粉砕した。ペンダントは弥生が地球に送られたときから常に弥生と共にあったものだった。

 倒れた弥生と砕けたペンダントを見た弥生の母はもはや弥生の心は月に持っていかれたと云って号泣。やがて月が前日同様の強さで輝くと弥生目掛けてサーチライトの如き光が降り注ぎ、気付いた弥生は扇子を広げて一刺し舞うと光の帯に身を投じ、両親や太郎の制止にただ一度黙礼するとキララともに月に昇って行った。

 話はこれで終わり。
 正直、シルバータイタンは救いがない上に、弥生もキララも地球での弥生の日々を一顧だにしない終わり方をしたこの第32話が好きではない。
 恐らく三日月方のペンダントは月族王女としての弥生の記憶と心を封じていたもので、それが破壊され、介抱されたことで弥生は地球人よりも月族としての自己を取り戻し、それを優先したのだろうけれど、余りにも地球人としての日々と記憶と交流を無視し過ぎである(少なくとも弥生は15年の歳月を無事に過ごすことが出来た訳で、これは紛れもなく中島夫婦のおかげである)。
 また、最後まで弥生に執着していた太郎の在り様も気に食わない。将来の「嫁っ子」を守らんとして彼なりに尽力しているのだろうけれど、家の防備を固めた以外は「弥生はオラの嫁っ子になるだ!」を連呼するのみで、具体性が無かった。
女に執着する気持ちは執着心の強い道場主も大いに同情‥……ぐえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ(←道場主本顔あぶり出し固めを食らっている)。

 ※シルバータイタン負傷退場により、本話の解説はここまで(チーン!)。


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令和二(2020)年一〇月五日 最終更新