ウルトラマンレオ全話解説

第33話 レオ兄弟対宇宙悪霊星人

監督:中川信夫
脚本:岩槻文三
宇宙悪霊アクマニヤ星人登場
 冒頭、MACロディーでパトロールしていたゲンとダンは、上空に煙のように立ち込める黒雲に気付いた。二人は嫌な雲と見ていたが、突如その中から巨大な眼が現れた。
 ダンはゲンに追跡を命じた訳だが、巨大な眼の正体はナレーションによると「宇宙の悪霊が住むという謎の怪奇隕石アクマニヤ。」とのことで、「遂に飛来したのだ。」という表現を見ると、侵略的性格を持つ存在で、恐らく「遂に」という表現はダンの想いを代弁したのだろう。

 だが、地上の人々はそんな宇宙悪霊の接近を知る由もなく日常生活を送っていた。
 そんな街中のとある団地では、タカシ(坂本高章)という少年とその母(上月左知子)が一組の親子と会話を交わしていた。
 相手方の親子は父(吉水慶)とその娘・よし子(関口由美)で、この日はタカシの母の誕生日とのことで、タカシは自転車に乗るとトオルを呼びに行くと言って出掛けた(後で触れられたが、トオルとタカシは従兄弟同士らしい)。
 タカシが去ると少しおませな少女であるよし子はタカシの母に今日で幾つになるのか?と聞くと、気まずそうなよし子の父に「良いんですよ。」とほほ笑んでよし子に33歳になると伝えた。

余談 この『ウルトラマンレオ』第33話を初めてレンタルビデオで見た当時、道場主は大学生だった。
 少しはにかみならが「33よ。」と答える上月左知子さんを見て、

 「やはり30代は良いぜぇ〜。」

 と鼻の下を延ばしていたのだが、後々得た情報によるとこの第33話放映時における上月左知子さんの実年齢は44歳だった(笑)。ま、道場主的には40代でも「全然OK!」なのだが(笑)。
 この上月さんは特撮では後に『仮面ライダーW』の第40話にてオールド・ドーパントによって少女が老化させられた役を演じていた。勿論老婆が少女のいで立ちをしていた訳だが…………その時点で80歳…………歳月の流れは如何ともし難いのを感じ入らされた………。

 特撮では『ウルトラマンタロウ』第31話に客演し、『ミラーマン』で一度だけ登場した鏡京太郎の母・鏡優子を演じたり、他のジャンルでも幅広く活躍されたりしたが、惜しくも平成30(2018)年1月24日に心不全で他界されている。
 上月左知子さん、享年87歳。合掌。

 その間もアクマニヤは団地上空に迫り、マッキー3号に搭乗していた白土はしっかり黙視していたのだが、不思議なことに団地と比較してもかなりのガタイにも関わらず地上の人々は丸で気付かない様子だった。
 アクマニヤが怪光線を発するに及んで僅かに地震かな?と訝しがる程度だった。そして緑色の手を花束の中に忍ばす等の不可解な行動後、マッキー3号の接近から逃れるように姿を消した。

 結局異変に気付きそうで気付かないままよし子・父・タカシの母は団地に帰宅。どうやらタカシ宅は母子家庭、よし子宅は父子家庭の様で、おませなよし子は父にタカシの母との再婚を勧めたりしていたが、そこに大きな振動が襲い、ようやく一般ピープルにも異変が察知された。
 とは言っても、振動、眩暈を感じさせ、よし子の脚を掴む程度で、アクマニヤが何をしたいのか全く読めない。その頃、タカシの母も眩暈に襲われ、薬を取り出そうとしたところで例の手に掴まれたりしていた。

 しかしながらこれらの異変も団地外では全く感知されておらず、団地を訪れたゲンが二人の女の子に上空の巨眼を見たか尋ねても、見なかったとしか返ってこなかった。
 そうこうしている内にそこにタカシが帰って来てゲンと遭遇した。二人はトオルを通じて顔見知りで、タカシはトオルとは従兄弟だと名乗った。そのタカシも異変は感じていなかった。
 証言を得られなかったことでゲンとダンも引き上げざるを得なかったのだが、タカシが帰宅すると母は目を見開いたままベッドに横たわり、水を求められたタカシが水道の蛇口を捻ると赤い水が流れ出し、暴風・閃光・ポルターガイスト現象がうち続いた。
 そしてタカシの母の誕生パーティーに参加すべく、団地を訪れたトオルも同様の怪現象に襲われた。

  MACでは丸で手掛かりが掴めず、ステーション内でも白土の報告に首を捻るばかりだったが、アクマニヤによる怪現象が騒音という形で団地外の人々に認識されるに及ぶとゲンとダンは再度MACロディーで同団地を訪れた。
 ダンとゲンは妙な波動の様な物を感じ、只事じゃないと見て団地内を訪ね歩いたが、各部屋の扉は開かず、「帰れ。」という重低音が時折響くだけだった。
 さすがにかかる状況にあってはゲンも顔見知りであるタカシの部屋に飛んだが、屋外から呼び掛けても返事はなく、扉を空けんとドアノブを握れば熱に襲われる有様だった。だがゲンは熱さを我慢し、強引にドアノブを回して宅内に入るとタカシの母に猥褻行為の様にまとわりつく緑の手を掴んで引っぺがした。

 すると怪現象は止み、母もタカシもトオルも目覚めた。幸い三人に怪我も異状もなく、隣室からはよし子とその父も飛び出したが、これは各部屋を襲っていたアクマニヤが緑の煙となって各部屋から出て行ったからだった。
 とはいえ、勿論これは逃走にあらず。煙は団地上空の一点に集まると巨岩の姿に戻り、おまけに眼球部を真っ赤にして不気味さに拍車を掛けていた。
 団地内からは住人達が次々と飛び出してきたが、ここに至ってアクマニヤは眼球中央部から砲撃を行い、破壊活動に出た(それまでは散々人々を恐怖に陥れながらも破壊や傷害は殆ど無かった)。
 さすがにこうなるとダンも即座にゲンに託し、ゲンはレオに変身してアクマニヤに立ち向かった。

 上空からレオを砲撃していたアクマニヤだったが、それではレオを倒せないと見たものか、怪奇隕石であるアクマニヤに住み着いていた宇宙悪霊アクマニヤ星人がその正体を現した。それは単眼に長大な双角、耳元までびっしり並んだ牙が容姿の不気味さを更なるものとしていたものだった。
 単眼からの赤い怪光線はレオの突進を足止めし、悶絶する程の苦痛を与えた。無数の牙の間から漏れる口腔内の光もレオに浴びせられたが、レオはウルトラマントを取り出して応戦。前話でキララの攻撃を防いだのと同じ要領でアクマニヤ星人の体にかぶせて防がんとしたが、アクマニヤ星人は体を激しく動かしてこれに抵抗した。

 しばし両者の取っ組み合いが続き、やがてレオはレオキックバットンに放ったときの様に両脚で決めるタイプの物)でアクマニヤ星人の左角をへし折り、レオはその角を投げ付けてアクマニヤ星人の目に突き刺すことに成功した。
 通常、たった一つしかない眼(それも全体の大部分を占める)を潰されたとあっては、ここで勝負が決するのが相場である。だが、星人でありながら、悪霊であり、怪獣然としたアクマニヤ星人の不気味な生態はここからが本番だった。
 眼球から緑の血を流して苦しむアクマニヤ星人をレオは殴りつけ、両腕をもぎ取ったのだったが、もがれた筈の両腕は意思を持った様にレオを背後から襲い、その首を絞め上げた。不意を打ったとはいえ、その絞め上げは強力らしく、レオは為す術なく地面に倒れ、絞め落とされ、このままでは絞殺を待つばかりとなった。

 レオが絶体絶命と見たマッキー2号の白土はレオを庇うようにアクマニヤ星人を攻撃していたが、この間隙を縫うように上空から赤い球の姿でアストラが地球に再来星した。
 新たな敵が現れたことに応戦すべくアクマニヤ星人が両腕を本体に戻すとレオは意識を取り戻し、その間にアストラはレオを助け起こすと背後のある太陽の逆光を利用した目くらまし戦法を敢行。子供騙しみたいな戦法に見えたが、これが弱点を突いていたものか、眼球に角が刺さっても平気だったアクマニヤ星人がこの戦法に悶絶してダウンした。
 レオとアストラは間髪入れずウルトラダブルフラッシャーを放ち、これを食らったアクマニヤ星人の体は巨大隕石上に変化した。

 勝利を確信したアストラはレオと握手を交わすと、後は任せろと言わんばかりに巨岩と化したアクマニヤ星人を持ち上げて宇宙に向かって飛び立っていった。
 アストラが何処へ行くのか、アクマニヤ星人がこの後どうなったのか、は「大宇宙の謎」というナレーションで片付けられていた(苦笑)。

 戦いに勝利して尚、ゲンとダンはアクマニヤ星人の恐ろしさに戦慄していたが、ともあれ団地には平和が戻って第32話は終結した。

 最後に余談だが、トオルの従兄であるタカシという存在について。
 第3話で父親を殺されたトオルとカオルは当初妻帯者だが子供のいない鈴木隊員に引き取られることとなったが、鈴木宅に向かう途中でその鈴木隊員がツルク星人に殺され、結局第4話にてツルク星人追討後に百子と一緒に暮らすこととなり、実際に百子宅で食事するシーンも幾度か見られた。
 だが普通に考えるなら、いくらスポーツセンターのコーチとはいえ、血の繋がらない若い女性に引き取られるのはその子供の身内に成人した者が全くいない場合に限られる。
 それがこの第33話でトオルに従兄弟がいたことが判明した。となるとトオルの両親いずれか、とタカシの亡父または母親が兄弟と云うことになる。普通はタカシ宅に引き取られることになる筈である。

 まあ、タカシの母が梅田兄妹にとって義理叔母だとしたら、夫を失って女手一つで息子を育てる彼女が血の繋がらない甥・姪迄育てるのは様々な意味で苦しいと云うことも考えられなくはない。
 結局父親・カオルを別にすればトオルの身内が登場したのはこの第33話だけなので、一過性の話題として見過ごすのは簡単だが、梅田兄妹の境遇に心を痛めつつ視聴しているからこそ、兄妹が背負っているものを重んじるなら不用意に「身内」を出さないか、出すなら出す、で兄妹の癒しとなる頻度を持って欲しかったものである。


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令和二(2020)年一〇月五日 最終更新