ウルトラマンレオ全話解説

第34話 ウルトラ兄弟永遠の誓い

監督:前田勲
脚本:阿井文瓶
二面凶悪怪獣アシュラン登場
 冒頭、舞台は宇宙で始まった。宇宙空間を飛んで地球に向かうのは帰ってきたウルトラマン。久々の登場となるこのウルトラマンをナレーションは主人公時代の回想シーンを交えながら紹介していたのだが、頭から「ウルトラ5番目の兄弟」という間違えをぶちかましていた(苦笑)
 それはともかく、帰ってきたウルトラマンは手にカプセルをもって飛んでいた。それは怪獣ボールで、ウルトラセブンに変身出来なくなったモロボシ・ダンのために光の国からプレゼントされたもの……………って、ダンが変身出来なくなってから8ヶ月も放置してたんかい(苦笑)!!

 まあ、ダンの性格からするとゲンを教導する意味や、第2の故郷である地球の者になり切る意味からも自分からは近況を報告しなかったであろうことは充分考えられるのだが………。
 ともあれ、ダンの助けとなる怪獣ボールを手に地球に向かう帰ってきたウルトラマンに対して、それを妨害せんとして二面凶悪怪獣アシュランが襲い掛かって来た。

 アシュランにしがみつかれた帰ってきたウルトラマンは近くの星に降り立ち、両者は怪獣ボール争奪を巡って激しい戦いを繰り広げた。怪獣ボールを庇っていた関係もあってか、勝負はアシュラン有利に展開し、ボールを持つ右腕を痛めつけられた帰ってきたウルトラマンは地球に向けてウルトラサインを放った。
 サインは地上をMACロディーで走っていたダンの目にも移ったが、セブンに変身出来ずにいるダンに為す術はなかった。
 結局怪獣ボールを守ったままアシュランにボコボコにされた帰ってきたウルトラマンは、何とかこれを死守して地球に向かうことに成功したが、離脱寸前にアシュランが放った妙な光線で口を封じられてしまったのだった。

 一方、帰ってきたウルトラマンが地球にやって来たことを察知したのはダンだけではなかった。但しそれは、帰ってきたウルトラマンの正体は把握出来ておらず、単純に「怪獣」としてMACのレーダーが捕らえたものだった。
 そしてこれを調べるべく、ゲンと佐藤がMACカーで反応地点である海岸に駆け付けたのだが、「怪獣」である帰ってきたウルトラマンはアシュランとの戦傷から力を使い果たして郷秀樹(団時朗)の姿で横たわっていたので、怪獣に有り勝ちな巨体が見当たらないことから佐藤はレーダーの反応に懐疑的だった。
 まあ、ゲンに微かながら怪獣反応があると云われては佐藤も一緒に調査を続けざるを得なかった訳だが、やがてゲンは倒れている郷を発見した。

 郷は完全に気を失っていて、死守した怪獣ボールを話したことにも気づかなかったが、彼を助け起こそうとしたゲンは次の瞬間にはMACガンを突き付けていた。
 歴代副隊長格の中では格段に人当たりの良い佐藤(と言っても、前任二人はその人物像が掴み難いほど影が薄かったのだが)ゲンの対応を訝しがり、それが怪獣反応によるものだと知って尚、怪我人としての郷の痛々しさが気になっているようだった。
 直後、意識を取り戻した郷だったが、朦朧とする中、怪獣ボールがすぐ近くに取り落としていたのを見つけたが、それに手を延ばさんとして再度気を失うと、佐藤は(怪獣反応が消えていたこともあったが)郷を疑わず、傷の手当てをするべきだ、とした。
 ゲンもこれに同意し、郷を搬送に掛かったが、皮肉にもこれにより郷が怪獣ボールを取り戻すのが遅れることとなった。そして皮肉な展開はこの後も続いた。
 微かながらも怪獣反応を見せ、妙なマスクをした郷は良くも悪くも充分な調査対象である。ゲンも佐藤も重症の男をMACの厳しい訊問に曝すのを可哀想だとして、スポーツセンターで怪我の手当てをしてやることになったのだが、ゲンはこれ以前に帰ってきたウルトラマンとも郷秀樹とも面識がなかったため、ダンと郷を合わせるのが遅れるのに気付き得なかった。ま、展開的に仕方ないものではあったが。

 ゲン・佐藤は百子と共に郷の手当てを終え、どうしても取れないマスクを気にしていた。やがて気付いた郷は紛失した怪獣ボールのことをゲン・佐藤に訴えんとしたが、マスクの為に声が出ない。ジェスチャーで怪獣ボールを象って訴えるも、ゲンも佐藤も怪獣ボールを現場で見ていないから何のことか皆目見当がつかない。
 何せ怪獣ボールを失ったままでは地球に来た意味がなくなるし、文字通りダンに合わす顔が無い郷。そんな郷の苦しそうな様子に百子は大切な物を求めて苦悩しているのを察し、一緒に探すからまずは傷を治すことを勧めるのだった……………まあ、ここでこの第34話を見た何十万人もの人々が抱いたものと同じとは思うがツッコませて欲しい…………筆談しろよ!!(苦笑)

 ともあれ、到頭アシュランは地球に接近して来た。先のウルトラサインから帰ってきたウルトラマンの身を案じつつもそれを口に出せず、MAC隊長として隊員達に出動を命ずるダン隊長、印象的過ぎ。
 そして脳天から墜落するようにして地球に着いたアシュランは「二面凶悪怪獣」の名前の通り、裏表に色のみ異なる同じ顔・体を持ち、両面の口から一条の炎を吐いて破壊活動に掛かった。それに対してMAC隊員達が銃撃を加えると、(大して効いていないとは思われるが)表裏両面を時折入れ替えては更なる破壊を続けた。

 現場にて陣頭指揮を執っていたダンは、現場が城南スポーツセンターの近くで、アシュランの脅威が迫る中、百子が練習生達を避難誘導しているのに気付き、自らもそれに加勢した。
 当然避難を促された面々の中には負傷療養中の郷もいた訳だが、ダンに気付いた郷は気まずさからも彼を避けるように駐輪されていたバイクに(勿論所有者に無断で)乗って、怪獣ボールを取り戻すべく自らが倒れていた海岸に向かった。
 幸い、程なくして怪獣ボールは子供達がおもちゃにして遊んでいたのを見つけることが出来、所有権を訴えることも儘ならず、強引に奪取したところを不審者として子供達に石を投げつけられる仕打ちに耐えながらも(苦笑)奪還に成功した。

 何とか怪獣ボールを取り戻すのに成功した郷はそのままバイクでダンの元に急行した。
 現場ではスポーツセンターの子供達を避難し終えたダン以下、MAC隊員達が炎を吐きまくるアシュランに手が付けられずにいた。至近距離にまで迫られ、狼狽えるMAC隊員一同だったが、そこへ郷が駆け付け、終にダンとの再会を果たした。
 郷の姿を認めたダンは一言、「郷!」……………い、違和感が……(苦笑)……兄弟間で、姓で呼ぶかなぁ?しかし………。そりゃ、ウルトラ兄弟は厳密には同父同母の兄弟ではない(ウルトラの父とウルトラの母の実子はウルトラマンタロウのみ)が、ウルトラセブンと帰ってきたウルトラマンは母親同士が姉妹で、完全に血の繋がった従兄弟同士で、普段ゲンを下の名前で呼んでいるダンが「秀樹!」と呼ぶ方が自然なのだが、森次のおやっさんのキャラに合ってなかったのかなあ………?

 ともあれ、現場は戦場。郷が怪獣ボールをダンに投げて寄越すと、それを一瞥したダンは即座に発動させるべくそれをアシュランに投げ付けた。
 アシュランの胸板に当たった後、地面に転がった怪獣ボールからはモロボシ・ダンにしか使えないと云う怪獣ボールセブンガーが現れた。セブンガーの、三昔前のロボットを絵に描いたような寸胴体形と眠そうな目という容姿はおおよそ強そうに見えないが、どうしてどうして。
 頑丈そうな見た目はアシュランの攻撃(張り手&光線)を丸で受け付けず、鈍重そうな体格から繰り出す攻撃は一つ一つがアシュランを圧倒した。
 特に体全体を利した体当たりと浴びせ倒しは忽ちアシュランをグロッキーに追い込んだ(セブンガーに関するシルバータイタンの考察は、過去作『名トレーナー モロボシ・ダン』を参照にして頂けると有難い)。

 だが、惜しくも1分間しか戦えないと云う唯一の弱点のためにアシュランにとどめを刺すには至らず(←ナレーションによると後10秒あれば可能だったらしい)、セブンガーは怪獣ボールに戻った。
 直後、ふらふらしながらも立ち上がったアシュランだったが、地上に並んで立つ郷秀樹、モロボシ・ダン、おヽとりゲンを見て驚愕した。アシュランには地球人の姿をしていても彼等がウルトラマンであることが分るようで、そこに構えを取る帰ってきたウルトラマン&ウルトラセブン&ウルトラマンレオの姿を見出したアシュランは、3人総出で掛かって来られては堪ったものではないと断じ、恥も外聞も無いのではないかと思えるほどの狼狽えようを見せ、這う這うの体でその場から逃げ出したのだった。

 かくして何とかアシュランを追い払い、兄弟再会を果たしたダンと郷だったが、ダンの表情は晴れなかった。
 深読みによってアシュランが逃げ出してくれた訳だが、現状ダンは変身不可能で、郷もまた怪我が治るまでは変身出来ない様子だった。ようやくにして二人が兄弟であることを知ったゲンは自分がいるから大丈夫とするが、ダンはレオ一人では勝ち目はないとした。
 この第34話時点のゲン=レオはもはや特訓することもなく、幾多の死闘と経験を経て初対面の怪獣・宇宙人に不覚を取ることも皆無に近くなっていたのだったが、それでもダンはレオ一人では倒せないと踏んでいたのだから、アシュランはウルトラシリーズ史上屈指の強豪と云えるし、たった1体で1分の時間でそれをグロッキーに追い込んだセブンガーは無茶苦茶強い存在と云える。
両者の強さがこの第34話の範囲内のみに収まってしまっているのは誠に惜しいものである。

 ともあれ、郷のマスクを何とかしなくては、という話となり、ゲンはダンにウルトラ念力で郷のマスクを破壊することを要請。周知の通りこのウルトラ念力の発動はダンを著しく披露させるもので、郷もそれを(身振りで)止めたが、ダンは(アシュランの再襲来時に発動出来なくなることを案じはしたが)快くこれを発動した。それだけ言葉を発することも儘ならない郷の姿は傍目にも痛々しかったと云うことだろう。
 狙いは過たずマスクは粉々になり、言葉を取り戻した郷は疲労困憊のダンを助け起こして礼を云い、ダンも疲れた笑顔でこれに応じたのだった。

 だが、問題解決はこれからだった。
 ウルトラ三人組を恐れて最初は控え目に暴れていたアシュランだったが、暴れてもウルトラ三人組が現れないことから徐々に図に乗り出した。
 その猛威は地上のMAC東京支部に及ばんとし、ダンは佐藤・梶田・白土に東京支部に協力し、レーザーガンの射程内に入ったら攻撃するよう言伝、三名に出撃を命じた。だが例によって彼等の攻撃はアシュランを倒すには程遠かった。
 東京支部からは砲塔のような物よりレーザー光線が、駆け付けた佐藤達からも携行型のレーザー砲とMACロディー装備のレーザー砲からの光線が波状攻撃を仕掛け、ダンの指示に忠実、且つ出来る限りの攻撃を加えてはいたのだが………ある意味どうしようもないのかな(嘆息)。

 芳しくない戦況にゲンも出撃を申し出たが、ダンは許可しなかった。前述した様にアシュランは同番組に登場した怪獣の中でも屈指の強さと想像される。ダンもMACの能力でアシュランを倒せるとは思っていなかったことだろう。ダンがゲンに出撃を許さなかったのも、レオと帰ってきたウルトラマンが力を合わせなくてはアシュランには勝ち目がないと見ていてのことで、郷が回復するまでゲンを温存する為だった。
 ゲンは、帰ってきたウルトラマンが迄出撃出来ないなら怪獣ボールを発動させては?と提案したが、怪獣ボールは一度発動すると50時間使えないとのことだった。セブンガーは物凄く強いが、この使い勝手の悪さが祟って、一度きりの出番に終わったと思われる(しみじみ)。

 だが、アシュランの猛攻は東京支部の一部を破壊し、佐藤達の身も危険に曝された。居ても立ってもいられず郷は直らずとも戦う旨を申し出、ゲンはダンが止めるのも聞かずステーションを飛び出し、レオとなって現場に向かった。
 レオVSアシュランの一騎打ちは互角の展開だったが、互いに決定打を与えることはなかった。だが地上に降り立ったダンと郷は形勢不利と見て臍を噛んでいた。するとそこへ煌々と照っていた満月が皆既月食によって闇夜は暗さを増した。
 これを見た郷は月食による闇を利用して戦うことを決意、「死ぬかもしれないんだぞ!」と言ってダンが止めるのも聞かず、帰ってきたウルトラマンに変身した…………何だかんだ言って、言い出したら聞かん奴等ばかりだな、この番組(苦笑)

 ともあれ帰ってきたウルトラマンが大地に降り立つと、月食によって月光は完全に遮られ、戦場はウルトラマンの目とカラータイマーの光りから互いの輪郭が確認出来る程度の闇夜となった。
 アシュランが鳥目との設定は聞いたことないが、ほぼ行動不能に陥り、二人のウルトラマンは同時攻撃でアシュランをグロッキーに追いやるとレオは前方から、帰ってきたウルトラマンは後方から空転して襲い掛かると同時にチョップを食らわすクロスアタックアシュランに決めた。
 さしものアシュランも視力が効かない状態で前後からウルトラマン二人掛かりの攻撃を受けては一溜りもなく、両面の口腔から黄色い体液を吐瀉して倒れると絶命したのだった。
 結果として、帰ってきたウルトラマン参戦から秒殺に近い倒され方をしたアシュラン。長いウルトラシリーズの歴史的にも決して知名度の高い方ではないのだが、シチュエーションがウルトラ兄弟に味方していなければかくまであっさり倒されることが無かったであろうことは状況から充分推測される。かかる存在こそ「隠れた強豪」と云えよう。

 そしてラストシーン、舞台は帰ってきたウルトラマンが不時着した海岸。
 郷秀樹は半分溶融したウルトラ・アイを、モロボシ・ダンは怪獣ボールを掲げ、両者はそれぞれの物をもっと腕をクロスさせていた。両者はゆっくり頷き合うとダンは地球のことは心配ないとの言伝を郷に託し、郷はゲンにダンを託すと両者はがっちり互いの手を握り、郷は帰ってきたウルトラマンに変身すると地球を跡にした。
 郷がウルトラ・アイを持ち帰ったのはこれをウルトラの国で修復する為で、ネタバラしをするとウルトラ・アイが持ち帰られる前にMACは全滅し、ダンは長くその消息を絶った(内山まもる版の漫画ではMAC全滅直後にウルトラ・アイが届き、ダンはセブンに変身してMACの最終兵器と共に円盤生物に特攻した)。
 それにしても、ダンがセブンに変身出来なくなったのはマグマ星人や双子怪獣から受けた肉体ダメージの後遺症と思っていたから、アイテムが修復されることで体が治るとすれば、M78星雲人の生態は誠に不思議である(苦笑)。


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令和二(2020)年一〇月五日 最終更新