ウルトラマンレオ全話解説

第38話 決闘!レオ兄弟対ウルトラ兄弟

監督:東條昭平
脚本:若槻文三
にせアストラ登場
 ナレーション曰く、寒さが和らぎだした日のこと、正に春うららな気候の中、マッキー2号でパトロール中だった佐藤は平和を満喫するような口調で「全く異状なし。」とMACステーションに通信した。
 ステーションからはダンの「早く帰って来い。」の台詞から佐藤はダンがコーヒーを飲んでいることを察知し、その言及に、ゲンは「さすが先輩、良い勘している。」と宣っていた。
 初期のMACでは想像も出来なかったアットホームで、平和そのものムードが描かれた訳だが、残念ながらと云うべきか、必然と云うべきか、それは嵐の前の静けさだった。

 魔の手は地球ではなく、M78星雲光の国から延びようとしていた。上空から一本の鎖が迫りくるとウルトラタワーに巻き付き、引き倒さんとした。
 するとそれに呼応するように地面にあるハッチ状の扉が開いたかと思うと中からウルトラ6兄弟のゾフィー、ウルトラマン、帰ってきたウルトラマン、ウルトラマンAが現れた。おぉ!タロウがいないことで前作との整合性はちゃんと取れている!(笑)

 だが、駆けつけんとしたウルトラ兄弟の眼前でウルトラタワーは引き倒されてしまい、それによって頂上部にあったウルトラの炎が消えた。
 尋常ならざる事態を前に、何者の仕業かと色めき立ったウルトラ兄弟はほどなく、暗黒宇宙人ババルウ星人の仕業に違いないとし、これを捕えんとした。ナレーションもババルウ星人が以前からウルトラの国の侵略を狙っていた存在であると言及し、戦意を燃やすウルトラ兄弟だったが、その間隙を縫ってコンピュータルームに侵入した者はアストラだった。
 アストラは巨大な鍵−ウルトラキーを外すとこれを奪い去った。

 このウルトラキーが如何に重要な存在であるかは後々述べれるのだが、重要アイテムの異変はすぐにウルトラ兄弟の察知する所となり、兄弟は即座にコンピュータルームに向かった。
 先頭に立ったウルトラマンは地下から出て来たアストラと遭遇し、これを取り押さえんとしたが、アストラはウルトラキーを得物に抵抗し、一瞬の隙を突いて上空に飛び立った。
 直後、他の三人が追い付き、介抱されたウルトラマンは、ウルトラキーが盗まれたことを告げ、犯人をババルウ星人と見て憤るゾフィーに犯人はババルウ星人ではなく、レオの弟・アストラであると証言した。
 犯人の正体以前に、ウルトラキーが奪われたことは深刻な事態を光の国にもたらした。すべてのエネルギーを司っていたウルトラキーがなくなったことで、エネルギーというエネルギーが暴走し、ウルトラの国の各所で地割れ・地滑り・エネルギー施設での爆発が起こり、コントロールを失ったウルトラの星は宇宙空間を暴走し出した。

 前代未聞の事態にウルトラ兄弟は怒り心頭、太陽系へ向かって暴走するウルトラの星を止める為にも、アストラを倒してキーを奪い返さなくては、として飛び立つと、地球に向けてウルトラサインを送った。
 一方、膨大なエネルギーを持つウルトラの星の暴走による影響はMACでも感知された。と言ってもそれは膨大なエネルギーを計器類が受けきれずに狂いまくると云うもので、MACではスイッチを切り、宇宙監視所に問い合わせるぐらいしか出来ずにいた。
 だが、宇宙監視所とも連絡が取れず、隊員一同が周章狼狽する中、ダンはスクリーンに映ったウルトラサインに気付いた。
 そのサインが意味するところを呼んでしばし茫然としていたダンは佐藤に呼び掛けられてやっと我に返ると、梶田と共にコンピュータ室に行くよう命じると、ゲンを別室に呼び出した。

 体育館のようなところにゲンを呼び出したダンは、以下に箇条書きにしたことをゲンに告げた。
・ウルトラの星のウルトラキーが盗まれた。
・コントロールを失ったウルトラの星は太陽系に侵入して来た。
・ウルトラキーを盗んだのはアストラで、アストラは地球に向かっている。
・アストラを追うウルトラ兄弟達は、「レオ兄弟に悪魔の心が乗り移った。」としてセブンにレオを見張るよう伝えて来た。

 たった3文字でこれだけの内容を伝えたウルトラサインには驚嘆するしかない(笑)が、ダンとゲンにとっては性能以上に内容の方が衝撃的だった。
 ウルトラ兄弟は完全にレオ兄弟を疑い、敵視していた。勿論ゲン=レオはアストラがそんなことをしたとは信じられないし、ダン=セブンもゲンを信じればこそ、兄弟から伝えられたすべてをゲンに告げ、兄であるレオがアストラからウルトラキーを奪い返すべきと告げた。

 何故アストラがそんなことをしたのか?本当にアストラがそんなことをしたのか?茫然自失状態のゲンにダンは、ウルトラキーが武器として使われる際の脅威を警告した。
 これほどの重要アイテムは勿論軽々しく使われるものではなく、セブン自身幼少のみぎりにウルトラの父が一度使ったのを見た切りだった。その僅かな回想シーンではウルトラの父がウルトラキーをライフル銃の様に使い、悪魔の星・デモス一等星を一撃で粉砕していた。勿論その威力が個人に向けられればウルトラ一族とて一溜りも無いのは想像に難くない。

 直後、佐藤が血相を変えてやってくると、ダンはゲンに出動を命じ、自身は佐藤に促されてコンピュータルームに向かった。
 コンピュータの解析によると、太陽系に侵入した謎の星は円軌道XK00OSに乗って地球に向かっており、14時26分頃には影響を受けるとのことだった。そしてその14時26分がどれほど後の事なのかというと、何と8分後!………何万kmという距離が至近距離とされ、音速・光速・それ以上の速さが当たり前とされる宇宙空間にあって、8分前の察知とは確かに致命的で、この察知能力と、2話後の第40話で衝突直前までシルバーブルーメを捕捉できなかったことでMACのレーダー機能は方々で酷評されている。ただ、やって来るのがウルトラの星であることを考えると仕方ない気がしないでもない。
 そして地球上の一般ピープルはそんな事態の襲来を知る由もなく平和を享受し、それ以上に暗黒宇宙に漂う謎の氷塊の存在は誰も知る由が無かった。

 そして為す術なく14時26分がやって来た。
 直径比率で地球の4分の1の体積しかない月でさえ、38万kmの遠距離からその引力で潮の満ち引き初めとした影響を日々地球に与えている。ましてウルトラの星は直径比率では地球の60倍!そんな巨大な物体が至近距離に迫って地球に影響のない筈がなかった。
 ウルトラの星は地上から肉眼でもその巨大さが一目瞭然な距離に迫っており、世界各地で津波・大地震・台風・火山噴火が勃発した。MACのコンピュータは175時間後に地球が消滅すると解析、7日後の1月3日に地球が最後の日を迎えると云われても受け入れられる筈がなく、佐藤はコンピュータが狂ったとしか思えなかった(正確にはそう思いたかったのだろう)。
 続々と入る被害報告にダンは居ても立ってもおられず、そこにアストラを追うゾフィーからも危機的状況とアストラを捉えよとの指令が伝えられてきた。

 ゲンは必死になってアストラの名を連呼し、そこにマッキー2号でダンもやって来た。ダンはアストラがやって来ることを告げ、自分に力を合わせてウルトラキーを奪い返すことを命じた。
 だが、「アストラ=ウルトラキーを盗んだ犯人」と信じられないゲンは、アストラと話をさせて欲しいと申し出た。それに対して事態の切迫からもそんな悠長なことを言っていられないと取り合わないダンだったが、ゲンは尚も食い下がった。
 ダンはコンピュータの解析結果をゲンに告げ、ゲンが上空にアストラの姿を認めると、自分がウルトラ念力で足止めをしている隙にウルトラキーをアストラから奪うよう命じた。

 そして遂にアストラは地上に降り立ち、ダンはウルトラ念力を発動した。忽ちアストラは悶絶し、ゲンはこの隙にレオに変身してウルトラキーを奪い返すよう重ねてゲンに命じた。
 だが、ゲンは苦しみながら「レオ兄さん!」と連呼する弟を捨て置けず、あろうことかダンに食らいつき、ウルトラ念力の発動を中断させた。これによって体の自由を取り戻したアストラは直前に彼を追って地球に降り立ったゾフィー・ウルトラマン・帰ってきたウルトラマン・ウルトラマンAに抵抗。地上ではゲンとダンが取っ組み合いを展開し、2か所でウルトラ兄弟VSレオ兄弟の格闘が為された。

 元々光線技よりも格闘に優れてL77星人のこと、1対1ならウルトラ兄弟とも互角以上に戦うアストラだったが、1対4とあってはさすがに分が悪く、彼は何度も兄=レオに助けを求めた。
 そこに、そのレオを殴り伏せたダンが再度ウルトラ念力を発動したため、アストラは益々劣勢に陥った。だが程なく息を吹き返したゲンは、「止めろー!!」と絶叫してダンに蹴りを入れ、ダブルフィストハンマー3連発を背中に入れて気絶に追いやるとレオに変身して弟とウルトラ兄弟の間に割って入った。

 Aとゾフィーを振り払い、ウルトラマンと帰ってきたウルトラマン二人の首根っこを独力で押さえつけて投げ飛ばすレオ。かつて数多くの怪獣・宇宙人に苦戦して来たことを思えば、複数のウルトラ兄弟を同時に相手にして遜色ない格闘能力は素晴らしい成長を遂げたと絶賛出来る。ただその成長が彼を鍛えたウルトラセブンの兄弟達相手に発揮されているのは大いなる皮肉だった。
 気絶から覚めたダンもレオに制止を呼び掛け、一先ずアストラの窮地を脱したレオはアストラを助け起こし、ウルトラ兄弟に制止を求めると、アストラにウルトラタワーの火を消したり、ウルトラキーを盗んだり、ウルトラの星を暴走させたりしたのが事実なのかを問うた。
 アストラはいずれも頭を振って自分の仕業であることを否定したが、手にはウルトラマンの半身程もある巨大キーが握られており、背後に回したぐらいでは隠せるものではなかった(苦笑)

 勿論レオも手にあるキーのことを詰問したのだが、アストラは肝心な事にはダンマリを決め、業を煮やしたウルトラマンは遂に、「レオ!俺達はアストラを殺す!!」と云うヒーローにあるまじき台詞を発した。
 「ヒーローにあるまじき台詞」と云えば、このウルトラマンの台詞と、『仮面ライダーストロンガー』最終回における仮面ライダー1号の、「動けば仲間の命はない!」が二大双璧なのだが(苦笑)、シルバータイタンは比較の上ではこの時のウルトラマンの方が深刻と見ている。
 仮面ライダー1号の場合、どちらかというと「交渉」・「駆け引き」として、こちらの要求が受け入れられなければ捕虜とした改造魔人の殺害も辞さないことを仄めかしたものだが、ウルトラマンの台詞は交渉もへったくれも無い「殺害宣言」に等しい。
 せめて、「アストラを倒す!」程度に留めるか、ワンクッション入れて「ウルトラキーを返せ!さもなくばアストラを殺す!」だったら、事態の切迫度(例えレオ兄弟を殺すことになっても、ウルトラキー奪還が急務であることは明白)からも充分理解出来るものとされたことだろう。

 ともあれ、弟を殺すと宣言されたレオが「はい、そうですか。」という訳にはいかなかった。ダンに申し出たのと同様に、(弟を説得する為の)時間が欲しいとして頭を下げるレオだったが、これには兄弟4人とも首を横に振って拒絶した(←くどいが、時間が無いのは事実である)。
 そして直後にレオ兄弟とウルトラ兄弟の間に生まれた地割れを飛び越えて、ウルトラマン・帰ってきたウルトラマン・ウルトラマンAがレオ兄弟に襲い掛かって来た。ほんの一ヶ月前に共闘し、負傷した兄を託したばかりの帰ってきたウルトラマンは戦意を高揚させるのは難しかっただろうけれど、ウルトラの星でアストラにしこたま殴られたウルトラマン(苦笑)と、一番年若で感情的なAは戦意満々で、格闘はレオVSウルトラマン&帰ってきたウルトラマンと、アストラVSウルトラマンAの二面戦で行われた。

 1対2のハンディキャップマッチに苦戦しながらも何とか互角に戦っていたレオだったが、こんな状況下にあってもたった一人の弟の方が大事らしく、レオは自分の勝負を捨ておいてもアストラを襲うAにレオキックを放つのだった。
 Aは大慌てで、それでも済んでのところでレオキックを躱し、体制を整えたレオは我が身に変えてもアストラを守ると宣言した。

 故郷の星を滅ぼされ、天涯孤独と思っていたところに奇跡的に生きていた弟が何よりも大切な存在とするレオの気持ちは良く分かる。
 だが、それを考慮しても(酷な書き方になるが)この時のレオの思慮は浅いと言わざるを得ない。アストラを信じるのは兄として無理からぬこととはいえ、現実として、

・ウルトラキーを失ったウルトラの星のため、地球が滅亡の危機に瀕している。
・ウルトラキーをアストラが所持している。

 の2点は眼前の出来事として否定のしようが無い。
 弟の命を守る為にも、まずはウルトラキーを取り返してウルトラ兄弟に返すべきだっただろう。そうすればウルトラ兄弟がいくらアストラに対して許せない気持ちを抱いていたとしても、まずはキーを戻すことを優先しただろうし、それから話し合いを打診する事だって出来ただろう。

 また、(これも酷な言い方だが)アストラの潔白を信じるにしても、現実にアストラがウルトラキーを所持している以上、眼前の弟に対して

・何者かにマインドコントロールされている。
・何者かが化けた偽物
(←実際そうだった)

 程度のことは考えて叱るべきだったと思うが、閲覧者の皆々様の御意見は如何だろうか?


 話を戻します。
 前述のレオの宣言を受け、それまで余り戦闘に加わらず様子見していたゾフィーはレオ説得し難し、と見て、弟達を呼び戻すとマン・新マン・Aの三人は合体光線の構えを取り、さしものレオもこれには狼狽した。だが、合体光線は容赦なくレオ兄弟に放たれ、レオはこれをまともに食らってしまった!(←よく見るとアストラは思い切りレオを楯にしていた

 これにはレオも一溜りもなくダウン。そしてレオが倒れたのが合図であるかのようにウルトラの星接近の影響受けた天変地異が世界各地で勃発し、地球最後の日を仄めかして第38話は次週に続くのだった。


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令和二(2020)年一〇月五日 最終更新