ウルトラマンレオ全話解説

第39話 レオ兄弟 ウルトラ兄弟 勝利の時

監督:東條昭平
脚本:田口成光
暗黒星人ババルウ星人登場
 前話終盤でウルトラマン・帰ってきたウルトラマン・ウルトラマンAの合体光線をまともに食らったレオは為す術なく地面に倒れ伏した。
 倒れたレオに対して、「レオ!レオ、しっかりしろ!」と呼び掛けるゾフィー。ネット上にはこのゾフィーの台詞に対して、「お前が攻撃させたんだろうが!」とツッコむ人も多いが、シルバータイタンはそうは思わない。
 ゾフィーは合体光線の前に「最後の警告」を行っており、それ以前は殆ど直接戦闘に参加せず、状況を入念に見守っていた。ウルトラ兄弟の長兄にして、宇宙警備隊隊長でもある彼には冷静な判断が求められており、セブンとの交流的にもレオ兄弟が悪魔に魂を売ったとは思い難く、やむを得ない事態になるまではレオ兄弟を倒すことも本意ではなかったことだろう。
 ましてレオの行動はウルトラの星や地球の滅亡を主軸にしたものではなく、あくまで弟を守る為のもので、それが結果としてウルトラキー奪還の障害になったため、ゾフィーは止む無くこれを倒す必要に駆られたもので、決してレオの命を奪いたかった訳ではないのだろう(この時点のウルトラマン辺りは分からんが(苦笑))。

 いずれにせよ、強烈な一撃を食らったレオは人事不省となり、気が付けば、アストラがウルトラキーをウルトラ兄弟の方に向けていた。さすがに星をも一撃で木端微塵にする破壊力のウルトラキーを向けられてはゾフィー達も狼狽えざるを得なかった。
 ただ一人離れた場にいて、アストラとも面識のあるダンは必死に制止を呼び掛けたが、アストラはウルトラマンとは思えない悪辣で不気味な含み笑いを発しながら引き金を引かんとしたが、その刹那上空から一条の稲妻がウルトラキーを直撃し、これを真っ二つにすると、アストラもダウンさせた。
 危うく折れたキーの下敷きになるところだったダンは、上空を見上げるとキーを叩き折った張本人−ウルトラマンキングの名を口にした。

 ウルトラマンキング初登場時のナレーションや、その後のウルトラシリーズで明かされた歴史からも、恐らくゾフィーだけはキングと面識があったと思われる。ゾフィーはキングの元に駆け寄ると右手を差し出し、キングもこれに応じた。
 握手を交わし終えるとゾフィーは「何故、ウルトラキーを?」と、当然過ぎる疑問を呈した。それに対するキングの答えは、「キーなど、問題ではない!」…………………………否、大問題だろうが!!!!(苦笑)
 まあ、このツッコミをした特撮ファンは何百万人といるだろうから、話を戻すが、キングはレオを殺しかけ、アストラに殺意を向けていたウルトラ兄弟達に対して、「お前達は愚かしくも、ウルトラ兄弟の7番目の弟になるやもしれぬレオを殺すところであったではないか。」と諭し、続けて、「その男がアストラに見えるのか!?」と投げ掛けた。

 事ここに至って、展開的にも状況的にも眼前のアストラが偽物であることが明白となった。
 まあ、特撮作品に出て来る偽ヒーローの大半が「一目で本物と違うの分る」的な容姿をしているのに対し、この偽アストラはギリギリまで「本物かも?」との疑問の余地を残す役割を振られていたから、容姿も本物と全く同じものだった(着ぐるみは本物も偽物も同じアストラのものが使われた)。
 キングの爺さんに「見えるのか?」と云われても、「見える!」としか言いようがないのだが(苦笑)、キングがウルトラ兄弟の返答も待たず洗礼光線を腹部から放つと、これを浴びてしばし苦しんだ偽アストラの姿は消え失せ、ババルウ星人の姿が現れたのだった!

 正体を暴かれ、這う這うの体で逃げ出すババルウ星人、そして慌ててそれを追わんとするウルトラマン・帰ってきたウルトラマン・ウルトラマンAの三人だったが、キングはババルウ星人などいつでも倒せるとして、ゾフィー達にそれよりもウルトラの星と地球の衝突を回避することに全力を尽くすことを命じた(←キーを壊したあんたが言うかね?)。

 ゾフィー達が地球を去ると、キングはセブンにも一緒にウルトラの星に帰らないか?と呼び掛けた。だがダンは地球を第二の故郷として、地球に万が一のことがある場合は自分も地球と一緒に死ぬとして、キングの誘いを断った。
 セブンの決意に対してキングはレオもダンと同じ気持ちだろうとして、セブンを「ダン」と呼び、レオを「おヽとり君」と呼んで、彼を託して自らも飛び去って行った。

 アストラがウルトラキーを盗んだ犯人ではないことが判明し、レオ兄弟とウルトラ兄弟が殺し合うと云う事態は回避されたが、地球とウルトラの星が衝突・消滅しかねないという危機的状況は残っていた(そもそも地球人達にはウルトラの星のことも、ババルウ星人のことも丸で伝わっていない)。
 天変地異はうち続き、MAC隊員一同は無力感に打ちひしがれていた。松木が佐藤に北極星から微かに妙な電波が発せられていると伝えても、白土が自棄糞気味に「ほっとけ!宇宙には色んな電波が飛び交ってるんだ!それが我々の大ピンチを助けてくれるわけがないんだ!」と怒鳴り散らす有様だった。だが、ナレーションが直後に述べたように、実はこの電波こそが救いの主だったのだが、それが分かるのはもう少し後のことだった。

 場面は替わってゲンの下宿。そこでは人事不省のゲンがベッドに横たわり、それを甲斐甲斐しく看病する百子と、それを見守るダンがいた。
 ダンは天変地異に見舞われ、地球滅亡直前に瀕した状況にあってひたすらゲンを介抱する百子の冷静さを疑問に思っていた。それに対して百子は、「地球が壊れてしまうのなら何をしていても同じことです。だったら私はおヽとりさんのところに居てあげたいんです。」と返した。
 はっきり言って、『ウルトラセブン』最終回のアンヌにも負けないウルトラシリーズ屈指の熱愛宣言である。同時に、この翌週に待っていた百子の運命を思えば、居た堪れない事この上ないワンシーンでもあったのだが………(涙)。
 とおあれ、百子の気持ちに感謝とも安堵ともつかぬ気持ちを抱え、夜空を見上げたダンだったが、天変地異はその激しさを増し、その陰では等身大のババルウ星人が逃げ惑う地球人を見て嘲笑っていた。

 その頃、MACステーションには高倉長官が来訪し、佐藤にモロボシ隊長を呼び戻すよう命じ、佐藤が受話器を手にすると、自分が呼び出すとして、ダンに応答を求めた。
 呼び出しに「モロボシだ。」とエラソーに出たのを、受話器の向こうの「私だ、高倉だ。」の台詞に慌てる姿を見ると、上司に弱い中間管理職として、ウルトラセブンも随分地球に染まったことを感じさせられた(笑) 。
 ともあれ、高倉長官は接近する謎の天体にUN105X爆弾を打ち込んで破壊することが決まったことをダンに告げ、作戦計画を練るの為にすぐにMACステーションに戻るよう命じた。
 このUN105X爆弾はその名を聞いたMAC隊員全員が顔色を変える程の代物で、直径比率で地球の60倍ある天体を破壊する程の能力を持つ訳だから、驚愕度は『帰ってきたウルトラマン』に出て来たスパイナーに対するそれの比ではなかった。
 UN105X爆弾の破壊力を知るダンは、地球を第二の故郷として殉ずる気持ちの一方で、第一の故郷であるウルトラの星にいる実の家族の身を案じずにはいられなかった。

 ステーションに戻る道中、ダンが夜空に見たウルトラサインはいまだウルトラの星の軌道が帰られずにいることを告げており、苦悩するダンが戻ったMACステーションでは、UN105X爆弾の発射は翌日正午であることが長官から告げられた。
 直後、佐藤が迫りくる謎の天体がウルトラの星であるかも?との噂を聞いたと口にした。高倉長官も会議の席上で同じ説が出たことを肯定したが、地球の科学では迫りくる天体がウルトラの星であるかどうかを確かめる術はなく、仮に噂通りだったとしてもUN105X爆弾による天体破壊しか方法がない、とした。

 そして高倉長官は隊員達に翌日に備えて休養を取る為、解散を命じたのだが、そこでダンは作戦を中止出来ないかと申し出た。おおよそ地球を守るMACの体長らしからぬダンの台詞に驚きながら「君ともあろうものが何ということを言うのだ?」と疑問を呈する高倉長官にダンは謎の天体が本当にウルトラの星だった場合(←実際そうなのだが、勿論口には出来ない)、何度も地球の危機を命懸けで救ってくれた恩人とも云うべき存在に弓引く真似は出来ないと言い放って、命令不服従を仄めかした。

 高倉長官に、何故あの星がウルトラの星と言い切れるのか?と問われたダンは、「長官にはそうでないという確信がおありですか?」と回答にならぬ問い返しをするしかなく、両者の間に奇妙且つ不気味な沈黙が停滞した。
 しばらくして口を開いた高倉長官は、穏やかにダンの気持ちに理解を示し、それでも個人の意見で変更が不可能であることを告げ、続けて「私だって、あの星がウルトラの星でないことを祈ってるんだ。」と述べた…………本当に、良い人だ……高倉長官……

 地球人として、地球を守る組織の長官として、高倉長官の判断は止むを得ないながらも正論で、さしものダンもそれ以上の反論が出来なかった。ダンは一人その場に失意を抱えて残ったのだった。

 そして翌朝。激しさを増す地震の中、ようやく意識を取り戻したゲンは、百子からMACがウルトラの星にUN105X爆弾を打ち込む計画であるのを知り、かかる暴挙が許されてなるものかとばかりに、大慌てでMACステーションに向かった。
 そして午前10時。昨夜から一人ステーションに残り茫然自失としていたダンだったが、レシーバーの向こうから前日に松木達が聞き流していた電波に気付いた。その電波を聞き入ったダンが口にしたのはアストラの名だった。そう、前話で伏線的に触れられていた宇宙に浮かぶ氷塊は、ババルウ星人によって氷漬けにされて北極星付近に幽閉されていた本物のアストラだった!
 直後、ゲンが飛び込んで来て、MACがウルトラの星にUN105X爆弾を打ち込もうとしていることを詰った。故郷を失った者として、ちゃんと存在する故郷を滅ぼさんとするセブンの暴挙は許せなかったのだろう。
 ともあれ、この時のゲンは丸で冷静ではなかった。合体光線を浴びてついさっきまで人事不省だったので、その後の展開(偽アストラの正体、本物のアストラの行方)を丸で知らない。それゆえセブンであることを否定し、MACの隊長として動くダンを否定し切れず、アストラの暴挙に項垂れるしかなかった。

 しかし、直後にウルトラキー奪ったのがアストラではなく、彼に化けたババルウ星人であることや、本物のアストラが北極星にいることをダンに告げられるや疲れ切ったゲンの顔色に生気が蘇った。
 レシーバーを通してアストラの意思を受け取ったゲンはその名を連呼しながら屋外に飛び出すとレオに変身して北極星に急行した。そして北極星に到着するやレオ全身発光を放って忽ちアストラを封じていた氷塊を蒸発せしめ、弟を救い出した。
 手を取り合って再会を祝したレオ兄弟は即座に地球に向かった。その頃地球上ではUN105X爆弾の発射が秒読み段階に入っていたが、同時に宇宙監視所がレオとアストラが地球に向かっていることも捉えていた。僅かな状況の変化でもUN105X爆弾発射回避に利用したいダンとしては重要な情報と云えよう。
 二人の帰還をダンが心待ちにする一方で、折れたウルトラキーの側の草むらに身を潜めて、間もなく地球とウルトラの星の双方が滅びるとほくそ笑むババルウ星人だったが、もしそうなったら、自分も死ぬと云うことは考えていなかったのだろうか?(苦笑)

 ともあれ、程なくレオは本物のアストラと共に地球に戻って来た。二人は両腕を組むと、ウルトラダブルスパークなる光線を照射し、折れたウルトラキーを一瞬で復元した。それを見ていたババルウ星人は兄弟にそんな能力があったことを驚愕し、兄弟が修復されたウルトラキーをウルトラの星の戻すのを阻止すべく、巨大化して兄弟の妨害に出た。
 ネット上にはこの時のババルウ星人の狼狽えようを馬鹿にする声も多いが、ゾフィー以下のウルトラ兄弟の能力をもってしてもどうにもならなかった展開を思えば、ババルウ星人にとってレオ兄弟の特殊能力は本当に知る由の無かったことで、「そんなん有りか?反則だぁ!!」と叫びたいところだっただろう(笑)。

 ダンはレオ兄弟がウルトラキーを手にするのを援護すべく、巨大化したババルウ星人への攻撃を隊員達に下知したが、程なく攻撃中止を命じた(状況や描写からレオ兄弟やウルトラキーへの誤射を恐れたと思われる)。
 兄弟はアストラがウルトラキーを拾い上げ、レオがババルウ星人の妨害を迎撃する役割分担を取ったが、ババルウ星人はレオの妨害を受けて尚、右二の腕に仕込んだカッター、左二の腕に仕込んだ鎖分銅を駆使して抵抗。ウルトラマンキングに戦闘能力は低評価されていたババルウ星人だったが、ウルトラタワーを引き倒しただけあって鎖分銅の使い方はなかなかに巧みで、アストラの飛行を阻止しただけでなく、アストラの体を上手く引き摺ってレオの攻撃を阻止したりもした。
 だが、一人で二人の動きを阻止するのは難しく、戦いは徐々にレオ対ババルウ星人の一騎打ちに集中され、鎖分銅で首を絞められたために息絶え絶えだったアストラもしばらくすると何とかウルトラキーの元に辿り着き、レオとババルウ星人が鎖を轢き合う間隙を縫って上空に飛ぶのに成功した。

 いざ飛翔するともうウルトラキー再装着は時間の問題となった。ウルトラの星壊滅の野望を断たれたババルウ星人は自棄糞気味にアームカッターでレオに斬り掛かったが、レオは逆にこれを利用して自分に絡みついていた鎖を断ち切らせた。
 こうなると戦いは一方的だった。ババルウ星人は既に戦意喪失していたようで、レオのナックルパートは次々にその顔面にヒットし、ババルウ星人は躱すことすら忘れたかのようだった。
 程なく、上空にウルトラサインが浮かび上がった。それに安堵するレオの台詞からもウルトラキーが無事に戻されたの明らかで、後は悪魔にとどめを刺すだけとなった。完全グロッキー状態でババルウ星人が立ち上がるとレオは陽光を背後に上空に跳躍し、レオキックを胸部に決め、ババルウ星人は胸部ランプから派手に火花を噴出し、悶絶した果てに絶命した(この時のレオキック炸裂シーンは同技の代表的シーンとなっている)。
 直後、今にも地球にぶつからんとしていたところでコントロールを取り戻したウルトラの星は元の軌道に戻ったことで衝突を回避し、地球から遠ざかって行った。

 かくして地球とウルトラの国の双方に平和が戻り、再建されたウルトラタワーには再び炎が灯った。
 ダンはレオ兄弟のおかげで双方の星が救われたことを讃え、ウルトラマンキングがレオ兄弟をウルトラ兄弟に加えたいと申し出たことをゲンに告げ、ゲンは「光栄です。」としてこれを受諾した。
 その場にはゲンしかいなかったので、ダンがゲンにアストラのことを尋ねると彼はまた宇宙の旅に出たとのことで、ゲンはダンにこの事をアストラに伝えるよう促すと、ゲンは大空に向かって自分達がウルトラ兄弟になったことを叫び、告げたのだった。
 そして弟に呼び掛けるゲンの肩をダンが優しく叩いて微笑みかけ、遠くウルトラの国でウルトラの父とウルトラの母が満足気にし、それらの想いを背に宇宙を飛ぶアストラが移されたところで『ウルトラマンレオ』においても歴史的転換点を描いた第39話は終結したのだった。
 余談ながら、アストラを「殺す!」と宣言したウルトラマンが気まずい思いを抱いていないか心配ではあるが(苦笑)。


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令和二(2020)年一〇月五日 最終更新