ウルトラマンレオ全話解説

第41話 恐怖の円盤生物シリーズ! 悪魔の惑星から円盤生物が来た!

監督:深沢清澄
脚本:田口成光
円盤生物ブラックドーム登場
 冒頭、どこぞの断崖の上に立つブラック指令は前話のラスト同様に円盤生物二番手となるブラックドームを召喚していた。このとき、ブラック指令ブラックドームのことを「地球侵略二号機」と称していた。
 現実の世界における皇帝・国王・大統領・総理大臣は自らが起こす戦争を(少なくともその時点では)「侵略」と認めることはまずないので、召還するものに「侵略二号機」と呼び掛けている様は誠に潔い(←そうか?)。

 ともあれ、ブラックスターサイドでは地球侵略に余念がなかった訳だが、地球人サイドではそのことを知る由もないどころか、前話であれ程の惨禍を出しながら「円盤」という物への危機感も弱かった。
 地上ではトオルの同級生で、円盤マニア(←放映当時は決して少なくなかった)の大場(小山梓)が望遠鏡や双眼鏡を駆使して円盤を目撃しようと血眼になっていた。それはいいのだが、そこにトオルとあゆみが加わっているのは正直頂けなかった。
 殊にトオルは円盤生物の為に最後の肉親であるカオルを失って日も浅い上、父親も宇宙人に殺されている。元々感情を昂らせ易い方でもあるので、宇宙から来る者に対して拒絶的になってもおかしくない(実際、父親をツルク星人に殺された直後はカオル共々宇宙人にかなりの敵意を見せていた)。
 丸でそのことを忘れたかのように円盤マニアに付き合うトオルの姿はそれまでの展開を無視しているか?との疑問も感じた訳だが、ともあれ、程なくして彼等の望遠鏡はブラックドームの姿を捉え、三人は新発見に一様に興奮した。

 少し話は逸れるが、三人の反応も少し妙である。ウルトラシリーズの世界では毎週のように怪獣や宇宙人が現れるし、味方とはいえウルトラ兄弟も宇宙人である。つまり宇宙人の存在は現実且つ周知で、今更円盤を発見したからと云って興奮するのも変な話である。
 しかも宇宙人やそれに率いられる生物の大半は地球に害をもたらす存在で、発見したならしたで一刻も早く公的機関に通報し、迎撃態勢を取ることが重要である。それを現実の世界の円盤マニアと同じ反応を見せるのは些か世界観を軽視していないだろうか?

 ともあれ、大場は嬉しそうに何度もシャッターを切り、鏡を使って円盤にこっちに近づくよう合図を送ろうとまで言い出した。そして大場は車のドアミラーの様な鏡でブラックドームに反射光を送ると、どうもブラックドームはこれをブラック指令の発したものと誤認したらしく、トオル達の方に向かい、トオル・あゆみ・大場は周章狼狽………じゃあ、呼ぶなよな(苦笑)

 そしてとある建物の屋上に張り付いたブラックドームは体内から目と蟹鋏を出して、建物を壊し始めた。眼前の破壊活動にますます狼狽するトオルは、かかる破壊を行う者を宇宙人ではなく、円盤生物に違いないとしたのだが…………今まで何体もの敵対的宇宙人が地球に来たのを忘れたのか、コイツは?
 まあ、従来のストーリーとここまで矛盾した反応を見せるのは、トオルの持つキャラというよりは、梃入れ時におけるそれまでのストーリー展開を軽視した悪癖のようなものと見るべきだろうな(嘆息)。
 いずれにせよさしものトオル達も避難にかかり、ブラックドームは空からの押し潰しに加え、溶解泡を吐いて破壊と殺人の限りを尽くし、これを召喚した形になってしまったトオル達は(罪悪感もあると思うが)居た堪れない気持ちで呆然とする他なかった。

 騒ぎを聞きつけて大場の両親やゲンも駆け付けたが、息子達を助けんとした大場の両親は足元の床面をブラックドームに砕かれて転落。ゲンも溶解泡を噴き掛けられて苦戦していたが、傍らの鉄杭を投げつけるとこれを挟みに食らったブラックドームは眼や鋏をたたんで退散した(←弱っ………)。

 場面は変わって美山家。そこで食事中だった大場は気もそぞろで飯も咽喉を通らない様子だった。直後の咲子の説明によると、大場の両親はしばらくの入院を要するものの、それで済むレベルの負傷に留まったと見え、状況からすれば不幸中の幸いと云えた。
 咲子・いずみ・あゆみは口々に大場を元気づけんとしたが、さすがにそれで大場の気が晴れるという訳にはいかなかった。その後の一同の会話で仄めかされていたが、相手の生態はどうあれ、大場とトオルが未知との遭遇を試みた結果、円盤生物による惨禍を招いてしまった訳で、大場の両親が命を落とさずに済んだとはいえ、多くの建物が壊され、幾人もの人が傷ついたのは事実で、これに平然としているようではトオルも大場もその人格を疑われるだろう。
 実際、あゆみの難詰にトオルも力なく詫びを口にし、却ってゲン・咲子・いずみがトオルを慰め、あゆみをたしなめる程だった。そしてゲンは傷心し、黙する大場に対して円盤生物を倒すことを無言で誓うのだった。

 だが、その後もブラックドームによると思われる暴虐は続いた。ある朝、ゲンはその惨状を新聞で見ていたから、やはりMACが壊滅して後は一般人の立場で、最前線の情報に触れるのは厳しいと見られる。
 そのゲンの横をいずみが大学に出ようとしていた。何でも彼女が師事する教授が学校近くの造成地で発掘された化石を工事が進む前に調査せんと急いだため、いずみも駆り出されることとなり、ゲンは彼女を車で送っていった。

 発掘現場で先輩研究員である高木ユミ(栗原啓子)と新たな化石発掘に従事していたいずみはやがて高木と共に新種と思しき化石のようなものを発見した。
 前話を視聴した視聴者にはシルバーブルーメ同様、体を縮小させて潜伏中のブラックドームであることは一目瞭然なのだが、化石発掘に期待を抱く研究員にとっては確かに新種の化石と見たくなるところだろう。となると通学路に生き物ともつかぬ姿で寝そべっていたシルバーブルーメよりはブラックドームの方がちったぁ頭が良いのかも知れない(笑)。
 ともあれ、いずみは高木と共にブラックドームを抱えて城南大学生物研究室にやって来た。城南大学って、仮面ライダーシリーズの専売特許じゃなかったのね(笑)
 研究室入出直後、教授は不在で、高木が呼びに行ったのだが、その直後にブラックドームが本性を現したため、厄介なこととなった。なりは小さくても室内を縦横無尽に飛び、目から赤い怪光を発しつつヒット&アウェイで襲い来るブラックドームにいずみは薬瓶を投げつけて抵抗し、やがてブラックドームは室外に遁走した。
 かくしていずみの身体的な危機は去ったのだが、程なく別の危機に見舞われた。ブラックドーム遁走直後に高木が教授(幸田宗丸)を伴って研究室に戻って来たのだが、ブラックドームを化石と思い込んでいる高木はいずみが新種発見の手柄を独り占めにするために隠したと露骨に疑いの目を向け、飛んで逃げたといういずみの証言を信用しようとはせず、居た堪れなくなったいずみは研究室を飛び出した。
 幸い、玄海老師…………じゃなかった(苦笑)………教授は大人な人物で、いずみの証言は本当の可能性もあるとして一緒に姿を消した化石を探そうと促し、高木もこれに応じた。ただ、化石が生きている可能性を、1000年前の蓮の種を引き合いに出していたところがぶっ飛んではいたが(苦笑)。

 一方、証言を信じて貰えなかったいずみはその事をゲンに愚痴っていのだが、ゲンは化石発掘の造成地が、ブラックドームが姿を消したり、新聞に遭った事故が起きたりした場所に近いことから、いずみの見つけた化石を円盤生物かも知れないと推測した。
 俄かには信じられなかったいずみだったが、そこへトオル・あゆみ・大場が円盤発見時に撮影した写真の現像が出来たと持参し、写真を見たいずみは「これだわ、私を襲ったのはこれよ。」と云って、両者が一致することを証言した。
 それにしても奈良富士子さんがシリアスな表情で、「私を襲った」と云うセリフを口にされると、つい「ムフフフフフフ………。」なことを考えてしまい………(←道場主「それはお前が品性下劣なだけぢゃ。」)。
 ゴホン!ゴホン!………とにかくゲンは事態を重く見ていずみとともに研究室に戻った。教授と高木も多くの研究生を動員して化石を探していたので、ゲンは化石の正体を円盤生物であるとして学生達の避難を促した。

 幸い教授は前述した様に話の分かる人物で、化石の正体には懐疑的でも、円盤生物を危険な存在として避難を求めるゲンの要請には従ってくれた。だがそこへトオルがやってきて、大場が両親の仇を取るとしてブラックドームを探して大学構内に入り込んだことを伝えて来たので、ゲンはトオルを教授に託して大場を探して回った。
 大場の気持ちは理解出来る。だがそれは明らかに危険行為で、それをすぐにゲンに知らせたトオルの判断は正しい。ゲンは大場の名を呼びながら構内を駆け回るもさすがに簡単には見つからなかった。
 だがしばらくすると大場とゲンはブラックドームの発する異音を聞き付けたことで、大場がブラックドームを発見し、直後にゲンも駆け付けた。勿論ゲンはすぐに逃げるよう大場を促したのだが、自分の手で仇を討ちたい大場は応じない。そうこうする内にブラックドームは2人に襲い掛かり、ゲンが懐中電灯を投げつけたことで巨大化し、こうなると校内にいた全員が泡食って避難にかかった。

 大場を連れて避難に掛かっていたゲンは大場が気絶していたこともあってレオに変身。一方ブラックドームは対峙するやあたかも奇襲するかのように溶解泡をレオに噴射した。
 忽ち泡塗れになったレオをブラックドームは上空から鋏や圧し掛かりで攻め、レオは一方的に攻められているかに見えたが、どうやらこれは前話同様、大場が救助されるまでの時間稼ぎだったようで、トオルと教授が大場を助けたに向かうとレオは空中に飛び上がって体を回転させるハイスピンで全身にまとわりついた溶解泡を振り払った。
 この間にトオルと教授が大場を助けたの見届けたレオは前話でシルバーブルーメを倒したスパーク光線を放った。光線はブラックドームの体に穴を空け、そこから溶解泡の漏れたブラックドームは行動不能に陥り、そこにレオはシューティングビームを放ってその息の根を止めた。  円盤生物とは、体形が違い過ぎることから肉弾戦での好勝負が期待出来ない分、贅沢にも2種類の光線技を披露したのだろうか?(笑)

 ともあれ、レオが勝利を収めたころには大場も意識を取り戻しており、トオル・大場・教授の三人は満面の笑みでレオの勝利を讃えた。
 そしてラストシーン。大場の両親は無事退院し、大場は円盤ではなく星の観察をトオルとあゆみに呼び掛けて帰途に就いた。大場一家を見送った咲子はそのままドライブに行こうとしたトオルとあゆみに宿題を、現に庭掃除を命じるなどして、これまでの同作品ではなかなか描かれなかったほのぼの日常を描写していたのだが、その頃ブラック指令は既に第三の刺客・円盤生物アブソーバを召喚していた(まあ、このワンパタが延々と続くのだが………)。


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令和二(2020)年一〇月五日 最終更新