ウルトラマンレオ全話解説

第42話 恐怖の円盤生物シリーズ! レオが危ない!暗殺者は円盤生物

監督:前田勲
脚本:阿井文瓶
円盤生物アブゾーバ登場
 冒頭、円盤生物シリーズ恒例の如く、円盤生物地球侵略三番手のアブゾーバブラック指令の召還でブラックスターを発って地球に向かった。
 余談だが、約3ヶ月にわたって地球に襲来してきた円盤生物の中には、「円盤」とは言い難い体格の物も多いのだが、シルバータイタン個人的にはこのアブゾーバシルバーブルーメの2体が円盤然としていると思っている。
 そのアブゾーバが地球に来星するや、夜空は赤黒く変じ、軽度の地震が大地を襲った。美山家にてゲンはこの異変をブラックスターの仕業と断じ、それを聞いたトオルもブラックスター及び円盤生物への敵意を露わにし、円盤生物を探しに行く事をゲンに進言した。
 幸いと云うのも変だが、咲子といずみがトオルを制止し、程なく地震も治まって、ゲンも相手の行動が様子見に過ぎないとしたため、夜半の出動は見送られた。

 翌朝、円盤生物の姿を求めて山中に入ったゲンとトオルは一人の少年下妻英行(善福和則)が三人の少年にいじめられているのに遭遇した。勿論ゲンは止めに入ったのだが、英行がいじめられた原因は、少年達がパチンコで射ち落した雀を英行に奪われたことを根に持ったものだった。
 英行は反撃もせず、泣き言も言わず、ただ掌中の雀を庇い続け、ゲンは浦島太郎宜しく、チューインガムと引き換えに少年達の英行への敵意を放棄させたのだったが、英行は礼も言わず、ゲン・トオルが後からついてくるのにも強い拒絶を示した。

 英行が排他的な態度を取るのは、山中の廃屋に人間の虐待によって傷ついた動物達を治療し、匿っている為で、動物愛護の精神は見上げたものだが、それが昂じてすっかり人間不信に陥っていた。
 普通なら目くじらを立てる話でもないのだが、ゲンはウルトラマンの特殊能力で廃屋にいくつもの生物反応が有るのを察知し、英行に円盤生物を匿っていないかを尋ねたが、英行はそれを否定し、あくまでゲン達の追随を許さなかった。

 助けてもらった礼も示さず、棒切れを振り回してまで拒否的な態度を示す英行にトオルがキレかけたが、ゲンはトオルを宥めて引き返した。
 だが、英行が山羊、犬、鳥(鶏・アヒル)、ウサギ等の負傷した多くの動物達を匿うその小屋の中には、案の定、縮小化したアブゾーバがいた。英行はアブゾーバの正体など一顧だにせず、他の生き物同様、ただただ動物達を人間の魔手から匿うことに腐心していた。
 しかし、これはブラック指令による巧みな潜伏で、ゲンの追跡をかわしたことにほくそ笑んだブラック指令が水晶球を発動させるや、アブゾーバは(単に利用していたという認識しかないとは思うが)恩を仇で返す様に触手を延ばすと英行の生体エネルギーを名前の通り吸収した(英語で「吸収する」はabsorbeで、アブゾーバ (absorber)は「吸収するもの」、「吸収装置」となる)。

 幸い、英行が命を落とすことは無かったが、窓をぶち破ってブラック指令の元に飛来したアブゾーバは命令を受けて上空に飛ぶと巨大化し、ビルなどを破壊して廻った。この辺り、「地球侵略」を掲げつつもやっていることは単なる破壊的暴動で、初期の通り魔的宇宙人と相通ずる。「侵略」が目的であるなら、相手の迎撃能力や物資補給路線を遮断する破壊は分かるが、取り敢えず目に付く建物から手当たり次第に破壊する動きは只の暴れん坊にしか映らないところが泣ける。ま、現実に存在したらと仮定すると、人間でも計算無しに衝動的な破壊を繰り返す輩が一番厄介な訳だが………。

 既にMACは亡く、円盤生物迎撃は防衛軍(現実に即するなら自衛隊)が担い、数機の戦闘機、数台の戦車がアブゾーバを迎え撃ったが、当然の如く敵ではなかった。
 彼等の攻撃にアブゾーバがダメージを受けた様子はなく、逆にアブゾーバが攻撃するや戦闘機や戦車は次々に爆破・炎上していった。
 やがて破壊に満足したのか、空高く浮上したアブゾーバは触手を体内に引っ込めて移動。石油コンビナート上空に来ると石油タンクに張り付き、触手とは異なる透明なスポイト状の筒を出すとタンクの中の石油を吸収した。そして質の悪いことに、充分な石油を吸収すると、用はないとばかりに地上に火弾を放ち、残された石油施設を火の海にした。

 アブゾーバによるこれらの暴虐を地上から見上げるしかないゲンとトオルだったが、ゲンはアブゾーバが暴れた地点をチェックしており、その行動はある地点を中心としていることを察知した。
 展開からバレバレだが、「ある地点」とは英行が動物達を匿っている山小屋である。翌朝(←夜即座の出動はいずみに止められた)ゲンとトオルは英行の山小屋に向かわんとして再度山中に入った。
 だが、ゲンとトオルは英行が仕掛けた鳴子に引っ掛かって潜入に失敗する体たらく(苦笑)。英行の態度は相変わらず拒否的で、英行とトオルは円盤生物を巡って「いる・いない」、「調べさせろ・断る」で対立。そして人間を破壊者としか見做さない英行は山小屋の中に円盤生物がいたとしても絶対に引き渡さないという態度を取った為、再度トオルは激高した。
 勿論、この手の手合いは押し問答的に出ても頑なになる一方である。ゲンはトオルを宥め、山小屋を離れた振りをした。そして油断した英行がアブゾーバを抱いている現場を押さえ、トオルと英行は取っ組み合いとなった。
 ところがしばらくすると英行は抵抗を辞めた。自分が暴れることで背後にいるカエルが傷つくのを恐れたためだった。これを見ていたゲンは再度トオルを宥め、英行に、暴れる行為が周囲の動物を傷つけるのを恐れるなら、怪獣や円盤生物の乱暴狼藉もまた周囲に多大な害をもたらすことが分かる筈だと諭した

 実に上手い説得である。

 英行は決して悪童ではなく、傷ついた動物を匿い、可愛がると云う優しさを持つ少年と云える。ただ、その想いや使命感が昂じて頑迷になっている。かように頑なになっている人間は『北風と太陽』の旅人に等しく、強引に事を運ぼうとすればするほど外套をがっちり纏って放さなくなる。
 その点、相手が抱く強い想いを尊重しつつ、それに即して危険な存在を放置出来ない旨をじわじわ諭す方法は効果的で、初期の感情に突き動されがちだったゲンには出来なかった接し方でもあった。
 ゲンの説得に対し英行はアブゾーバを殺さないか?と問いかけ、しばし逡巡したゲンだったが、英行の懇願を容れ、アブゾーバを匿ったケースを開いたが、アブゾーバは紫色の毒ガスを吐き出しつつ襲い掛かってきた!

 不意打ちを受け、モロにガスを吸ったゲンは悶絶し、これを見たトオルは傍らにあった角材を振り回してアブゾーバを攻撃した。しばし呆然としていた英行は前約を反故にされたことを怒り、トオルを取り押さえに掛かった。
 ガスを吐かれてゲンが悶絶するのを見て怒りと自衛の為に攻撃に出たトオルを責めることは出来ないし、かといって、「殺さない。」という約束を(結果的に)反故にされようとしていることを見過ごせない英行の気持ちも分かるから何ともやるせない。
 ただ、英行をエネルギー源にして体の良い隠れ場所提供者としか見ていないアブゾーバは英行の気持ちなどお構いなしに炎を吐き出して襲撃し、今まで守ってきた動物達が炎に包まれようとしているに及び、ゲンもトオルも英行もまずは動物達を逃がすことに専念した。

 だがアブゾーバは巨大化し、山小屋を押し潰さんとするに及ぶとゲン達は山小屋から脱出せざるを得ず、その時咄嗟にトオルが持ち出した鳥籠には前述の負傷した雀が入っていた。
 必死こいて逃げる最中、トオルは鳥籠を落としてしまい、英行は雀を助けんとしたが、アブゾーバが次々と吐く火弾によって山肌は次々と炎に覆われ、ゲンとトオルも英行を止めざるを得なかった。
 そして到頭尽力及ばず鳥籠は完全に炎の中に没し、英行は滂沱に暮れ、アブゾーバに敵意を抱き、足元の石を投げつけ、トオルもこれに追随した。勿論ゲンは二人を止めたが、二人は聞かず、英行はゲンにアブゾーバをやっつけてくれと懇願まで始めた。

 残念ながらと云おうか、当然の事ながらと云おうか、投石がアブゾーバに然したるダメージを与えられる筈もなく、アブゾーバは触手を伸ばしつつ三人に圧し掛かり、トオルと英行は触手に絡め取られてしまった。
 ゲンは二人が完全に気絶しているのを見届けて(苦笑)レオに変身した。

 レオは素早く手刀打ちでアブゾーバの触手を断ち切るとトオル・英行を地面に安置した。だが、そのためにレオが背を向けた隙を突いてアブゾーバは触手をレオの首に伸ばすとこれを締め上げた。
 だが、締め付ける力と吊り上げる力をそこそこあるかに見えた触手も、耐久力には恵まれなかった様で、手刀打ち一閃でレオは束縛を解き、間合いを取るとレオキックを炸裂させた。それに対しアブゾーバは触手になかった耐久力が頭部にはあった様で、レオキックを食らいながら怯むことなく、火炎放射を吐いてレオの注意をそちらに向けつつ足下にこっそり触手を伸ばし、両者を縛って転倒させ、更に火炎を浴びせた。

 (プロ野球ニュースっぽく)しかしアブゾーバの反撃もここまで。何とか触手を振り解いたレオは再度間合いを取るとタイマーショットを放って、レオキックにすら耐えたアブゾーバを木端微塵に粉砕し、勝利した。ウルトラマンAにも言えることだが、ウルトラの命の源であるカラータイマーを起点とするゆえにタイマーショットは数ある光線技の中でも強い部類に入るのかも知れない。

 かくしてアブゾーバの脅威は去ったが、英行の傷心は深刻だった。すっかり意気消沈し、いずみが贈ろうとしたカナリアも拒否し、自分が「やっつけて。」と云った為にアブゾーバが命を落としたことに罪悪感を抱いていた。
 ゲンもトオルも英行が悪い訳じゃないことを説いたが、英行がそれを入れる様子はなく、それに対して咲子は一人にしておくべき、と告げた。そうは言われても放っておくことに逡巡するゲンだったが、咲子は英行の抱えた悲しみを、彼が成長に必要な超えるべき障害とした。作中のストーリーを経て確かに人間的な成長を遂げたゲンも咲子を前にしてはまだまだ成長途上であることを露わにされた訳だが、この辺り、子育て経験があるということが大きいということだろうか。

 ゲンは去り行く英行の背中を見ながら顔を強張らせていたが、それは次々と襲来する円盤生物に対する怒りを新たにしているようであり、その怒りに挑戦するかのようにブラック指令はブラックスターから四番手となる円盤生物デモスを召喚していた。


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令和二(2020)年一〇月五日 最終更新