ウルトラマンレオ全話解説

第43話 恐怖の円盤生物シリーズ! 挑戦!吸血円盤の恐怖

監督:前田勲
脚本:若槻文三
円盤生物デモス登場
 冒頭、例によってブラック指令の召還に応じてブラックスターから四番目の円盤生物デモスが飛び立った。第38話にてモロボシ・ダンの回想に名前だけ出て来た悪魔の星・デモス一等星とは…………関係ないよな(苦笑)。

 他の円盤生物同様、小型円盤サイズにて地球に降り立ったデモスは初期の通り魔的宇宙人同様、地球人を殺害して回った。その際に大きさはそのままで地球上の生物で言えばクモヒトデを大きくしたような体型となり、人間に絡み付いて襲い掛かり、殺害するのだった。
 これまでの円盤生物同様、デモスブラック指令からウルトラマンレオ抹殺命令を受けており、殺人行為はおヽとりゲンが居候する美山家近辺で行われたものだった。その美山家では夕飯後の一家団欒の時を過ごしていたが、周囲にはパトカーのサイレンが鳴り響き、惨劇の予兆を匂わせていた。

 デモスによる殺人事件は八件に及び、城北署の調べたところ、いずれの遺体にも一滴の血液も残っていない状態だった。
 程なく、二人の刑事(江幡高志、陶隆)が美山家を訪れた。というのも、刑事達が示した図によると事件が起きたのはいずれも半径2kmの円周上で、円の中心が美山家だった。成程、手掛かりを求めて調べに来るのは頷ける。
 刑事達は厳重な戸締りと、何か変わったことがあった際にはすぐ通報することを告げるとあっさり撤収したが、刑事達の説明にゲンとトオルの思う処は一つだった。ゲンはデモスによる襲撃をレオに対する「挑戦」と受け止め、その「挑戦」を受けつつ、その為に罪のない人々を巻き込むブラックスターのやり方に怒りを燃やし、ブラックスターが存するであろう夜空を見上げるのであった。

 翌朝、ゲンは殺害現場の一つを訪れ、昨夜の刑事を訪ねた。刑事達は美山家を中心に半径2kmの円内を夜通し洗っていたが、何の手掛かりも得られていなかった。そんな会話の際、刑事の一人がゲンを「おヽとりさん。」と呼んでいたが、美山家を訪れた一刑事が寄宿人であるゲンの名前を(わざわざ聞き込んだ様子もないのに)知っていたのは、もしかしたらMAC隊員であるゲンを知っていたのかも知れない(殺人事件現場に普通は一般人を立ち入らせないだろうし)。
 ま、直接の言及はなく、それ以上の会話も無かったので、確証はないが、全滅したとはいえ、地球人的にエリート集団であるMAC隊員の生き残りであるゲンが官憲に顔が効き、宇宙からの襲撃者と戦ってきた経験から協力を求められるシーンは有って然るべきと思うので、ここはもう少し両者が親しい描写があってよかったと思う(第13話では、ゲンは二人の警察官と共にバイブ星人を追っていた)。

 ともあれ、全く手掛かりを見せないデモスだったが、姿を消した訳ではなかった。それどころか間近に潜伏し続け、刑事について警察署内のごみ箱に潜んだ。
 一方で一人の地球人を操り、ゲンの前に出させると(関係ないが、場所は第11話でマイティ松本がケットル星人に殺された俑道)、ゲンに降伏勧告を行わせた。勧告によるとレオがブラックスターへの抵抗を続ければデモスがレオの周囲の人々を殺戮し続けると云うもので、今夜にも昨夜以上に人々を殺すとした。
 まあ、降伏勧告自体は試みる価値のある内容と行為ではあった(実際、後にゲンは街中にいることで関係ない人々が巻き添えを食うことを厭う様子を見せていた)が、話の途中にウルトラマンレオの強さに言及して、暗にレオを恐れていることを仄めかすようでは勧告としては弱腰だったし、降伏条件が「我々の処刑台に立つ」では交渉もあったものではなかろう(苦笑)。
 ともあれ、初めてブラックスター側と言葉を交わし、直に円盤生物の名を聞いたゲンは激昂し、男に掴み掛ると取っ組み合いとなり、男にブラックスターに関する情報を白状させんとしたが、突如それまで重病人並みに悪かった男の顔色が普通になると、男はゲンに掴み掛られていることや、自分が気付けばそこにいたことを訝しがりながら去っていった。
 詳しい言及はなかったが、彼がデモスのメッセンジャーとして一時的に操られていたのは明白だった。

 その頃、デモスの4体に分離し、(マスターである1体に対し、スレーブとなる3体は「デモスQ」と云う)は城北署捜査本部を初め、街の各所に潜伏した。
 ゲンは神出鬼没のデモスが自分の周囲の人々に加害するのを恐れて置手紙を残して美山家を去った。勿論置手紙を見たトオルが「はいそうですか、仕方ないね。」となる筈なく、泣きながらゲンの姿を求めて方々を訪ね歩いた。
 しかし尽力空しく、トオルにゲンを見つけることは出来ず、一方のデモスQも無関係な人々に牙を向け、刑事の一人が殺害された。カーラジオからの報道で科学捜査研究所がデモスQの焼却処分を進めていることを知ったゲンは城北署に通報して、自分が行くまで焼却を待って欲しいとした。
 この要請は結局間に合わなかったのだが、立場的に一市民に過ぎないゲンの要請に警察が従ったのだから、明確な言及がなかったものの、やはり元MAC隊員の肩書は一定の発言力を持っていたと見られる。

 ともあれ、火炎放射と消火剤を浴びせられる形になったデモスは各地に潜んだデモスQを召喚し、周章狼狽する警察官達を尻目に集合合体した。狼狽しつつも拳銃による一斉射撃を行った警察は頑張った方ではあったが、MACの不遇を想えば、警察に円盤生物を倒せないは仕方なかったといえよう(泣笑)。
 巨大化したデモスは人間を完全に溶かし切る緑色の溶解泡を噴出し、警官2名が犠牲となった。更にそれまでの円盤生物同様、ビルの上に圧し掛かって、これを圧壊、他にも溶解泡でビルを溶かして壊すなど、破壊と暴虐の限りを尽くした。
 さすがにこれほどの大暴れをしてはその存在は誰の目にも明らかになり、ゲンは逃げ惑う町の人々を縫うようにして駆け付けた。ゲンは置手紙を見て彼を探し追ってきたトオルとあゆみが声を掛けるのもガン無視してデモスの元に向かった(←本当に気付かなかっただけの可能性も充分にある)。

 デモスの余りな傍若無人振りに怒り心頭のゲンはレオに変身。空中に浮遊したデモスの吐く溶解泡を躱し、隙を見ては取り押さえに掛かった。奇妙な動きと、時折噴出される溶解泡のためにヒット&アウェイを強いられたレオだったが、シルバーブルーメを倒し、対ブラックドーム戦でも繋ぎ技として使ったスパーク光線デモスを怯ませると、次いで空高く飛び上がって放ったウルトラショット(別名・ジャンプシュート)で勝利をものにした。

 デモスの体は苦しみから逃れる様に分離してしばし空中を漂っていたが、やがて燃え尽きて絶命。デモスによる無差別殺戮の脅威が去ったことでゲンはトオル、美山一家の元へ戻ったのだった。
 丸で置手紙のことなどなかったかのように満面の笑みで駆け寄るゲンと、泣いて詰りながらもやはり満面の笑顔で再会を喜ぶトオル。ゲンは訳を告げようとしたが、トオルはそれを拒絶してただただゲンにしがみついて思いの丈をぶつけ、ゲンもそれ以上は語らなかった。傍で見ているあゆみの笑顔からして、ブラックスターの脅威は去らずとも、両者が共にあることが何よりと語られているようだった。

 ただ、ウルトラマンレオが狙われ、その周囲が脅威に曝されている状況に変わりはなく、ナレーションのためにセリフがカットされていたが、ラストにはやはりブラック指令の召還で5番目の円盤生物ブラックガロンがブラックスターを発っていた。


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令和二(2020)年一〇月五日 最終更新