ウルトラマンレオ全話解説

第44話 恐怖の円盤生物シリーズ! 地獄から来た流れ星!

監督:外山徹
脚本:田口成光
円盤生物ブラックガロン登場
 冒頭、例によって、ブラック指令が新たな円盤生物を召喚し、ブラックガロンがブラックスターを発っていた。ちなみにブラック指令は円盤生物を召喚する度に「●番目の円盤生物」と呼び掛けているのだが、それって、円盤生物のウルトラマンレオに対する敗北数=弱さを誇示(?)している気がする(苦笑)。

 その頃、地球上ではトオルが一つの事件に遭遇していた。中森健二(高山亮一)なる少年と取っ組み合いの喧嘩になっていたのだが、その際に健二の腕時計が岩にぶつかったことで破損してしまったのだった。
 如何にもおぼっちゃんという雰囲気を漂わせる健二の時計は、果たして彼の父親が欧州にて購入した高級品で、とてもトオルに弁償出来る代物ではなかった。「どうするんだ!?」と詰め寄る健二だったが、当然どうすることも出来ないトオルはそれを振り切るように健二を突き飛ばして走り去った。
 バレバレの展開だが、その夜、美山家に健二が父・大介(佐原健二)を伴ってやって来た。この中森大介を演じた佐原健二氏がどういう方かは説明しません(笑)。このようなサイトを閲覧される方でなくとも、特撮ファン、取り分けウルトラシリーズの好きな方々には説明の必要ないでしょうし(笑)。

 話を戻すと、大介はトオルの保護者であるゲンに抗議に来ていた。大介は抗議したものの弁償を求める訳ではなく、腕時計が父子にとって如何に大切な物かを述べ、トオルに二度とこのようなことをさせないよう指導するよう求めただけで帰っていった。
 その折に、トオルが時計を壊した理由を「やっかみ半分で」と云っていた。実際、あゆみの語った回想シーンでは健二が腕時計の高級さと、それを購入出来る父親の存在を自慢した挙句、トオル・あゆみ共に既に父親がいないことを(多分悪気はないと思うが)憐れむような態度を取ったことにトオルが激昂したのが喧嘩の原因だった。

 確かに健二の態度も良くないが、これは暴力を先に振るったトオルが悪い。健二は暴力に関しては殆ど反撃もしていない。時計を別に考えるなら、何発を殴られた健二の被害も無視出来ない。「先に手を出した。」という非に関してはトオルに弁解の余地は無い。
 勿論、中森家の在り様も問題だ。悪気はなかったと思われるが健二の自慢丸出しの態度は誰が見ても気分の良いものではない。子供の誕生日に高級品をプレゼントするのは悪いことではないが、高級品を買い与えるなら買い与えるで、それが元で対人関係のトラブルを起こしたり、トラブルに遭うことで大切なものが破損したり、と云ったことをさせない様に教育するのが大介の務めであるが、恐らく父子共々その様な考えは無かったのだろう。
 咲子・いずみによると、ゲンが帰宅するより先に美山家にやって来た大介はトオルの言い分に全く耳を貸さず、言いたいことだけを言ったらしい。まあ、無茶振りをすることなく即引き上げたから却って反論の機会が無かったともとれるが。

 ともあれ、トオルの保護者を自認するゲンは、トオルの父親になり切れないことに苦悩し、トオルもまた一方的に悪者にされたことに傷心していた。確かに健二の自慢たらたらに対して、父親がいただけでも状況は違ったかもしれない。
 そんな状況で亡父を惜しんで夜空を眺めていたトオルが流れ星を見つけた…………と思ったら、それは口腔から火花を噴きながら飛来したブラックガロンだった!
 大地に降り立ったブラックガロンは体内から両手両足を出して二束で大地に立った。その姿はさながらウルトラマンレオ版ガメ●…………これのどこが「円盤」だ!?
 両手両足を引っ込めての飛行時も、目のある頭部を先頭に真っ直ぐに飛んでいて、回転飛行してもいなかった(厳密には後程回転飛行をしていたが、攻撃・牽制の意味合いの方が強かった)から、まだガメ●の方が(飛行時に限っては)円盤生物と云えるかも知れない(苦笑)

 ともあれ、トオルはブラックガロンになぎ倒された公園遊具の下敷きになり、身動きが取れなくなった。幸い大した怪我はない様で、助けを求めると即座にゲンが駆け付けた。ブラックガロンが迫る中、間一髪でトオルを助け出したゲンはトオルと共に夜の公園を逃げ惑った。
 ブラックガロンは巨体による踏み潰しに加えて、長い舌を鞭の如く振るって破壊活動を始めた。ゲンは自分が囮になっている隙に逃げるようトオルを促すと、トオルの元を離れ、レオに変身した。

 久々の人型対人型の対決で戦い易かったのか、肉弾戦になると明らかにレオに分があり、鈍重体格のブラックガロンは不利を強いられると忽ち両手両足を引っ込め、飛行体となり、両手両足から火花を散らし、その後も二足歩行体になったり、飛行体になったりしてレオを翻弄したブラックガロンブラック指令の命令を受けて飛び去ったのだった。

 ゲンとトオルの怪我は幸い家庭で手当て出来る程度の物だった。、もっとも、治療のエキスパートである咲子が手当てした上で、翌日病院に行くことを進めていたから、見た目よりは痛手かもしれなかったが。
 そして怪我より問題なのは円盤生物で、翌朝、トオルとあゆみは健二と数人の少年が珍しい隕石を発見したと言って騒いでいるのを見て、円盤生物に違いないと見た。
 健二は高名な研究者である父・大介に鑑定してもらおうと考え、それを危険な円盤生物として警告してきたトオルを、(前日のことも有ると思われるが)自分の持ち物にケチをつけに来たと決めて掛かった。
 直後に、あゆみに呼ばれたゲンが駆け寄ってくるのを見た健二は、「ちぇっ、大人まで呼んで来て………パパに言いつけてやろう。」と悪態をついて走り去ってしまった‥‥……。自己発言の矛盾に気付い取らんな、このクソガキは(苦笑)。

 トオルの証言を受け、ゲンは財団法人中森鉱物研究所を訪れた。
 まあ、鉱物研究者である父を自慢に想う健二の立場に立てば、珍しいものをまずは鉱物と思いたくなる気持ちは分からなくもない。
 ゲンの訪問を拒絶しなかったものの、健二から今朝もトオルにいじめられたと告げられていた大介は開口一番ゲンの教育を罵った。文句をつけられただけで「いじめられた」とする健二の被害妄想も凄いが、それをそのまま受け入れる大介も大介である。
 それに対してゲンは、子供同士の喧嘩の問題ではなく、隕石と見られる物体が円盤生物という危険物で、早急に処分する必要があることを告げた。
 鉱物研究者である大介はブツが隕石に違いないと断じ、ゲンの訴えを否定したが、ゲンが冗談や難癖付で言っているのではないことは理解出来た様で、ブツが生物か隕石か実験しようと述べた。

 大介はブツをハンマーで殴りつけたり、バーナーで焼いたりして、その無反応を指して生物でないと断じた。尚も追いすがろうとするゲンだったが、大介は「まさか腕時計の一件を根に持っているのでは?」とまで言い出し、多忙に託けてゲンに退去を促した。う〜ん……この子にして、この親ありか……(苦笑)。
 ともあれ、大介を説得出来ず、苦悩しながらほっつき歩くゲンだったが、咲子から彼女の亡父の例(頑固者で、誰もが匙を投げた患者を四日間徹夜して直した人物だった)を引き合いに出した激励を受け、円盤生物から地球を守れるのは自分しかいない、と自認し直して再度中森鉱物研究所に向かった。

 だがその頃、ゲンの不安が的中し、研究所ではブラックガロンが目覚めていた。折悪しく健二が父を訪ねて研究室に入って来たところを襲われた。
 直後、ゲンは中森鉱物研究所に舞い戻ったのだが、守衛はこれを阻止せんとし(←勿論大介の指示に従ったものである)、押し問答となったが、そこに助けを求める健二の声が聞こえてきた。
 勿論ゲンと守衛は共に健二の元に向かったのだが、一足早く大介が現れ、周囲の物を投げつけて必死に健二を庇いつつ抵抗した。駆け付けたゲンは更に二人を庇い、守衛に父子の脱出を託した。この間もブラックガロンは火花を吐き続け、薬品や書面に次々と引火した。
 やがて中森鉱物研究所は爆破・炎上し、中からはブラック指令の命を受けて巨大化・二足歩行形体化したブラックガロンとレオが現れた。
ブラックガロンは見た目通り腕力と耐久力には優れていたようだが、バランスが悪いのか、レオにころころと投げ飛ばされ続けた(円盤生物は概して軽量級で、ブラックガロンはその中では重い方だが、それでも2万3千t)。たまりかねて飛行体となって火花を散らしてレオを攻撃したが、レオはこれを取り押さえて二足歩行体に戻すとシューティングビームを両腕に浴びせてブラックガロンの炎を封じるとマウント・ポジションを奪ってパンチの連打を浴びせた。

 かように、肉弾戦においては明らかにレオに分があった。これに対してブラックガロンは切り札として長舌を伸すとレオを締め上げただけでなく、仰向け状態でそのまま舌を伸ばす力だけでレオを宙吊りにする離れ業を見せた。
 何とかこれを振り解いたレオだったが、さすがに首を締め上げられたダメージは小さくなく、苦しんでいるところにブラックガロンは再度舌を伸ばして攻撃せんとしたが、レオはこれを掴むと逆にこれを引っ張ってブラックガロンを翻弄。最後にはハンドスライサーで舌を切断すると、これが致命傷となってブラックガロンは絶命した…………ショッカー怪人イモリゲスみたいな奴だな(苦笑)

 研究所は破壊されたものの、憎き円盤生物が倒されたことで所員達は喝采の声を上げていたが、中森父子の表情は晴れなかった。研究所が壊されたショックかと思いきや、さにあらず。状況からゲンが死んでしまったと思い込んでいて、大介は自分がゲンを信じなかったことでゲンが犠牲になったことを悔やみ、健二もまたゲンが自分を助けてくれたことを父に告げた。
 ふむ、思い込みや自己主張が強いだけで、二人とも決して悪い人ではなかったのね。さすがに佐原氏に嫌な奴一辺倒の役は振らなかったか(笑)
 まあ、触れるまでもないことだが、ゲンが死んでいる筈もなく、自分達との諍いでゲンが命を落としたことを「許されないこと。」と猛省していた中森父子は直後に駆け寄ってくるゲンに気付き、その無事を喜んだ。  大介は自分達の命を助けてくれた礼を述べたが、ゲンは礼ならあゆみの母にするべしとし、彼女が自分に為すべきことを示してくれたと述懐した。大介はそんなゲンを「ウルトラマンレオの様だ。」と述べ、ゲンがそれに笑顔を返したことで改めて両者は過去の遺恨を解消したのだった。
 だが次の瞬間、ゲンの笑顔は苦痛に歪んだ。と云っても深刻な話ではなく、場面が美山家に移り、咲子による手当てが傷に染みていただけだった(笑)。それを見るトオル・いずみ・あゆみは笑い続けていたが、痛みに苦しむゲンを笑ったものではなく、咲子に頭の上がらない様をからかったものだろう。

 そしてラストシーン。例によってブラック指令は六番手となる円盤生物ブリザードを召喚するのだが、さすがに五連敗を喫したとあっては、ブラック指令にも悔しさが滲み出ていたのだった。


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令和二(2020)年一〇月五日 最終更新