ウルトラマンレオ全話解説

第45話 恐怖の円盤生物シリーズ! まぼろしの少女

監督:外山徹
脚本:阿井文瓶
円盤生物ブリザード登場
 冒頭は例によってブラック指令が新たな円盤生物を召喚する所から始まるのだが、ブラック指令はレオによる連戦連敗に加えて、一般地球人の間に円盤生物を調査し始めたことを「生意気」とし、そんな人間達とウルトラマンレオの両方を殺し得る円盤生物を寄越せと命じた。
 う〜ん………一番手のシルバーブルーメからしてMACを全滅させ、一般ピープルにも多くの犠牲者が出たのだから、そんな侵略者を調査し始めたことを「生意気」と云ってもなぁ………(苦笑)。
 ともあれ、この召喚命令に応じたのは円盤生物ブリザードだった。

 場面は変わって宇宙生物研究所。そこでは科学者達が円盤生物への対策会議を開いていた。調査によって、これまで登場した円盤生物の簡単な特徴と、これらがブラックスターからやって来たものであることが既に判明していたが、具体的な対策が立案されるには及ばなかった。
 ちなみに科学者達の中心となっているのは仁科博士(鹿島信哉)で、第3話にてツルク星人に斬殺されたMAC隊員にそっくりである(笑)。

 そんな中、ブリザードが地球に侵入し、着地に伴う地響きをゲンとトオルはブラックスターからの襲来と察知し、夜中に咲子が止めるにもかかわらず鈍い光を明滅させる山中に向かわんとした。
 だが、その途次、ゲンとトオルは陸橋上にフランス人形を抱いた一人の少女(池田恭子)が立っているの気付いた。真夜中に一人無表情で人形を抱いて歩く少女を訝しがるゲンとトオルだったが、直後に背後の上空に飛ぶブリザードに気付き、二人は少女を捨ておいてこれを追った。が、さすがに徒歩では追い切れず、ブリザードは山岳地帯に身を隠し、湖中に潜むとその湖面は次第に凍り付いて行った。

 追跡を断念したゲンは最前の少女を改めて訝しがったのだが、トオルは彼女がカオルと同じ年ぐらいと云うのがいの一番に気になっていた。だがそんな思いは一つの悲鳴で断ち切られた。
 ゲンとトオルが悲鳴の起きた先に駆け付けると、凍死した中年男性を囲んでその家族が悲嘆に暮れていた。ナレーションによると被害者は宇宙生物研究所で対円盤生物会議に参加していた科学者で、同夜に何人もの科学者が同様にして殺害された。

 翌日、トオルの足下にフランス人形が飛んできた。人形は昨夜の少女が抱いていたもので、同時に少女を責め立てる声も飛んできた。トオルが駆けつけると果たして昨夜の少女が数人の少年達に虐められていた。
 どうやらクソガキどもは少女が何も喋らないことを怪しんで、それが昂じて敵意にエスカレートしたようだったが、傍目に観ていて気分の悪くなる行為を集団でやらかす餓鬼はフィクションでも、リアルでもどうにかならんものか………ともあれ、クソガキどもはトオルの静止に応じた訳でもないが、その場を去っていった。
 改めてトオルは人形を渡して涙を流す彼女を介抱し、昨夜のことを聞き出さんとしたのだが、相変わらず彼女は何も喋らない。さすがにトオルも苛立ちを隠せなかったが、自分がトオルと名乗るとようやく彼女はその名を口にし、自分の名前が眉子であることを名乗った。

 夕暮れの川べりを二人は手を繋いで歩き、トオルは眉子をゲンや咲子に引き合わそうとしたが、眉子は宅内に入ることを拒絶した。トオルは先に事情を話さんとして眉子の手を離すと一人宅内に入らんとしたのだが、その合間にフランス人形からは行動を開始せよとのブラック指令の声が流れていた。
 一方、トオルに促されて出て来たゲンは一目見て眉子をブラックスターに関連するものとみなし、いきなり「お前」呼ばわりで訊問に出んとしたため眉子は遁走した。それを追わんとしたゲンだったが、彼女を只の迷子と見ていたトオルがゲンを押し留めた。
 ゲンはゲンで眉子をブラックスターだと言い張り、トオルはトオルで眉子を只の迷子と言い張るのだが、いずれも根拠がないから相手を納得させることが出来ず、そうこうしている間に眉子は完全に遁走した。
 トオルが眉子の素性以前に、彼女に亡き妹・カオルの影を重ねているのは明らかで、翌朝の朝食時になってもトオルは項垂れていた。そしてゲンといずみがブラックスターによる科学者殺害の話をするのにも激昂しながら眉子は無関係であると口を挟む始末だった。

 結局、トオルはゲンとは別行動で眉子を探すとしながらも二人は言い合いをしつつ仁科博士宅前まで来た。博士宅には一人の警察官(鈴木正幸)が警備していた。
 警官はゲンやトオルとも顔見知り(やはりMAC隊員としての前職が効いているのだろうか?)で、特撮番組によく出てくる子供の怪獣出現情報を冷たく否定する輩とは正反対な愛想の良い人物だった。まあ、演じていたのが宇宙刑事シリーズ3作品にて人の良い三枚目・大山小次郎を演じた鈴木正幸氏だもんなあ(笑)。当時29歳の鈴木氏は宇宙刑事シリーズでの三枚目が信じられないイケメン警官振りだったが、それでいて独特の津軽訛りが人懐っこさを醸し出していた。
 ともあれ、警護中の警官は仁科宅に特に異常はないとしていたが、その証言に7歳ぐらいの女の子が通りかかったというものがあり、これはゲンにもトオルにも捨て置けない台詞で、二人は即座に仁科邸に向かった。
 殊にトオルはゲンを振り切るように仁科邸に入り、眉子の名を呼んだが、タイミング悪く既に仁科博士はフランス人形に襲われ、それの吐く冷凍ガスで殺害されてしまった…………はぁ、鹿島さん、あなたまた惨殺される役ですか………(嘆息)。

 仁科博士を殺害した人形は部屋の窓を破って庭に飛び出し、その場にいたゲンにも冷凍ガスを噴き掛けた。ゲンもトオルも人形が眉子の抱いていたものであることと、その人形が敵対的存在であることを一致して認めたが、それでもトオルは眉子が人形に操られているだけで、彼女自身は悪しき存在ではないと弁護した。カオルの影を重ねた眉子を潔白と信じたいトオルの気持ちは分かるが、相変わらず根拠が無いんだよなぁ‥‥……。
 だが投石攻撃を受けて一旦姿を消した人形は次の瞬間眉子に抱かれて現れた。こうなると(理由は異なるが)ゲンもトオルも心中は穏やかではない。

 眉子は露骨に敵視を向けるゲンに人形を突き付け、人形からは冷凍ガスが噴出され続けた。見かねたトオルが割って入ると、昨日の想いがあったのか、眉子は無表情ながら躊躇う様子を見せた。
 だが、人形からは殺戮遂行を命じるブラック指令の声が聞こえ、眉子はトオルにも攻撃を仕掛けるかに見えたが、横合いからゲンが人形を取り上げると眉子の動きは止まった。
 元凶は人形にあると見たものか、ゲンがフランス人形を叩き付けると人形の体から血のようなものが流れ、次の瞬間には毒々しい赤色のガスが噴き出した。眉子は慌てて人形を拾い上げると遁走し、ゲンはトオルにその場を離れないよう指示して眉子を追った。

 眉子は逃げる途中で遭遇した警官も冷凍ガスで殺害(小次郎さん、哀れ……)。小高い丘の上に立つと両手を頭上に掲げ、ブリザードの名を叫んだ。すると一昨夜身を顰めた山中の湖からブリザードが飛び出し、眉子の頭上に現れると冷凍ガスを投下し、眉子はその中に姿を消した。
 そしてブリザードは円盤形態から二足歩行形態に姿を変えた。その姿は直立した、平ぺったい手足だけを持ったイカで、表裏が赤と青という色のみ異なる二面体だった(円盤生物版アシュランと云うべきか?)。

 ブリザードは青い面の腹部から名前の通り猛吹雪(=ブリザード)を噴出した。やっていることはフランス人形と変わらないのだが、何せ寸が違い、猛吹雪は高架とそこを走る数台の車を凍結させ、凍ったバラ宜しく、完全に脆弱化させて破壊した。
 当然猛吹雪はトオルにも襲い掛かり、ゲンは猛吹雪に隠れるようにしてレオに変身。そのままトオルを身を挺して庇ったため、忽ち冷凍ガスによって身を固められてしまったが、何とかトオルを脱出させることに成功した。
 とはいえ、凍結の影響は長いものではなく、傍らにあった凍り付いた樹木をジャベリン替わりにしてブリザードの腹部に投げつけると冷凍ガスを封じて殴り合いに持ち込んだ。ナレーションによるとレオはブリザードの吐く零下100℃に皮膚を合わせるという器用な能力で相手の攻撃を無効化したらしいが、ブリザードは体を反転させると赤い体の腹部からは1000℃の火炎を噴射してきた。

 冷気攻撃が熱に変わったことで一時怯んだレオだったが、隙を見て前々話でデモスを倒したウルトラショットを放ち、これを食らったブリザードは火炎を放てなくなり、円盤形態に変じると湖に逃げ込み、これを折ったレオを再度熱と炎で苦しめたが、放った火炎はウルトラマントで封じられ、空中に逃れんとしたところをハンドビームで討ち取られたのだった。

 爆発・四散したブリザードに眉子の姿を重ね見たトオルは、足下に落ちてきた焦げたフランス人形を拾い上げて滂沱に暮れた。涙を流しながら眉子のことを指したような童謡(タイトル不明)を唄うトオルの声に別の声が重なり、トオルが振り返るとそこには咲子がいた(離れた後方にゲン・いずみ・あゆみもいたのだが)。
 感極まったトオルは咲子に抱き着き、咲子もこれをやさしく抱き止めた。咲子はトオルに泣きたいときは泣いても良いと諭すようにトオルの思いを受け止めたのだった。

 普段ゲンと共に心身を鍛え、許せないものや護るべきものの為に戦い続ける梅田トオルだが、年端もいかない身ですべての肉親を失った精神的な痛手は大きく、その苦しみは作中でも度々垣間見られる。殊にトオルのような境遇に置かれれば「強くならざるを得ない。」と云え、強化を強いる原因となる不幸は甚大である。
 人間、勿論不幸に負けない強さは大切である。だが弱さに引きずられてはならないとはいえ、弱さ自体は決して罪ではない。時には強がらずに弱さと向かい合った感情の発露も大切である。
 そんな強さと弱さの在り様を教えてくれる第45話だったが、眉子の正体や、無残に殺されっ放しの人々といった消化不良感も否めない。眉子とブリザードが一緒に移っているシーンもあるので、眉子はブリザードが変身した訳ではないが、人間の少女が(フランス人形を介して)操られていたのか、ブリザードの体の一部が作り出した存在なのかは分からずじまいだった。
 もし眉子がブリザードに操られた不幸な存在なら、ブリザードに吸収されたまま命を落とした(としか思えない)のなら悲惨過ぎるし、ブリザードやブラックスターによって作られた疑似的存在ならトオルが心を砕く必要はないどころか、騙され、利用されたに等しい。
 トオルの在り様を重んじるためにも眉子の正体をはっきりさせないのも一つの結論かも知れないが、トオルがああまで心を砕いた行動に対して分からずじまいは個人的に納得出来ないと主張したい。

 そしてラストシーン。例によってブラック指令はブラックスターに次なる円盤生物の派遣を命じ、ハングラーが星を発っただが、六連敗を喫したとあって、確実にレオを倒せる円盤生物の派遣を求めるブラック指令の声には明らかに苛立ちが籠っていのだった。


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令和二(2020)年一〇月五日 最終更新