ウルトラマンレオ全話解説

第46話 恐怖の円盤生物シリーズ! 戦うレオ兄弟! 円盤生物の最後!

監督:東條昭平
脚本:田口成光
円盤生物ハングラー登場
 冒頭、いつもの如くブラックスターから新たな円盤生物ハングラーが地球に向かって発った。このハングラー、飛行体も、戦闘体も、どう見てもチョウチンアンコウ………………これのどこが「円盤」だ?!「看板に偽り有り」も大概にして欲しい………。

 場面は変わってとある車道上。そこでは車を運転するゲンが事故渋滞に巻き込まれていた。ゲンの台詞からすると頻繁に起きているらしい。まあ現実でも度々ある事なのだが、ドライバー達がクラクションを鳴らしまくっている様な苛立ちのひどさを見ると、普通の事故とは異なるのだろうか。

 すぐに場面は変わってとある公園。そこではいじめが行われていた(またか………)。
 いじめられていたのは純次(梅地徳彦)で、どうも鉄棒が出来ないことを初め、運動音痴であることを日常的にいじめられているようで、悔し涙を流しながら鉄棒にぶら下がっていた。そこに純次の兄・純平(平泉征)が怒鳴りながら駆け込んでいるとクソガキどもは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
 純平はトラックのドライバーで、最前の渋滞シーンでも苛立つドライバー達にそんな短気が事故を起こすことを諭していた好青年で、これを演じる平泉氏(現・平泉成)は放映当時30歳で、実年齢より若く見える。
 特撮のみならず、大河ドラマでも刑事ドラマでも幅広く活躍し、平成・令和時代では温かみのある中年や厳格な父親、悪意を底に抱えた人間、情けないオジさん、貫禄のある大人物、と幅広い役柄を演じる名バイプレーヤーとして超有名なので、そのイメージと比較するとこの第46話に客演している姿を見ると時の流れがいかに大きいかを感じさせられる。

 話を戻すと、純平は純次を励ましたり、叱りつけたりしながらも、自らも(出来ないなりに)鉄棒に挑んで見せるなど、不器用ながら実直で弟想いな兄の姿を見せていたのだった。
 だが、そんな兄一人弟一人の仲のいい兄弟をその夜不幸が襲った。
 トラックで帰路についていた兄弟の前にハングラーが立ちはだかり、頭部のランプを信号に、大きな口をトンネルに擬態して兄弟に襲い掛かって来た。純平は慌てて純次を逃がし、何とか我が身とトラックを守らんとしたが、ハングラーが周囲の空気ごと吸引したため、トラックはタイヤ一輪を残してハングラーの口中に飲み込まれてしまった。

 幸い、間一髪車外に脱出し、大怪我は負ったものの命は長らえた純平だったが、別の不幸に襲われた。
 要は周囲から純平が事故を起こしたと見做されたのである。ハングラー襲撃は夜間で、襲撃後に姿を消したため、元々現場がだだっ広い場所だったこともあって、警察は(話を聞く体勢を見せてはいたが)純平兄弟の怪獣襲撃(←正確には円盤生物だが、殆ど怪獣だな(苦笑))の証言を信じず、冒頭で純次をいじめていた連中も純平が事故ったと見做していた。
 ちなみにクソガキどもが純平を信用しなかったのは、彼を「乱暴」として嫌っていたからなのだが、純平が「乱暴」なのは絶対クソガキどもに非があると思う。ちなみに純平・純次兄弟を兄弟そろって嘘吐きと決めつけるクソガキの中には梅津昭典氏演じる中山がいた。

 梅津氏は『ウルトラマンA』で梅津ダンを演じた人物で、ダンが如何なる人物で、家庭的な不遇とその不遇に伴う周囲の誤解で如何に辛い日々を送って来たかは既存作品である『ウルトラマンA』の全話解説にてシルバータイタンなりに詳しく書かせてもらった。
 だから言いたい。梅津ダンを演じた俳優に嫌味な役をやらせんじゃねぇ!と。いや、勿論俳優は様々な役をこなすのが仕事だから、善玉俳優が悪役をやったり、悪役俳優が善玉を演じたりするのを否定する訳ではない(実際に真反対の配役が良い味を出した例は多い)。
 だが、『ウルトラマンA』を視聴していた子供達が、同作品にて梅津ダンが周囲の心無い輩に理不尽な仕打ちを受けていたことに心を痛めていたことを思えば、同シリーズで梅津昭典氏にいじめっ子をやらせることには激しく異を唱えたいのである。

 話を戻すと、同級生達から揶揄され、トオルやあゆみと共に必死に兄を庇い、自分達が真実を述べていることを叫ぶ純次だったが、そこへ追い打ちを掛ける様に事件現場の地主である大伴(里木佐甫良)が怒気を含んで現れた。
 曰く、自分の土地に怪獣が現れたと純次が証言したことで、売り出し中の土地にケチがつき、購入予定のキャンセルまで生じたとのことだった。これを受けてクソガキどもはそれ見たことかと云わんばかりに純次を嘘吐き(加えていつもからかっている「のろま」という台詞も一緒に)と囃し立てた。何度かこういう場面で触れたことがあるのだが、毎週のように怪獣が現れる番組で怪獣出現証言がかほどまでに信用されない矛盾は本当にむかっ腹が立つ
 ちなみに現実でもフィクションでもそうだが、こういう囃し立てを行うクソガキども程直後にその場を去っていく。本当に相手が嘘をついていると確信し、それを糺す気持ちから責めるのであれば、槍玉に挙げることはあっても囃し立てたり、ましてや一方的にからかってその場を逃げるように去ったりすることは決してない。

 真面目に主張するのだが、もし誰かを集団で責めたり、論ったりしているとき、囃し立てや、決着もつけずにその場を去るという行為を取っているなら、それは集団で弱い一人をいじめる行為を楽しんでいるだけじゃないかを疑って欲しい。
 うちの道場主も非のある人物を責めているつもりで、実際には集団攻撃で悦に入っていた醜い記憶がない訳じゃないので。

 結局、周囲の不信に主張をかき消される形となり意気消沈した純次は、トオルとあゆみがゲンを伴って、怪獣出現時の証言を求められたときには周囲の信用に期待しない様になっていた。
 まあ、さすがにゲンが怪獣や円盤生物と戦ってきた人物と証言されると純次も希望を取り戻し、ゲンを兄の元に案内した。
 だが、入院中の純平は純次以上にやさぐれていた。純平の周囲もまた純平が事故を起こしたと決めつけるものばかりで、純平は事故を起こした(と見做された)咎で会社も解雇され、ゲン一人が信じてくれてもどうにもならない、と自暴自棄になっていた(←ちなみに如何に安全運転が求められる職種でも、飲酒の様な運転形態に問題のある状態でない限り、一度の事故で会社を解雇になることは有りません)。
 ゲンは、円盤生物がターゲットである自分を狙って次々襲い来る渦中で純平・純次兄弟の様に多くの人が巻き込まれ、その結果、兄弟は人を信じる気持ちを失せさせてしまったことに静かな怒りを燃やし、何としても円盤生物を倒し、兄弟の無実を証明すると心に誓ったのだった。

 とは云うものの、話は簡単ではなかった。円盤生物の手掛かりを求め、事件現場で純次に当時の状況を聴き直すゲンだったが、純次はそれこそが自分達を信じていない証拠と思い込み、嘘で土地にケチをつけられたと思い込む大伴も露骨に兄弟を嘘吐き呼ばわりし、土地からの退去を求めた(そうやって揉めているまさにその地下にハングラーは潜んでいたのだが)。
 ゲンは咲子達の協力を得て、おにぎりを持参し、自分もまた厳しいけれど兄の様に接してくれた人物(←ダンの事ね)を円盤生物に殺されたことを語り(←死んで無かったけどね)、何とか純次の心を開かせようとした。
 頑なに見えた純次だったが、やがてゲンへの不信を泣いて詫びるとゲンの持ってきたおにぎりに噛り付き出した。そうだね、不信に凝り固まるというのは、信頼を裏切られることを恐れる気持ちの裏返しなんだよね。確かに端から信用しなければ裏切られることはない。
 また、信じる気持ちが大きければ大きいほどそれが裏切られた時のショックのそれに比例して大きくなる。それゆえ人は時に疑い、時に期待を捨て、時に希望を抱かなくなる。
 だが、それはマイナスを避けるだけで、プラスを産むことはない。純次が自分達の証言を信用してくれる人を求めていたのは明白で、ようようにしてゲンを信用出来ると思えたからこそ、感極まったのだろう。それを演じた梅地氏(放映当時14歳)の演技力は卓越している。

 その直後、白昼堂々ハングラーが出現し、次々と高架上の車を襲い出した。円盤生物の生態には謎が多いのだが、ハングラーはモデルとなったチョウチンアンコウ以上に悪食で、『ウルトラセブン』に登場したクレージーゴン宜しく自動車を食する存在だった。
 大口による吸引や、磁力光線を発しては何十台と云う車を引き寄せ、ハングラーに直接食われたり、吸引によってぶつかり合ったり、炎上したり、で多くの車両が犠牲となった。
 こうなるとハングラーの存在に疑問の余地は無く、純次はハングラーが自分達を襲ったことをゲンに証言すると、自分達の生活を(名誉面・経済面で)滅茶苦茶にしたハングラーに一太刀浴びせずにはいられないとばかりに駆け出した。
 勿論それを捨ておくゲンではなく、純次を止め、庇う中で右腕を負傷してしまった。地主が挙げたアドバルーンを巧みに利用し、その破裂に驚いたことでハングラーは飛行体となって飛び去って行ったが、勿論これで解決となった訳ではなく、ハングラーは場所を移して破壊と捕食を続けたのだった。

 自分の為にゲンが負傷したことに罪悪感を覚えた純次はこのことを兄に話し、話を受けた純平はタンクローリーをハングラーの口中にぶち込むことでこれをやっつけんとした。
 ゲンはこれを止めんとしたが、純平は特攻を敢行。幸いハングラーに飲み込まれず吐き出されたが、体の一部が炎に包まれる有様だった。  ゲンは自分の腕を吊っていた包帯を叩き付けて純平の炎を消化するとそのままハングラーに向かい、レオに変身した。

 ハングラーに挑み掛かったレオは空中から頭突きをかまし、ストンピングや蹴りと云った足技、腕力よりも体の移動を利した合気道的な投げ技でハングラーに対抗した。と云うのも、右腕の負傷は想像以上に深刻で、マウント・ポジションを奪ってもパンチを放つことは叶わず、殆ど利かない状態だった。
 痛みも激しい様で、その悪しき状態はハングラーの目にも明らかで、ハングラーは即座に噛み付き攻撃でレオの負傷している右腕を更に痛めつけに掛かった。相手のウィークポイントを攻めるのは勝負の鉄則だが、ハングラーのそれは執拗で、噛み付くのみならず、体重を利した押さえつけも行い、レオは苦痛の為にほとんど戦えない状態だった。

 だがそこへ赤い球で飛来したアストラが助太刀に現れた。ハングラーが執拗にレオの負傷箇所を攻めたのも、真っ当に戦うことに自信がなかったかも知れない。そう思いたくなるほど勝負は秒殺に近いアストラの勝利に終わった。
 前蹴りでハングラーをレオから引っぺがしたアストラはレオが戦線離脱するや、ハングラーを数発殴りつけて、上手投げで転がし、レオの無事を確認すると体を直立させた状態でそのまま縮小させ、ウルトラリダクションなる技でハングラーの口腔から体内に侵入するとその内部を破壊し、アストラが体外に出た数秒後にはハングラーの体は内部から分割され、程なく、爆発・四散した。アストラによる初の単独勝利で、アストラが地球に降り立った最後の回でもあった(令和2(2020)年10月15日現在。但し、『ウルトラマンメビウス』に最終回で地球のすぐ近くまで来たことはある)。

 ハングラーを倒し、元の大きさに戻ったアストラはレオの体を支え、それを見ていた純平・純次兄弟はレオ兄弟の「兄が右腕負傷」、「弟がこれを支える」という姿を自分達みたいだと微笑み、レオ兄弟に大きく手を振って感謝の意を伝えたのだった。

 ラストシーンは例によって次なる円盤生物の召還で、8号機・ブラックテリナがブラックスターを発ったのだった。


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令和二(2020)年一〇月五日 最終更新