ウルトラマンレオ全話解説

第47話 恐怖の円盤生物シリーズ! 悪魔の星くずを集める少女

監督:東條昭平
脚本:若槻文三
円盤生物ブラックテリナ登場
 さて、前話までの解説で書きそびれたが、円盤生物シリーズは初期とはまた異なった暗いシリーズである。前作となる『ウルトラマンタロウ』がコミカルカラーの強いものだったのに対して、作品自体が暗いカラーの強い『ウルトラマンレオ』だが、初期が通り魔的宇宙人による惨殺にレギュラー陣周囲の人々が巻き込まれた暗さがあった。
 トオルは父を亡くし、故郷を滅ぼされて間のないゲンは宇宙人に対する復讐心で暴走してMAC内でも孤立し易すいと云った暗さがあった。それに対して円盤生物シリーズではいきなりMACとスポーツセンターの仲間がトオルを除いて全員殺され、MACなき世界で円盤生物は自衛隊や警察を歯牙にもかけず暴れまくり、トオルの日常が多く描かれることで、トオルの学校を舞台とする人的交流も多く描写され、そこに潜伏する円盤生物が(暴れるときは傍若無人なのに)姿を見せずに暗躍するため、人間不信も数多く描かれ、トオルが亡き妹やスポーツセンターの仲間を思い出して滂沱に暮れることも多い、といった暗さが目立つ。
 そんな中、新たな家庭となった美山家の面々がこれまでとは違った形でゲン・トオルの心の支えになる姿が秀逸に描かれているのは『ウルトラマンレオ』を怪獣・宇宙人・円盤生物以外の様々な苦闘を本作以外のウルトラマン作品には見られない形で描く名作に仕上げている訳だが、梅田トオルというキャラクターの立場に立てばかなり辛い展開の連続であることは否めない。
 そしてその傾向は前々話辺りからエスカレートし出すのである………。

 では本題に入るが、例によって、ブラック指令が8番目の円盤生物ブラックテリナを召喚した訳だが、このときにブラック指令の台詞からするとかなり期待されている円盤生物の様だった。
 これまでの円盤生物がいきなり破壊活動に出るか、街中に潜伏して暗躍の契機を伺うかだったが、ブラックテリナ(←こいつも『円盤』とは言い難い体形である)は地球に付くや桜貝に似た分身・テリナQ を大量に街中にばら撒いた。

 見た目こそ綺麗なテリナQ だが、不用意に手に取らんとすると突如顔面、それも目に貼り付き、大量出血を伴う傷を負わせてくる恐ろしい存在だった。漁師と女性が襲われ、怪我の詳細は不明だが、出血がひどく、失明や失血死に至る危険性は充分に伺えた。
 ところが、桜貝(もどき)による人身事故が発生する中、一人の少女・マリ子(佐藤由美)が必死になって桜貝をかき集めていた。トオルとあゆみ(及び美山一家)とも顔見知りでもあるマリ子は桜貝を集めると幸せになれるというジンクスを信じているようで、自らの宝物(まあ、子供特有の価値観で大切にするガラクタに近いものだが)を工事途中で放棄された建物を秘密基地にして集めており、桜貝もそこに隠し、一人で遊んでいた。

 というのも、マリ子は母子家庭で、母親は残業が忙しく、アパートと思しき自宅はお世辞にも裕福感を感じさせるものではなかった。恐らく母親とも充分な時間が持てず、寂しさを紛らわすためにも自分の世界を作っているのだろう。
 そんなマリ子がその夜、突然美山家に泣きながら電話を入れてきた。彼女の母親が工場で負傷し、咲子の病院に担ぎ込まれたとのことで、子供心に顔見知りの看護婦長である咲子に助けを求めて来たものだった。
 怪我は手術を要する大変なもので、ゲンは咲子を車で送り、そのままマリ子に接触した。マリ子もゲンのことを知っており、ゲンはマリ子に美山家に泊まることを提案したが、マリ子は母の近くにいることを望んだ。程なく手術は終了し、2週間の入院を要するものの、命に別状はないとのことだった。
 その後もマリ子は桜貝に願いを託し、母の命が助かったのも桜貝のおかげと信じ、病床の母(新草恵子)、咲子、執刀医、カオルにもそれを渡した。その正体を知る由もなく………。

 程なく、東京各地に散り、多くの人々に拾われたテリナQ (冒頭で二人の男女を傷つけたのは、加害者と見做したためだった)は夜中に、東京上空2000mに浮かぶブラックテリナ (←珍しい潜伏の仕方だ)から、指令を受けると別の恐ろしい能力を発揮し出した。
 本体からの指令を受けたテリナQ は、明滅を繰り返すとこれを身に着けた人々を操り出した。テリナQ に意識を乗っ取られた人々は一応に顔色を灰色に変じ、無表情となった(←操られていることを示す黄金パターンやね)が、ゲンを襲うときには憤怒の形相や残忍な笑みを浮かべた。
 その中にはマリ子の母を執刀した医師もいて、彼は業務用のメスをもってゲンを刺殺せんとした。勿論マインドコントール化の不完全な動きしか敵わない一般ピープルにゲンが遅れを取る筈も無く、体からテリナQ が外れるや、医師は正気を取り戻した。

 これにより、桜貝に似た怪しい物体が人々を操っているとのヒントを得たゲンだったが、テリナQ のマインドコントロール下にあるのは一人や二人ではなく、ある者は車でゲンを轢き殺さんとし、ある女(早川絵美。旧芸名・菅沼恵美子)はビルの屋上からブロックを落としてゲンを殺害せんとした。カーリー星人から自分を守ってくれなかったことをそんなに恨んでいたのだろうか………って、同一人物が演じていても、役どころが違いますよね(苦笑)。
 彼女はその後もゲンに襲い掛かり、得物が無い状態でもゲンの首を締め上げんとした。まあ、ゲンがテリナQ を引っぺがすとすぐに正気を取り戻したのだが、先の医師同様女性に操られているときの記憶は無いらしく、気が付くや眼前にいる体育会丸出し・男臭さ満開のゲンを見て、口には出さないものの「何よアンタ!?」、「きゃー痴漢!」と云いたい気な表情を浮かべて気絶した。気持ちは分からんでもないが、失礼だな(苦笑)。

 だが油断は大敵で、テリナQ はゲンの右目に貼り付き、ゲンは眼から大量出血しながら悶絶した。幸い、テリナQ の吸着力・耐久力は大したものではない様で、ゲンは何とかこれを引っぺがし、床面に叩き付けると粉々になった後青い液体状になって消え去った。
 危地を脱したゲンは警察に通報し、テリナQ の回収を要請し、警察もこれに応じた(くどいが、迅速に応じたのも元MAC隊員の肩書ゆえだろうか)。勿論マリ子にもテリナQ を捨てるよう求めたが、マリ子は頑なに渡そうとしない。直後、上空のブラックテリナに気付いたゲンは、親玉を叩くべしと考えたものか、マリ子に(テリナQ の入っている)宝箱を開けないように告げるとブラックテリナの元に向かい、レオに変身した。

 戦いは序盤、目を負傷していたレオがブラックテリナから火花や体当たりと云った攻撃を顔面に受け、レオ劣勢で展開されたが、やがて組み付いた際にテリナQ を操っていた脳髄とも内蔵ともつかぬ部位にパンチの連打を受けると形勢は逆転した。
 レオは逃げるブラックテリナに黒い矢印型の光弾・ダークシューターを放って撃墜し、怯んだブラックテリナを発電所に投げ込んだ。これによって感電したブラックテリナはグロッキー且つ戦意喪失状態となり、そこにとどめとして第18話以来のエネルギー光球を放ってブラックテリナを討ち取った。

 ブラックテリナがくたばると親元から指令の届かなくなったテリナQ も活動を停止した。当然の様にカオルとマリ子も正気に戻ったのだが、それまでテリナQ に操られた人々にその間の記憶が無かったのとは裏腹に、相当な恐怖が残っていたらしく、二人ともテリナQ を大慌てで外して地面に叩き付けるや、泣き出ししまう有様だった。
 まあ、直後にゲンにプレゼントされた本物の桜貝に対しては喜んでいたので、視覚とは別途の嫌悪感を伴うものだったのだろう。

 かくしてブラックテリナの脅威を脱した訳だが、勿論ブラックスターの挑戦が終わった訳ではなく、ゲンも次なる侵略に備える顔つきを見せていたが、そのことをナレーションは「遊星円盤ブラックスターはウルトラマンレオを狙い続けているのだ。」としていた。ん?てことは、ブラックスターは星ではなく、円盤と云うことか?乗り物として移動機能を備えているなら、地球から1000万qという、明らかに太陽系の中に存在しながら、それまで人類やウルトラファミリーの人口に膾炙しなかった理由も分かるのだが、それにしてもややこしい………。

 ともあれ、ブラック指令はレオの死と、日本列島の最期を予言しつつ次なる刺客・円盤生物サタンモアを召喚したのだが……………どう見ても円盤じゃなく、怪鳥だな(嘆息)。


次話へ進む
前話へ戻る
『ウルトラマンレオ全話解説」冒頭へ戻る
特撮房『全話解説』の間へ戻る
特撮房へ戻る

令和二(2020)年一〇月五日 最終更新