ウルトラマンレオ全話解説

第48話 恐怖の円盤生物シリーズ! 大怪鳥円盤 日本列島を襲う!

監督:山本正孝
脚本:若槻文三
円盤生物サタンモア登場
 冒頭、前話のラスト同様にブラック指令がレオと日本列島の最期を予言しながらサタンモアを召喚したのだが、翼と嘴をもつ細長い体格はどう見ても「怪鳥」で、サブタイトルで「大怪鳥円盤」と呼称したり、ナレーションが「円盤サタンモア」と述べたりしていたのも、そこまでしなければ誰も「円盤」と見てくれない自信のなさによるものだったのだろうか?

 ともあれ、ブラック指令の戦意・殺意満々状態を地球上の人々は知る由もなく、それはいまだブラック指令の存在を認識していないゲンも同様だった。
 そんな中、新宿を歩いていたゲンは和久宏(石太郎)なる旧友を見かけ、声を掛けた。「宏」とファーストネームで呼んでいたように相手も「ゲン」と呼び、二人は親友の中だった。
 「親友だった。」と過去形で示しているのも、二人は三年前に仲違いし、それ以来宏はゲンの前から姿を消していた。仲違いの理由は一人の女を巡ってだった。
 といっても、三角関係だった訳ではなかった。同じスポーツセンターの仲間として共にスポーツに打ち込むゲンと宏だったが、宏は次第に自分の事しか考えなくなり、自分を愛していた厚子(八代順子)という女性の想いを踏み躙る様になり、男しての在り様を許せなかったゲンは宏と殴り合いの喧嘩となり、以後宏はカメラマンになる夢を追ってスポーツセンターを去ったととのことだった。

 ここで少し野暮なツッコミを。
 回想シーンでゲンは宏との再会を「3年振り」としていたが、ということはレオがL77星を失ってからそれだけの時間が経過していることになる。
 だが、第1話でゲンはモロボシ・ダンと邂逅した際に、L77星の滅亡をその時点の一ヶ月前と述べていた。となると作中で第1話からこの第48話までの間に3年(少なく見ても2年11か月)という時間が経過したことになる訳だが、トオルを見る限りとても3年も経ったとは思えない。

 同様のことが『ウルトラマンA』でもあったが、もう少し作中の時間設定は大切にして欲しい。変身者が元々地球人である場合は立ち位置さえ気を付ければ何年前を描いても良いと思うが。
 どうもこの時代、ドラマでも漫画でも一昔前を語る際に安直に「3年前」を持ってくる傾向が強かったように思われてならない。

 ともあれ、3年振りに見かけて、何のためらいもなく声を掛け、相手もそれに応じて互いをファーストネームで呼び合ったのだから、互い憎むまでには至っておらず、時間の流れがある程度の癒しを為してはいたのだろう。
 それに引き換え、うちの道場主なんかン回目に惚れた女と偶然出会っても決して声を掛けられない関係に………ぐえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇ〜(←道場主のハイジャック・バックブリーカーを食らっている)
 イテテテテテテて………ともあれ、しばしの歓談後、宏はゲンに自分が初めて開いた個展のチケットを渡してバイクで去っていった。つまりスポーツセンターを去った後一途にカメラマンとしての活動を続け、個展を開くまでになった訳で、女を捨ててまで選んだ道なら是非成功して欲しいとゲンが思っていたかは定かではないが、ゲンは満面の笑みで必ず行くと約束した。
 だが、その背後ではこれまで遠くから円盤生物に命令を出すだけだったブラック指令が忍び寄っていた。第40話でMACやスポーツセンターの仲間と云ったかけがえのない仲間を何人も殺害していたブラックスター一味だったが、どちらかと云えば強襲でまとめて殺害するタイプの攻撃だったが、その魔手の迫り方はピンポイント的なものに近づきつつあった。

 ともあれ、約束通り和久宏写真展会場を訪れたゲン。それにワンテンポ遅れて一人の和服を着て赤子を抱いた貴婦人が車でやって来た。展開からバレバレだが、女性は回想シーンに出て来た厚子(八代順子)である。
 車はタクシーではなく、運転手とのやり取りからも恐らく彼女は宏に振られた後、それなりの金持ちか社会的地位を持つ人物と結ばれたのだろう。
 宏の作品に見入っていたゲンは、その厚子に背後から声を掛けられて彼女とも再会を果たした。そしてゲンと宏がやり合った直後に厚子もスポーツセンターを退職し、すぐに今の主人と結婚したとのことだった。
 まあ、昭和50年代初頭の世相を考えるなら、恋に破れた娘を慮った厚子の両親が半ば強引に見合いを勧め、それが良い方向に進んだということだろうか?結果、厚子は今幸せな状態にあり、スポーツセンターでの日々を想い出として心の中に整理出来たからこそ、宏の個展に躊躇うことなく訪れることも出来たのだろう。

 ほんの2ヶ月前にかけがえのない仲間をまとめて失ったゲンにとっても、袂を別ったと思っていた宏や厚子と笑顔で会えたのは嬉しい出来事だったことだろう。ただこれは円盤生物サタンモアが地球に侵入する前の話で、直後にサタンモアは九州上空に侵入した。
 これまで東京上空にしか現れなかった円盤生物が九州に現れたのは、日本列島壊滅を予言したブラック指令のこだわりが現れたものだろうか?(笑)
 MAC亡き今、防衛軍がサタンモアを迎え撃ち、何発ものミサイルが発射されたが、哀しいかな、怪獣退治を専門とした歴代正義のチームの科学力でも討ち取れなかった相手にそれらのミサイルは全く効かず、サタンモアは高度2万mの上空を時速3400km、つまりマッハ2.8の速度で飛んで東京に向かってきた。
 凡そ「円盤」には程遠いサタンモアの体型は設定によるとコンコルドをモデルにしているらしい。実際、コンコルドのように音速を超える飛行物体が低空を飛べば、地上が衝撃波に襲われることになる。それゆえコンコルドはわざわざ2万mの上空に上がってから最大速度を出していたので、サタンモアの動きはコンコルドをかなり忠実に模していると云える。
 ただ、こうなるとブラックスターサイドの狙いがいまいちわからない。純粋に地球を我が物にしたいのなら、サタンモアが目的地到達まで2万m上空を示威飛行したのには大いに納得が出来るが、そうなると日本列島の最期を予言したブラック指令の言葉に反する。
 地球を占領下に置きたいなら円盤生物が行ってきた必要以上の破壊ばかり行い、一向に地球サイドに降伏勧告を行わないのはおかしい。一方で純粋な破壊が目的であるならその破壊活動は質・範囲ともに余りに矮小である。
 ま、ブラックスターに限らず、目的のはっきりしない怪獣・宇宙人の方が圧倒的に多いのだが(苦笑)。

 報道はサタンモアの飛行を「偵察目的」としたのは良いのだが、「危険はありません。」としていたのには顎を落とした。これまでの2か月間の間にも少なく見積もっても何百人という犠牲がブラックスターのために出てしまっている。まして「偵察」は侵略の手始めで、即自的ではないにせよ、充分危険である。まあ、一般ピープルをパニックに陥らせないのが目的だった云うことだろうか?
 報道を耳にしたゲンと厚子も一抹の不満を覚え、防衛軍は戦闘機をスクランブル発信させ、東京地区防衛ミサイル基地からは最新型誘導ミサイルが何発もサタンモアに放たれたが、サタンモアは痛痒を覚えた様子もなく、目視出来る高度まで降下してくると翼の付け根を光らせると何体もの怪鳥円盤リトルモアを放った。
 つまりデモスブラックテリナ同様、自分の部下となる分身を放った訳だが、デモスのそれが僅か3体でこそこそした殺人だったのに対し、リトルモアは明らかにそれより多い数が白昼堂々待ち行く人々を襲った。
 地上の警察官達は一般ピープルの避難誘導を行うのが精一杯で、ビルの間をサタンモアは我が物顔に旋回飛行していた。

 そんな混乱状態の中、ゲンは待ち行く人々を避難誘導していたのだが、その時一台のバイクが一人の少年をはねかけた。乗り手は宏で、ビルが襲われることで自分の作品が灰燼に帰するのを防ぐ為に戻ってきた訳だが、3年前同様自分の事しか考えずに人を傷つけかけて平然としている宏に激昂したゲンは宏を殴りつけ、バイクのキーを取り上げまでした。
 宏も負けずに殴り返し、ゲンがキーを投げ捨てるとその場を走り去って、徒歩で個展会場であるビルの12階に向かい、ゲンもこれを追った。

 偶然と云おうか、必然と云おうか、サタンモアは数多くあるビルの中で何故か宏の個展が行われているビルをピンポイント攻撃。何度も何度もビルに嘴を突き立て……………くどいが、どう見ても「円盤」じゃないよな、コイツ(苦笑)
 そしてビルの中では個展に訪れていた人々がパニックに陥り、柱らしきものの下敷きになった厚子は道行く人に我が子・マサオを託す有様だった。
 サタンモアの執拗な攻撃でビルは半ばで折れかかり、マサオを抱いて逃げていた男もリトルモアから逃げ惑う中、たまりかねてマサオを路傍に放置してしまった………。

 程なく、ビル近くまで辿り着いたゲンと宏だったが、そこでゲンは泣き叫ぶマサオに気付いた。ゲンはマサオを宏に託して避難を促したが、マサオを厚子の子と知らない宏は何故見ず知らずの子を自分が守らなければならないんだ?的な態度を取り、ゲンは激昂した。
 女の気持ちを踏み躙り、子供を轢きかけて平然としているような人物に良い写真が獲れる筈がないと斬り捨てたゲンは、宏に改めて人の心を取り戻すことを求めてマサオを託し直すと自身はビルに向かってダッシュし、宏の眼前でレオに変身。これを見た宏もようやくゲンの求めに応じた。

 レオは中折れし、崩れ落ちんとするビル(←レオの身長よりも高い)を支えんとしたが、これによって身動きが取れなくなったことはサタンモアの格好の標的だった。地上でもそれに呼応するようにリトルモアが何羽も宏を襲い、その体に何度も嘴を突き立てた。
 サタンモアの攻撃は執拗で、途中で防衛軍の飛行機の攻撃を受けるも目から怪光線を放ってこれらを撃墜し、レオには噛み付き攻撃まで食らわせた。そして分身ともいえるリトルモアもまた執拗で、マサオを抱きかかえて庇う宏は忽ち血塗れにされ、ある程度の安全地帯まで避難したときには意識朦朧となっていた。

 レオが抱えていたビルは55階あり、その半分でも地面に落ちれば衝撃は地下街を逃げ惑う人々に致命的な被害をもたらすため、レオもこれを投げ捨てる訳にはいかなかった。
 だが、避難完遂を見届けたことでレオはビル上部を取り落とし、サタンモアへの反撃に転じた。サタンモアは口腔より弾丸を放ったり、嘴での直接攻撃に出たり、したが、いずれもレオには通じず、レオは嘴を握ってもがくサタンモアを殴りつけた後にシューティングビームを放ち、これを食らったサタンモアはビルの残骸に激突し、爆発・四散した。

 ナレーションによるとレオの尽力で何万人もの人々の命が助かったとのことだったが、宏の方はマサオを守り切ったとはいえ、ゲンが駆け付けたときには完全に致命傷を負っていた。
 ゲンは我が身よりも子供の無事を懸念する宏に、彼が見事に子供を守り切り、人の心を取り戻したことを讃えたが、彼が守ったのが厚子の子であることを耳にする前にこと切れた。
 直後、自力脱出して来た厚子が駆けつけ、ゲンは彼女にマサオが無事であることを告げ、無言のまま目で傍らにて死んでいる人物を指した。当然厚子はそれが宏であることに気付き、慌ててその名を呼んで取り縋ったが、宏は既に息を引き取っており、再会が叶うことは無かった。
 状況を察して泣き崩れる厚子に、ゲンは宏の行為が如何に立派だったかを告げんとしたが、悲しみは彼も同様で宏に礼を告げるのが精一杯だった。

 そしてラストシーン。ブラック指令の次なる円盤生物派遣要請は、レオを倒し得るものであることに加え、「地球を粉々に出来るもの」を求めていた。「日本列島最後の日」だけでは満足出来なくなったか?
 ともあれ、円盤生物の中でもシンプルながらも、それ故に不気味なノーバが飛び立った………。

次話へ進む
前話へ戻る
『ウルトラマンレオ全話解説」冒頭へ戻る
特撮房『全話解説』の間へ戻る
特撮房へ戻る

令和二(2020)年一〇月五日 最終更新