ウルトラマンレオ全話解説

第6話 男だ!燃えろ!

監督:東條昭平
脚本:田口成光
暗闇宇宙人カーリー星人登場
 冒頭、ゲンは一人のMAC隊員と、一般女性と一緒にいた。MAC隊員は白土純隊員(松坂雅治)で、後にレギュラーメンバーとなるのだが、この第6話では宇宙ステーション勤務で、宇宙情報会議に出席する為に地上に降り立ったことと、休暇の関係で友人でもあるゲンと共に久々の休日を楽しんだ直後だった。
 同乗していた女性・洋子(菅沼恵美子)は白土の恋人で、貴重な休暇を三人で過ごしたのだから、恐らく彼女も旧知だったのだろう(別れ際に白土は「ご両親に宜しく。」と言っていた)。

 会議に出席する白土は車を降り、ゲンが洋子を自宅に送ることとなったのだが、別れて程なく、もう車の後ろには暗闇宇宙人カーリー星人が迫っていた。S●プレイ様アイマスク状の仮面をつけ、薄ら笑いを浮かべたような造詣の口と相俟って、女性の後をつけて来るその姿はどこか変態的だが、目的は殺害なので洒落にならない。
 ルームミラーに映ったカーリー星人の姿に驚いたゲンは車を停めて辺りを探らんとしたが、どうやったものかカーリー星人はゲンの目を逃れて車に乗り込んでいた。洋子の悲鳴を聞いてゲンが戻ると、洋子がカーリー星人の魔手から逃れんとして車から飛び出してきたところだった。

 カーリー星人は肩の上に備え付けられた、前後にそそり出たショルダーナイフを得物に突進するように洋子を襲撃。駆け付けたゲンは傍らのドラム缶を投げつけたが、缶は忽ち三分された。ただ、個人装備としては些か長大なショルダーナイフ攻撃の効率がいいとは言えず、接近戦に持ち込んだゲンがその額に拳骨を2発入れるともんどり打って倒れた。
 不利を悟ったものか、仰向け状態のカーリー星人は紫色の煙を発すると、この手の星人にしては珍しく早期に巨大化(ツルク星人同様、等身大時と巨大化時では大きく容姿が異なる)。ゲンは洋子に逃げるよう促してカーリー星人と対峙したが、カーリー星人の目的はあくまで通り魔的女性殺害に在り、ゲンを無視するように洋子の逃げる先に立ち回り、哀れにも洋子は巨大化した星人によって踏み殺されてしまった……………。
 初期の『ウルトラマンレオ』には目的の定かならぬ等身大宇宙人が通り魔的に人を殺して回る、というパターンが多く、それによる一般ピープルの犠牲も数多く描かれたのだが、巨大化した星人が一人の一般ピープルに殺意を向けた例は少なく、しかも犠牲者が友人の恋人とあっては否応なしにその悲劇性を増していた。
 洋子惨殺に逆上したゲンはいきなりウルトラマンレオに変身。しかし、等身大での接近戦時とは異なり、カーリー星人はショルダーナイフを突進攻撃だけではなく、その長大さを利してレオを巧みに投げ飛ばすのにも利用。レオはナイフを掴んでさえもぶん回されたり、ショルダースルー的に投げ飛ばされたりした。

 そして上空に何度か投げ上げられたかと思うと、次の瞬間場面はMACステーションに移り、レオではなく、ゲンが殴り飛ばされていた。勿論殴ったのは白土である。
 恋人を殺された白土は完全に逆上しており、「MACのパトロール隊のメンバーと云えばこの世で最強の人間達だ。その貴様がついていながら何てことをしてくれたんだ!」とゲンを詰りまくった。
 勿論ゲンも責任は感じており、一切の弁明もなく、無抵抗に殴られ、掴み上げられ、ただただ力なく詫びるしか出来なかった。

 白土の気持ちは充分理解出来るし、冷静さを失うのもある程度は分からないでもない。だがこの時点での彼はただただ何かに怒りをぶつけるしか出来ない様子で、詫びるゲンに対しても「俺は貴様になんか誤って欲しくない!」と些か理解出来ないことを言い、ゲンが謝罪しても、許しを乞うても怒りしか出ず、ゲンの顔を二度と見たくないとした。
 そして怒りの矛先は洋子殺害後に現れてカーリー星人に手も足も出なかったレオにも向かった。白土はレオに対して、「宇宙一の勇者が聞いて呆れるよ。」としていた。勿論彼はゲン=レオであることを知らないのだが、ゲンは二重に責められ、項垂れるしかなかった。

 ここで少し野暮なツッコミを。
 第5話までのレオの戦い振りだけで断じれば、どう贔屓目に見ても「宇宙一の勇者」は無理が有ると思う(苦笑)。一体、誰がそう評したのだろうか?
 また、白土はMAC隊員であるゲンがついていながら洋子を救えなかったことも怒りの要因としていた訳だが、彼はMAC隊員を「この世で最強」としていた。だが、ネタバラしになるがこの第6話以後もMACの戦績は芳しくなく、地球最強を謳われながら噛ませ犬カラーの強いところは『ウルトラマンA』のTACが被る(双方共、「●AC」で、ユニフォームカラーも似ている)。
 白土純を演じた松坂雅治氏は『ウルトラマンA』でも、『ウルトラマンタロウ』でも、『仮面ライダーV3』でも単発客演しており、そのいずれにおいてもどこか悲劇的な役割が多い。こういう要素が集中したのも本作に暗い影を落としていると言えば松坂氏に失礼だろうか?

 場面は替わって、とある川辺。
 ゲンはまだショックの抜け切らない放心状態で、そこにダンが話しかけて来たのだが、この時のダンの台詞は彼がゲンを厳しく鍛える立場を堅持していたことを考慮に入れても少々不可解だった。
 ゲンに、「お前が悲しむことなど一つもない。悲しむべきは白戸隊員の方じゃないのか?」と声掛けたが、友人の恋人(それも旧知で、一緒に休暇を楽しむ仲)が目の前で惨殺されたら普通に悲しい。後半の台詞を見れば、「お前のよりも白土の方が悲しんでいる。お前が悲しみに暮れている場合じゃない。」と言わんとしているのは分からんでもないのだが、尚も項垂れるゲンに、「何だその顔は?何が辛いんだ!?」と怒鳴りつけていたのは些か冷た過ぎる(この際、断言する)。
 結局ダンはレオに変身しながら星人に惨敗したゲンを詰り、白土の気持ちを汲んで何をするべきか考えるよう告げて去った。まあ、この第6話の後に訪れる仕打ちを知る身としては、この程度の叱責は可愛いものだったのだが

 場面は替わってMAC基地。傷心抜け切らぬゲンが見たのは憤怒の形相で射撃訓練に取り組む白土の姿だった。偶然通りかかった白川の言によると、恋人の仇討ちの為、白土はパトロール隊への異動を志願して認められたとのことだった。
 ただ、個人的にはこの白土の異動申出受諾は少々首を傾げてしまう。白土の気持ちは分かるし、仇討ちの為に全力を尽くしてはくれるだろうけれど、ここまで冷静さを失った状態の人間を前線に送るのは無茶振りによる戦死を誘発しかねない。相手が宇宙人とはいえ私怨で動くことを容認していい物だろうか?

 ともあれ、ゲンは悲しみに暮れているとばかり思いこんでいた白土が特訓に励んでいる姿に自分も悲しんでばかりいられないと奮起し、山中にて二本の丸太をぶら下げ、振り子運動で迫りくる丸太をカーリー星人のショルダーナイフに見立てた特訓に入った。
 一方、復讐に燃える白土は射撃訓練のみに終止せず、パトロール任務も買って出て、カーリー星人に襲われている女性を救わんとして星人と対峙した。星人を倒すには至らず逃げられたが、襲われている女性を救ったのは殊勲もので、同時に白土は眉間がカーリー星人の急所であることも探り当てた(実際、カーリー星人はゲンと対峙した際も眉間に拳骨を受けて即座に等身大スタイルを捨てた)。

 この格闘結果を受け、白土はMAC隊員達に眉間がカーリー星人の急所であることを説き、MACで倒せる相手として、地区パトロールの強化をダンに進言した。
 これに対して普段好戦的な青島が、相手がレオをも圧倒した存在であることに懸念を示したが、ダンは昨夜白土が女性を守りながら星人を倒し掛けた例をもって「余裕はある。」とし、一同は戦意を上げた。
 そしてダンはA地区を黒田、B地区を青島、C地区を白川、D地区を桃井の担当とし、白土には遊撃と狙撃を要請した。何故か赤石がおらず、ゲンが命じられなかったのだが、ゲンに担当を割り当てなかったのは特訓の為だろう。
 ダンの号令一下、隊員達が基地を飛び出すと、MACの力でカーリー星人を倒せるとの見立てを疑っていたゲンは、ダンに作戦中止を進言した。だが当然却下された。そりゃそうだろう。ゲンはゲンなりに戦ったカーリー星人の強さから、隊員達が単独でカーリー星人と対峙することの危険を解いたつもりだったが、侵略的宇宙人を対峙するMACの使命上、危険を避けてばかりはいられない。結局ダンから返って来たのはカーリー星人を倒す為の努力が足りないとの難詰だった。

 ダンの叱責を受け、ゲンは特訓に使用する丸太の頭を尖らせた。
 実際、丸太の重量を考えれば、撮影において不慮の事故が起きることも考えられる。ましてや先端を尖らせたとあっては、その危険度も倍増である。ストーリー的にも訓練の危なさに大村・百子・猛が止めに駆け付けた。結局ゲンの決意の前に特訓継続を容認したのだが、槍上の丸太が何度もゲンの体を襲う様に三人は見ているのが辛そうだった。まあ、これとて、この後訪れた仕打ちを想えば可愛いものだったのだが………

 場面は替わってA地区。そこでは黒田がカーリー星人を追っていた。黒田は星人発見を他の隊員達に告げ、それを聞いて青島と白土がA地区に向かった。
 だが、黒田は巧みに姿を隠した星人のショルダータックルを受けて負傷。直後に駆け付けた青島も同様の目に遭い、白土は基地にて「俺がそこに居さえすれば…。」と臍を噛んだ。
 この間、ゲンは大村・猛の助力も得て特訓を継続し、白土もまた射撃訓練に勤しんだ。TACの山中隊員張りに二丁拳銃を用い、数々の体術を駆使して的を撃ち抜き続ける白土。後にレギュラー入りする彼だったが、この体術がストーリー上現れなかったのは惜しまれる。
 実際、等身大の星人を倒すことを考えるなら、至近距離まで接近するか、急所を正確に撃ち抜くことが肝要である。そして二人の隊員が特訓に励む中、基地内にいたダンだったが、桃井が星人に襲われたと聞くと無言で電話を切り、ゲンの元に向かった。

 特訓現場に着いたダンは杖を投げて丸太を吊るす縄を切り、ゲンに杖を返されると杖でもってゲンを6回(!)殴りつけた。そして星人を倒すと誓ったゲンにその旨を問い直すと、現状では無理で、「白土隊員の射撃の腕の方が上だ!」と告げた(←無茶言うなよ………)。
 だが、ダンの見立てでは白土の銃をもってしてもカーリー星人を倒すのは不可能とのことで、星人を倒す為にゲンが挑んでいたことを「訓練なんかではない!」と詰った。重量のある先の尖った丸太を駆使した訓練は充分に危険なのだが、それでもダンは訓練とするには不足している理由として、「この丸太に、お前を憎しみ、突き刺す心があるか?」と投げ掛けた。まあ考えるまでもなくこれは「否、有りはしない。」という反語なのだろう。
 つまり殺意の無いものを相手にしても訓練にはならないと云うことで、無生物である丸太に無い殺意を加味する為に行われたのは、本作は疎か、特撮史上最も過酷且つ危険極まりない特訓シーンだった

 有名な話だが、丸太の代わりにジープでゲンを轢きに掛かり、それと対峙させると云うものだった
 「隊長!止めて下さい!!」との叫びは、おヽとりゲンのものであり、同時に真夏竜氏の心の叫びでもあったことだろう。後年真夏氏が答えたインタビューによると、実際、この時使用されたジープはブレーキの甘いもので、その危険さを「躓いたら放り出されて死にますよ」として監督に抗議するも、「次行こう。」の一言で片付けられた。
 実際、このシーンにおいてジープから逃げ惑い、ジープに対峙するゲンの形相は凄まじいもので、後年その目力を褒められることが多いのだが、この時の真夏氏の形相は本気で怒っていたもので、後になってから、この演技の為に真夏氏を本気で怒らせたのかも知れない、と振り返っている。
 まあ、現代においてそれを行ったら大問題だが
 結局この特訓はカーリー星人の突進攻撃に対してジャンプで躱すことを叩き込む形となり、勢い余ったゲンは崖下に転落したのだが、そのまま逃げても非は無いな(苦笑)。

 その直後、星人が現れたとの報せがもたらされた。
 隊員達に負傷者が続出したためか、MACは白土が単身二丁銃を駆使してカーリー星人に挑んだが、等身大ならいざ知らず、巨大化状態では然したる効果は上げられず、白土はカーリー星人の破壊した瓦礫に埋もれる様に地面に倒れ伏した。
 そんな彼の身を案じ、ファーストネームである「純」の名を叫びながら駆け付けたゲンはウルトラマンレオに変身し、再びカーリー星人に対峙した。

 先の戦いや特訓を活かしてか、レオは地面に寝転がった状態で攻撃(所謂モハメド・アリ戦法)したり、逆に上空に飛びがって急降下で攻撃したりして、極力ショルダーナイフと向き合わない攻撃を展開した。
 一方でカーリー星人はショルダーナイフを突進・投げ飛ばしに加え、光線を放ったり、それを掴んだレオの手に電撃を放ったりして応戦した。
 戦いは一進一退で展開し、投げ飛ばされ、地面に伏したレオに突進攻撃を仕掛けてとどめを刺さんとしたが、レオはジャンプ一番これを躱すと、カーリー星人はレオの背後にあったビルにショルダーナイフを突き刺す形となり、身動きが取れなくなった。
 そこに勝機を見出したレオは上空から踏み付けるようにショルダーナイフを蹴りつけ、カーリー星人に背中を見せたと見せたその刹那、バックチョップでショルダーナイフを叩き降り、対ツルク星人戦同様、これを武器としての急所である眉間に突き立て、カーリー星人を討ち取ったのだった。

 終盤MACステーションにて、洋子の仇討ちを終えた白土は元の宇宙ステーションに戻る旨をゲンに告げた。仇討ちを終えたこともあってか、白土は大分冷静さを取り戻し、憎まれ口を叩いたレオに対しても、恐らくは危ないところを救われたことやカーリー星人を討ち取ってくれたことでわだかまりを解いたようで、「ウルトラマンレオのおかげで。」としていた。
 ただ、「レオ=ゲン」を知らないので、ゲンに対するわだかまりは残っていたのか、「ま、お前もしっかりやるんだな。」と嫌味っぽく言って去って行った。
 白土の態度に殴り掛からんばかりの姿勢を見せかけたゲンだったが、これを暗に止めたダンはゲンの奮闘を労い、改めて地球を守る二人だけの宇宙人としてともに頑張ろうと呼び掛け、ゲンもこれに応じた。

 ラストのラストで、スポーツセンター一同が空手特訓に挑むシーンがあり、大村がカオルの攻撃に思わぬダメージを受けるシーンがあったが、これはチョット蛇足やったね。


次話へ進む
前話へ戻る
『ウルトラマンレオ全話解説」冒頭へ戻る
特撮房『全話解説』の間へ戻る
特撮房へ戻る

令和二(2020)年一〇月五日 最終更新