ウルトラマンレオ全話解説

第7話 美しい男の意地

監督:外山徹
脚本:阿井文瓶
植物怪獣ケンドロス
 冒頭、植物怪獣ケンドロスが地球に迫るところから始まった。ナレーションによると地球侵略の為に様子を伺いながら飛来したとのことだが、真ん丸球体の下部に顔を持ち、上下のどちらが手で、どちらが足かもわからぬ風態で火花を上げながら接近する姿には相手の隙を伺うような知性は欠片も感じられなかった(笑)。
 ケンドロスの生態はともあれ、口から光線の様なものを吐き出すとそれは地表において一輪の花・剣輪草となった。

 そしてある朝、その剣輪草を愛で、その香りを嗅がんとするカオルに気付いたゲンは、宇宙人としての超能力(←ナレーション談)からその花が地球のものではないことに感付き、即座に捨てるようにとカオルに促した。
 しかし、(宇宙人である身の上を明かせないことからも)明白な理由をゲンが告げないため、カオルはこれを拒否し、百子もまた女児の花を愛でる気持ちを尊重してゲンを窘める始末だった。

 結局、剣輪草を没収出来なかったゲンは、そのことでダンの叱責を受けた。ゲンはその花が宇宙原産のものであることは分かりつつも、有害な物と断定出来なかったと気まずそうに答えるのだったが、ダンはゲンの報告内容から花がケンドロス星のものと酷似していると断じ、その悪果を懸念した。
 確かに、地球外の存在であることを察知し、そこに有害を懸念したにしてはゲンの処置は甘い。ダンが云う様に「無理矢理にでも取り上げ」ずとも、こんな時こそMAC隊員としての立場を利用し、MACのデータにあるとしてでも、没収出来る術はあったが、この時のゲンは明らかに百子の硬軟織り交ぜた言に丸で抗し得ていなかった。
 ただ、その自覚がゲンに有ったのかどうかは不詳で、ゲンはカオルの花を愛でる気持ちを踏み躙ることを挙げて暗に花没収に難色を示したが、ダンは少女の気持ちよりもそれを看過したことで万が一にも地球の平和が蹂躙されることの方を懸念し、同時にそんなことぐらいで少女の花を愛でる気持ちが消えたりもしない、とした。
 相対的に見て、ゲンの表面的な思い遣りよりも、ダンの述べていたことの方が正論だったが、タイミング悪く綺麗な花を持ってきてガン無視された白川と桃井が哀れだった(苦笑)。

 結局、ダンの懸念が的中するのはストーリー的必然で(苦笑)、剣輪草は花弁を風車状に咲かせると花弁を回転させてカオルの部屋の窓ガラスをぶち破って屋外に飛び、それを目撃したゲンはレオに変身してこれを追って飛んだが、やがて剣輪草は山中で待っていたケンドロスと合体し、その武器となった。
 早速攻撃を仕掛けんとしたレオだったが、ケンドロスは頭頂部に合体した剣輪草の花弁(←ダンが触れていたようにブーメランと化していた)を回転させ、その突風でレオは近づくことも儘ならず、やがてケンドロスが飛ばすブーメランに滅多打ちにされて敗北した。

 レオが緒戦で怪獣や宇宙人に敗れ、ダンによるいじめとしか思えない特訓を経てリベンジ戦に挑むのは本作初期の黄金パターンだったが、そのことを考慮に入れても先の第6話とこの第7話の敗戦振りは酷かった………一太刀も浴びせられなかったんだもんなぁ………。
 ただ、二ヶ月近い特訓と奮闘を経て、ゲンも少しは精神的に逞しくなったと云える。ズタボロ状態で城南スポーツセンターに帰還し、人事不省のままベッドに連行されたゲンだったが、(結果として花が敵対的存在だったことから)ゲンに従わなかったことを詫びる百子とカオルを少しも責めることなく、医師に一週間は安静とされた負傷の身も顧みず、悪いのは花を操る者として、部屋を出る際にはカオルに今度花摘みに行こうとまで言った。

 MACに帰投しようとしたゲンはMACカーで駆け付けたダンから戦況を聞かされた。
 レオが敗れた後、ケンドロスは仙台に飛び、同地で被害が続出し、出撃したMAC機はすべて叩き落されていた。ダンの推測によるとケンドロス剣輪草と合体する前ならMACの力で対処可能だったが、今となっては無理と判断していた。例によって隊長御自らに無力さを断定されるMAC、いと哀れなり(泣)

 勿論、そんな話を聞かされてはゲンも仙台に飛ぶ旨をダンに申し出るが、ダンは勝算があるのか?と問い返す。そしてゲンの回答を待たずにとある山地に停車すると数枚のブーメランを取り出すや、次々とゲンに向けて投げつけた。
 仮想ケンドロス攻撃による訓練であることは明白で、ゲンもダンに反論するでもなく次々とブーメランを手刀で打ち落としたが、すべてを排撃し切れず、顔面を負傷し、地面に這いつくばった。
 するとダンはそんなゲンの様を責め立てるかのようにそれまで以上に激しくゲンにブーメランを叩き付けまくった。
 モロボシ・ダン曰く、
 「男は外に出て戦わねばならん。何の為だ?!
その後ろで女の子が優しく花を摘んでいられれるようにしてやるためじゃないのか?!」


 とのことで、これは先のゲンの、カオルの心を踏み躙りたくない、とした主張に対して、掛かる主張を行うならそれを守れるだけの強さを示さなくてどうする?と問い掛けているものと思われる。
 そして力も手段も示さず、ただただブーメランの連打に苦痛の声を漏らしながら耐えるだけのゲンに「意気地なし!」との叱責と更なる連打を浴びせるのだった。

 止むことのない連打にさすがにゲンも頭に来たのか、2枚のブーメランを同時に受け止めるとそれをダンに投げ返そうとする素振りさえ見せたが、そこにケンドロス再襲来の通報がダンの元にもたらされ、師弟相克(?)は水入りとなった。
 ケンドロスは二時間後には東京に襲来するとのことで、ダンはMACカーにて引き返した。それに対してゲンはそれを追わず、今度は百子と猛の協力を得て特訓を再開した。さすがにこれまでのダンとの関係で、自分の役割が一隊員としてダンに追随することではないことは学び取っていたと見る。

 特訓はダンと行っていたものと全く同じだったが、百子も猛も明らかに辛そうだった。百子はゲンにもう止めようと促し、猛にもその旨を命令形で伝えた(←第1話では「野村さん」と呼んでいたのを、この第7話以降、「猛」とファーストネームを呼び捨てにしている)。
 だがゲンは続行を促し、猛と百子もゲンの身を案じつつも、辛さを振り切るようにブーメランを投げ続けた。やがてゲンはそれまで両手で打ち払っていたのに加えて、飛び蹴りを用いることで数枚のブーメランを一度に叩き落すのに成功した。
 「出来た!」と何かの開眼を呟くゲンに、丸で我が事の様に喜んで駆け寄る百子と猛…………良いシーンなのだが、成功に脈絡が無さ過ぎるのが引っ掛かったな(苦笑)

 ともあれ、対剣輪草対策を体得したゲンはケンドロスを追ってケンドロスの暴れるコンビナート地区に走った。その間、ケンドロスを攻撃したマッキー2号、3号はブーメランに撃墜され、黒田、青島はTACを彷彿とさせる「脱出!」を敢行するのだった(苦笑)。
 程なく、ゲンは現場に到着し、ウルトラマンレオに変身した。

 初めこそ、傷の癒えぬ体が響いている様子に見えたレオだったが、ケンドロスがブーメランを飛ばすと特訓の成果を発揮し、飛来するブーメランを次々と足で蹴り落し、手刀や肘で叩き落し、残り1枚まで追い込むと体をくの字型に曲げた状態で回転させてブーメランと化して体当たりするボディブーメランを炸裂させた。
 直撃直後はしばし暴れていたケンドロスだったが、レオの攻撃はしっかり致命傷を与えており、やがて球体となってビルにぶち当たったケンドロスはそのまま爆発・炎上して落命した。

 MACステーション内にてケンドロス打倒を見届けたダンは優しく、それでいてどこか寂し気に微笑み、ラストの休暇では花摘みをしていてブーメランならぬ蜂に襲われた百子とカオルを守る様に空手技を披露するゲンだったが、平和な日常の再来を描くものとしては少しわざとらしく、蛇足気味だったと思うのはシルバータイタンだけではあるまい。


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令和二(2020)年一〇月五日 最終更新