ウルトラマンレオ全話解説

第8話 必殺!怪獣仕掛人

監督:外山徹
脚本:阿井文瓶
暴れん坊怪獣ベキラ登場
 冒頭、東京近郊上空にマッキー2号、3号の姿があった。怪獣出現の報を受けて出撃したもので、ゲンと共にマッキー2号に搭乗していた青島が云うには、厳重なMACの警戒網を潜って侵入した怪獣とのことで、そうなると相手は宇宙怪獣である可能性が高い。
 青島はその事を指して油断や勝手な行動をゲンに戒めていた。それに対して従う返事をするのゲンだが、特殊レーザーガンを搭載していることもあってか、何処か軽い。

 ともあれ、現場に到着したMACは両腕や尻尾を振り回して暴れる暴れん坊怪獣ベキラに攻撃を開始した。それにしても、ベキラとは諫言を容れられなかった古代の愛国政治家が投身自殺しそうな名前である(←何のこっちゃ)。
 だが、当然の様にMACの機銃掃射は功を奏さない。青島は歯噛みし、ゲンの台詞によるとミサイルもナパームも効かないとのことだった。
 奥の手として照射された特殊レーザーガンも効かなかったが、僅かに青島が指摘した眼への攻撃だけがベキラに痛みを与えたらしく、青島はマッキー3号にも眼への集中砲火を命じた。
 だが、猛り狂ったベキラは口から火を吐き、マッキー3号を撃墜。それを悔しがりつつも攻撃を継続する青島だったが、次の瞬間ゲンは地上を逃げ惑う人影を発見した。
 そのことをゲンに告げられ、既に避難命令が出ていたのにまだ逃げ遅れた人がいるのにバツの悪そうな青島だったが、彼は一人の民間人を重んじて怪獣による被害が出ることの方を恐れ、攻撃継続を命じた。だが、見捨てられないゲンは結局青島が止めるのも聞かずベイルアウトし、最前の独断専行を禁じた自分の言に従わないゲンに青島は切歯扼腕するのだった。

 直後、大地に降り立ったゲンはパラシュートを外し、民間人の救助に向かった。余談だが、地面に横たわったパラシュートの回収と、それを外すのは結構手間のかかる作業で、『ウルトラマンA』にて頻繁に行われていた「脱出!」が見た目より遥かに難作業であることが描かれていたこのシーン、個人的には結構好きである。
 ともあれ、程なくゲンはゴミバケツを防災頭巾代わりに逃げ惑う最前の民間人を見つけたのだが、その正体は何と大村(笑)。何でもパチンコで珍しく大勝ちして怪獣襲来に気付かなかったとのことだったが、そんな奴おらんだろう(苦笑)
 現実の世界ではいまだ怪獣襲来は起きていないが、地震や火事が起きて周囲の人間が皆避難に掛かればどんなに大当たりに熱中していても異変に気付かない筈はないし、良識ある店なら店員が避難を誘導する。
 まあ、逃げる途中に落とした球を拾い集める大村の愚行はさておき、まずは避難第一である。そうこうしている内にマッキー2号も撃墜され、憤ったゲンはMACガンをベキラの背中に放つと、あれだけ頑健さを見せていたベキラは苦悶の声を挙げるやあっさり地中に撤収した。

 これによりベキラの弱点が背中であることが判明したのだが、そんなお手柄的発見を無視するかのようにゲンはMACステーション内で槍玉に挙げられていた。
 撃墜されたマッキーからの脱出には成功したものの、黒田、青島、赤石はそれぞれに負傷しており、ゲンの命令違反(及び日頃から目立つスタンドプレー)を指して吊し上げていた。

 男性隊員三人が激昂し、女性隊員二人が気まずそうに見守る中、ゲンに反省の色は見られず、逆にベキラの弱点を見つけたのは俺だと言いたい気な反論をするものだから、三人の怒りはエスカレートした。
 一応、黒田は「怪我の功名でな。」と述べ、弱点発見自体を無視した訳ではなかったが、続けて怪獣がそう簡単に一度知られた弱点を何度も自分達の前に曝すとは思えんとも指摘した。
 結局のところ、ゲンの問題は命令違反よりも、そこに反省を見せない独断専行傾向を他の隊員達は責め立てていた訳だが、どうやらゲンにその自覚は無い様で、反省の色を見せないゲンに激昂した青島は手まで挙げようとしたが、それはダンに止められた。

 ダンはゲンに一週間の謹慎を命じたが、ゲンはそれに明らかに不服の色を見せ、尚も青島達を怒らせた。どうもゲンは命令に服従し続ければ大村を死に追いやったかも知らなかった可能性を指して自分の行動が間違っていなかったことを主張したかったようだった。
 シルバータイタンの私見を挟むと、大村を救わんとして戦線を離脱したゲンの行動を非とは思わないが、それにより青島の命令に従わず、同時にマッキーに反撃する機会を逸させ、結果的に撃墜・負傷を生んだことへの反省がないゲンの態度は頂けない。
 ダンに抗議しようとして、まだ分からんのかと言わんばかりに肩を掴んだ青島の手を振り払った態度からもゲンは周囲の言っていることが丸で分かっていなかった。

 ともあれ、ゲンは尚もダンに抗議した。自分が謹慎中にベキラが現れたらどうするのか?ベキラを倒せるのは自分だけだとも主張した。
 ダンはそんな友情やチームワークを考えないゲンを責めたが、ゲンはそれを「馴れ合い」とし、一生懸命戦っている内に自然と発生するのが友情やチームワークだと反論した。
 ゲンのそんな歪んだチームワーク論や思い上がりは口で言っても分からないと断じたものか、ダンはゲンがベキラを倒すのは不可能だとして、彼を体育館に誘った。
 詰まる所、他の隊員達が指摘するようにベキラの背中を攻撃するのは容易ではないことをゲンに知らしめるため、ゲンに自分の背中を攻撃するよう命じ、背後に回ろうとするゲンを杖で打ち据えたのだった。
 そしてダンは倒れ伏し、杖に縋りつくゲンに、秩父の山奥は我心山にある白雲庵という寺の十貫という坊さんを尋ねるよう命じ、そこでの特訓を命じるように「一週間の謹慎、確かに言い渡したぞ。」と言って、去って行った。

 バイクを走らせ、秩父にやってきたゲンが遭遇したのは昔話に出て来る「山へ芝刈り」に行ってそうな背負子を背負った翁(明石潮)。ゲンは老人に十貫坊かと尋ねるが、本人は否定する。かといって、翁はインカの長老バゴーでもない(←何の話だそれは?)。
 ただ、自分が十貫であることを否定するこの老人、次々に吐き出す否定台詞に全く説得力がなかった
 素性を尋ねられた直後に、「ダンの奴、また厄介事を持ち込みおったな………。」と呟いたことからも、どう考えてもダンと旧知であることは一目瞭然。また、顔なじみと思しき少年(小林達彦)が「十貫坊!」と呼んで懐いている状態で、「本人がそうでないと言っているのに、こんな確かなことは無い筈じゃ。」と否定しても否定になっていない(そもそも本人が嘘をついているなら、これ程不確かな事は無い(苦笑))。

 そんな十貫にゲンは土下座してでも教えを乞うが、十貫はその背中を踏んづけて通り過ぎる始末。かといってゲンはそのまま帰る訳にも行かない。山中で孤独な空手修行に明け暮れるもその様を連れの子供に笑われる始末で悶々とするしかなかった(←この時のゲンに気持ちは良く分かる!道場主も少年時代に自宅近くで空手の基本練習や剣道の素振りを行う際に、気合を入れれば入れる程周囲のクソガキどもが笑った苦い記憶が有る)。

 どうしていいか分からないまま、十貫に着かず離れずでついて行くゲンだったが、突如十貫は川を越えるのに少年を抱いたままジャンプし、岩壁を足場に向こう岸へと跳んだ。空手で云うところの所謂三角跳びだったが、それを見たゲンは、この動きが出来ればベキラの背後を取れると踏んで、十貫の後を追うように跳んだ。
 その試みは多くの人々が予想したと思うが、充分に跳ねれず川の中へどっぽーん!!(笑)だが、十貫は真面目な顔でゲンの動きを見守り、少し満足そうに頷くと「放てば天に道じゃ。何事も雑念を捨てて、肩から力を抜いてやってみなされ。」と助言した。
 これに何かを掴んだ様にゲンは三角跳びを続けた。勿論何度も川の中に飛び込むことになったのだったが、悔しそうにしつつも過去の何のヒントも掴めないままがむしゃらにやっていた訓練に比べるとまだ少し有意義な時間を持っている様に思われた。

 そして夜明け、ゲンは遂に三角跳びをマスターした。一度マスターすると完全にものになっており、ゲンの会得を見届け、礼を受けた十貫は東京に怪獣が現れたことをゲンに告げ、早く戻るよう促した。
 十貫が言った様に、東京ではベキラが肩書き通りの暴れん坊ぶりを発揮していた。空中からはマッキー2号に搭乗していた赤石と桃井が、搭乗者不明のマッキー3号がベキラを攻撃したが、ベキラは背中を隠すように正面に相対して機銃掃射を凌ぎ、両機を撃墜した。
 地上からはダンと青島がMACロディーからの砲撃でベキラを攻撃していたが、やはりと云おうか、勿論と云おうか、然したる効果は上がらなかった。一連の展開に業を煮やした青島はMACロディーから飛び出すと、やはり背中から攻撃すべし、として自分がベキラの股下を潜り抜けて背後から攻撃するので、正面からの攻撃を続けて欲しいと要請した。
 勿論、これは非常な危険を伴う攻撃で、ダンは「命令だ!」として止めたが、青島はそれを振り切って特攻した……………空を飛べるマッキー2号と3号で挟撃するという考えは無かったのか??

 ともあれ、飛び出してしまった以上、青島の成功に賭けるしかなく、ダンは援護射撃を命じた。そしてベキラが火花を放射するのを掻い潜って背後に回り込まんとする青島だったが、容易には近付けず、遂にはサブマシンガンを取り落として地面に倒れた。
 そこへようやく駆け付けたゲンは、「十貫坊に会ったか?」というダンの問いに首肯するとそのままバイクで危機に陥った青島の元に駆け寄った。
 助けに来てくれたゲンに何処か気まずそうに「俺も命令違反しちまったよ。」と呟く青島。何とか重傷は免れたと見たゲンは青島にバイクで戦線離脱するよう促し、自分はベキラの背後に回るとした。
 さすがに危機を救われた上に、自分も命令違反しているとあっては青島もゲンに詫びて、謹慎中で武器を携行していないゲンにMACガンを渡してその場を離れた(ダンの元に戻った青島は、ダンの命令を受けた黒田によって強制退場(笑))。

 青島のMACガンでベキラを銃撃しつつ背後に回ろうとしたゲンだったが、ベキラも体をその都度反転させて容易に背後を取らせない。そして遂にゲンが仰向けに倒れたところを狙って踏み潰さんとしたが、次の瞬間ゲンはレオに変身した。
 かくして最初で最後の一騎打ちが行われたのだが、殴り合いでは完全にレオが優勢に立っていた。ベキラが頃合いを見て放つ火花も躱され、素早さでもレオの方が勝っていた。ただ、ベキラは背中以外相当頑丈な様で、光線技が得意ではないとはいえ、後々多くの怪獣・宇宙人を屠ったレオのエネルギー光球にも耐えた。
 それでもレオは地道にベキラを叩き続け、グロッキーになったところを見計らうとジャンプ一番頑丈そうな岩山を足場に三角跳びをして、ベキラの急所である背中にレオ二段蹴りを決め、ダンが穏やかに、満足そうに微笑む中、ベキラは背中から火花を上げて絶命した。

 場面は替わってMACステーション。ダンは最前の笑顔を一変させた厳しい眼差しをゲンと青島に向けていた。命令違反に対し、ダンは青島に五日間勤務に就くことを禁じ、まだ五日の謹慎期間が残っているゲンにも謹慎に戻るよう命じた。
 とはいえ、ベキラ退治が済んだ後とあってか、先にゲンが謹慎を食らった時に様な刺々しさは無かった。ダンは城南スポーツセンターからゲンを返して欲しいとの矢の催促が来ているとして、謹慎中スポーツセンターに戻るよう暗に伝えた。ただ、大村がゲンを求める理由が「忙しくてパチンコに行く暇もなくて悲鳴を上げているらしい。」というもの(笑)。どこかふざけており、何処か微笑ましくもあった。
 同時に青島には謹慎期間をしっかり脚の治療に宛てるよう告げ、青島も笑顔で礼を述べた。かくして互いに命令違反をし、和解した二人の男は笑顔で職務から離れた。この辺りTACの山中同様、怒りっぽくても変に根に持たない分、青島はさばさばしている。ま、現実の世界でも直情的な男はそんなものかも知れない。
 かくして第8話は終結した。理由は不明だが、戦場から青島を連行したのを最後に黒田は番組を去った。

 ここで「命令違反」に対する個人的考察を少し。
 現実世界の軍隊組織において命令違反は厳罰対象である。ただでさえ命令違反を快く思う上司は稀少である。まして軍隊ともなると一人の勝手な行動が時に夥しい犠牲を生むことも有り、それを戒める為にも、そして命令違反によって生まれた害に対する責任を取らせる為にも、厳罰をもって処することが多く、それが死罪であることも珍しくない。
 この第8話でも、大村を助けんとしたゲンの独断専行も青島が言った様に、ベキラを取り逃がすことで更なる犠牲が生れたのは充分あり得たことで、避難勧告に従わない大村(しかも理由はパチンコ!)が落命していたとしても、「自業自得」と云えなくはない。

 一方で、戦場では臨機応変が必要となることも珍しくない。
 「将、外にあっては君命に従わざること有り。」という言葉もあり、それゆえか命令違反による行為が手柄に繋がればその罪は不問となることも多い。
 恐らく、ゲンの命令違反にあれほど厳しく出ながら自分も命令違反をした青島は、ゲンが命令違反したことよりも、それに対する反省がないことの方に立腹していたと思われ、彼自身、本当に必要な時は命令と異なる行為が必要な時もあると思っていたのだろう。

 そして命令違反に対する処置だが、どんな世界でも「全くの不問」は良くないだろう。
 軍隊ならずとも信賞必罰は組織を率いる基である。「結果オーライ」をたてに皆が皆独断専行に走ったら組織としての行動等あったものではない。特に第8話前半のゲンみたいな思い上がり状態にある者は組織の和を乱し、いつかとんでもない害悪をもたらすのは想像に難くない。
 勿論、良き結果をもたらしたのを全く無視するのも良くない。臨機応変が必要な時は確かにある。それゆえ、良き結果をもたらした命令違反に対しては、賞も罰も与えるのが筋だと思う。
 そこを行くと、ゲンと青島に命令違反に対して謹慎は遵守させつつも、彼等の為した功を認め、その負傷やプライベートを気遣うダンの計らいは粋だったと云えよう。


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令和二(2020)年一〇月五日 最終更新