仮面ライダーOOO全話解説

第10話 拳と実検と超バイク

監督:柴崎貴行
脚本:小林靖子
 前回の「3つの出来事」は「1つ、爆弾に取り憑かれた男の欲望からメズールのヤミーが誕生。2つ、OOOはアンクの制止を無視してラトラーターのコンボを発動。そして3つ、映司達の前にメダルシステムを開発した真木が現れた。」というものだった。

 前話は鴻上生体研究所の10周年を祝う鴻上会長とDr.真木の(巨大タブレットをTV電話とした)対面で終わっていたが、それがそのまま続いていた。
 Dr.真木は「設立10周年」に何の思い入れもなく、鴻上会長にも「大袈裟過ぎやしませんか?」としていたが、「誕生日」というキーワードに思い入れの強い鴻上会長にすれば「祝い過ぎるという事などない。」とのこと。
 そもそもDr.真木は「終わり」にこだわり、鴻上会長は「誕生」にこだわるのだから、価値観的に両者の会話が噛み合わないのも無理はなかった。

 ただ、鴻上会長は本気でDr.真木の能力を絶賛・感謝していて、「天才である君が私に賛同してくれた素晴らしい日でもある。メダルを集め、無限を超えた力を実現させるという私の計画にね。」との賛辞も述べていた。
 同時に、「そのとてつもない力を受け止める器」をOOOに決めた、ともしていた。Dr.真木もこれに賛同し、新開発のカンドロイドをOOOに使ってもらおうと思っていたことを告げた(Dr.真木はシステム次第では他の人間でも出来る可能性を仄めかせ、暗に後藤がそれに色気を見せていた)。
 無限をも超越するメダルの力を受け止める「器」をOOOとすることに両者が合意したことを、鴻上会長は「素晴らしい!これでまた新たな誕生日となった!」と、更なるハイテンションを見せてTV電話の通信を切った。しかし意見は一致してもDr.真木には何の感慨もなかった。曰く、「祝うとするなら終わり。終末ですよ。」なのだから。
 そんなDr.真木が自室の覗き窓をそっと開くと、別室でせっせと爆弾を作成している研究所所員・只野(坂本真)がいた。前話の終わりに少し出て来た彼はただの研究員かと思いきや、こいつが真犯人だったのね。
 只野が新たな爆弾を完成させると同時に巣から新たなヤミーが一匹生まれ落ち、Dr.真木は実験経過に興味深そうに頷くのだった。

 場面は替わってグリード達の隠れ家。そこではガメルメズールを介抱していた。4枚ものコアメダルを奪われたメズールは息も絶え絶えでかなり苦しそうだった。
 心配し通し眺めるとは対照的に、ウヴァは言葉ではなく怒りを隠せない態度でメズールを思っていた。
 ただ、苦しみながらもメズールは巣から生まれるであろうサメヤミーに期待を繋いでいた。

 場面は替わってようやくクスクシエ控室。映司とアンクの主役コンビが登場。
 前回コンボで無理をした映司はまだその極度疲労が癒えない様で、そんな映司にアンクは暴走を恐れてメダルを預けるを辞める、としていたのだが、そこへタカカンロイドがやって来た。
 さすがにDr.真木が爆弾犯を知っているとあっては、映司はただで帰した訳ではなく、タカカンロイドに尾行させていたのだった。負傷の身を押して外出する映司を「何が面白いのやら…。」と揶揄するも、「奴には案外メダル集めの才能がある。」としてぶっきらぼうに「言ってみるか…。」とその後を追うアンク。
 そんなアンクの一連の言動を批判し、「嫌な奴……お兄ちゃんの体だから余計に嫌だ。」と呟く比奈。
 ただの愚痴会話に見えるこのシーンもよくよく見れば、二社二様に徐々に映司の影響を受けていることが分かる。

 タカカンロイドに追随した映司とアンクは鴻上生体工学研究所に到着し、そこにヤミーの巣があると踏むに至った(同時に先にDr.真木の台詞に関心を抱いた後藤も来ていた)。  到着するや即座に、巣から生まれたサメヤミーの一体と遭遇し、映司はOOO・トラーターに変身するやこれを追った。
 チーターの俊足で追い、トラの爪を地面に突き立てて、ストッパーとするアクションは面白く、例の連速射キックでサメヤミーを秒殺。やはりメズール眷属の水棲ヤミーは数が脅威なのだろうか。
 OOOの潜入を察知したDr.真木は研究所内の緊急事態用システムを発動させ、(他の研究員や後藤のことをお構いなしに)隔壁という隔壁を閉じ、OOOに待ったをかけた。
 Dr.真木曰く、「もう少し後にしてもらえますか?」とのことで、その理由を「経過観察中」とした。つまるところ、爆弾好きな只野がグリード(=メズール)に目を着けられ、ヤミーの巣を産み、爆弾作りに没頭して欲望を叶え始めた訳だが、Dr.真木は今後のメダル研究の為に、巣の力を観察したい、としていたのであった。
 だが、それは映司ならずとも許せないことだった。「観察」は「爆弾被害発生の黙認」を意味し、過去の経験上、知人が爆発に巻き込まれるのを救えなかったトラウマからも到底許せないのは明らかだった。
 しかし映司が露わにする怒りに対してもDr.真木はどこ吹く風で、「研究ですから。」で片付け、むしろその犠牲による「人の死」を「人生の完成」とする持論を再度展開した。特撮にこういうマッドサイエンティストが欠かせないときは確かにあるが、やはり気分良くないな………。

 話にならないと踏んだ映司はDr.真木を無視して、只野の犯行を阻止する為、予め尾行させていたタカカンドロイドを追うことで只野を発見し、これを取り押さえた。
 映司が只野から奪い取った計画書によると、爆弾を仕掛けられた場所は、こともあろうか人でごった返す遊園地。しかも7箇所で爆発予定時刻まで後3分!
 只野自身は計画書を奪われたことに大声で「俺の爆弾!」と連呼した為、警備員に拘束される様なアホというか、きちぴーというか、いずれにせよ小物だったが、爆弾はそうはいかなかった。
 前回同様、大声で叫びながら来園客達を逃し、時限爆弾の配線を次々と外して回った(幸い、爆弾の解除はコード外すだけで出来た)。必死の形相で走る映司の脳裏に去来していたのは、やはりかつて守れなかった少女とそのことに対する無念だった。そしてその想いは今度こそは誰も死なせないという強い意志を漲らせていた。

 最後の1個の場所はトイレで、そこには1人の少年(鈴木福)が手を洗っていたのだが、その姿と過去のトラウマを重ねながらダイビングして時限爆弾に手を伸ばした映司。あの時助けられなかった少女の変わり果てた姿を前に絶叫・号泣する過去の自分の姿がフラッシュバックしたが、何とか間に合った!
 残り1秒という、ありがちなタイムで(笑)爆発を阻止した映司は、状況が分からず首をかしげる少年に笑いかけ、サイズが合わないとしながらも自分のパンツをプレゼントした。  いい笑顔だったし、映司らしいワンシーンだが、少し下世話なこと言うと、パンツ貰って嬉しいかなあ?しかも(子供から見れば)おっさんのパンツなんて。勿論、女物を渡せばいいという意味ではないが(苦笑)。

 場面は替わって鴻上生体工学研究所。そこでは冒頭の「システムさえ作れれば人間でもメダルの力を扱える。」というDr.真木の台詞に興味津々状態だった後藤がいたが、先の隔壁閉鎖で所員ともども閉じ込められた上、折悪しく巣から孵化した大量のサメヤミーが所内を跳梁跋扈していた。後藤、不幸……。
 しかしそんな境遇にもめげず、逃げ惑う所員達を誘導しながら孤軍奮闘でサメヤミーを撃退しながら隔壁を解除していく後藤。「元警察官」という設定を無駄にしていないのが素晴らしい。
 そこへ映司も戻ってきてアンクと合流。その2人に対し、Dr.真木は、只野の研究が阻止されたことには「ヤミーの観察が出来たの有意義だった」として、新型のカンドロイドはベンダーに装着して使用することを勧めて来た。
 相手のДа(Yes)もHet(No)も意に介さず、「後で感想を聞かせてもらえたら今後のメダル開発にも参考…」と自己都合を語り続けるDr.真木を映司の右フックが襲った!
 殴ったように見せて実際には殴っておらず、Dr.真木の鼻先をかすめた拳を変電盤に叩きつけた映司はDr.真木を睨みつけ、「有り難く使わせてもらいますけど…これ以上俺に話掛けないで貰えます?ねっ!」と言葉は丁寧でも、口調はドスが効きまくりで、形相もかなりのもので言い放った。
 研究に目がくらみ、人の命を何とも思っていないDr.真木の言動・態度・冷血振りに静かながらも激しい怒りを露わにする映司。その怒りを丸で意に介さないDr.真木だったが、次の瞬間意外な反応を示した。
 一瞬殴られたと思ったのか、表情は変えずとも体をのけぞらせたDr.真木の腕から例の人形が転げ落ち、その瞬間、Dr.真木は凄まじいまでに周章狼狽し、呼吸までまともではなくなった。
 精神的にかなり動揺し、立ってもいられない状態から何とか人形を拾い上げ、腕に乗せたDr.真木は辛うじて落ち着きを取り戻したが、それでも完全な平常心は取り戻せていないようで、そのままその場を立ち去った。

 ともあれ、Dr.真木から貰った新型カンドロイド=トラカンドロイドを取り敢えず使用にかかった映司。OOOに変身すると言われたようにライドベンダーにセット。ベンダーのフロント部が持ち上がって虎の顔の様に変形し、意思を持った獣のように暴れ出す、新兵器トライドベンダーとなった。
 単独で次々とサメヤミーを轢き殺すほど強力なのは間違いなかったが、、ロデオの猛牛の如く制御が聞かず、苦戦する映司を馬鹿にするアンクと、轢かれかけて唖然とする後藤(←御丁寧にも、映司はすれ違った後藤に狼狽えながらも挨拶を欠かさなかった)。
 制御に四苦八苦していたら、ここで再度正気を取り戻したDr.真木が使用法をレクチャー。
 それによるとコンボの使用が有効で、コンボ使用時に問題となる肉体への負荷も、「過剰なエネルギーはすべてこのトライドベンダーが吸収してくれますから。」とのことだった。
 Dr.真木自身には辟易しながらも、助言は大切と見た映司は大慌てでアンクを締め上げてメダルを吐き出させた。しかもいざメダルが出ると「邪魔!」と言ってその手(しかないが)を払いのける扱い(笑)。常日頃の態度が悪いとはいえ、アンク、前回から扱い酷過ぎ(苦笑)。

 Dr.真木の言う通り、ラトラーターコンボになるとトライドベンダーは制御可能となるとともに、映司への負荷は機体が吸収し、ベストコンディションとなった。疾走するトライドベンダーに早くも慣れたか、OOOは飛び掛ってくるサメヤミーを1対、また1対とメダジャリバーで次々と斬り伏せ、トライドベンダーが発射したメダル弾は数体まとめて撃破するという有効性を見せた。確かに人格には相当問題あるがDr.真木の開発能力は鴻上会長が認めるよう、天才的な様だ。

 ラストシーンはクスクシエ。
 比奈の手料理を食しながら、束の間の安らぎを満喫し、「とっても美味しいよ!」という映司と、「フン、まぁまぁだな。」と宣うアンク。
 普段の彼からすれば、口調は相変わらずでもまだましな発言だったが、比奈から返ってきたのは「は?別にアンタには聞いてないし。」という悪態。
 それに対して、「くっ。いつか殺すぞ…。」と悪態をつき返すアンクだったが、そこに制止の台詞が飛んできた。
 「ダメよアンクちゃん、まずはご挨拶から始めましょうか。レッスントゥーミー!」と宣うのはメガネの女教師にコスプレした知世子さん!(ぽ)
 戸惑いながら悪態をつくアンクだが、知世子さんはまるで動じず、「失せろ!」は「消えて下さい。」、「いい加減にしろよ!」は「これぐらいにして下さいますか?」と根気よく訂正(笑)。
 アンク君、知世子さんのレッスンが嫌なら、代わりに私、シルバータイタンが………………(←以下、ネット上でも書くのがはばかれる妄想が続くので今回はここまで)。


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平成二七(2015)年一一月二二日 最終更新