仮面ライダーOOO全話解説

第11話 旅人とアゲハ蝶と有名人

監督:金田治
脚本:米村正二
個人的恍惚 放映当時、この回は物凄くいい気分で迎えていた。放映の3日前に、主題歌である「Anything Goes!」のCD(初回限定版)を購入していたのだが、プロモーションDVDにはほんの一秒(2分27秒から2分28秒にかけて)だが、シルバータイタンが映っていた…………嗚呼、摩季ネェファンとライダーファンの両方をやっていたことに(例え自己満足でも)こんな多幸感を覚える日が来ようとは………(陶酔)。

 では本題だが、第9話同様、最終勝者が誰になるのかを問いかけるナレーションが流れ、回想はトライドベンダーに登場してメダジャリバーでサメヤミーを斬りまくるOOOの雄姿だった。
 そして冒頭の舞台はクスクシエ。「パンツは天日干しに限る。」と言いながらクスクシエの看板に洗ったパンツを干す映司…………って、おいっ!飲食店の看板に下着を干す馬鹿がいるか!?(笑)
 ともあれそこに1人の客(阿部進之介)がやって来たことにストーリーは始まった。風に飛ばされた映司のパンツを顔面に食らった不幸な男は映司の知人で、筑波敬介(←…………って、何ちゅー名前……まさか「筑波洋」+「神敬介」かい!?)。何でも以前映司がバンコクで世話になった恩人とのこと。
 ちなみに筑波は映司に、「マイペンライだよ映司!」と声を掛けていたが、「マイペンライ」とはタイ語で「大丈夫。どうにかなる」という意味で、筑波がタイ語で一番好きな言葉。どうせ「筑波敬介」何て名前を使うほど昭和に傾倒するなら、『仮面ライダーSPIRITS』にちなんで「アイタ・ペアペア」と言って欲しいところだ(笑)。
 ちなみに「大丈夫だ。なんとかなる」は泉刑事の口癖でもあったそうで、比奈もしきりに頷いていた。
 知世子さんも知っている高名な旅ブロガー・筑波によると、世界放浪の旅が終わったので、旅を本にして出版するという「次なる夢」に向けて行動を開始する為だった。

 場面は替わってとあるライドベンダー前。そこではガメル三遊亭小遊三師匠と化してベンダーの下をごそごそ探していた。
 そこに現れたメズールが、「何をしているの?」と尋ねていたが、見りゃ分かるだろ(笑)。
 見た目、まんまメダルが落ちていないか探していた訳だが、「メズール元気ないからメダルあげて元気出しても……。」と、答えながらも夢中で、声の主がメズールであることに気付いていなかった。こいつ、人間を襲う側の存在でなかったらいい奴なんだろうなぁ………。
 「みっともないからやめなさい!」と、当のメズールに無理矢理引き起こされてから、声の主に気付いたガメル。そんなガメルメズールは「拾ったメダルなんて要らないわ。メダルならOOOから奪い返しなさい。」と命ずるのだが、その後の会話から見ても、ガメルの好意自体はメズールも嬉しい様だ。
 そんな2人のやり取りを面白くなさそうに見下ろしていたのウヴァは、ガメルを馬鹿にしつつ、自分は自分のターゲット(=メダルを増やしてくれそうな欲望の持ち主)を探そうとしていた。

 その頃、意気揚々と書き溜めたブログを大洋出版社に持ち込んだ筑波だったが、判定はボツだった。
 筑波曰く、「本にするには文章力がなさ過ぎるってさ。旅ブログ人気No1の澤田幸太郎ぐらいの文章力を身につけてから来いって言われたよ。」とのことだった。
 「なあにこれしきで諦めるか!マイペンライマイペンライ!」と強がり、映司や比奈の前では努めて明るく振舞った筑波だったが、2人と別れると気落ちした様子を隠せずにいた。どうもこりゃ、ウヴァの格好のターゲットになりそうだ。

 場面は替わってとある高いビルディングの前。直後の展開からどうも警察関係らしい。そこでは後藤がかつての同僚(というかライバル)の三隅逸雄(田村圭生)とすれ違っていた。
 彼は後藤が鴻上ファウンデーションにいることも知っていたが、後藤は黙殺して去ろうとしたから、両者の関係は推して知るべしだろう。
 三隅は後藤の肩を掴み、「おい、待てよ!無視すんなよ。出世を競い合った仲だろ?」として話を強引に続けたのだから、後藤の無視したい気持ちは分かる。しかも三隅は、「お前警察に居た頃から世界を守れるような要職に就きたいって言ってたよな。アレ実現できたのか?それとも口だけかよ?」と「実現出来ている訳ないよな?」と嘲笑したい気な口調で尋ねて来た。
 一方の後藤も負けてはいない。肩に置かれた手を払いのけると「出世のことしか頭にないお前と一緒にするな。」と揶揄し返し、そのまま立ち去ると、「俺はいつか必ず世界を守る!」との想いを自己に言い聞かせた。
 視聴者的には鴻上会長の後藤に対する信頼が厚いのは分かるが、命ぜられて行っている行動だけを見ればパシリに近いので、こういうしかないのだろうけれど、実績が無い状態でこう反論するのだから、後藤もよほど信念が強いのか、三隅が嫌いなのか、その両方なのか………。

 その頃、出版社に断られたことを悔しがる筑波にウヴァの魔の手が迫っていた。勿論目的は殺害ではなく、ヤミー生産への利用である。
 出版社に認められなかったことから次第に引き合いに出された澤田幸太郎(杉崎真宏)への妬みに移行し、「自分も絶対に有名になる」とその欲望を滾らせる筑波の苦悩に答えるように現れたウヴァ
 頭からメダルを挿入され、久々の人間体を見せたウヴァに、有名になるにはどうすればいい、と問われた筑波が望んだのは「この澤田ってヤツくらいの文章が書けるようになれば…。」だったが、質問に気付いて頭を上げたときにはウヴァの姿は消えていた。

 そしてこの筑波の欲望を素体に生まれたヤミーは人気ブロガー・澤田を襲い、彼から何やら吸い取るとアゲハヤミーとなり、羽をばたつかせて鱗粉を放ちながら「受け取れい!」と告げた相手は筑波だった(この動きはクスクシエでアンクが察知した)。
 つまり対象の才能を奪い取り、別の対象に与えるというのがこのヤミーの特殊能力だった。突如ついた文章力を悪しき存在からの恩恵と露程も思わぬ筑波は一気に旅ブログを書き上げた。

 素早く駆け付けた映司は生身のままアゲハヤミーに挑むも、相手の飛翔能力に翻弄された。すんでのところでアンクに助けられ、OOOに変身し、肉弾戦では優位に立つも、結局はその飛翔能力で逃げられた。
 直後に到着した後藤は、OOOの取り逃がしを詰り、「何故お前のようないい加減なヤツがOOOなのか…。」と常日頃の鬱憤も滲ませた。
 きつく言われたせいか、映司も「目の前で困っている人を助けたいだけ。」と珍しく反論したのだが、後藤はこれを「小さいな。俺が見ているのは世界だ。」と一蹴。
 この台詞から、映司に対して能力云々よりも、使命感的に「相応しい人物」と認められない彼がOOOであることに納得がいかないのだろう。勿論、ドライバーの都合は分かっているの上で、分かっているから余計にムカつきもするのだろう。

 鴻上ファウンデーション会長室に戻った後藤は鴻上会長に、映司はOOOに相応しくない、と進言。だが鴻上会長は映司を「実に興味深い」、「実に素晴らしい」と評した。
 納得がいかないが、それ以上の進言もならず退出しようとした後藤だったが、鴻上会長はこれを呼び止め、Dr真木が新たに開発したという青色のカンドロイドを披露した。
 一瞬に新たな使命か?と表情を輝かせた後藤だったが、続けられた鴻上会長の台詞は「これを火野映司君に届けてくれたまえ。頼んだよ。」だった。
 更なるパシリ指令に絶句する後藤だったのは言うまでもない。
 失意の後藤を待ち受けていたのはDr.真木。「ドクター」という敬称付けで呼ぶものの、後藤がDr.真木に嫌悪感を抱いているのは一目瞭然だった(前話で隔壁に閉じ込められもしたしね)。
 だがDr.真木は「私は常々後藤君こそが世界を救う逸材だと思っていますよ。しかしそれを鴻上会長に認めさせるには結果を出さないと。」と切り出してきた。唆しの匂いがプンプンするのはシルバータイタンだけではあるまい。

 場面は替わってとあるラウンジでノートPCと睨めっこ状態の筑波。ブログのアクセスランキングを見て、順位の上昇を喜ぶも、今度は1位の目黒マサジというお笑いコンビに嫉妬の炎を燃やしていた(筑波は2位)。ちなみに「目黒マサジ」とは、目黒(山本栄治)、マサジ(黒川忠文)のコンビで、これを演じる山本、黒川の両氏は「アンバランス」という本物のお笑いコンビである。
 前作の『仮面ライダーW』でも本職のコメディアンが結構客演していたが、シルバータイタンは『笑点』かドリフ系の特番でしかお笑い番組を見ないので、コメディアンに疎いので、こういう時勿体ない気分になる(苦笑)。

 ともあれ、目黒マサジがトークライブをすると知り、今度は両者の喋べる能力に嫉妬していた。するとそこに筑波の心境を見透かしたかのように再度人間体のウヴァが現れ、次の欲望を尋ねた。
 「こいつらくらいのトークセンスを…。」と呟くと、今度は目黒マサジがアゲハヤミーに襲われ、そのトーク能力が筑波に注入された。そして襲撃の際に目黒マサジが負傷したことで出演する筈だった旅のトークショーに穴が開き、筑波は自信満々でこの代役を買って出た(ちなみに口調が関西弁に変じていた)。

 場面は替わってクスクシエ。アゲハヤミーが筑波に送った鱗粉が空を流れるのを見た映司はアンクにメダルの貸与を要求。事前に愛すばかり食べることを比奈に責められて辟易していたアンクは、比奈が筑波のトークショーに出掛けた(知世子さんのところにメールが来て知った)のにホッとした様に、映司にメダル貸与の条件として費用対効果のプラスを命じた。

 だがアンクとともに現場へ向かう映司をガメルが迎撃してきた。口調こそ愚鈍さを感じさせるが、ある意味純粋なガメルメズールの為にも戦意も高く、厄介な相手。映司もすぐにトラーターに多段変身して速攻。ガメルのドテッ腹に連続キックを打ち込むも、何故かOOOが所持していたメズールのコアメダル2枚が零れ出した。
 我がメダルが一番大事なアンクは慌てて奪い返せと指示したが、人命救助こそ一番大事なOOOは喜ぶガメルを尻目に、チーターレッグを疾走させて戦線離脱した。

 その間、ガメルに苦戦するOOOより先に現場には後藤が到着していた。背中にはバズーカ一砲を背負っており、自ら戦う意志を持っているのは一目瞭然だった。
 特に説明はなかったが、世界の為に戦うことに燃え、映司を認められない彼がDr.真木による先の唆しの乗ったのは間違いないだろう。だが、重火器を用いて尚、ヤミーとのタイマンは厳しく、奮闘むなしく後藤はボコボコにされた。
 それを物陰から観察していた教唆の張本人・Dr.真木は「ふむ…やはり普通の人間ではこの程度ですか。さようなら。後藤君に良き最後が訪れんことを。」と冷血且つ責任の欠片もない台詞を呟いてその場を去った。よほど「観察」と「終わり」しか興味が無いんだな、この男。

 その頃、会場では一足先に到着し、リハーサルを見ていた比奈が、筑波が関西弁になっているのを訝しがっていた。だがすぐにウヴァの姿を見て、以前の記憶(第5話)を思い出した。
 比奈の視線に気づいたウヴァはグリード体となってこれを殺そうと迫ってきたため、会場は混乱の坩堝と化した。

 一方、後藤、あわやのところにトラーターのOOOが駆け付け、とどめは刺されずに済んだ。しかし先のこともあってか、後藤は助けに差し出された手をはねのけた。
 そこへ駆け付けたアンクは「飛ばれる前に羽根を切り裂け!」と助言(←鳥系グリードだけあって、羽根の重要性は熟知しているのだろう)。OOOはこれに従い、渡されたメダルでタカキリーターに多段変身するとタカヘッドによる猛禽類の視力でターゲット・ロックオンすると、カマキリ斬りを見舞った……………の筈だったが、そこに後藤がアゲハヤミーに向かってバズーカを発射し、それはOOOに命中してしまった!というえげつない引きで以下次週へ。

 余談だが、制作者サイドの「次回も見て欲しいから。」という気持ちからそういう引きをする気持ちは分からなくはないが、TV番組全般に多過ぎて、視聴者が辟易していることを自覚して欲しい。
 「こうでもしないと見てもらえない…。」と思っているのなら、制作陣はよほど自作に自信がないか、ライダーファンの意欲を軽んじているかとしか思えない……。


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平成二七(2015)年一一月二二日 最終更新