仮面ライダーOOO全話解説
第9話 ずぶぬれと過去と灼熱コンボ
監督:柴崎貴行
脚本:小林靖子
冒頭で語られたハイライトは、ガタキリバコンボの活躍を背景に、9枚のコアメダルに触れ、最終的な勝者が誰なのか?と問いかけていた。
始まりの舞台はクスクシエであった。
妙な暗い雰囲気で始まるかと思われたが、それはハロウィン用のコスプレと空間づくりによるもので、知世子さんと比奈は魔法使いに、映司はヴァンパイアに扮していた。
常連客を招いての特別イベントらしく、かなり賑わっていた。元々クスクシエは歴代ライダー作品に出てくる店舗に比べて店が混んでいることが多いしね。
そんな店舗の中で、一応のねぐらを確保された、と一息つくアンクだったが、この店の女性2人は良くも悪くもそんな安穏とした状態を許さず(笑)、意図しないことながらアンクにはどうも苦手なことが続いた。
比奈は比奈でアイスしか食べないアンクの食生活が泉刑事の健康を害しないかを心配して普通の食事を食べさせようとするのだが、出されたのは泉刑事の好物である鶏肉。鳥系グリードであるアンクには共食いになるらしく、しかめっ面するアンクだった。別に鶏肉を食べる「鳥」は珍しくないと思うが(笑)。
一方の知世子さんはアンクの本体を「よく出来たコスプレ」と思い込み、「あらぁ、その右手よく出来てるわねぇアンクちゃん。うちリアル志向だから大歓迎よ。こうしていつでもお店のほうに降りていらっしゃい。大丈夫だから、ね?」と宣う。
ちゃん付けに戸惑うアンクは、映司に「何だあの女の俺を憐れむような目は?」と詰問したが、その答えは、映司がアンクを怪しまれず居候できるように話した、「悪い環境で育てられたせいで汚い言葉しか喋れないし、世間も知らないし、引き篭もり気味の外国の青年って設定」にあった(笑)。
アンクの女難は続いた。
不貞腐れながら食事するアンクの前に現れたのは里中だった(しかも黒猫のコスプレで)。要件は前回映司が前借りしたセルメダルの回収だった。
前回の獲得分が少なく、先送りを求めたアンクに里中は応じたが、「1日10%」というトイチ闇金もびっくりな「イチイチ」という暴利な利息に唖然としたアンクは渋々返済し、それがために脱力状態に陥ったから、踏んだり蹴ったりだった。
そんなアンクとは対照的にそこそこ盛り上がっていたクスクシエだったが、そこに爆発音が響いてきた。店の近くで時限爆弾によって車両が爆破されるという事件が起きていた。
現場に駆け付けた映司は、時限爆弾のセコンド音に気付き、野次馬達に退避を促した。幸い野次馬達は驚きつつもパニックにならず、映司の言葉に従って退散したため、大爆発が起こるも誰も巻き込まれずに済んだ。
犠牲者が出なかったとはいえ、いつになく怒りの形相で拳を振るわせる映司。そんな中で彼は1人の薄気味悪い中年(神尾佑)に気付いた。
中肉中背、眼鏡をかけた陰気な表情に黒い服だけでは「怪しい」とするのは失礼なところだが、左上腕部に乗せた人形が完全な怪しさを醸し出していた。しかも彼は映司を直視していた。状況的に爆弾犯か、その関係者を疑いたくなるところであるし、それ以前の問題として、人形連れで事故現場に現れては、よくて職務質問、悪ければ「不謹慎者」として袋叩きに遭いかねないだろう。
ともあれ、ヤミーを感知したアンクの報せを受けた映司は、アンクの指示通りにタカカンロイドを追った。そしてとある橋の上で、メズールの眷属であるサメヤミーの襲撃を受け、戦闘となった。その攻撃は、海面ならぬ地面から背びれを出しながら突進してくるもので、さながら『キン肉マン』におけるバッファローマンのデビル殺法の様だった。
クスクシエで映司から僅かな枚数のメダルと報告を受けたアンクは、相手の形態から「メズールのヤミー」と断定。同時に以前のピラニアヤミーの例同様に、「今回も一匹だけってことはないだろう。巣を探して一網打尽にするんだ。」と助言した。人間サイドからすると厄介な相手だが、1枚でも多くのメダルが欲しいアンクとしては好ましいところなのだろう。
巣を探すにも手掛かりに悩む映司は、同時に「欲望」の定義にも疑問を呈した。車両の爆破(←圧縮された水が爆発を起こしたもの)がサメヤミーから受けた水球攻撃に酷似していたことから、「金品を求める欲望」の他に「何かを壊したいという欲望」を映司は感じ取ったのだが、アンクはそれを「立派な欲望だ。」と肯定した。
物騒なことを書いて申し訳ないが、確かに破壊衝動はシルバータイタンも思うところがある。欲望の質を解した映司は再び怒りを露にして拳を固く握りしめるのだった。
場面は替わってグリード達のアジト。自分の眷属・サメヤミーが持ち帰ったメダルを山分けしようとしたメズールがはカザリがいないことに気付いた。ウヴァによると、OOOにまた1枚自分のコアメダルを奪われたのがショックだったとのことで、アットホームなのか、仲悪いのかよく分からない対人関係を見せていた。ともあれ、最年少の少女を演じるメズールが明らかに「みんなのお母さん」と化していた(笑)。
そして件のカザリは、OOOが「持ってる素振りも見せなかった」筈の自分のメダルを持っていたことから、自分達とアンク以外にもメダルに絡んでいる存在がいるのでは?と訝しがり、このままでは完全対になれないとの不安に捉われていた。
翌日、場面はクスクシエ。そこに授業に行っていた筈の比奈が飛び込んで来た。比奈の専門学校近くでまたも爆発騒ぎが起こったのことだった。
早速現場に駆け付けた映司と比奈。比奈曰く、「一気にじゃなくて、順番に爆発したんだって」とのことで、馴染みの場が被害に遭ったことに戸惑う一方で、「映司君、どうして昨日爆弾にすぐ気付いたんですか?それにもう一回爆発するって…。何か映司君いつもと違うから…。」と様々な疑問を呈した(「もし嫌なこと聞いちゃってたらゴメンなさい。」と謝りながら)。
比奈が恐る恐る数々の疑問を投げかけたのも、映司が先日同様に鬼気迫る表情で怒りを押し殺していたからに他ならなかった。
だが、意外にも映司はあっさりその理由を答えた。早い話過去の経験によるものである。
映司曰く、「音で解るっていうか…籠ってて腹に響く感じ。それに1回目の爆発で人を集めてからもっかい爆発させるって手口も何度か見たし。」とのことだった。
続けて曰く、「俺、旅先で内戦に巻き込まれたことがあるって、お世話になった村の人達と協力して。でも………。」と語る映司の脳裏には例の爆発に消える少女のトラウマ映像が重ねられていた。
と、そこへタカカンロイドがヤミー出現を告げてきた。しかも例の陰気な男がまたそこにいることに気付き、回想は中断せざるを得ず、まずはタカカンロイドを追う映司だった。
同時に、比奈への説明は自身の回想として続けられた。サメヤミーを追い、これと戦いながら、「でも、でも内戦はどんどん激しくなって、食料もなくなって、俺はボロボロで情けなくて…村で一番最初に仲良くなったあの子を…あの子を、助けられなかった!」と。最後の方は無念断腸の思いが込められていた。
かくして少女が映司とどういう関係だったのか?何故映司が折に触れて彼女を思い出していたのかが繋がった。かかるトラウマとなる経験があっては爆発物に過敏になるのも無理ないことであった。同時に映司の無償の優しさも理解出来る話である。
また、この映司の独白は視聴者的には比奈への説明が中断した様に見えたが、比奈は最後まで聞いていたようで、一人歩きながら、「それでも…そんなことが有っても映司君は……そんなことが有ったから。」と思いながら彼の数々の笑顔を思い出し、その気持ちを慮っていた。
その間もサメヤミーとの戦闘は続いていたが、殴り合いではOOOの方が優勢だった。だが、サメヤミーが地面を海面の如く素早く動き出すと劣勢に転じた。
そこへ駆け付けたアンクからコアメダルを受け、タトラーターに多段変身すると素早さに関する劣勢は解消された。だがそこへメズールとガメルが乱入。
さすがに3対1では勝負にならず、アンクも一時撤退を勧告したが、OOOはカザリのコアメダルを用いての「黄色のメダルのコンボ」を使う、と宣した。
だがそのコンボが危険を伴うことをグリードたちは一様に知っていて、アンクは「ヤバイって言っただろうが!」と、メズールは「あなたはコンボの力に耐えられるだけの器かしら?」とそれぞれに投げ掛けた。
だが映司にとって大切なのは身の安全よりも、「早くヤミーの巣を見つけて犯人を捕まえないと…!」で、OOOは躊躇いなくメダルをセットし、「ライオン!トラ!チーター!ラトラーターラトラーター!」の電子音声を経て、オールイエローの戦士・仮面ライダーOOO・ラトラーターコンボが初登場した!
猫科の三大猛獣の能力が集約されたためか、とにかくこのコンボの俊敏さは群を抜き、ライオンの鬣は強烈な光でメズールとガメルを怯ませ、何枚かのメダルを吐き出させたほどだった(←勿論それ等はアンクが横取り)。
更にその光は強力な熱線を伴い、河川を瞬時に干上がらせた。仮面ライダーストロンガーの電気ストリームによる河川蒸発以来の大技である。
この攻撃は水棲生物系グリードであるメズールには特に痛手だったようで、メダルの減少で下半身の装甲がなくして身悶えるメズールはガメルに助けを求めずにはいられず、その前から心配し通しだったガメルは即座に応じてトンズラした。
形成は完全に逆転し、タトラーターの段階でグロッキーに追いやられていたサメヤミーに勝ち目はなかった。かくして勝負はガッシュクロスなるX斬りで決した。
勝負には勝ったOOOだったが、さすがにアンクが懸念した様に映司はかなり消耗していた。やはりメダルを渡すべきではなかった、と愚痴るアンクだったが、息も絶え絶えな映司の視線の先には例の怪しい男が立っていた。
さすがにここまで怪しさ満載で何度も画面に現れては、現実の世界でも「無関係」では通らないだろう。一応、映司は断定を避け、「関係者」としつつも、「ヤミーに憑かれた人間かも?」とも思ったが、後者は「ヤミーが憑いている人間は気配で解る。」としたアンクが否定した。
その会話が聞こえたのか、男は「その通り爆弾もヤミーも私ではありません。ある爆弾好きの男がいましてね。現在経過観察中です。」と答えた。
だが、この回答は自身が犯人であることを否定する一方で、犯人を知りつつその犯行を黙認していることを肯定するもので、許されざる意味を持っていた。
静かに怒る映司に構わず、「OOOの力をじっくり観察出来たのは幸運でした。」と続ける男。ちなみに男の台詞はすべて左腕に乗せた人形に語り掛ける形で発せられたものだった。口調は丁寧でも、相手の眼を見て話さないとは無礼な奴である(苦笑)。声を発しないときは相手の眼を見るのだが。
それから男は立ち去ろうとしたが、アンクが待ったをかけた。「色々と詳しいようだな。お前は何者だ?」と詰問するアンクに、「人はその人生を全うするまで何者でもありません。終わって初めて人として完成する…互いに良き終わりが訪れることを。」と奇妙な答えを残して今度こそ立ち去った。
この男の言葉を肯定するなら、人間は死ぬまで自分を確認できないことになる。知識上、この男が科学者であることを知っているが、破滅を前提にしているところはどこかアドルフ・ヒトラーに似ている(←注:治家になる前のヒトラーが画家や建築家を目指していたのは有名だが、そのヒトラーが好んで描いた絵は廃墟だった)。
場面は替わって鴻上生体研究所。そこに現れたベンツからは大型タブレットを持った里中が降り立った。勿論タブレット画面には鴻上会長がいて、例のハイテンションで、
「ハッピー・バースデイ!鴻上生体研究所!創立10周年おめでとう。
我が財団の誇る天才、Dr真木!我々のメダルシステムが完成したのはキミのおかげだ!」 と例の男に祝辞を送った。
つまるところ、男の正体は真木清人。メダルシステムの他にを開発した、鴻上ファウンデーションの頭脳というべき天才科学者だった。うーむこいつも鴻上ファウンデーション関係者か………(苦笑)。
いつものハイテンションで豪快に笑う鴻上会長とは対照的に無表情のまま礼を言うDr真木は、この時も視線を人形に注いでいた。
その後、研究所内部とどこかの水底に仕掛けられた時限爆弾を映したところで以下次週へ。
余談 この回から、本作の主題歌・「Anything Goes!」のCDのCMが流されるようになった。当然プロモーション映像が用いられ、熱唱する大黒摩季―摩季ネェが映るのだが……フ、フ、フ、フ、フ………ハ、ハ、ハ、ハ、ハ……ダァーハッハッハッハッハッハッハッハッ!!
ついにこの時が来たか…………(感涙)……このCDは初回盤限定で、プロモーションDVDが付いているのだが、ここにシルバータイタンが参加しているのだ!(←実話だ!)
菜根道場道場主が摩季ネェファンであるのは前述した通りだが、放送開始の翌月、摩季ネェのファンクラブから会員である楽曲房ダンエモンのもとに「プロモーションDVDの撮影に参加しませんか?」とのメールが届き、参加希望の抽選に当選したことでエキストラ参加が叶ったのである!
勿論シルバータイタンやダンエモンのコスプレをした訳ではなく、CMの映像に見られる様に、熱唱する摩季ネェとと主に熱狂するライブ客役なので、どんな映り方をするかが放映時点では不明(文章を綴る今は分かっている)だが、いずれにせよ、顔がにやけるのを止められないCMだった。
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平成二七(2015)年一一月二二日 最終更新