仮面ライダーOOO全話解説

第12話 ウナギと世界と重力コンボ

監督:金田治
脚本:米村正二
 前回の「3つの出来事」は「1つ、有名になりたいという旅人・筑波の欲望からヤミーが誕生。2つ、Dr.真木が後藤こそが世界を守るのに相応しいと唆した。そして3つ、後藤が誤ってOOOを撃ってしまった。」というものだった。

 勿論今回の冒頭は誤射の続きから。幸いというか、当然というか、誤射でOOOが致命傷を負うことはなかったが、この一撃で劣勢に立たされ、コンボで挽回するも、アゲハヤミーにしこたま殴られた末に逃亡された。
 こんな目に遭わされても尚も疲弊した後藤を気遣う映司。だが後藤の態度は「お前の助けなど…。」と相変わらず。
 後藤のこの行動と態度には、程度や想いの違いはあれど様々な人間が怒りを覚えただろう。そんな怒りをいの一番に露わにしたのはアンクで、後藤の胸倉を掴んで「何故OOOを撃った!?」と詰問した。
 だがこれに対して、後藤は「フン知るか。OOOの方こそ俺の邪魔をした……。」と半逆ギレ(←気まずさが昂じたのもあると思うが)。続けて、「それに世界を守るのはお前じゃない。俺に…俺にOOOの力があれば…。」と普段から抱いている無念を吐露する後藤に映司が言ったのは、「俺、後藤さんがOOOでもいいよ。俺は今自分がやれることをやるだけだし。一緒にやろうよ」。という意外も意外な台詞。
 「そうだ一緒にやろうよ!」という映司の台詞にも、その真意と心根を測りかねたのか、「俺を馬鹿にしているのか?」と悪意的にとらえ胸倉を掴むた後藤。アンクも映司に「バカか!?」と詰って、頬を掴んだが、それに対して「初めて(2人の)意見が一致したよね。」という映司のあっけらかんとした台詞に両者は毒気を抜かれたようになった。
 「ハッ!そいつは無理だな。封印を解いたお前以外OOOにはなれないんだよ。」と言い放つアンクに、驚く映司。だがそこへ前回ウヴァに襲われた比奈が(消火器で即興の煙幕を作って上手く)逃げおおせて来たので、醜い争いは中断した。
 後藤の無念も分からなくはないが、世界を守りたいのであれば(←その想いに偽りがあるとは思わないが)、余り「自分」だけに固執しないで欲しい。守るべき対象は大きく、その為には頼りになる仲間は1人でも多く欲しいところ。映司の対象を「小さい。」と言った後藤は、自分がこだわる手段対象こそ「小さい」ものとなっていないか自覚して欲しい。

 ともあれ、襲撃会場に駆け付けた映司は比奈の目撃証言から、筑波がグリードの親(にされている)らしい事を悟った。
 場面は替わってグリード達の隠れ家。
 OOOから奪取したコアメダルを嬉々として渡すガメルに、メズールも心底喜び、ガメルをお姉さんっぽい手つきでなでなでしていたが、現役女子中学生にこんな仕草させていいのか?どちらかというと知世子さんにアンクをなでなでするシーンを見たい気が………(以下、書くのもはばかられるシルバータイタンの妄想)。
 ともあれ、この快挙にはウヴァも褒め、打倒OOOへの意欲を滾らせた。ガメルウヴァは共闘を誓い、同時にメズールには更なる休養を勧めた。
 珍しく労りの気持ちを見せるウヴァだったが、腹の内では「もっとも、メダルは俺が独り占めさせてもらうがな……」と呟いていた。まあ、正義の敵はこうでないと、という気もするが(苦笑)。

 場面は替わって鴻上ファウンデーション会長室。
 そこでは独断専行を後藤が謝罪していた。自らの独断専行を隠さず、教唆されたことは口にしない後藤はなかなかに潔い
 里中もこの独断専行を問題としたが。だが鴻上会長は意外にも、彼の独断専行を「新しい後藤君の誕生だよ!」と絶賛した。意外な反応を好機と見たのか、「もしもメダルの力を制御できるシステムがあるのでしたら是非私に!」と切り出す後藤。しかし次に鴻上会長から返ってきた台詞は、「後藤君への誕生プレゼント…それは罰!しばらく謹慎、以上っ!」だった。
 そうだね、卑しくも企業の経営者たるもの、心根はどうあろうと信賞必罰はしっかりしないと。親が子供の反抗期を「成長の証」として喜んでも、その反抗行動で為した行為に触法・違法・不道徳があればそれは罰しなくてはならない様に。
 哀れ、鴻上会長が会話しもってかき混ぜていたケーキの生クリームを顔に被る後藤…………以前は突っ込まなかったが、顔●を連想する奴もいるから止めなって、制作陣。

 失意の後藤は帰途に就こうとして映司の台詞を思い返していた。そこへ現れたのは唆しの張本人・Dr.真木。そのからかい口調、態度、人格を嫌悪してか、「二度と俺にかかわるな!」と拒絶の意を示す後藤だったが、Dr.真木の口から「メダルを制御出来るシステム」というキーワードを聞いては「出来たのか?」と聞かずにはおられず、Dr.真木はほぼ前回と同じ「結果」への持論を口にした。
 ある詐欺師は「欲望があればどんな相手でも簡単に操れる。」と豪語していたが、差し詰め、今の後藤がその状態だろうか。

 場面は替わって、とあるカフェテラス。そこでは筑波が女性編集者(松山美雪)と打ち合わせをしていた。一流ブロガーの文才と人気漫才師のトークを手に入れた筑波は、彼女の言によると雑誌・ネットコラムの連載が5つ、TV・ラジオの出演が3つ、そして念願の本出版も控えた「時の人」になっていた。
 だが、ヤミーに取り憑かれて欲望の増幅した筑波はまだまだ満足していなかった。まあ確かに欲望とは叶う毎に増大する物ではあるが。

 場面は替わってクスクシエ。そこでは映司と比奈が、成功を修めながらも妙な変貌を遂げた筑波を案じていた。するとそこにヤミーの巣にされた影響か、ダイブ目つきの怪しくなった筑波が来店。その彼に電話やメールに一切返事を寄越さないことを映司が詰問した。
 だが、それには答えず、筑波は映司の体験談(内戦に巻き込まれた話)を自分に譲って欲しいと言ってきた。
 が、「もう面白い話も感動する話もネタ切れなんや。頼む、な?」というのである。
 少し私情を挟むが、文で有名になりたいという欲望が人三倍強いゆえに、シルバータイタンには全くもって許せない思考と発言である!欲望が共通・共感するゆえにそこに自力以外の手段に走るのは常人より許せないのである。
 そんな筑波に映司は「有名になっていったい何をしたいんですか?」と尋ねた。筑波の答えは「見返したるねん。俺のことを何もできへんヤツって馬鹿にした連中を見返してやるんや。」だった。
 「見返したる。」という気持ちも意欲の1つとしては決して悪いものではないが、余りに「自分」というものが無さ過ぎる。成程それでは「強い文章」は書けても、万人に笑顔をもたらす文章やトークは無理だろう。後藤の台詞じゃないが、「小さい。」の一言だ。
 映司としても筑波の目を覚まさせたいところだが、当然ヤミーに取り憑かれたものが耳を貸す筈もない。アンクが促したこともあって、映司は元凶であるヤミー退治に向かった。
 呆然とする筑波に、「一緒に来て下さい!見てもらいたいものがあるんです!」という比奈。大分ヤミーという存在のことが分かるようになったらしい。

 アンク、比奈、筑波が駆け付けたのは映画撮影所。そこでは芸能人(人見早苗)の輝きを狙うアゲハヤミーとOOOの戦闘が繰り広げられていた。そして謹慎中だった筈の後藤も再びバズーカ背負って現場に到着していた。
 自分の欲望からとんでもない怪物が生まれたことを悟らされ、愕然とする筑波。成程、欲望に取り憑かれはしたが、さすがは映司の先輩、その為に何の関係もない人間が犠牲になることは耐え難い様だ。
 するとそのタイミングを見計らったように、戦闘中のOOOが筑波のもとに来て言った。「筑波さん、内戦の話使ってもいいですよ。その理由が有名になりたいからでもいい。戦争の悲惨さを多くの人達に伝えることができるのなら。大事なのは”何をしたか”だと思うし。」と。
 そんな映司の想いと、「大事なのは「何をしたか。」」の台詞に衝撃を受けた筑波。そして後藤。
 筑波は、「お…俺…何もしてへん…嘘なんや…世界放浪の旅って…ホントは行ってないのに行った気になってブログ書いてただけや。」………って、待ていっ!端から虚偽なら文才以前の問題やんけ!まあ、反省状態なのでこれ以上は責めたくないが……。
 そして後藤だが、彼は「俺は…世界を守るために何かをしたか?まだ何もしていない。世界を守っている気になっていただけ…!」と自らを回顧していた。
 筑波の半生は続き、「俺…実力も実績もないのに人のことばかり羨んで嫉妬しとっただけや。」と呟き、それを聞いた後藤も「同じだ…俺も…!」としていた。
 だが終わった訳じゃない。前回の映司の台詞から「自分も今やれることをやるだけ。」と意識した後藤は、「世界を守ることに繋がる筈だ。」と自分に言い聞かせ、バズーカの援護砲撃を行うと、あれだけ嫌っていたOOOに例の新型カンドロイドを投げ渡した。

 新型カンドロイドが紐状でにょろにょろ動くのを見てOOOが狼狽えた。世界中を旅して様々な動物を見ていると思われる者にしては意外なことに映司は蛇が大の苦手。だがそれに対する後藤の「馬鹿!そいつはウナギだ!」の台詞が笑える。
 それで落ち着きを取り戻すOOOも何だかだが(苦笑)、アゲハヤミーに向かってウナギカンドロイドをぶん投げた。するとウナギ達はアゲハヤミーの体にクルクルと巻きついた途端にビリビリ発電、これを見事に捕縛した。そうか、そうか、電気ウナギだったのか。

 その戦いを研究所のモニタからDr.真木が見ていて、後藤の意外な行動を「人は時に意外な行動を取る。だから観察は辞められない。」としていた。そこに「確かに面白い。」という台詞が投げ掛けられたのだが、声の主は何とカザリ
 メダル研究の為になるのならば相手がグリードでも構わないDr.真木と、真木の科学力を利用したいカザリの利害が一致したといったところか?だが、観察好きのDr.真木は、観察されるの嫌いとのこと。自己中だな(蔑)。他人や世間を舐めて生きている奴に限って、二言目には「舐められたくねぇ!」と、がなっているのと何ら変わらん。

 場面は戻って、OOOとアゲハヤミーの戦闘シーン。
 ウナギカンドロイドと後藤のサポートで戦闘を有利に進めていたOOOだったが、そこにウヴァガメルが加勢し、旗色が怪しくなった。
 だが、「ガメルからコアメダルを奪い取れ!」というアンクの無茶なアドバイスが功を奏した(まあ、前回OOOのメダルの奪われ方も何だったから、お相子かな(苦笑))。
 どちらがとどめを刺すかでもめたウヴァガメルの間隙を縫うようにガメルに見舞った腹へのパンチ一発で取れたメダルは3枚で、アンクも「上出来、それ以上」と褒める戦果だった。
 そして3対1の劣勢を跳ね返すため、OOOはコンボの使用を呟き、アンクが止めるのも聞かず、灰色のメダル3枚をセットした。
 「サイゴリラゾウサゴーゾサゴーゾ!」という電子音声を背負って、仮面ライダーOOO・サゴーゾコンボが初登場した。成程重量級のガメルからコアメダルを奪っただけあって、見るからにパワー系のコンボである。
 そしてOOOが本物のゴリラのように胸をドカドカとドラミングすると彼を中心に強力な波動が走った!重力波にぶっ飛ばされたウヴァガメルは撤退。もうチョット抵抗しろよ(苦笑)。
 こうなるともはやアゲハヤミーに勝機はなかった。空中高く舞い上がったサゴーゾがそのまま真下へと急速落下して、アゲハヤミー手前の地面に激しく着地すると、その衝撃で発生した超絶の重力波と岩盤でアゲハヤミーは拘束された。
 そして動けないアゲハヤミーサイの角とゴリラの腕による3点攻撃、サゴーゾインパクトで打ち取られた。
 それを見ていたアンクは「ラトラーターに続きサゴーゾにも耐える器とはな…やっぱりお前にはメダル集めの才能がある。」と認識を新たにしていた。

 そして後藤は映司に手を差し伸べ、映司はその手を取りながら「俺、後藤さんのこと嫌いじゃないですよ。何となくだけど。」と述べたのだった。どうやらレギュラー同士の今後の共闘体制が整いつつあるようだ。

 ラストシーンはどこぞの河川敷。映司からヤミーに襲われた人達が皆無事に治ったことにホッとしつつも、自分の欲望が為した被害への罪悪感に苦しむ筑波だったが、まずは整理が付いたようで、彼もまた「まずは自分に出来ることから。」として、自転車での北海道旅行に向かうこととなった。
 そんな彼に映司は「明日のパンツ」と「マイペンライ!」の言葉を送ったのだった(下落ち漫画なら「インキン大丈夫?」と言いたくなるな(苦笑))。
 映司に感謝の気持ちをした筑波は今日の青空のように晴れやかな気持ちで自転車をこぎだした。今出来ることを始めるために。大丈〜夫、明日はいつだって白紙(ブランク)〜♪


次話へ進む
前話に戻る
『仮面ライダーOOO全話解説」冒頭へ戻る
特撮房『全話解説』の間へ戻る
特撮房へ戻る

平成二七(2015)年一一月二二日 最終更新