仮面ライダーOOO全話解説

第14話 プライドと手術と秘密

監督:石田秀範
脚本:小林靖子
 前回の「3つの出来事」は「1つ、溜りまくるアンクと後藤のストレス。2つ、手術の好きな外科医からヤミーが出現。そして3つ、アンクが比奈の兄の体を捨ててしまった。」というものだった。

 幸いと言っては変だが、泉刑事が倒れた場所は描んで、すぐに数名の医師が駆け付け、緊急措置が取られることになった。兄の体の現状を知っている比奈ではあったが、しばらく見せていなかった命の危機を目の当たりにしてはいつもの平静さは持てずにいた。
 一方、院長は田村女医の変貌ぶりに深金井な想いを抱いていたが、そんな疑念を抱く事態、彼女のことを心配しているからで、手術を差せないという仕打ちがただの嫌がらせでないことは辛うじて分かる。そしてそんな院長を再度心臓発作が襲い、ついに彼は床に倒れ伏した…………死ぬな、タイタン…………って、役が違うか………いかん!どうしても感情が籠る(苦笑)。

 直後、泉刑事の容体を心配して武蔵川総合病院に戻った映司は比奈と合流。映司はアンクが泉刑事の下に戻っていないことに、比奈はアンクが映司と一緒ではないことに狼狽した。
 そんな2人の眼前で泉刑事の危篤状態は深刻化し、映司と比奈は退室を命じられ、居ても立っても居られない映司は比奈に待機を要請してアンクを探しに行かんとした。
 その直後、映司はそ息絶え絶え状態で搬送される院長に遭遇した。瀕死の院長だったが、彼はすれ違おうとした映司の腕をひしっと掴み、田村女医の身に何が起きたのか尋ねて来た。さすが浜田氏……瀕死の老人役なのに迫力がある……。
 映司から手術に対する欲望からヤミーなる存在に取り憑かれて暴走している、との説明を受けた院長は、「欲望…なんということだ…。」と驚き、彼が田村女医に手術をさせなかった理由を説明しようとしたところでOPに。

 そしてOPが終わると、映司は「そんなことが………。」となっていた、OPの間に説明したことにして、視聴者にはまだ謎にしたというせこい演出だな(笑)。
 映司は、院長には女医から手術を取り上げた理由は自分の口から伝えることを勧め、院外に飛び出した。
 院外に出た映司はベンダーに次々とセルメダルを投入し、何体ものカンドロイドを召喚して人海戦術による捜査に当たらせた。自身も、「連れ戻す。アンクも!彼女も!」と叫び、ダッシュした。
 その頃院内では衰弱が激しく予断の許さない状態が続く泉刑事の手を握り続ける比奈が、院外には都合よく死にかけの肉体に遭遇出来ず、犬に吠えられ、不貞腐れるアンクがいた。

 場面は替わって鴻上ファウンデーション会長室。そこでは後藤が再度の独断専行を会長に謝罪しようとしたが、鴻上会長はそれを遮った。
 「謝ってはいけない!君はしたいことをした、それでいい!君の部下も代理として頑張ってくれた。」
 う〜ん……今回の会長の言は賛同できないな………後藤の欲望に対する姿勢を褒めるのは良いが、命令違反対する謝罪は謝罪で受け入れないと、という気がする。
 会長の真意を理解しかねたのか、自分の代理で大量のケーキを無理に食ったことで限界に達して突っ伏した部下を一瞥し、「これはお見苦しいところを…。」と口にすると、鴻上会長は「ほう?君には見苦しく見えるのか?彼は死にものぐるいだったんだよ!会長である私に気に入られようとして!里中君レベルになれば食べろという限り食べ続ける!君に彼等と同じことが出来るかね?」と一喝した。
 ちなみに有給休暇のひと時をクスクシエで辛口料理を食しながら過ごしていた里中曰く、「甘いものよりも辛いものが好き」だが、「給料がいいので」ということで我慢して食べているそうな。確かに彼女の割り切り振りは凄い。
 ともあれ、後藤の回答は「するつもりは有りません。それこそ見苦しいとしか…。」だった。だが鴻上会長が後藤の成長に求める核心はここにあるらしい。
  「後藤君、君が今一つ吹っ切れない原因はそのプライドだ!欲望をプライドで抑え込んでいる……非常につまらない!」と再度一喝した。
 なかなかに奥が深い欲望とプライドの相関関係論である。確かに欲望を否定する必要はないだろう。会長に気に入られたり、高給を獲得したりすることに欲望を感じても悪いことではない。真に自分がやりたいことに凝り固まったプライドが足枷になることもいい。
 だが単なる欲望の暴走マシーンは万人にとっての害悪でしかない。鴻上会長ほどの人物にそのことが分からないとは思わないが、第1クールが終わるか終わらないかの段階でそこまでの結論を求めるのは早稲田と慶応…………nicht(not)、「早計」かな……………(次の瞬間、菜根道場特撮房内には猛烈なブリザードが吹き荒れた……)。

 場面は替わってとある路上。そこでは手術執刀を求めて迷走する田村女医と、アンクが鉢合わせていた。
 意地を張って単独行動を取るアンクだが、やはり右腕だけでは分が悪く、地面に叩きのめされ、踏みつけられ、指メスで切り刻まれそうになったが、すんでのところで駆け付けた映司に助けられた。
 映司に「早く病院に戻れ!お前だって体がなくていい加減困ってんだろ!?」と痛いところを突かれ、それでも意地を張って「俺に命令すんな!」と反論。焦る映司は「分かった!お願いします!」と丁寧語を絶叫。その時のお辞儀がヘッドバッドになったことに怒りを示しつつも、「このヤミーはあの大食い男の時と同じだ。上手くやれよ。」との助言とメダルを渡して泉刑事の下に戻った。

 場面は替わって武蔵川総合病院。アンクを欠いて重態の泉刑事は生命時装置で辛うじて生き、いつ息を引き取ってもおかしくない状態だった。そんな兄の手を半狂乱になって握り続ける比奈だったが、そこへアンクが復帰したため、「こいつを死なせたくなかったらもうその馬鹿力を使うな!」との怒声が上がった(苦笑)。良かった良かった(笑)。

 一方、トラーターに多段変身したOOOは、以前のネコヤミーの時同様、チーターレッグを駆使した連続蹴りでシャムネコヤミーの体を上手く削り、田村女医を無傷で救い出した。
 正気に戻った田村女医は、OOOから院長先生が倒れたこと、嫉妬や嫌がらせでメスを持たせた訳じゃなかったことを告げた。同時に「そんなワケないのはあなただって本当は分かっているはずだ!」とも付け加えた。
 正気に戻ったばかりで、すべてを把握した訳ではなかったと思うが、院長が危ないのですぐに病院に戻れ、と促された田村女医は激しく動揺してこれに応じた。
 どうやら院長と女医は共に大切な関係になるようだ。

 程なく、田村女医は武蔵川総合病院に戻り、院長の寝台に駆け付けるや、「お父さん!!お父さんしっかりして!」と絶叫した。
 それに対して、「…院内では…院長と呼びなさい…。」と諭す院長………そうか、そういうことだったのか、大体この台詞で合点がいった………。つまり院長は父として娘である田村ケイ女医が才能に溺れ、医師としての本分を忘れない為に、失念したまま手術を受けさせようとせず、真に娘のためを想えばこそ、自分で気付くことが大切と考えていたのだろう。
 ただ誤算だったのは、想像以上に娘を追い込んでいたことと、ヤミーの存在だった訳だ。

 ともあれ、院長のレントゲンに田村女医に提示した野村医師は「すぐさま緊急手術を行わないと命がない。」と断じた。しかも
一歩間違えば「大出血の可能性がある」という超難度手術とのこと。  そして院長はその手術の執刀を田村女医に命じた。その瞬間、シルバータイタンはTVの前で、「おい!良いのか!?」と叫んだ。
 うろ覚えだが、確か医学の世界において身内による手術は御法度だった気が……仮に合法だとしても、歴史に残る名医・緒方洪庵ですら自分の息子の手術は執刀出来なかった記憶が……………と思っていたら、案の定と言おうか、当然と言おうか、田村女医も、「無理…失敗したら…お父さんが………。」と狼狽。
 そしてシルバータイタンの記憶による疑問に答える様に野村医師は「自分の家族は執刀しないのが常識です。」と院長を諭した。
 だが、田村院長は、

 「それだケイ。お前に足りなかったものは…その”恐れ”だよ。外科医に必要なのは技術だけじゃない。命を預かることの恐れだ。天才外科医と持て囃され…技術だけの医者になる事だけは止めたかった………。」

 と…………………何てカッコいい院長なんだ!さすがは一つ目タイタンを初め数多くの悪役をこなし、年を経る毎に円熟味と貫禄を増し、善玉役も卒なこなすベテラン俳優・浜田晃
 勿論「タイタン」への贔屓があることは否定しない。が、それを差っ引いても迫真だった!勿論役柄となった院長も凄まじいまでの親としての愛情の持ち主と絶賛出来た


 そんな父の命懸けの訓示に完全な理解と覚悟を固めた田村女医は、患者の命(←しかも父親のそれ!)を預かるということに対する怖さと責任感を伴って、難度の高い手術に挑み、恐らくは他の医師達も同じ気持ちで追随した。
 そして田村女医に恐怖は有っても、迷いは無かった。かくして田村院長の手術は始まったのだった。

 その間も、OOOとシャムネコヤミーの戦いは続いていたが、そこにカザリが乱入して来た。トラチーターのメダルを奪われ、カザリ曰く、「僕のメダルは7枚…あと2枚で完全体」とのこと。
 そこに再度泉刑事と融合したアンクが駆け付け、カザリに嫌味をかますと、映司には「とっとと取り返せ!」ともう一枚持っていたトラメダルをパス。
 その後、屑ヤミー達が群れて現れ、アンクとの乱闘になり、後藤もショットガンを撃ちまくりながら現場に現れるという大混戦になった。
 そして最後にはOOOがメダジャリバーを振るい、時空断裂インセクトスライサーによってシャムネコヤミーが倒されることで勝敗は決し、カザリは退却した。もっとも、黄色のコアメダル2枚を失い、アンクにも大いに詰られる苦い勝利ではあったが…。
 その後、アンクは後藤に絡んで黙殺されたり、映司にデコピンしまくったり……………やはり子供だな、とても800年以上生きたとは思えない(苦笑)。

 場面は替わって武蔵川総合病院。院長の手術は無事成功していた。看護師達は手術の成功を(まだ麻酔から覚めていないであろう)院長に語り掛け、野村医師も、「おめでとうございます。正に神業でした。」と絶賛した。
 しかしそれに対して田村女医は「いいえ。ようやく本当の外科医の入口に立った程度です。」とした。技術以前に心構えの問題として、まずは父である院長の願う女医としての一歩を踏み出した田村女医。アームストロング船長の名言じゃないが、「小さな一歩でも偉大な一歩」だったことだろう。
 そして田村女医は、自分を目覚めさせるきっかけとなった映司に向かって深々と頭を下げ、その憑き物が取れたかのような様子に同僚の医師も驚いていたが、一番驚いていたのは映司だった(笑)。

 場面は替わってとある豪邸前。そこでは屋敷の主人と思しき詐欺師が警察に連行されていた。そして邸内にはメズールが作ったと思しきヤミーの巣があった。
 その後、メズールはグリード達の隠れ家でメダルを分け合っていた。
 どうやらカザリと屑ヤミーがOOOやアンクの目を引いた間隙を縫って、ウヴァがメダルを集めたり、メズールがヤミーを育てたり、といった暗躍が為されたらしい。
 そして鴻上生体研究所では、Dr.真木がディスプレイに映る戦闘スーツと赤いコアメダルに不気味な笑みを浮かべていた。新ライダー登場を匂わせつつ、今週はここまで。


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平成二七(2015)年一一月二二日 最終更新