仮面ライダーOOO全話解説

第15話 メダル争奪と輸送車と器

監督:諸田敏
脚本:小林靖子
 冒頭のハイライトはいつも通りで、ダイジェストはシャムネコヤミーの討滅だった。ちなみにこの第15話が放映される前日に劇場版『仮面ライダー×仮面ライダー OOO&ダブル feat.スカル MOVIE大戦CORE』が上映開始となっていた。

 場面は鴻上ファウンデーション会長室から始まった。
 Dr.真木からの要請で鴻上生体工学研究所に5000枚ものセルメダルを搬送することになり、鴻上会長はその護送隊の指揮を後藤に任じていた。枚数の多さに驚くとともに新たな装備への期待を隠せない後藤に鴻上会長は「後藤君、いい機会だ。Dr真木のご機嫌をとってきたまえ。キミの欲望のために。」とした。
 その2人が話す間にもDr.真木からはコアメダルのレッドを1枚追加で送って欲しいとの要請が里中の下に寄せられていた。それに対して鴻上会長曰く、「結構ッ!研究の為のメダルは惜しむべきではない!」とのことで、欲望こそ進化の源と考える彼には全く厚かましくない要請なのだろう。

 そんな会長室の様子をタカカンドロイドがピーピングしていたのだが、派遣元はアンク。最も望む赤いコアメダル=「俺のコア」を鴻上会長が所持していると知って、「やはり隠し持ってやがったか…。」と喜びと怒りがない交ぜになっていた。
 大事な自分のコアを訳の分からん研究なんぞに使われてたまるかとばかりにアンクは映司にメダル奪還・護送車襲撃への協力を要請した。アンク曰く、「向こうは後藤の奴が護衛についている。OOOの力が必要だ。」とのことで、憎まれ口を叩いていても後藤の能力は認めているようだ。
 だが当の映司は「やらないよそんな強盗みたいなこと。」とのことで、2人の意見は真っ向から対立したのだが、そこへ「手伝ってあげなよ。君にも関係のあることだよ。」と言いながらカザリが現れた。
 人間体を始めて見たため、一瞬誰か分からなかったアンクだったが、程なくその正体を察知。そんなアンクと映司にカザリは、「泉比奈…彼女を今日見たかい?護送車の中に監禁されてるよ。嘘だと思うなら確かめてみればいい。」と言う。
 Dr.真木と密約している筈のコイツがDr.真木の下に運ばれる輸送車を襲わせるとはどうにも解せないし、アンクも信用している訳ではなかったが、「比奈が監禁されている」と聞かされては事の真偽はどうあれ焦らずにはいられない映司は即座に後藤の元に向かった。
 その場に残ったアンクは勿論カザリのことを信用していないから、「俺達に何を仕掛けるつもりだ?」と聞かずにはいられなかった。それに対してカザリは「聞いたところで君はやるしかないでしょ?何せ大事な自分のメダルだものねぇ。」と忌々しい答えにならない答えを返した。

 場面は替わって鴻上ファウンデーション。
 映司が馬鹿正直に積み荷の確認を要請すれば、後藤は堂々と中身を披露し、「見ての通り積荷はメダルだけだ。それに万が一我々の中にそんな事をする人間がいたら……俺が絶対に許さない。例えそれが会長でもだ!と言い切った。さすがに理想と正義を重んじる男である。
 しかし他に比奈を探すアテもない映司は輸送車を尾行させて欲しいと後藤に申し出た。少々呆れ顔で「そういうのは尾行とは言わない……勝手にしろ。」と言って許可する後藤。正義漢の塊である者同士の会話がこんなに面白いとは意外であった(笑)。

 かくして一行は鴻上生体工学研究所に向かって出発したのだが、果たしてその途次において大量のセルメダルを狙ってウヴァメズールガメルが立ちふさがった。
 勿論「はい、そうですか。」という訳にはいかない。グリード3体とOOO、アンク、後藤率いるベンダー隊との大乱戦となる最中、護送車を衝撃が襲った。
 その車内では僅かなスペースに閉じ込められた比奈が転がり出てきた。このことを後藤が知らなかったのに疑いの余地はない。カザリが自分で拉致監禁して、それを映司サイド、グリードサイドの双方に知らせた上で謀略を企んでいると考えるのに大した推理力は必要としない。
 ともあれ、予想外の事態に最も慌てたのが後藤、そして比奈のみを案じて最も慌てたのがOOO、そしてメダルの行方を最も案じたのがアンクだった。鴻上会長がいればそれぞれの欲望対象の分かり易さを笑ったことだろう。
 特にOOOに至ってはガメルに「おいお前!メダルは持って行っていいからその子には手を出すな!」と叫ぶ始末。そしてそれを聞いて「ふざけるなよ映司!比奈がどうなろうと知ったことか!メダルだけは奪われるな!」と叫ぶが、両者の価値観が違い過ぎるのでこの命令は噛み合わない。
 ともあれ護送車は守る側がこうもチームワークを乱しては、勝ち目はなかった。OOOはガメル、そしてカザリにボコられて橋から川へ転落。この場は勝ち目無しと見たアンクも川中へと逃亡した。

 かくしてグリード達は「コアメダル数枚」と「セルメダル5000枚」の奪取に成功。ウヴァガメルの2人は人間体になって意気揚々と護送車を運転してトンズラ。だがメズールは情報提供者だったカザリを怪しんでいた。その場で2人だけになるとこれまでのカザリの単独行動を尋問しようとした。
 だがカザリメズールが訪ねようとしたその瞬間に彼女のドテッ腹に不意打ちを食らわせ、腹中にあったコアメダルを奪い取った。この一撃でパワーの殆どを失ったメズールは瞬く間に人間体になってその場に崩れ落ちた。つまるところカザリの狙いは「セルメダル5000枚」を餌に、映司・アンク側とグリード側の攻防の隙を突き、漁夫の利的にコアメダルを奪うことにあった。
 辛うじて1枚だけ残されたことで命を落とさずに済んだメズールだったがまともに歩くことも出来ない有様。そんなメズールを捨て置き、カザリウヴァ達の元へと向かった。

 場面替わって映司とアンクが転落した川中。
 共に濡れ鼠状態の中、アンクは怒り心頭で何枚ものコアメダルをダッシュされたことを詰った。だがコアメダルより比奈の身が大事な映司はアンクを詰り返した。前述した様に優先対象が全然違うので詰り合いにしかならない……。
 終いにはアンクは「俺はコアメダルの為ならお前も消す!」と凄む。これ以上はないという決意の表れだろうけれど、映司も負けてはいない。「俺がいなくなったらどうやってコアメダルを集める気だ?もし比奈ちゃんや刑事さんに何かしてみろ…俺はお前を絶対に許さない。」と放映開始以来最大とも言える、互いを殺すことも辞さない迫力での対立が為された。
 だがその後の展開が「あァン!?だからそん時ァお前はもうこの世にいないんだよ!」(アンク)、「だから俺がいなくなったらどうやってメダルを…あ〜もう!コレどっちがどう有利なんだよ!?」(映司)という展開に些か腰砕け(苦笑)。否、これこそが『仮面ライダーOOO』の『仮面ライダーOOO』たる所以かも知れないが。
 そして遂に映司は「俺にも考えがある…。」と切り出した。

 場面は替わってウヴァ達の逃亡先。
 そこにOOOによって負傷させられた風を装ってカザリが現れた。視聴者的には仮病バレバレなのだが、ウヴァガメルはそれを知らない。同じグリードの誼か心配して駆け寄った。
 カザリはその隙を突いてウヴァにも攻撃を仕掛けた。他の2体よりは猜疑心を持っていたためか、致命的な一撃こそかわしたウヴァだったが、だが完全にはかわせず軽くない負傷を追った。
 相変わらずの気怠そうなウザい物言いで「ちぇ…失敗かぁ。ねえウヴァ、ただ完全体になって世界を食べてどうするの?そんなのつまらないと思わないかい?僕らはもっと進化するべきなんだよ。」と持論を展開するカザリ。それには答えず「ぐはっ…カザリィ…メズールも貴様が!?」と苦痛と怒りに顔を歪めるウヴァ
 そしてカザリは護送車の中でガタガタ震えていた比奈に興味なさげに「もうお前は用済みだから帰っていいよ。」と言いながら、その言葉を幸いに逃げ出そうと背中を見せた比奈に「じゃあね。さよなら。」と言いながら攻撃を仕掛ける度腐れ外道振りを発揮した。
 シルバータイタンは生まれたコンセプトの違いから、グリードは「人類の敵」ではあっても、「単純な悪」とは捉えていない。同時に人間同様仲間への想いにも個人差があるゆえ、好感度がかなり異なる。図指すると

 ガメル>>>メズール>>>>>>>>ウヴァ>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>カザリ

 となる(笑)。
 ともあれ、比奈絶体絶命のピンチだったが、映司とアンクが駆け付け、ギリギリのところで比奈を助けた。
 「てっきり仲間割れしたと思ってたのに。」と言いながら早々の和睦を意外そうにするカザリにアンクは「フン何が仲間だ。おい映司!さっきの約束忘れるなよ!」と悪態をつきつつ、映司にもCM前の約束履行を命じた。
 つまり「さっきの約束」こそがCMに隠れた映司の「俺にも考えがある。」のことを差していた訳だが、その内容は「ああ。アイスキャンディー1年分と…コアメダルは必ず取り戻す!」……………………………えっ!?それでいいのか、アンク?!?
 あれほどの大喧嘩が「アイスキャンディー1年分」で手打ち?…………何ともお手軽な人類の敵である(笑)。

 ほどなく、そこへ場を外していたガメルが戻って来た。4体の中で最も残念なオツムのガメルは「OOOを倒したらメズールが喜ぶよ!」というカザリの唆しにあっさり共鳴してリクガメヤミーを生み出した。カザリこそが大切なメズールを傷つけた憎い相手とも知らず………どうでもいいが、「アンクにとってのアイスキャンディー」と「ガメルにとってのメズール」ではどっちの大切さの方が重いのか(笑)。

 3対1で苦戦するOOOだったが、途中で上手く隙を突いてカザリからチーターのメダルを奪うと、復活のラトラーターコンボで一気に形成を逆転。カザリガメルを護送車に乗せたままこれを運転して逃走。リクガメヤミーは2人が逃げる時間稼ぎの為にその場に留まる形になった。しかしアンクもそうだが、ウヴァにしても、カザリにしても800年前に無かった筈のバイクや車をいとも簡単に運転するところを見ると、グリードの学習能力は人類のそれを遥かに凌駕しているのだろうな。

 その間、映司との約束=取引を重んじてか、暴れ回るリクガメヤミーの攻撃から比奈を守ったアンク。「危ないから下がってろ!」と言われ、戸惑いながらも「あ…ありがと…。」と礼を述べる比奈に「あァん?」と怪訝そうにするア
ンクが何となく微笑ましい。いつもはこの「あァん?」がウザいだけなのだが(笑)。  そして対するリクガメヤミーだが、亀型怪人らしく装甲に優れ、おまけにガメラの如く全身を甲羅に収めての回転攻撃まで駆使する難敵だった。だがそこにバズーカを携えた後藤が加勢。砲弾は見事に命中し、「火野!橋の上でこれだけは掴めた!」と先の戦いで密かに確保していたコアメダル2枚を投げ寄越した。やはりこれまではストーリー展開が祟っていただけで、この人物は有能である。でなければあの鴻上会長が重用する筈ないしな。
 コンボを取り戻したOOOは必殺の時空断裂インセクトスライサーでリクガメヤミーを粉砕。アンクとの約束には足りないが僅かなりともメダルを奪い返した形になった。

 ラストシーンは鴻上生体工学研究所。そこではいまだにガメルカザリに騙され続けていた。「メズールがそうして欲しいってさ。」の殺し文句に「メズールが?じゃあやる!」と無邪気に騙されるガメルは次々とコアメダルを体内に投入していった。
 カザリ、そしてDr.真木の狙いは「グリードがコアメダル集中の器になり得るか」の実験である。「もうすぐ見れますよカザリ君。メダルを1つの器に集中させたその時が。」とDr.真木が不気味に呟く中、以下次週へ。


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平成二七(2015)年一一月二二日 最終更新