仮面ライダーOOO全話解説

第16話 週末とグリードと新ライダー

監督:諸田敏
脚本:小林靖子
 前回の「3つの出来事」は「1つ、メダル争奪戦に映司とアンク、そして比奈が巻き込まれる。2つ、仕掛けたのはメダルシステムの開発者・真木とグリードであるカザリだった。そして3つ、ガメルを使ってある実験が開始された。」というものだった。

 そんなナレーションと前話に続いてカザリガメルを騙してある実験を行おうとしていた。「メズールが喜ぶから。」の一言にカザリを疑いもしないガメル。アホキャラだが、やはりこの純粋さは敵であっても好感が持てる。
 メダル集中実験により、全身くまなく全て鎧で覆われ、外見的には完全体となっているガメルを観察しながら「これで彼の身体にはコアメダルが14枚。まだまだ少ないですが実験としては充分でしょう。本来ならば君のメダルも使いたいところなんですが…。」とDr.真木がカザリは彼の人形を弾き飛ばして嫌悪感を示した。
 勿論Dr.真木は周章狼狽して必死に人形を元に戻した訳だが、そんな彼に「僕等にとってコアメダルは存在そのものにも等しい存在なんだから気軽に言わないで欲しいなぁ〜。」と言い、「今回のギャラ」として赤いコアメダルの1枚を持って立ち去った。
 ま、エゴの為に立場も無視して打算だけで結びつく共闘関係なんてこんなもんだということを暗に示していたと云えよう。

 場所は替わってクスクシエ。前回無理した映司はベッドに寝込み、比奈の手当てを受けていたが、1人で鴻上会長の元へ行ったアンクが馬鹿をやらかさないか気が気でなく、自分も行こうとする。
 そんな映司を案じて取り押さえようとする比奈は持ち前の怪力で思わず映司を絞め落とす。本人は嫌だろうけれど、変身前とはいえ、仮面ライダーを素手で絞め落とした存在としては初では………。

 場面は替わって鴻上ファウンデーション会長室。そこにはアンクが鴻上会長を直談判するため押し掛けていた。
 先週の顛末を知り、カザリの狡猾さと狙いに思いを馳せる鴻上会長に「お前が裏で手を貸したんじゃないだろうな?」と詰問するアンク。だが鴻上会長はメダル護送がDr.真木の要請によるもので、彼を責めるつもりはない、と断言した。何故ならそれが「純粋な欲望を叶えるための実験」で、「欲望を止めてはいけない!欲望は世界を救う!」という持論を展開した。
 そんな鴻上会長に、Dr.真木の欲望を認めるなら自分の欲望も認めろとばかりに彼の所有するメダルを全部寄越せ、と凄んだ。そこへやって来た映司と、「定時になりましたから」と言って空気も読まず退社する里中。チョット状況も顧みずほのぼのし過ぎじゃないか?

 ともあれ鴻上会長はアンクに「Dr.真木の実験なら見ていて損はないよ。コアメダルの力はグリードを完全復活させる為だけのモノじゃない。すべてのコアメダルを集めようとしている君にとっては非常に興味深い筈だ。」とした。
 大量のメダルを失いながらもさばさばしている鴻上会長に拍子抜けした感じのアンクに替わって、今度は映司が「メダルの元は欲望ってどういうものなんですか?」と尋ねた。同時に800年前にグリードを作ったのが人間なのか?とも。
 そんな映司の質問に、彼を欲のない人間とてみていた鴻上会長は彼の「知りたいという欲望」を称賛し、グリードが800年前に当時の科学者達が作った人工生命体であることと、その略歴を話した。
 それによると初めに創られた生命体は何日も生きられなかったが、それぞれが持っていた10枚のメダルから1枚を抜き取り、「9という欠けた数字」にした途端に「失ったモノを満たそうという欲望が生まれ、その欲望は凄まじい進化をもたらした。」とのことだった。
 そしてやがて意志を持つに至った生命体こそが、欲望の化身たるグリードであり、グリード達から抜き取ったコアメダルの力で戦い、封印した者がOOOであることも。
 かくしてグリードとOOOのビギンズナイト………じゃなかった(苦笑)、始まりの物語が明かされた。

 場面は替わってグリード達の隠れ家。そこにはともにカザリに嵌められ、負傷したメズールウヴァが再会していた。特に前者は息絶え絶えの重傷である。
 アンクのようには片腕だけで活動出来ないのか?と尋ねるウヴァに、メズールは「自分がこうなってみてわかったけど…腕だけの復活なんてあんなの無理。」と答えた。
 その答えを、「自分以外のコアを持っていた事が関係しているのかもな。」として呟いたウヴァは「まさかあなたも?」と驚愕したメズールに屑ヤミーを大量償還して襲わせた。
 屑ヤミー相手にしてさえ逃げ惑うしかないそんな彼女の絶体絶命の危機を救ったのは意外にも偶然にも通りかかった映司とアンク。
 単純に「少女が襲われている。」と見て屑ヤミーを蹴散らしただけだったのだがね。事後に、鴻上会長の話に思うところもあってか、メダルを集める理由をアンクに尋ねた映司だったが、当のアンクは意味ありげに笑うと「帰ってアイス食って寝るか。」とだけ言って、本当に帰ってしまった。

 場面は替わって鴻上生体工学研究所。そこでは後藤とDr.真木が対峙していた。後藤はDr.真木に警察に突き出す、と宣言した。「泉比奈の拉致監禁…完全に犯罪だ!」と言い放つ姿はさすがに元警察官である。
 容疑をグリードのやったこと、と惚けるDr.真木だが、警察と警護の経験を持つ後藤には通じない。「あれはアンタの協力なしには不可能だ。」と看破した。誤魔化せないと悟ったDr.真木は机の上のアタッシュケースをチラつかせ、「いいんですか?私がいなくなれば今後の戦いが不利になりますよ?例の装備…完成したんですよ。OOOと互角かそれ以上の力で戦えます。あなたにお渡してもいいですよ。もっと私と友好的に付き合って頂けるなら。」と後藤の欲望を突いてきた。
 勿論単純に欲に目の眩む後藤でなく、元よりDr.真木に嫌悪感を抱いていたことからも卑劣な取引提示に拳を握りしめずにはいられなかった………。

 場面は替わってグリード達の隠れ家。そこに一見普段と変わらぬ姿で戻ってきたガメルだったが、メズールの姿を求めてすぐにそこを離れ、やって来たところはクスクシエ。
 折しもクスクシエでは恒例の季節パーティーの真っ最中で、今回のテーマはクリスマス。知世子さんと比奈がサンタで、映司はトナカイに扮していた。両肩を剥き出しにした比奈の姿に喜ぶ視聴者も多いと思うが、シルバータイタン的には知世子さんにやって欲しかった………コホン……いくら欲望テーマの『仮面ライダーOOO』でも、道場主の欲望は置いておくとして、店内に入ってきたガメルを常連客と勘違いして料理を勧める映司も間抜けだが、フライドチキンに舌鼓を撃つガメルも間抜けだ(苦笑)。だが料理に気を取られたのは一瞬で、ガメルは比奈の後姿とロングヘア―にメズールと間違えて声を掛け、やがては彼女の姿を求めて、店内のグラスや照明器具が破裂するほどの絶叫を挙げた。
 ここでガメルの挙げた「メズール」の名からようやくグリードの人間体と気付き、気配を察知したアンクも駆け付けた。絶叫後、店を飛び出したガメルは実験の影響なのか、足取りも怪しく、体の遠近から電流みたいな光を発しながらメズールの姿を求める徘徊を続けた。
 そんなガメルの様子にアンクは、男がガメルであることを映司に教え、驚く映司に「カザリの奴、ガメルを器にしたらしい。」との推測を告げた。勿論、体内に相当なコアメダルがため込まれているのを期待しての台詞でもある。
 そう思う居ながら見守る2人の前で苦し気に絶叫するガメルの体からは四方八方に突風が吹き荒れたが、アンクは「この程度か…。」とした。どこが「この程度」だ?と言いたげな映司にアンクは、ガメルには(彼にとって肝心な)9枚が与えられておらず、それゆえ完全体になっておらず、その状態で他のコアメダルが増えても「タカが知れてるな。」としたと説明した。
 このことから、コアメダルがいろいろあるのは言いにしても、個々に合った色の9枚(アンクなら赤、メズールなら青、ウヴァなら緑、カザリなら黄)が最も大切であることが分かる。
 そこへふらつきながら「私のコア…そこにあるのね…。」と言いながらメズールがやって来た。それを見たガメルは「どこ行ってた!?俺探したぞ!」と叫ばずにはいられなかった。そんなガメルに「いい子ね…いらっしゃい。あなたが全部欲しいのよ!」と両手を広げるメズール…………このシーンに大喜びするロリ●ン趣味の奴多いんだろうなぁ……。
 勿論ガメルは言われるがままに大好きなメズールに自分のコアも含む全コアメダルをメズールに大譲渡。その結果自らの姿が跡形もなく消失………。
 そんなガメルメズールは「お馬鹿さんね……グリードなのに欲がないなんて…でもだからあなただけは裏切らない…好きよ…ガメル…。」と呟くのだった……。確かにガメルは馬鹿だが、これに感謝しない様なら第2クール終了(第26話)を待たずにすぐにでも倒されて欲しい度腐れ外道である。

 ともあれ、大量のメダルを浴びてパワーを急回復させるメズールだったが、離れた場所からそれを見ていたDr.真木は「足りませんねぇ。」と呟くとワゴン車の後部ドアを開け、大量のメダルをメズールに向けて放出し、更には黄と緑のコアメダルも混ぜた。既にエネルギー飽和状態になっていたところに更なる投与を受けたメズールはにそんな大量のメダルを注入され、メズールの肉体は大きく膨張し、巨大グリード暴走態となった!
 その姿は巨大なタコに首長竜の頭・マンモスの牙が生えたような見るもおぞましいもので、アンクに言わせると、メズール自身に制御出来ていない「ただのメダルの化け物」とのことで、こんな状況なのに「ただの、ってれべるじゃないだろ!?」とツッコむ映司も相変わらずである(苦笑)。
 ともあれ映司はすぐにOOOに変身してこれに立ち向かったが、体躯の巨大さにライドベンダーによる突進も、メダジャリバーの斬撃も然したる効果を挙げられなかった。
 そんなOOOと巨大グリード暴走態の戦いを見守りながら、Dr.真木は「成功」として、さらなる実験への意欲を燃やしたが、鴻上会長は「コアメダルがすべて集まった訳でもないのにこの力だよ。欲望の力だ!」と絶賛しつつも「器」の問題でこれを「失敗」とした。
 鴻上会長とDr.真木の推測が正反対なのは両者の目指すもの正反対だからだろう。鴻上会長が目指すのは「欲望による世界の再生」で、Dr.真木が目指すのは「世界の終末」と、これまた正反対なのだから。

 ともあれ巨大グリード暴走態に有効打を与えられないOOOだったが、そこへDr.真木の横合いから進み出た者がサブマシンガンの様なものでセルメダルを弾丸とした銃撃を浴びせた。
 その者が目くばせするとDr.真木は立ち去り、更にその者がベルトをひねると「ブレストキャノン」という電子音声が発せられ、名前の通り胸部に大砲が装填され、発射された一撃は巨大グリード暴走態をのけ反らせ、Dr.真木の混入したコアメダルを吐き出させた。
 うーむ……これだけ見ているとコアメダルをメズールに投与したDr.真木が謎のパワースーツ人物に吐き出させたのだから、何がしたいのか分からん……。
 一応、劇場版で名前が出ているし、何よりややこしくなるから名前を書くが(苦笑)、仮面ライダーバースはコアメダルの吐き出しを見届けると立ち去り、そのコアメダルを掴んだOOOはガタキリバコンボを復活させた!そして巨体に数で対抗するが如く、50分身での集団ライダーキックが炸裂。さしもの巨大グリード暴走態もこの集中攻撃には一溜りもなく、爆発四散した。
 そしてアンクの狙い通り、その爆発の中に大量のコアメダルが乱舞した。それに飛びつくアンクだったが、同時にウヴァカザリも飛びついたのは計算外だった。ともあれ三者三様にいくばくかのメダルを手にすると、各々「こんなものか…。」的な表情となり、ウヴァカザリは立ち去った。

 メダル獲得枚数が少ないことに対して「また奪い返せばいい。」と意外にさばさばしているアンクに「お前もメダル集めてあんな怪物になるつもりな訳?」と尋ねずにはいられなかった映司だったが、アンクは即座にそれを否定。だが続けていった「所詮グリードなんてコアがなけりゃボロボロ崩れる弱い存在だ。俺はコアを集めてもっと完全で強い身体を手に入れる。二度とバラバラにされてたまるか!」という台詞に、最善のメズールガメルの姿をオーバーラップさせてある種の憐れみを覚えずにはいられなかった(←はっきりと口にした訳ではない。したらアンク怒っただろうしね)。
 そしてそんな会話を交わしていた2人の前に再度仮面ライダーバースが現れた。

 アンクに何者かと問われたバースは傍らに置いた、セルメダル貯蔵用の巨大タンクの中から一冊のマニュアルを取り出した。そこには「仮面ライダーバース取扱書」の文字が書かれており、映画版に続き本編でもここでその名前が初めて登場した。
 そして変身を解いて現れたその姿はガッシリとした体格の精悍な顔つきの男(岩永洋昭)。ということはDr.真木と対立したことで後藤は候補から外されたということだろうか?
 ともあれ、ニューフェイスが「ふぅ…よろしく!」と挨拶したところで以下次週へ。


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平成二七(2015)年一一月二二日 最終更新