仮面ライダーOOO全話解説

第17話 剣道少女とおでんと分離ヤミー

監督:柴崎貴行
脚本:小林靖子
 冒頭のダイジェストは少し変わり、コアメダルを巡って、グリード、鴻上会長、Dr.真木、OOO=火野映司、アンクが争奪戦を繰り広げる中に仮面ライダーバースが加わったことが語られた。
 前回ラスト挨拶から続いて映司が礼を述べるとバースの男は「素直だねぇ〜。」と言いながら操作マニュアルを引き始めた。そこには映司とアンクのことが書いてあったから驚きだ。それを元に映司とアンク本人を確認するのだが、「OOOに変身する火野映司。てことこっちはアレだ、腕怪人のアンコだ!」と早速ボケをかました。
 不機嫌なアンクに替わって映司が訂正すると、「ほら俺海外長かったからさ、漢字読むのちょっと苦手なんだよ。」と言い訳するが、否、カタカナだし、「アンク」って(呆)
 そんな男の名は伊達明。そして何者かと問われるとマニュアルを示した。勿論そんなテキトーな説明をアンクが納得する筈なく、「だからその「バース」ってのが何なのかを聞いてるんだがなぁ。」と凄むも、男の返答は「知らん!」で、アンクならずとも人を食っていると苛立ちを覚えるもの。
 掴みかかろうとするアンクを制して映司が今後のたがいの為として丁寧に尋ねるも、「あ〜無理無理。俺マニュアル読むの苦手でさ。」で終わらせる。個人的なことだが、以前の道場主の職でパンフレットやマニュアルの説明を極端にめんどくさがって耳を傾けない顧客を何十人も見てきた記憶があるから、伊達の態度はムカつく(悪気はないんだろうけれど)。
 辛うじて目的(というか「仕事」)がセルメダル集めであることを答えたが、それを示す為に倒したミルクタンクからこぼれたメダルを慌てて集めるボケ振り。「天然」にかけて映司とどっこいどっこいかも知れない(笑)。
 ともあれかき集めたメダルを一握り映司に渡し、「これ挨拶代わり。気持ちだけで悪いね!でも俺もこれで食っていかなくちゃいけないからさ。そいじゃ!」とウィンクして去る伊達。そんな短いやり取りの中で、伊達が示したマニュアルに「鴻上生体研究所」と記してあったのを読み取っていたアンクは「また鴻上絡みか……。」と舌打ち。まあ他には考えられないし、他にもいたら嫌だ(苦笑)
 勿論、マニュアル表記は映司も気付いていて「ああ、お前も気付いたか。ていうかお前グリードなのに漢字読めるなんていろいろ馴染み過ぎだな。」といっていたが、驚くところそこか?
 確かにバイクや車の運転と言い、グリードの生物としての順応力・学習能力の高さは驚くに値するが、普通はバースの方を気にするだろう?こういう場合。

 場面は替わってクスクシエ。そこに知世子さんと比奈がやって来たのだが、映司の言によると知世子さんはエジプト帰りだった。前回アンクのアイスキャンディー台を映司に請求していた割には金持っているね、この人……(笑)。
 そして比奈は映司に前回助けてもらった礼を渡した。御礼は一緒に助けてくれたアンクの分もあったのだが、当のアンクは見かけた次の瞬間「どけっ!」とだけ言って店外に出てしまった。御礼自体を迷っていた比奈は「やっぱ上げなくていいか、アンクには……。」と複雑そうにしていた。

 何の目的で外出したのかよく分からんが、とにかくアンクはネット検索でバースのことが何も分からず苛立っていた。開発されたばかりだからネット上に情報ないだろ……しかも企業的に重要機密だぞ(笑)。
 愚痴るアンクは映司にもバース情報を求めて動けと命じたが、「鴻上さんに聞けば早いけどさぁ…今正月休みで誰もいないし…。」と映司は答える。その回答に苛立つアンクは鴻上会長を「狸親父」とし、正月休みを取っていることを気に入らないと言い出し、ウヴァカザリまで正月休みなのか?と苛立つのだから丸で駄々っ子である。
 まあカザリに対する恨みの気持ちは分からないでもないが、映司は最近全然ヤミーを見ないことに対して、「セルメダル足りないからって、お前がヤミー作るなよ。」とアンクに釘を刺した。それに対するアンクの回答は、「出来ればやってる。」…………あっそ……。
 そんなアンクの愚痴混じり回答を聞いてか聞かいでか、映司が比奈から貰ったプレゼントの袋包みを解くと中から現れたの暖かそうな手編みと思しきマフラー。パンツ以外の服にこだわっていない映司にはさぞ温かい贈りものだろう(笑)

 場面は替わって玄龍武道館なる剣道場。そこでは2人の剣士が立ち合っていたが、道場生ではなく、中学生の部活らしい。
 勝負は紺の剣道着を着た側が面を決めて決着した。顧問の橋本勝先生(高橋光臣)は双方にアドバイスを行い、勝利した紺色剣道着の女学生(半田杏)は満面の笑みで、惜しくも敗れた白色剣道着の女学生・白鳥梨恵(岡野真也)は神妙ながらも悔しそうに応じた。2人とも次の大会での期待の星らしい。
 ちなみに若くてイケメンの顧問・橋本先生を演ずるは『轟轟戦隊ボウケンジャー』の主人公・ボウケンレッド・明石暁を好演したことで特撮ファンには有名な高橋光臣氏。残念ながらシルバータイタンは未見。
 全くの余談だがこの『仮面ライダーOOO』の放映終了から約半年後、高橋氏はNHK Eテレの『テレビでドイツ語』にドイツ語を学ぶ生徒としてレギュラー出演し、ちょうどこの時からドイツ語の勉強を再開したうちの道場主にとっては、その番組でラグビー、バウムクーヘン、ソーセージ、酒類を笑顔で語っていた高橋氏の方に馴染みがあり、講師を務めていたドイツ人達が下の名で呼んでいたこともあって、以後高橋氏を見ると、つい「おっ、光臣だ!」と口走ってしまう(笑)。
 仮面ライダーやウルトラマンほどには戦隊シリーズには詳しくないが、乏しい知識における「赤」のイメージに合って、光臣(←敢えてこう呼ぶ)は暴走リーダータイプではなく、かなり落ち着きと快活さに溢れている。

 ともあれ、橋本先生の激励を受けた2人の女生徒だったが、白鳥の方はその後トイレにて「絶対負けたくない…もっと強くなりたい…。」と念じていたが、そう思いながら見つめる鏡の中にウヴァが映った。
 グリードにデリカシーなんか求めても無駄だとは思うが、強面青年が女子トイレに現れるのは少々問題ないか?制作陣!?
 驚いた白鳥(←そりゃ女子トイレに男がいたら驚くよな)が振り返ったそこにウヴァの姿はなかったが、その魔手は確実に伸びていていた。

 場面は替わってとあるおでん屋(屋台にも、簡易店舗にも見える)。そこでは伊達と店の親父(棚橋ナッツ)が雑談に興じていた。日本に稼ぎに戻ってきたという外国帰りの伊達相手に日本の不景気と現状を説く親父はとある雑誌の記事を提示した。
 記事はグリードに関する物で、その存在は噂レベルではあるものの、その名前は広く一般社会に浸透していることが分かる。鴻上ファウンデーションの宣伝かな?
 そんな現状を差して伊達に、タイミングの悪いときに日本に帰ってきたと同情する親父だったが、伊達に言わせるとタイミングぴったりとのことだった。

 場面は戻って玄龍武道館。そこでは「もっと強くなりたい。」と念じながら素振りをする白鳥(←筋は結構いい)の前に「その欲望を解放しろ。」とウヴァが現れた。
 脅える彼女にメダルを挿入するウヴァ。例によって少女から怪物が生まれた。フィクションであることは分かっているのだが、出産機能を持つ女性がひょんなことから自らの腹から異形の者が生まれるなんて物凄いショッキングだろうなぁ……現実に起きたら。
 そしてこのヤミー誕生をアンクはいつもの察知能力で、伊達はゴリラカンドロイドの通報で知り、両者と映司が現場に向かった。

 現場、つまり玄龍武道館の剣道場では、白鳥から生まれた白ヤミーが出現。いきなり道場生に襲いかかって場に混乱と恐怖をもたらしていた。そしてそれをみて愕然とする白鳥。
 生徒達を守るために木刀を持ってヤミーと対峙しているのは勿論、橋本先生。部員達に逃げるよう促し、少し戸惑いながらも木刀をもって先頭に立つ光臣(←ちなみに剣道二段)は構えが様になっているのも良かったし、戸惑う表情にもリアリティーがあった。
 ゆえにいい殺陣が見られるかと期待したが、ここでヤミー出現を感知したアンクと映司が到着。少しは光臣にも戦わせろよ、と怒った特撮ファンは多いと思う(苦笑)。

 ともあれ、ヤミーを屋外に連れ出した映司。例によってアンクはもっとメダルを貯め込ませてからOOOに戦わせたがっていたが、「今は贅沢言えないか…。」と呟いてコアメダルを投げ寄越し、映司はOOOに変身して戦いに挑んだ。
 ところがこの白ヤミー、やがて変態するヤミーの特徴か、硬い防御力を持ち、OOOの攻撃を殆ど受け付けない(攻撃力は乏しいようだったが)。互いに決め手を欠く対峙の中、化け物誕生の責任を感じたのか、白鳥が乱入。勢い良く跳ね飛ばされて気絶してしまった。
 結局この隙にヤミーには逃げられてしまい戦闘は終了。アンクはタカカンドロイドに白ヤミーを負わせ、勝負を見ていた伊達も白ヤミーを追っていずこかへ姿を消した。

 とりあえず映司は気絶した白鳥を病院(←残念ながら武蔵川総合病院ではなかった。タイタン再登場ならず(苦笑))へ運んだ。
 幸い軽傷で済んだ白鳥は映司に礼を述べるとともに、自分の欲望のせいで化け物が登場したのか?と尋ねずにはいられなかった。
 「元はそうだけど、道場の人を襲ったのはもう君のせいじゃないよ。怪物は欲望を暴走させるのだから。」として、更なる無茶を戒めた。
 だが1人になった白鳥の苦悩は続いた。回想の中でウヴァの唆しや、白ヤミーの欲望健司がリフレインし、更に激しく動揺するのだった。
 白鳥の「強くなりたい。」という想いを含む能力に秀でたいという想いは「悪」とは思えんし、鴻上会長ならずとも人間が成長する根本として肯定するところだが、グリードが狙うには格好対象と思うと改めてグリードと言う存在は疎ましい。
 そこに伊達が再び伊達。
 思い悩む白鳥を物陰から眺めながら、「こいつはやれやれだぜ。」といった様子で溜息をひとつ。どうやら彼には既に真相が見えたみたい。体力一辺倒に見た目に反してなかなか洞察力にも優れているようだ。

 その頃、後藤は体を鍛える為か、ひたすら走り込んでいた。その際の回想シーンで、前回警察に突き出そうとしたDr.真木に取引を持ち掛けられたシーンが再現され、後藤はDr.真木が差し出したアイテムをはたき落として拒絶していた(←そうこなくっちゃ)。
 「あんな男に媚を撃って間でバースになる必要はない。」として自らの言動を肯定しつつも、「でもそのせいで戦う手段を失ったのだとしたら……。」と苦悩する後藤は思わずペットボルト握る手にも力が籠りまくるのだった。
 一方、クスクシエの屋根裏部屋ではアンクが比奈からのプレゼントの封を開いていた(←直ではないが渡していた)。比奈の友達が作ったというその中身はコアメダルを整理・収納する為の、ノートタイプのメダルホルダー。
 メダルをしまいながら、態度こそ悪いが満更でもなさそうなアンク。もっとも、比奈の想いよりも本当に便利なものが手に入った方を喜んでいてもおかしくないが。いずれにしても最近増えたニヤニヤ薄ら笑いはキモい(苦笑)。

 翌朝、剣士としての強さを求めて街中を彷徨う白ヤミーは次々と剣士を襲い、カブトヤミーへと成長。白ヤミー段階で硬さを発揮していたのもカブト虫の怪人だったからという訳ね。
 タカカンドロイドからそれの知らせを受け取ったアンク、そのアンクからカンドロイド経由で知った映司は現場に急行した。アンクからメダルを受け取った映司は硬さに優れるカブトヤミーで迎撃。剣や斧も通さない板金鎧をメイス(戦棍)の重い一撃で攻撃する如く、OOOはカブトヤミーを殴りつけた。
 その攻撃は有効だったが、劣勢に立ったカブトヤミーは意外な変貌を遂げた。アンクも懸念した園変貌とは、カブトヤミーの身体が細胞分裂の如く2体に分離するというもの。新たにクワガタヤミーが現れたからで、これにはOOOだけでなく、アンクも「こんなことは今まで一度も…!」と言って驚いていた。
 しかもこの2体、「強くなりたい」ではなく、「壊す」を連呼し出した。どうやら白鳥の真意と関連しているようだ。白鳥の真意が「強くなりたい。」なら、彼女もこれまでヤミーの親にされた人々同様正気を失っていただろうから。果たして白鳥の、願望=破壊対象とは何なのか?

 ともあれ、ただでさえ硬いカブトヤミーに苦戦していたのに、2対1になって一方的にボコられるOOO。だがグッドタイミングでこっちにも2人目が現れた。
 ゴリラカンドロイドからの通報を受けた仮面ライダーバース・伊達明である。優勢に戦うバースにアンクが最も驚いたのは、彼がセルメダルだけをエネルギー源としていたことにあった。エネルギー源はコアメダルより下でも、製造スペックがかなり優れていることが伊達がマスク内で覗く照準器の動きからもうかがえる。
 OOOの攻撃が丸で通らないカブトヤミーの装甲をたやすくブチ抜く、バースの近接兵装の一つドリルアーム(←ライダーマンかいっ!)。
 先鋭的なデザインにしては無骨なパワー攻撃である。セルメダルを弾丸として撃ち出すバースバスターも、弾の消費を意に介さない戦い振りが何とも伊達らしい。
 確かにバースの個性は後藤のキャラではないかも。そして映司とアンクに下がっていろと言って、バースはバースバスターをセルバーストモードに移行し、トドメの構えを見せた。それを見たアンクも慌てて映司にトドメを促した。
 「映司!奴に好き勝手させるな!メダル全部持って行かれんぞ!」と凄むアンクに、「それはいいんだけど…。」といいつつキックを決めるOOO。
 ほぼ同時に放たれたセルバーストとともにツープラトンアタックでカブトヤミーを木っ端微塵に粉砕した。

 決着後、散らばるメダルを拾い集めるアンクは映司にも拾えと命じたが、バースがクレーンアームで散らばったセルメダルをまとめて回収してしまった。殊、セルメダルに関しては1枚たりとも渡さない強欲さを見せた。
 「お前っ!!」(と凄むアンク)
 「伊達さん…仕事って言ってたのって……。」(映司)
 「セルメダル集め。まぁ正直こんなモノに興味はないんだけどさ…これだけ稼ぐために引き受けた。」(伊達)
 「1億。1億稼ぐ。これからセルメダルは全部俺がもらうってことな!」(伊達)
 と言った会話で以下次週となったが、一方的かつ自己中な伊達発言にアンクが納得しないのは火を見るより明らか。物陰から様子を伺い、言葉を失っていた後藤はどう動く?


次話へ進む
前話に戻る
『仮面ライダーOOO全話解説」冒頭へ戻る
特撮房『全話解説』の間へ戻る
特撮房へ戻る

平成二七(2015)年一一月二二日 最終更新