仮面ライダーOOO全話解説

第18話 破壊と理由とウナギムチ

監督:柴崎貴行
脚本:小林靖子
 前回の「3つの出来事」は「1つ、仮面ライダーバース・伊達明が登場。2つ、剣道場に通う少女の「強くなりたい。」と言う欲望からヤミーが生まれる。そして3つ、ヤミーは2体に分離した。」というものだった。

 前回の伊達によるセルメダル独占宣言の続きだが、「全部俺が貰う、な!」と言われては映司でも納得出来ない。そしてそんな映司を制してアンクが言うには、「ここまで舐められると逆に笑えるな。」とのこと。
 それでも映司は平和的な合意を求めてか、メダルは(伊達が目的とする)金にならないと諭すが、それは伊達も承知していた。何でも労働に対する対価が払われるらしく、それゆえ逃げたもう一匹も自分が貰うと主張。
 そうはさせじと激昂するアンク。「今度は俺達がもらうぞ。」という宣言して去るのを、伊達は「早い者勝ち」として了解した。

 話は終わったとばかりに去る伊達に尚も映司は自分達がメダルを奪い合うことを馬鹿げている上に、戦闘中のそんな競合は危険とすらした。そんな映司に伊達は、
 「そ、馬鹿馬鹿しいよな、こんなモン取り合うのはさ。でも逆に言うと、何もないのに戦っちゃってるほうが俺的には不気味で、危険だな。」
 と答えた。
 どこか見返りで動く人間の本性に忠実足らんとしているように見え、その辺りは映司とは正反対なのかもしれない。ともあれ、会ってまだ間もない映司の本質をいち早く見抜いているのだとしたら伊達はやはりかなりのキレ者である。

 場面は替わって玄龍武道館。ウヴァの唆しや白ヤミーの呟きを思い出しながら自分の本当の望みと向かい合おうとしていた白鳥はいつしか剣道場に入っていた。そこでは橋本先生が携帯で誰かと会話していた。怪我をしていないことや明日の予定を中止に無いことを告げて安心するように言っているところを見ると大体の察しは着いた。
 だがその途中で白鳥がいるのに気付いた光臣はさすがに教育者で、電話を終わらせると彼女の怪我を気遣い、車で家まで送ろうかと申し出たが、白鳥は母が来てくれると偽ってこれを断り、釈然としない思いを抱えつつも橋下先生は気をつけて帰るように告げ、自分も帰ろうとした。
 そんな先生に「先生、明日は…。」と言いながら追おうとした白鳥の前に「おまえの欲望を止めるな!」と言いながらウヴァが出現。真の欲望を叶えるからそこで待てと言われた白鳥は、その意味するところを悟って、全身の力が抜けて両膝を着いた………。

 場面は替わってクスクシエ。外から戻って来たらしい映司とアンクだったが、クワガタヤミーが見つかっておらず、その理由をアンクは「よっぽど遠くへ逃げたか、メダルが増えていないか……。」と推測した。
 推測の出し合いは続き、映司とアンクは白鳥がまだ欲望を満たしていないこと、彼女にもう1つ欲望があること、それは「強さ」と「破壊」であること等が導き出され、アンクは「欲望の二重構造」として、有り得る話とした。
 「全部壊す」という物騒な言葉を口にしていたクワガタヤミー。ならば白鳥の本来の欲望は何かの破壊?その為の強さが欲しかったのならば納得がいく。

 場面は替わって玄龍武道館。白鳥を張り込むようにしていた伊達は、逆に自分を張り込む存在がいることを察知していて、「そろそろ何の用か聞きたいなあ、お兄さん。」と後藤に呼び掛けた。
 張り込みがばれていたとを知らされた後藤は伊達の前に出て非礼を詫び、自己紹介した。
 「ライドベンダー第一小隊隊長」という肩書からメダルの回収かと思ったが、後藤が純粋にバース装着者に興味があっての備考と知らされると却って伊達は拍子抜けした。そして後藤を飯に誘おうとするも、伊達のフレンドリーさに逆にいたたまれなかったようで、後藤はその場から逃げるように走り去った。

 「やれやれなんだか知んないけど…まだ日本にも残ってたんだな、あんな純粋な若者。」との伊達による後藤評だが、確かに後藤は良くも悪くも純粋だ。
 そして駆け出した後藤は以前鴻上会長から告げられたプライドのありように苦悩しつつどしゃぶりの中を闇雲に駈け続け、ふらふらとさまようままに行き倒れの様に(まだ準備中の)クスクシエへ入店した。
 そのクスクシエの中ではエジプト帰りの知世子さんが比奈とともにクレオパトラに扮していた。意識朦朧の後藤には2人が女神に見えたようで、「それもいい…。」と陶酔気味な表情で機を失う後藤がステキ(笑)。

 場面は替わって玄龍武道館。
 邪念や欲望を振り払うように素振りを続ける白鳥の元に映司とアンクが現れ、彼女の持つ「強くなりたい。」と欲する真の理由について尋ねた。
 だがこれはかなり聞き手に酷な質問だ。どんな詐欺の天才でも自分自身は偽れない。しかしそれでも自分の欲望を否定したい時がある。自分自身に対して認めたくないことを他人の前で話すのでは相当な精神的苦痛が伴う。
 もっとも、そのことは何度も人の欲望と向かい合って来た映司も認識しているようで、自分の見た様々な経緯を開示した上で、「ゴメンね。自分の欲望なんて人は言いたくないだろうけど、それが分かればあ怪物を見つけて止められると思う。」と言って、丁寧に尋ねていた。
 しかし、それをぶち壊しにする奴が2人いた。「おいっ!こっちは急いでんだよ!グズグズすんな!伊達の野郎に先を越されたらどうすんだよ!」と声を荒げるアンクと、「ざ〜んねん!もう越しちゃった。」と言いながら現れた伊達である(苦笑)。
 利害対立する2人だが、アンクは先に来たことをたてに先取権を主張(←立場逆だったら認めないくせに(笑))。だが伊達はもう先を見ているという。つまり真相に気付いていると。
 伊達は白鳥に「白鳥梨恵ちゃん、俺はこのお兄さん達みたいに鈍感じゃないからさ。ハッキリ言っちゃうけどゴメンな。」と前置きし、彼女(に限らず少女全般が)意地になったり、一生懸命頑張る理由は1つだと告げた(しかも回想シーンには熱心に部員を指導する光臣と、それを憧憬の目で見つめる白鳥が描かれていた)。
 勿論、真意を見透かされた彼女は絶句し、アンクも「欲望の定番だな。」と述べたが、約1名まだ分かっていない超鈍感野郎がいた。映司である(笑)。
 TVを見ていたシルバータイタンが「おい、映司、本当に分からないのか…………?」と思っていたら、アンクにも「…お前マジか!?」と呆れられていた……。
 しかも、チョットしてから気付いたのは良いが、「ああそうか!恋愛だ!」と嬉しそうに大声で叫ぶ常識の無い映司。この手の問題は(誰にとってもそうだが)年頃の女の子には凄くデリケートな問題なのに…………。
 いくら海外で一人旅を続けていたからって、これはひど過ぎる…………否、世界のあちこちを回り、その為に様々なバイトをこなして来て、様々な人々と交流して来たであろう映司なら逆にその辺りは熟知してそうだが…………お世辞にも恋愛の駆け引きや洞察、場の空気を読むことに長けていると云えないうちの道場主よりひどい………。

 余りのひどさに伊達も「はぁ…デリカシーのない奴は少し黙ってて。ね?」と伊達に窘められていた。まあさすがにそれで謝って自己嫌悪に陥るだけ救いはあったが、そんな映司を無視し、伊達の解説は続いた。
「君がそれほどまでに強くなって壊したかったモノ…それが今日もうすぐ行われる。」とのことで、早い話橋本先生の結婚式だった。
「私…最低です…先生の結婚式がメチャクチャになればって…。」と自己嫌悪の想いを吐露する白鳥に、伊達は「いいんじゃない?壊したければ壊せば。」と乱暴発言。慌てる映司を尻目に「但し、直接自分の手で。」と付け加えた。
 私情を挟むが、シルバータイタンは白鳥を最低とは思わないし、伊達の言うことも概念的には同意する。愛する者が欲しいと思えばその者と他の者の関係や結びつきを壊したいという想いに繋がることは自然で、正々堂々と壊しにかかるのは悪くもなんともない。むろん、だからと言って暴力的な破壊に走ったり、身体的に誰かを傷つけたりするのは許されない行為(ゆえに生まれてしまい、破壊しか念頭にないヤミーは殲滅する必要がある)だが、それを守る分に関しては堂々と戦い、最悪負けるにしてもやれる限りやるべきだ。
 うちの道場主も幾度か横恋慕を繰り返した。常に正面からぶち当たり、法や倫理に反しない中であらゆるアプローチを試みた。まあ相手あってのことだから、雰囲気を察知した相手に徹底的に逃げられたり、携帯もネットもLineもなかった時代に直接的且つ些か強引なアプローチが嫌われたりしていたが(苦笑)。
 真面目に締め括ると、ある女性は雑談や通常対話には応じてくれたが、2人だけで会おうとするアプローチには「彼氏に悪いから。」の一言で完全シャットアウトされ、それを乗り越えるには法や倫理を突破する必要があったが、それは出来なかった。心苦しく、敗色濃厚な戦いだが、正々堂々と戦うことは大いにやればいいと思う。

 ともあれ、伊達の言葉に思いを巡らす白鳥だったが、そこにウヴァの指示を受けた屑ヤミーどもが襲い掛かって来た。映司達とともにそいつらを蹴散らしながら伊達は白鳥に、「俺もね欲しいものあんの。1億円!もうドロドロの欲望まみれよ、俺。でもね、いっこ決めてんだ。そいつを果たすのに他人の手は借りない。但し、後もう1つ、絶対に自分を泣かせることはしない。」と自らの想いを語った。
 伊達の言葉の終わりを繰り返した白鳥は意を決したらしく、竹刀を持って道場飛び出した。その身を案じる映司に伊達は「行かせてやれ。自分を助けに行ったんだ。」と言い放った。
 程なく屑ヤミーどもは全滅。その場を去ろうとする伊達にアンクは結婚式の開催される場所を知っているのか?と尋ねると、伊達は知っているが教えない、と宣言。
 その伊達に「教えて下さい!」と縋りつく映司だったが、その対象が「どうやったら恋愛関係に分かるようになるか?」だったからズッコケた。伊達が「そっち?!」と聞き返したのもむべなるかなであったのだが…………………。

 その頃、道場を飛び出した白鳥は結婚式会場に向かいながら、後悔とも自己嫌悪とも取れない想いを振り返っていた。
 「強くなれば先生が私の側にいてくれるかもって。」という思考、橋本先生が言った「お前等が全国大会に行ったら、俺も結婚式をほっぽりださなきゃなあ。」という言葉を本気ではないのを分かっていても頼った気持ち、一方で好きな先生の幸福を祝福する気持ちもあったことなどを巡らしながら、自分を愚かとしていた。くどいが、シルバータイタンは愚かと思わない、むしろ自然と思う。

 そしてその頃、結婚式会場では指輪の交換も済み、順調に進行していたところに「壊す…。」と言う台詞を繰り返しながらクワガタヤミーが迫っていた。だが伊達の言葉を回想しながら必死に会場にかけてゆく白鳥はようやくこれに追いついた。
 竹刀を構え、クワガタヤミーの前に立ち、「ダメ!行っちゃダメ!………こんなこと自分を許せなくなるだけ!ずっと!」と叫んで果敢に立ち向かっていく白鳥。だが如何せん、女子中学生の竹刀攻撃ではヤミーに通じようもなく、たちまち危機に陥ったが、そこは後を追ってきた伊達が許さなかった(人間体のままでバースバスターを連射していた)。
 白鳥の危機を救った伊達は彼女が「自分を助けた」ことを褒め、後は任せろとばかりに仮面ライダーバースに変身した。

 かくして仮面ライダーバースとクワガタヤミーの一騎打ちとなった。クワガタヤミーは甲虫らしくカブトヤミー同様に堅牢さに優れていたが、バースは至近距離からのバースバスター銃撃を食らわした。接近戦を不利と見たクワガタヤミーは右手から雷撃を放って抵抗したが、そこにこの場所を知らない筈の映司が駆け付けた。

「火野!?お前どうしてこの場所が…。」と訝しがるバースに映司が種明かししたところによると、映司はあの情けないお願いと同時に伊達にタコカンドロイドを潜り込ませていたのだった。
「意外と食えないねぇ。」とする伊達に、「気にしてるのはホントですよ!でもこっちも重要だったし!」と憮然とする映司。ともあれ、「純粋」に見えて「単純」でない映司は伊達の言う通り食えない奴である、否、主人公の面目躍如かな?
 直後にアンクからコアメダルを受け取り、映司もOOOに変身。2対1で優勢となったが、敵方にもウヴァが参戦。戦いは2対2の激しい乱戦に雪崩込んだ。

 場面は替わって鴻上生体工学研究所。
 そこには正月休みを終えたらしき鴻上会長が里中とともにDr.真木と引見していた。正月の挨拶も「新年ハッピーバースデー!」と相変わらずな鴻上会長はDr.真木にバースの様子を尋ねていたが、この時の台詞から伊達がバースの装着員となったのは鴻上会長による人選であることが分かった。
 Dr.真木はまさにバース達の戦闘をモニタリング中で、それを見た鴻上会長は相変わらずのハイテンションでバースの戦い振りを絶賛し、「コアメダルの制御を捨てセルメダルに特化したの正解だったな。」とした。それに対してDr.真木は至って冷ややかに良しとも悪しともせず、「いずれにせよ昨年失ったセルメダル5000枚に補填をしませんと。」と呟くだけだった。
 そして「コアメダルのOOO、そしてセルメダルのバース」を車の両輪の如く「万全だ!」と絶賛する鴻上会長。そして戦場ではそのバースがウヴァに対しても優勢に戦いを運んでいた。

 キャタピラレッグ、ドリルアームを駆使した攻撃に強烈な一撃を食らったウヴァは大量のセルメダルと1枚のコアメダルを放出。バースはこぼれ出たセルメダルだけをミルクタンクに誘導した。
 それを見て「なるほど…バースはセルメダル専門ってワケか…。」とある種の納得をしたアンクは、映司!今の内にヤミーを潰せ!」と叫んで初めて青いコアメダルを投げて寄越した。それはウナギのメダルで、これを装填したOOOはタカウナギチータータカーターに多段変身するや、両腕に触腕型の鞭を装備し、クワガタヤミーを打ち据え出した。  OOOの優勢を見たバースは「火野!一発デカいの決めるから、チョット間時間稼ぎ頼むわ!」と言って、木陰に走ってブレストキャノンを構えるとメダルチャージに入った。
 いきなりの無茶振りだったが、それでも電気ウナギウィップで何とかウヴァの動きを封じることに成功。『水滸伝』の双鞭・呼延灼や『魁!男塾』の男爵ディーノも吃驚の鞭使い振りで、クワガタヤミーウヴァを引っ捕え、電撃を食らわした。カンドロイドと同じで、このウナギも電気ウナギだったのね(笑)。
 「セルバースト」、「セルバースト」、「セルバースト」、「セルバースト』の電子音声連発で魔貫光殺砲充填完了となり、セルメダル3枚投入4回重ねがけ=合計12枚のセルメダルを使用したスーパーチャージ版セルバーストブレストキャノンが炸裂し、クワガタヤミーは一瞬で木っ端微塵に粉砕され、その威力に恐れをなしたウヴァは即逃走した。
 その後、ミルクタンク内のセルメダルを漁るアンクと、何すんだとばかりにその手(全身?)をはたくバースのドタバタ漫才を呆れ顔で見ながら、今後同様の展開が続くのかと嘆息するOOOだった。

 ラストシーン。橋本先生の結婚式を無事に見届け、自らの感情にケジメをつける白鳥。その表情に後悔はなく、晴れ晴れとした笑顔を湛えていた。
 そして映司は改めて伊達に共闘を申し出たが、伊達は即答でこれを拒否。その理由は「あんたは自分を泣かすタイプだから。ま、俺の勘だけど。」というものだった。
 ともあれ今週はここまで。


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平成二七(2015)年一一月二二日 最終更新