仮面ライダーOOO全話解説

第19話 赤いメダルと刑事と裏切り

監督:石田秀範
脚本:小林靖子
 冒頭のダイジェストはメダルを巡る戦いに仮面ライダーバース・伊達明が加わったことを軽く触れるものだった。
 そして始まりはクスクシエ。出勤時間に遅れて来た映司はそこにウェイター姿の後藤がいることに驚愕した。
 前回クスクシエで行き倒れになったことに加え、映司の知り合いであることから、「一度死んだつもりになる。」という理由でのバイトを申し入れが通ったとのことだった、知世子さんによると。
 そしてそこへ鴻上会長の言伝を持って里中がやって来た。さすがにウェイター姿で床掃除をする後藤を見て里中も驚かずにはいられなかったが、「休暇なら届けの方を出して下さいね。」と相変わらず内容も、トーンも業務以上でも以下でもない口調。恐らく退職届も休暇願も出していないだろうから、里中の言っていることは正論であり、業務上の必要事項だろうけれど、やはり好感が持てない。そのせいかどうか分からないが、ただでさえ無表情で黙々と掃除していた後藤は里中を黙殺するのだった。
 ともあれ、里中が用を持っていたのは映司で、鴻上会長が来て欲しい、と伝えに来たのだった。そういや、映司携帯持ってなかったな……。

 場面は替わってとある郊外。そこにパトカーが走り、武蔵台刑務所から凶悪犯が脱獄した旨を知らせ、付近の住民に警戒を呼び掛けていた。その凶悪犯・山金トイチ(土平ドンペイ)の脱獄は、全身をメダル化して、鉄格子の隙間から侵入したカザリが手引きしたものだった。
 視聴者は思った………「今週の犠牲者はこいつか……。」と…(←道場主「はいはい、『ついでにトンチンカン』のパクリってバレバレだからこれっきりにしようね。」)。
 カザリは相変わらずDr.真木と協力関係にあり、ターゲットを調べたのはDr.真木。そのターゲットの特性なのか、カザリは山金を「多分、初めて見るタイプになるんじゃないかな?」とした。
 一方、カザリと車内で話し合うDr.真木は、コアメダルを大量に手にしたカザリが進化するゆえに、彼を介して生まれるヤミーもまたそれに比例して進化しているとし、カザリに9枚のメダルを集め着るよう促がした。促されたカザリはアンクが持つ3枚の黄色メダルへの執着を滾らせていたが、同じ頃、アンクもまたカザリが持つクジャクのメダル奪取を強く意識していたのだった。
 いずれにせよ、脱獄事件まで裏で糸引いたとあっては、Dr.真木は完全にマッドサイエンティスト且つ、法的にも犯罪者確定である。

 場面は替わって鴻上ファウンデーション会長室。映司を待っていた鴻上会長は机上にクジャクカンドロイドを置き、「お土産」と称して赤いコアメダル=コンドルのメダルを渡した。勿論映司が口にしたようにアンクの物である。
 映司がコンドルのメダルを手にすると、画面が3つに分かれてアンクがタカの、カザリクジャクのそれを手にして見つめ、今週は「赤いメダル」が主題になることを匂わせつつOPに入った。
 そしてOP後もそのまま場面は鴻上ファウンデーション会長室で、映司は鴻上会長がコアメダルを隠し持っていることについて尋ねるも、鴻上会長はすべてを話す気はないと言い切った。同時に話さずとも映司が戦い続けることも断言。
 続けて「グリードが減ったからといって安心は出来ない。彼等は欲望で進化する… OOOも新しい力で強化しなくてはダメだ!」と言い放って、映司にコンドルのメダルを渡した理由は説明した。
 だがアンクが下手に赤いコアメダルを手に入れ、かつての体を取り戻すと泉刑事の体を捨て、それにより泉刑事の命が危機に陥るかもしれない、と見た映司は鴻上会長にまだメダルを持っていて欲しい、として会長室を辞した。

 場面は替わってとある郊外。山金は逃走を続け、警察はまだその足取りを掴みかねてパトカーを走らせていた。どうも特撮における名もない警察関係者の多くは無能でいけない。まあ彼等が活躍するようでは番組が成り立たないのを承知した上でいっているのだが、それでも自分を裏切った「ヤス」なる人物と、自分を逮捕した泉刑事への恨みを募らせ、通行人から服を剥ぎ、ガス管や水道栓と言った破壊の影響が大きく表れる器物の派手な破壊が簡単に行われるのは頂けない
 真面目にコメントするのだが、特撮やドラマや漫画での「無能な警察」の描かれ方が現実の警察を甘く見て、愉快犯的な犯罪に走り、捕まってから愕然とするアホな若僧を生んでいる側面が有りはしないかが気になる。

 場面は替わってクスクシエ。街中の鳴り止まぬサイレン、比奈がもたらした凶悪犯脱獄・潜伏の知らせに、スイスフェア準備中の知世子さんが不安を隠せない。まあ今は店内に後藤がいるからめったなことは心配ないと思っていたら、そこに小心者を絵に描いた様な怪しい男(六角慎司)が現れた(←だからって知世子さんと比奈も悲鳴を挙げんでも……)。
 展開から後藤が男を取り押さえたのだが、男は取り押さえられつつも比奈に気付き、嬉しそうに泉刑事を訪ねて来たことを告げた。
 泉刑事を知る、如何にも小悪党を絵に描いた様な男は名を奥村安二と言い、通称「ヤス」で通っているという。ということはこの男が山金を裏切った男か。

 そのころ、Dr.真木とカザリはまたも車中にて密談中だった。
 人の出入りが増えたことを理由に、カザリに「しばらく研究所には近づかないで下さい。」としながら連絡用の携帯電話を渡すDr.真木に、カザリはバースに関する話をしたところ、Dr.真木はバースの名前も人選も気に入らないが、立場上鴻上会長の意向を尊重し、そう動きを邪魔出来ないことを吐露。「いいけど、倒しちゃうよ?」とカザリが述べるも、「また作ります。」と断言。
 どうやらDr.真木は研究・開発結果よりも研究・開発を行うことをに興味のあるタイプの様だ。まあ彼が望む「終末」には続きが無いから、過程を楽しむ気持ちは分からないでもない。ちなみにこの間、Dr.真木は車のフロントガラス、自らの顔面、そして人形に鳥の糞が落ちる度に神経質な反応を見せていた。恐らくはDr.真木という人物をクローズアップさせる狙いが制作陣にあるとも思うが、些かいろいろ見せようと欲張りすぎな感がした。

 場面は替わってクスクシエ。鴻上ファンデーションから引き返して来た映司と、店を出たヤスが鉢合わせたところで始まった。
 引き上げた男を誰と尋ねる映司に、泉刑事にどうしても会いたいと言い張った人物と話した比奈。一方、ヤスが自分の見たアンクを泉刑事としてしつこく食い下がったことに触れた知世子さんは「そんなに似てるの?」と比奈に尋ねたが、慌てて否定する比奈と映司が笑えた。
 ともあれ、3人の会話はヤミー出現を察知したアンクの呼び出し・出動で中断された。

 その頃、泉刑事に会えず、トボトボと引き返すヤスの前に山金が立ちはだかった。山金の言によると、ヤスの裏切りで彼は逮捕された上に、何年もの懲役を食らったとのことで、媚びを売って下手に出たヤスだったが、即座に鳥人拳鷹瓜殺というハンドタイプの鉤爪凶器を用いた報復攻撃に出た。その目と表情は常軌を逸しており、とても話し合いが通用しそうには見えなかった。
 必死に逃げ惑うヤスは、例によって済んでのところで映司に助けられ、もはや四つん這いで爪を振るうまでに獣化したその動きを見てアンクはカザリのヤミーと断定し、映司にメダルを渡した。
 OOOにとって山金は、馬鹿力一辺倒の攻撃を仕掛けてくるも、その標的はヤスなのでさほど脅威な訳ではない。だが完全にヤミーが飛び出していない半人間状態だからこちらも下手に攻撃を仕掛けられない。だが力でもOOOに叶わなかった山金はヤスと(泉刑事の体を借りている)アンクに復讐を宣言して逃走した。この手のタイプは絶対に復讐を諦めない執念深過ぎるタイプだから厄介だ。

 ともあれ一段落したところで、山金の欲望が復讐であることを語る映司とアンク。そこにアンクを泉刑事と思ったヤス(←一応、間違いではない)は情けない口調で過去の例を述べながらアンクに縋りついたが、勿論邪険にあしらわれた(苦笑)。映司はアンクを泉刑事ではないとしてかわそうとしたが、ヤスは「恩人の顔を見間違えない!」として頑強にアンクを泉刑事だと言い張った(←くどいが、間違いではない)。
 その後映司はヤスをクスクシエに連れ、傷の怪我を手当しながら詳しい話を聞くと、3年前の冬、警察に密告したことを逆上した山金にヤスは殺されかけたの泉刑事に救われたとのことだった。銃を突き付け、鉄パイプを振り回して暴れる山金からヤスを庇った際に泉刑事は腕の骨を折られながらも、片腕で巨漢の山金をぶん投げて逮捕したと云う。
 その後も泉刑事はヤスの減刑や出所後の身の振り方まで世話を焼いたというから、ヤスが恩義を感じるのも当然と云えた。手当てしながらそれを聞いていた比奈は、兄が仕事のことをあまり話してくれなかったことの寂しさを滲ませながらも、ここまで人に感謝されている兄を誇らしく思うのだった。確かに泉刑事の登場シーンは僅かだったが、パンツ一丁で怪し気に登場した映司にも高圧的にならず、丁寧に接し(笑)、万事に気を配っていた。この回まで一課(凶悪事件担当)の所属と気付かなかったほどだったから。
 だが、しかしその泉刑事の体を間借りしているアンクは、知世子さんから泉刑事の素晴らしさにあやかるようにと教えられた「ありがとう」の言葉を、アイスキャンディーを給仕した後藤(←アルプスの少年スタイル)に嫌味たっぷりに使用していたから泉刑事も浮かばれない(←死んでないけどね)。
 しかし、根が真面目なのかアンクの嫌味にも黙々と対応する後藤だったが、あの無表情・不愛想は絶対客商売には向かないな(苦笑)。
 その間も、アンクの部屋ではヤスの述懐が続いており、山金の執念深い性格や、獄中で泉刑事のみならずその家族への報復を声高に叫んでいたことが述べられ、「今こそ恩返しの時です!俺がピッッッッタリと張り付いて刑事さんと妹さんのこと守りますから!」とした。
 とはいえ、比奈の両手を握りながらどこが自己陶酔気味に宣言するヤスに比奈も映司も難色を示しかけたが、アンクはヤスに(彼の口調まで真似て)そうしろと言った。

 場面は移ってとある郊外。映司はアンクが、比奈とヤスを囮にしていると考え、両者への危険を案じて抗議したが、アンクは山金が泉刑事、比奈、ヤスの3人を狙っていることから、「誰を狙っているか分からない……守るには全員一緒にいないと無理だろ!」とした。正論である。いつもの自己中発言&態度が無ければ一部の隙も無いほど正論である(笑)

 場面は替わって鴻上生体工学研究所の所長室。そこには伊達がちゃっかり住み込み、おでんを食していた。帰還してきたDr.真木とギャラの振り込みに関する会話が交わされたのだが、Dr.真木はDr.真木で研究室を自宅にしている伊達が気に入らず、伊達は伊達で人の眼を見て話さないDr.真木が気に入らず、両者が諍いを起こす中、とばっちりを食ったのはおでんの中に転落した人形だった(苦笑)。今回のDr.真木は完全にお笑いキャラだな(苦笑)。

 場面は替わってとある公園。アンクの読み通り、(逆恨みした)仇3人を求めて山金が現れた。復讐心が絶頂に達したのか、その体からは白ヤミーが飛び出し、映司はアンクからコアメダルを受け取ってOOOに変身。直前に映司が疑問を呈したのが、渡されたメダルがいつものコンボではなく、久々のタカキリバだったから。
 比奈と、比奈の護衛役としてヤスは近辺に退避。即座に戦闘に入ったが、白ヤミーが本格的なヤミーとなるとその姿はかなりの異形だった。
 アンクによると「半分はメズールの?」とのことで、それはライオンとクラゲを組み合わせた全く新しいタイプのヤミー、ライオンクラゲヤミーだった。右半身がクラゲ、左半身がライオンになっており、いつものヤミーがショッカー怪人なら、このヤミーはゲルショッカー怪人と言った感じだった。
 メズールのコアを体内に収め、グリードとして新たな進化を遂げたカザリだから生み出せた新しいタイプのヤミーは姿が異形なだけでなく、腕力とタフネスに長け、殴り合いでもOOOより若干優勢で、そればかりか身体から小型のふよふよと宙を漂うクラゲを召喚した。
 しかもその浮遊クラゲ=クラゲヤミーはOOOの鎌攻撃を受ける度に個体数を増やし、電撃まで浴びせかけてきた!

 クラゲヤミー群にOOOの動きが封じられたのを確認したライオンクラゲヤミーは矛先を比奈とヤスに転じた。映司はライドベンダーからタコカンドロイドを大量に召喚し、クラゲヤミー群に当たらせるとアンクからチーターのメダルを借り、タカキリーターの俊足でこれを追った。
 何とか追いつき、比奈とヤスの危地は救えたが、続くキリーターによるライオンヘッドの灼熱閃光攻撃は簡単に弾き返されたからライオンクラゲヤミーは今までにない強敵だった。
 そしてそんなタイミングに伊達明登場。アンクは加勢を拒絶したが、伊達はお構いなしに仮面ライダーバースに変身。OOOにどいていろと告げるとバースバスターを連射後、ドリルアームでライオンクラゲヤミー相手に優勢に戦ったが、そこにカザリが加勢して来た。

 加勢に来たカザリは、ヤミーの進化を証明するかのように自身もかなり強く、ライオンクラゲヤミーと互角以上だったバースも劣勢に立たされた。ダウンし、苦悶の声を上げるバースにカザリ「所詮はセルメダル専用が、僕達グリードに敵う訳がない!」と言い放ち、OOOとアンクにも「僕の新しいヤミーはどう?」と余裕をかましていた。
 そのカザリの強化はアンクが想像した様にメズールの力を取り込んだもので、ヤミー強進化の理由もそこにあったことが肯定された。
 そして「OOOVSライオンクラゲヤミー」とバースVSカザリ」のW一騎打ちが展開される中、バースはビル屋上から放り出されて川の中へどっぽーん!OOOもライオンクラゲヤミーの放った衝撃波にぶっ飛ばされ、アンクもその余波で腕(アンクにとっては全身)を壁に叩きつけられた。

 「こうなったらコンボでいくしか!」というOOOの打診にアンクが応じようとした正にその刹那、突如走りよってきたヤスが、アンクの手からメダルホルダーを奪い取ってしまった!
 「おいィ!?」と怒鳴りつけるアンクと驚くOOOを尻目にホルダーをカザリに手渡したヤスは、「悪いね、この怖い人達に脅されちゃって〜。」と半ば悪びれ、半ば小馬鹿にした様な薄ら笑いを浮かべるヤス。さすがは「絵に描いた様な小物」であった………。
 詰まる所、ヤスはカザリの送り込んだ埋伏の毒!「泉兄妹を守るため」というのは2人に取り入る為の口実で、最初からカザリに脅されアンクのメダルを奪うことが目的だったのである。
 そして愕然とする隙を突くライオンクラゲヤミーの強烈な一撃を受けたOOOも激しく吹き飛ばされ変身解除。生身になった映司を踏みにじりながらカザリが黄色のコアを拾った……。
 OOOの装備していたライオンチーターのメダルを取り込み、これで黄色メダル8枚のリーチがかかったカザリは、一際強烈な黄色の光を全身から放ち、頭部に至ってはメデューサ状態……否、メデューサの蛇髪が更に長大に伸びた状態で、「これで8枚…後1枚……僕は今日完全に復活する!!」と叫んだ。
 残されたのはメダルホルダーに収められているトラ1枚。そしてそのホルダーを勢い良く開くカザリ…………というえげつない引き(苦笑)で以下次週へ。
 ラストのOOOが使えるメダルを示す表示が、タカの1枚の身だったから本当にピンチだ………。


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令和三(2021)年五月二日 最終更新