仮面ライダーOOO全話解説

第20話 囮と資格と炎のコンボ

監督:石田秀範
脚本:小林靖子
 前回の「3つの出来事」は「1つ、アンクのコアメダルが新たに出現。2つ、カザリのヤミーが憑りついた強盗犯が脱獄。自分を逮捕した泉刑事と裏切った仲間のヤスを狙う。そして3つ、ヤスは映司達を騙し、メダルを奪ってしまった。」というものだった。

 前回の続きで、いつも気怠そうな口調のカザリが興奮気味に「後1枚……僕は今日完全に復活する!!」と呟き、その後も「後一枚」を連呼しながらメダルホルダーを開いくカザリ……………だが、次の瞬間カザリは硬直した。
 つまりは硬直の理由は、ホルダーに収められていたのがすべてセルメダルだったからである。勿論これはアンクによる予防策で、アンク曰く、「人間を使うならしっかり狙う物を教えておくべきだったな。お前が狙っていると分かっていて俺が用心しない訳ないだろ。」とのことだった。
 期待を外され、ショックを隠せないカザリだったが、今のアンクから強奪するのは訳ない、と見てすぐに落ち着きを取り戻した。だが悪知恵ではアンクも負けていない(笑)。アンクはメダルを持ってきておらず、自分の持つトラの黄メダルと、カザリが持つクジャクの赤メダルを交換しようと申し出た。後1枚で完全復活が為せるカザリには確かに悪い話ではないが、悪知恵に長けたアンクをそのまま信用するほどカザリも馬鹿ではない。
 その旨を告げられたアンクは、あろうことか映司に隠させたと云い放った(←勿論大嘘)。そして映司さえ倒せば、と彼ににじり寄ったカザリだったが、一瞬の隙を突いて映司を屋上から放り投げて川の中へどっぽーん!
 余りの出来事に比奈もヤスも、そして敵であるカザリでさえ言葉を失ったが、全員が唖然とする隙を逃がさず、アンクはカザリの持つ赤コアメダルを引っ手繰った。
 「はッ!アンク…!お前…。」と驚くカザリにアンクは「メダルの隠し場所を知ってるのはアイツだけだぜ。」と云ってカザリを映司追跡に向けさせた。結局カザリはここでアンクをブッ殺せばいいものを、映司を見失ってはいけないという口車に乗せら、怒りを抑えて映司捜索を優先し、立ち去った。

 ライオンクラゲヤミーカザリがその場から居なくなると比奈はアンクの行動を猛抗議。
 それに取り合わず懐からトラメダルを取り出してほくそ笑んでいたから相変わらずの策士だった、アンクは。つまりトラメダルを映司に隠させたのも大嘘なら、その前に口にした「持っていない。」はもっと大嘘だった(笑)。
 戦闘になれば簡単に奪われるところを嘘八百だけで切り抜け、更にクジャクまでゲットしたこの手腕。姑息ではあるが、アンクのブラフ(はったり)勝ちである。自分以外のすべてを騙すやり方を非難する比奈にもひたすら気色の悪い笑顔で取り合わないアンク、と云ったところでOPに。

 OPが終わり、ブラフでクジャクのメダルを手にし、邪魔なカザリライオンクラゲヤミーも追っ払ったアンクはテンション高まって思わず絶叫したが、そんなアンクのやり方に比奈も猛反発を続けた。勿論アンクは詫びたり反省したりするタマではなく、全滅を防ぐにはそうするしかなかった、と正当化した(←一理無くはない)。しかも映司を助けに走る気配を見せないどころか、「あの程度で死ぬようならこの先は無理だな。」と嘯く始末。
 これに業を煮やした比奈はクジャクのメダルを引っ手繰って逃走。とっとと体内に吸収すりゃよかったのに、アンクもアンクでまだ甘かった。
 頑としてメダルを渡さず、逃げながら映司を探す比奈に今度はアンクが業を煮やし、ぶっとい鎖を投げて比奈を縛り上げ、川の上に宙吊りにした(←やばい趣味の人が喜びそう)。怪力を誇る(?)彼女も鎖までは切れず、メダルを渡さずば川に落とす、と脅すアンクだったが比奈は屈せず、ここぞとばかりに普段アンクに抱いている不満(態度、兄の体を悪用していること)を吐きまくった。

 場面は替わってクスクシエ。クレーンアームで何とか難を逃れ、戦場に戻った時には誰もいなかった状態の伊達が来店し、バイトしている後藤を見て「稼ぐねぇ〜。」と(自分基準で)びっくり。来店した伊達が後藤の知り合いと知った知世子さんにも、「面白い店」と素直な感想を述べるマイペースな伊達。そして店内ある知世子さんが世界各地で撮影した写真に興味を示したところから何かと知世子さんとも話が盛り上がった。実際、旅帰りスタイルの伊達は世界あちこちに足を運んでいた。
 そして、(以前知世子さんも疑問に思った)エジプトでの写真に偶然映った映司を見て、 (こうして見ると見覚えがあるような…火野映司、映司ねぇ…)と沈思黙考した。こりゃ、絶対に以前に遭遇しているパターンやな(笑)。

 その頃、映司は川岸にあるヤスの隠れ家にて介抱され、匿われていた。いざこざの間隙を縫って、もうこれ以上の関わり合いは御免だとばかりにその場を逃げたヤスだったが、川岸に漂着した映司を発見し、躊躇いながらもこれを助けていたのだった。
 小悪党らしく、悪に徹し切れないらしい。単に小心者ゆえ、人死にに耐えられないだけと言う気もするが、それはそれで人として大切なことではある。
 少なくとも自分が裏切った映司を助けて手当までしている辺り、良心は間違いなく持っているのだろう。
 御人好しの映司が丁寧に礼を云う中、映司達を裏切ったうしろめたさを口にするヤス。せめてもの侘びと云いたげだった。それに対して映司はヤスがカザリを怖がって服従せざるを得なかった気持ちに理解を示した。

 それに並行して、アンクは夜になっても縛り上げて吊るした比奈にメダル返還を強要していたが、比奈は眠りこけてすら自慢の(?)腕力から来る握力でメダル奪還に頑強に抵抗した。アンクの悪戦苦闘を知る由も無く眠る比奈だったが、その表情は彼女に似つかわしくないイヤらしい笑顔(←性的な意味ではなく、性悪的な意味)。一体、どんな夢を見ていたのやら(苦笑)。

 そして同じ頃、クスクシエでは後藤と伊達の会話が続いていた。無表情・不愛想で黙々と仕事をこなしているようでも後藤は伊達に自分の想いや経緯を話したようで、知世子さんも大半の客が帰った状況を見て、2人で積もる話をするよう勧めてくれた。
 そして終業後、後藤がバースになりたがっていたことを知らされた伊達は店を出ながら、バースになりたがったことを恥じる後藤を半ば強引にバースバスターの試射に誘った。
 地面にいくつも並べた空き缶を、バースバスターの掃射でなぎ払う伊達に促されて渋々トリガーに手をかけた後藤(←バースになる機会を蹴った自分にその資格がないと思い込んでいた)だったが、伊達の云っていた半端ない反動に(数メートルは飛び)もんどりうって倒れた。まあ38口径の拳銃でも相当な反動だからなぁ(←一応、シルバータイタンは拳銃を撃ったことが有る)。
 それを見ていた伊達は笑いながら、バースになれるかどうかの決め手は生半可ではない鍛え方と告げた。これは後藤の卑下を打ち消すための台詞だろうか?

 そして同じ頃、カザリはDr.真木と携帯で会話していた。自分とメズールの力を兼ね備えたヤミーが面白い成長を遂げそうとほくそ笑むカザリに、Dr.真木は力の制御が出来ないことを懸念する旨を述べた(ミシンで自作した人形の服を着せ替えながら!)。
 もっとも、カザリはそれでも全然意に介さないらしく、山金は相変わらず復讐を吠えてばかりいた。

 そしてその山金の雄叫びが聞こえた訳でもないだろうけれど、ヤスは僅かな物音にも山金の報復を感じて脅えていた。「裏切るんじゃなかった。」と後悔するヤスに「警察に協力したんだから。」と励ます映司だったが、ヤスによると立派な動機ではなく、人間不信からすぐに人を裏切ってしまうとのことだった。どうやら想像以上に気が小さいらしい。
 それでもアンクに裏切られた映司のような目に遭うよりはマシとし、その自己中且つ手段を選ばないやり方を山金に擬えた。ヤスから聞かされる山金の話をアンクと比較し、映司も大いに共感(笑)。映司はアンクの、ヤスは山金の悪口を言い合い意気投合する2人。悲しいかな、身近な人間の悪口を出し合うことで盛り上がる会話は間違いなく存在するのは現実もフィクションも変わらないらしい(苦笑)。

 そして夜が明け、ライオンクラゲヤミーは益々凶暴化した。そしてその気配を感じた者達が行動を開始しようとした。

 まず映司が起き出し、戦いに赴こうとした。ヤスは傷ついた体で単身向かうのは無茶としたが、映司は「一人じゃありませんよ。例の酷い奴が来ますから。」と云う。勿論アンクのひどい一面しか見ていないヤスには丸で合点がいかない。「あんただって散々悪口云っていたじゃん……。」と呆れるのだが、「確かに性格は信用出来ないですけどね。」と云いながら着替える映司の顔には笑みが浮かんでいた。

 次いでアンクが戦いに赴こうとした。比奈を下ろし、介抱しながら「このメダルなくすなよ。」と云うアンクに「1人で行くの?」と尋ねる比奈。それに対してアンクは「映司が生きていれば必ず来る。」と断言。
 比奈の、「あんな酷いことしておいて…一緒に戦ってくれると思うの?きっと怪我だって…!」と疑問を呈する口調は、いつもに比べてかなり辛辣だった(ついさっきまで吊るされていたこともあるしね)。
 だがアンクは再度断言した。「来る。ヤミーを倒す為ならな。」と。

 同じ頃、映司はヤスに「ひとつだけ…ヤミーを倒すって一点でだけアイツの行動を信用出来るんですよね。」と説明していた。
 アンクも、映司も、互いが助けに来てくれることに微塵の疑問も抱いていない。確かに共通の目的を持つ者同士は絶対的に信頼出来る盟友である。少なくとも目的達成の一点においては……。
 「共にヤミーを倒す。」ただそれだけの共通の目的で組んだハズの凸凹コンビ。しかしながらその絆はどんなコンビよりも深く結びついていた

 そして別の場所では別のコンビが絆を深めようとしていた。
 「後藤ちゃん。俺が1億稼ぐまでにコレ使えるようになっててよ。俺がいつでも辞められるように。」と云いながら伊達はバースのメインウェポンである筈のバースバスターを託した。かくして、映司、アンク、そして伊達。三者三様に戦いの前に視聴者に見せた「信じるもの」。それぞれの胸に秘めながら戦士達は戦場へと向かったのだった。

 そして最早何が目的なのかもわからない状態に陥り、火球を吐いて街を破壊するライオンクラゲヤミーの前にまずアンクが、そして映司が現れた。

 「生きてたか。」(アンク)
 「当たり前だろ。お前覚えとけよ。」(映司)

 カッコいいBGMと、夜明けの緊張感をぶち壊しにしかねない再会の挨拶であった(苦笑)が、変身は滞りなく行われた。そしてのっけからメダジャリバーを振るって奮戦するOOOだったが、ライオンクラゲヤミーはやはり強く、足の怪我も引きずるOOOはメダジャリバーも弾き飛ばされた。だがそこに伊達が現れた。
 バースに変身した伊達は「仕事の邪魔だからどいてろ!」としてOOOに替わってライオンクラゲヤミーとの一騎打ちを敢行。左腕をショベルアームに変じて互角の殴り合いを繰り広げた。その強烈な一撃を受け、山金とライオンクラゲヤミーは分離されたが、予想に反してライオンクラゲヤミーは益々凶暴化した。

 ライオンクラゲヤミーは山金が離れたことで逆にフットワークが軽くなった様にさえ見え、殴り合いを有利に展開し、バースがドリルアームを持ち出すと例のクラゲヤミーを大量に空中に放って対抗した。
 OOOもバースもその電撃攻撃に翻弄され、アンクも手詰まりの大ピンチと思ったその時、戦いをモニターしていた鴻上会長から1人の助っ人が戦場に寄越された。
 「火野さん。お預かりしていたコレ、使って下さいって、会長が。」と言って、コンドルのメダルを持ってバイクで現れたのは、ピッチピチの黒皮ライダースーツに身を包んだ里中!
 レザースーツのフィット振りは尻の割れ目がモロに見えていてかなりエロい………何?!エロいのは私!?……………ぬうぅっ、言い訳出来ない………。だが前話のOP直後に里中の生足アップで始まったり、折に触れて物憂げな里中の顔がアップになっていたりしていたことから制作陣はこの2話1セットでは里中をお色気担当と狙っていた節は有る筈だ!(←責任転嫁)
 話を戻すが、勿論、コンドルの赤メダルが鴻上会長の手元にあったことと、それを映司が知りながら隠していたことに「預けてた?おい映司!どういうことだ?!」と声を荒げるアンク。それに対して「悪いね!お前に渡すの抵抗あって!」と馬鹿正直な映司。
 その間、里中は襲いかかるクラゲヤミーに対し、右手にショットガン、左手にマグナムを放ち、回し蹴りも駆使して次々とこれを破壊していった。やはりこういうことは知世子さんにやらせて欲しい(←個人的趣味から来る欲望)。

 そんな里中に「おいそいつは俺のだ!返せ!」と迫ったが、それを比奈が止めた。
 「あなたがやったこととこれでおあいこでしょ?映司君の助けになるなら渡してあげて!このメダルもその為なら返すから!」と云いつつ彼の眼前にクジャクのメダルを付き出した。後難を案じるOOOは比奈の意見に異を唱えそうだったが、比奈は強い口調で「お願い!映司君がいなくなったらアンクだって困るでしょ!?」と、命令とも懇願ともつかない内容をまくし立てた。
 かくしてアンクは「今回だけだ!映司!」と叫んでクジャクのメダルを、里中はコンドルのメダルをOOOに向かって射出。3枚の赤のメダルが揃い、灼熱の不死鳥が爆炎を纏って出現した!
 「タカクジャクコンドルタージャドールータージャードールー」の電子音声を背負って、大空を自由に駆ける荘厳な翼と、全てを焼き尽くす炎を纏いし真紅の戦士!仮面ライダーOOO・タジャドルコンボ参上!!
 背中から生えたエネルギー体のクジャクの羽が無数の光弾に変わり、増えに増えまくっていたクラゲヤミーを一瞬で殲滅!その圧倒的なパワーの迸りに、バースも「スゲェ…。」と一言漏らすだけ。流石にアンクのコンボだけあって今までのそれとは演出が段違いだった。
 天空に舞い上がったタジャドルは縦横無尽に大空を飛び回り、ライオンクラゲヤミーの破壊弾も左手甲に装備されたタジャスピナーで余裕のブロック。
 やがて標的に向かって急降下するタジャドルの脚が巨大な猛禽のそれに変化。炎を纏った鉤爪で完膚なきまでに粉砕し、焼き尽くす必殺キック・タジャドルプロミネンスドロップなる大技が炸裂!脚部がコンドルだけにまさに仮面ライダー版テキサスコンドルキック!! (笑)
 かくして見事ライオンクラゲヤミーを真紅のOOOは撃破したのだった。

 直後のラストシーン。さすがにこれほど強力なコンボの反動か、根こそぎ体力を奪われた映司は変身を解除して倒れ込むが、そこににじり寄ったアンクがコアメダル3枚を、有無を言わせず奪い取ってしまった。
 驚く映司を尻目にメダルを吸収したアンクは、一瞬背中に美しく長大な片翼が生えたものの、すぐに砕け散って元の姿に戻ってしまった……。
 (コアメダルが増えたのに…なんで他のグリードみたいにならないんだ?アンク…)との疑念を抱く映司と比奈の視線を背中に受けながら、しかしなんの説明もなく黙ってその場を歩き出すアンク。彼は自身の身体の秘密を理解しているのか?
 その背後では山金を縛り上げようとしたヤスと、意識を取り戻した山金が醜い争いを展開し出したが、こんな自己中且つ執念深い強盗犯が刑務所に戻らないままでいいのか?と云う疑問と、アンクの肉体への新たな謎を残しつつ、第20話終了。


次話へ進む
前話に戻る
『仮面ライダーOOO全話解説」冒頭へ戻る
特撮房『全話解説』の間へ戻る
特撮房へ戻る

令和三(2021)年五月二日 最終更新