仮面ライダーOOO全話解説

第3話 ネコと進化と食いしん坊

監督:柴崎貴行
脚本:小林靖子
 2話1セットで為される本作の放映において、1セットの前半となる奇数話では冒頭で前セットの「ハイライト」が紹介される。
 紹介されたのは、「映司と泉刑事の邂逅」、「アンクとの出会い」、「グリードの出現」、「初変身」、「メダジャリバーの威力」、「兄妹の再会」だった。

 前回の続きで、突然に比奈に抱き着かれて困惑したアンクは、泉刑事の記憶から彼女が、自分が共有している肉体の身内であることを察知した。そして次の瞬間、その命を奪おうとした!
 実の兄(の肉体)に襲われるという非常事態に戸惑いながらもこれを一本背負いした比奈だったが、喋る腕を見て失神した。
 一連の流れに少し遅れて止めに入った映司は、アンクが、比奈が泉刑事の妹であることを知った上で、「つきまとわれたら厄介だ。」という理由で殺そうとした、と告げられた。
 相手が人間なら、「そんな理由で!?」と絶句するところだが、まだまだグリードの価値観は詳らかでないので何とも言えない。正直、アンクの態度からして(少なくとも現時点では)人命を塵芥の如くにしか見てなくてもおかしくないので。

 いずれにせよ、そんなアンクの暴挙を黙認する映司ではない。とっさにベルトを川に投げ込む姿勢を見せ、「人質」ならぬ「ベルト質」で比奈殺害を止めるよう脅しをかけた。
 アンクは渋々殺害を断念。映司は気絶してしまった比奈を介抱するべくバイト先の民族料理店「クスクシエ」へ搬送した。
 比奈をオーナーの白石知世子(甲斐まり恵)に託した映司が去った後、彼女はインドで撮影した写真を見て、「まさかね」と呟いた。その写真の背景には映司が小さく映っていて、映司が公言通り、世界中を放浪していることが分かる。
 同時に、世界の民族料理を扱う関係から、知世子さんが映司同様に世界を巡った過去を持っていることも。ちなみに平成仮面ライダーには主人公サイドの女性レギュラーには「処女」と言える年齢の俳優が大半なので、知世子さん(放映当時の甲斐まり恵さんの年齢は30歳)の様な(シルバータイタン的に)妙齢の女性レギュラーは嬉しい。
 本音を言えば、もう少し年食っている方が好みなのだが(笑)。

 場面は替わって、何処との地ともはっきりしないところを歩く4体のグリード。目立った負傷こそしていないものの、行く先々で警官隊からの銃撃を受け、落ち着く先を求めての放浪に疲労の色を滲ませていた。
 特にガメルは消費が早いらしく、メズールに甘え、メズールも姉御っぽく応じているところから、この2体は「いい仲」とまではいかないものの、気心は知れているようである。
 またアンクからコアメダルを取り戻すことも重要だが、まずは日々の糧ともいえるセルメダルに困っているようであった。ゆえにここでカザリが動いた。
 標的は公園で飯を食ってた見るからに大食漢の食いしん坊、腹時門太(福沢重文)に目を付け、「その欲望、解放しろ。」とヤミー化させた。

 ヤミー化した門太は更なる食欲の権化と化し、弁当輸送車を襲ってそこにある弁当を貪りまくった。どうでもいいが、ヘイスタック・カルホーン(「お化けカボチャ」とあだ名された超重量級プロレスラー)や石塚英彦氏(ホンジャマカ)やヒロ氏(安田大サーカス)のイメージなのか、極端なデブの衣装って、オーバーオールじゃないといけないのだろうか?
 いずれにせよ、見た目にはまだまだ人間の態を保っていても、尋常ならざる貪りを見せる門太を見て、ヤミーか人間かを訝しがる映司だったが、アンクによると「宿主の内部に寄生するタイプだ。寄生した人間の欲望を増幅させて、それをメダルにして溜め込んでるワケだ。」とのことだった。
 アンクは門太をもっと食わせて、太らせて、更なるメダル持ちにしたいところだったが、勿論それを指咥えてみていようという映司ではなく、即座にOOOに変身した。
 だが、ヤミーそのものは門太の体から出て来ず(アンク曰く、「ソイツは成長し切るまで出て来ない。やるなら人間ごと斬るしかないぞ。」)、OOOとしては攻撃が逡巡された。
 貴様がやらないなら俺がやる的にアンクは委細構わず門太を殺そうとしたが、OOOがそれを止めている間にトンズラされてしまった。するとそこへ「コイツを使え。」と言いながら後藤がやって来た。
 メダルを使うよう促された映司は、ベンダーをバイクにして追跡せんとしたが、後藤の意図はタカカンドロイドに追跡させるというものだった。その際に誤って投入されたメダルを「今のはノーカンだろ?メダル返せよ!」と迫るアンクに対し、後藤は「1枚は1枚だ。使ったメダルは戻って来ない。」と返した。どうも小学生の口喧嘩じみてるな(苦笑)。
 当然アンクと後藤の間に流れる空気は険悪化し、アンクが「お前ら何だ?何でたかが人間がメダルの力を使える?」と詰問すると、後藤は「お前達が寝ていた800年の間に、『たかが人間』も進化したってことさ。お前達に対抗出来る程度にはな。」と皮肉を込めて応じた。
 この皮肉に「ハッ!進化ってのはそのデカ過ぎる自信のことか?」とアンクが吐き捨てれば後藤は銃を突きつけた。一触即発状態は映司が仲裁したが、部下を大量に失ったことからも後藤がアンクに喧嘩腰なのも分からなくはない。
 まあ後藤ならずとも、アンクの態度に好感を抱く奴がいるとも思えんが(苦笑)。

 場面は替わって鴻上ファウンデーション会長室。
 後藤から報告を受けた鴻上会長は、現状を「非常に良いバランス。」と評していた。「力はあるが知識のないOOO」を財団と「グリードの1人」(=アンク)が補完していることが、メダルが増やすのに最適な環境を為している、と里中に力説していたが、相変わらず里中は関心なさげだった。
 映司も、アンクも知らない背景は今後どう動くのか?

 場面は替わって泉兄妹宅。アンクが泉刑事の記憶を辿って、「俺の家」と言い張る。目的は800年前にはなかったインターネットで、ここから800年間に起こった人間の歴史を学び、失われたコアメダルの情報を得んとした。
 800年前に影も形もなかったパソコンとネットを難なく使いこなすのは知能の高さか?それとも記憶参照能力の高さか?
 その間、映司は仏壇の泉一家の写真から泉刑事と比奈が2人きりの兄妹であることを悟り、2人の再会を誓うのだった。
 程なく、帰還したタカカンロイドから映司は門太の逃走先を得たのだった。

 場面は替わってクスクシエ。知世子さんと比奈がアンクに憑依された泉刑事の正体について訝しがっているところに、先の現場を逃れた門太が偶然そこに現れたのだった。
 食料を求めるその異様さに腰を抜かした知世子さんと比奈を尻目に店の食材を貪りまくった門太だったが、そこに映司とアンクが急行。映司はタカカンドロイドを囮に使って店の中から門太を誘き出すことに成功した。
 より大量のメダルを欲するアンクは、「食ってるだけなら周りの人間が死ぬこともない。」として、門太をもっと太らせろ!としたが、勿論映司は門太の身も案じた。
 アンクの言う、「これは自業自得だ。こいつはヤミーのせいでこうなったんじゃない。自分が持ってる欲望のせいだ。欲望にまみれて死ぬなら本望だろう。」ということに一理無い訳ではない、と自身自棄食い癖のあるシルバータイタンは思うのだが、やはり暴論である。
 映司は当然納得せず、変身を急ごうとするが、アンクは「いい加減に覚えろ!命令するのは俺だっ!言っとくがベルトを捨てようものならそれこそコイツは助けられんぞ。」と、本来の自己中な性と、先と同じ脅しは通じないことを露わにした。
 だが、仮面ライダーの本質は変身能力ではない。映司は生身で門太を止めようとしたが、さすがにこれではヤミーの力に抗し得なかった。さすがに映司が殺されるのもまずいアンクはボコボコにされる映司に止めろと命じたが、映司を動かしているのは勝算ではなく、例の戦場で助けられなかった少女の記憶だった。

 程なく、門太に取り付いたヤミーが成長し切って、その体から這い出てきた。これが今回と次回の対戦相手となるカザリ眷属のネコヤミーなのだが……………「アニメ初期のドラえもんのホラー化し損ない」というのがシルバータイタンの抱いたイメージだった(笑)。  ともあれ、完全体ヤミーが相手では本当に映司が殺されかねないので、アンクは「結局このパターンか……。」と毒づきながらもメダルを投げ渡した。
 ようやく変身したOOOはメダジャリバーで斬り掛かったが、極端に太ったネコヤミーの肥満体は刃を弾力のあるゴムのように弾き返した!さながら『北斗の拳』におけるハート様か、『魁!男塾』における厳哪亜羅三宝聖の一人、牛宝である(苦笑)。
 虎の爪も同様だったが、バッタの足(←本当にバッタの様な関節と形状に変化した)での蹴り付けは通じた。そこから必殺技キックが命中したが砂煙が晴れるとそこには大ダメージを負ったもののまだ生きているネコヤミーの姿があった。

 訝しがるOOOに、アンクはそれが第三者の妨害(巨大な石材が投げ込まれた)であると説明し、その第三者=カザリに出て来い、と告げた。
 「やぁ…久しぶりだね、アンク。」と、一見フレンドリーな台詞を発しながら姿を見せたカザリ。果たしてその腹の内は?というところで以下次週へ。


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平成三〇(2018)年八月七日 最終更新