仮面ライダーOOO全話解説
第21話 バッタと親子と正義の味方
監督:田崎竜太
脚本:毛利亘宏
冒頭のダイジェストではこれまでのメダル争奪戦メンバーの簡単な初回に加え、アンクが自分の赤コアメダル3枚入手したことが告げられた。
そしてストーリーはとある橋の近辺で始まった。クスクシエが毎年恒例としているバレンタインデー・イベントの為にチョコレートを初めとする大量の食材・資材の買い出しに出ていた映司、比奈、知世子さん、後藤はその帰りに小さな事件に遭遇した。
空き缶をポイ捨てにした青年に「ポイ捨てはダメ!」と迫った、まだ小学生になるかならないかの少年(中西龍雅)に青年は「あ?何云ってんだ?」と云ってそのまま行こうとしたが、何と少年はローキックをかました。
蹴りを入れられた青年は少年を突き飛ばし、その直後後藤が駆け付け、「子供相手にやり過ぎだぞ!」と割って入った(←やはりこの辺りは元警官ね)。ポイ捨てしたという非の発端はあるとはいえ、蹴りを入れられて納得のいかない青年だったが、映司も駆け付け、「ちゃんと云っておくから、これ(←空き缶)、ちゃんと捨てといて下さいね。」と云われたことで、空き缶を受け取り、愚痴をぼやきつつ去っていった。
映司は少年を助け起こし、「偉いなぁ。悪いことをちゃんと「悪い」って言えるんだね?」と褒めると、少年は誇らしげに父親の教えであることと、父親の「悪い奴は絶対に許さないんだ!」という姿勢を語った。するとそこへその父親(伊嵜充則)が登場。
「隆が何かしましたか?」と言って現れた父親は、腰が低く真面目そうではあるが、万人の先頭に立って力強く正義を実践するタイプにも見えない。映司は少年=隆の正義感がちょっとトラブルになっただけと告げて父親を安堵させた。そしてそこへ遅れてやって来た知世子さんが父親を「神林君じゃない?」と尋ねた。
父親=神林はどこか気まずそうにそれを肯定。知世子さんによると「大学時代の後輩」とのこと。しかし神林に「知世子先輩」と呼ばれていた知世子さんは丸で姓では呼ばれない人である(笑)。
ともあれ、久方ぶりだから店に寄って行かないかという誘いも断り、神林は息子を連れて逃げるようにその場を去ってしまった。そしてそんな父子を遠巻きに見てにやりと笑うウヴァ………視聴者は思った…今週の犠牲者は…(←道場主「パクリを2度もやるな。」)。
OPが終わり、場面は替わってクスクシエの厨房。チョコを冷やすのにクジャクカンドロイドを使う映司に不満げな後藤(←鴻上ファウンデーションでの任務休業状態でも、戦闘用アイテムを便利アイテムにされるのは気に入らないらしい)。そして1人手伝わず、チョコにも丸で興味を示さずアイス一筋のアンク。背景は替わってもどこかいつもと変わらない仲間達を見ながら、映司は前回のラストで赤いコアメダル3枚入手しながら一瞬の変化しか見せなかったアンクの謎に頭を痛めるのだった。
場面は替わってとある川辺。そこを神林父子が歩いていたのだが、自らの行為を誇らしげに語る隆に、神林は危険を理由に同じことをするな、と諭す。だが純粋故に融通の利かない年頃でもある隆は「だってお父さんがいつも云ってたんだよ?悪い奴は絶対に許しちゃいけないって……。」と云って納得しない。逆にいつ帰ってくるのか?と尋ねて来た。
まずいところを突かれて硬直する神林の回想シーンによると、彼は司法試験に何度も落ち続け、自己嫌悪に陥り、妻・恵美(建みさと)の励ましも耳に入らず、けじめの為、合格するまでは家に帰らないとして妻子とも別居していたとのことだった。
ちなみに妻役を演じていた建みさとさんはかなり道場主の好み。本当に偶然ながらうちの道場主は「みさと」と云う名前に弱い(例:渡辺美里、田中美里、平田弥里、葛城ミサト、etc(敬称略))。
ともあれ息子に明確な回答が出来ず、「お父さんまだ帰れないんだ。」としか言えない神林に隆は「…もういい!お父さんなんてもう帰って来るな!」と叫ぶやまたもローキックをかまして走り去った。正義感が強いのは良いことだが、すぐに暴力に訴える(←しかも親に向かって!)性癖は大いに問題あるな、このガキ………。
そして息子にまで愛想をつかされて一人ポツネンと取り残された神林は、周囲の景観にその荒んだ心を吐き捨て、「酷ぇ落書きだなぁ…世の中悪い奴でいっぱいだ。」と呟く。親子して正義感が強いのは間違いないが、少々その焦点に問題がありそうだ。
そして神林に近づいて来たウヴァは「お前、欲望に満ちているなぁ。」と声掛けして来た。何者かと誰何する神林を無視して、彼の欲望を「珍しいタイプの欲望」で「強くて、鋭い。しかもこれから大きく育っていく。」と評しつつ、例によってメダルを投入し、白ヤミーを生み出した。
事態の急変に驚愕し、白ヤミーに襲われた神林はその後気絶していたらしく、目を覚ますとそれまでのことを夢と思ってバイトに向かった。
その頃、クスクシエでは食材が足りないことが判明し、映司は自分が買ってくるというやアンクも連れ出した。
同じ頃、バイトに向かう途中の神林はひったくり事件に遭遇。バイトに遅れそうな状況だったが、やはりそこは隆の父親、血は争えずひったくり犯の前に立ちはだかった。だが悲しいかな、彼は文弱の途らしく、ひったくり犯にあっさり弾き飛ばされ、立ち木に激突して気絶。周囲に大勢いながら「誰も見てるだけかよ!」とシルバータイタンが思った次の瞬間、ひったくり犯の動きが止まった。その眼前には白ヤミーが立ちはだかっていて、ひったくり犯は大外刈りを食らって昏倒。直後、バッタヤミーに進化すると「悪い奴は……許さない…!」と呟いた。
そしてその頃、買い物に託けてアンクを連れ出した映司は、アンクに他のグリードのような変化が見られないことについて尋ねていた。「お前だけ特別なのか?」と尋ねる映司にどこか怒りを秘めたような表情でにじり寄ってくるアンク。何か痛いところを突かれ、映司に攻撃的になっているのか?と思ったが、次の瞬間ヤミー出現を告げて駆け出した。
映司とアンクが現場に到着すると、神林が気絶していて、彼を介抱する映司にアンクは「そいつがヤミーの親だ。」と告げた。ではヤミー本体は?と思っていると、女性の悲鳴が聞こえて来た。2人が駆け付けてみると、女性は最前ひったくりに遭った被害者。そんな彼女にバッタヤミーが迫るのだがどこか様子が変だ。
ともあれ脅える女性を捨て置けず、映司はOOOに変身したが、大量の屑ヤミーが妨害して来たのでアンクの勧めでタカウバに多段変身し、電気ウナギウィップで屑ヤミーどもを一掃した。
そしていざ女性を救おうとすると、バッタヤミーは女性にひったくられたカバンを差し出し、「悪い奴、許さない。」と云っていた………。脅えながらも礼を云って去る女性の演技がとても正直でナイスだったが(笑)、展開に戸惑うOOOとアンクを意に介さず、バッタヤミーは飛び去ってしまった。
まあ単純に考えて、神林の「欲望」が「悪を許さない」なので、かかるヤミーが生まれたのだろう。ともあれ、マスカーワールドではバッタ型の改造人間は性悪キャラにはし辛いのだろう(笑)。真面目にコメントするが、バッタヤミーの容姿は仮面ライダーシンとも似通っている。それも無関係ではあるまい。
場面は替わってクスクシエ。そこで怪我の手当てを受けていた神林の変わらない正義感を危うく思いつつも、好ましく思っていた知世子さん。だが想いに力が伴わない神林は終始気まずそうで、仕事について聞かれても「法律関係」と口走り、称賛する知世子さんと比奈の前で本当のことが告げられないのに、「バイトがあるので。」と言う台詞でクスクシエを辞す矛盾ぶりを露呈していた。
そして映司とアンクはバッタヤミーについて分析していた。バッタヤミーの行動を振り返ってヤミーが人助けすることが有るのか?と問う映司に、「ないな、奴らは親の欲望に従って動くだけだ。」と一笑に付したアンクだったが、「『人を助けたい』って気持ち、『正義を守りたい』って気持ち、それも欲望って呼べないかなぁ?」と投げ掛けられると「そんな馬鹿のこと考える奴いる訳ない……。」と云い掛けて、その表情が張り付いた。
何かが欲しい、ではなく、何かを成し遂げたいタイプの欲望………と思い至ったのか、映司は「欲望っていう訳じゃないけど、そういう人間もいるよ。」とし、アンクは「なるほど『正義感』って奴か。それなら考えられるなぁ。」と納得し、「ウヴァの奴…面白い欲望に目をつけたもんだ。」と続けた。
早い話、「正義が守られる理想の社会を築きたい。」という想いをも立派な欲望に分類されるということだろう。それゆえバッタヤミーはひったくり犯を傷つけたが、バッグは女性に戻した………。正直、かかるヤミーを歓迎する人は多いのではないかと思われる。だが映司は「止めなくちゃ。」とした。
その頃、クスクシエを辞した神林は、強引なナンパをするチャラ男、歩きスマホで老人にぶつかっても謝りもしない若僧、禁止区域で通行人の迷惑も顧みずスケボーに興じるクソガキどもを見て、「悪い奴」が多いことに憤っていた。するとそこに神林の想いに呼応してバッタヤミーが現れ、彼が嫌悪した男どもを叩きのめした。
ここで初めて自分から生まれたヤミーの存在を知った神林は驚き、訝しがりながらも、「悪い奴許さない」と云う彼の欲望を叶えるというヤミーに同調した。元の想いは良きものでもこうなると欲望の奴隷でしかない。映司もこういうことを差して「止めなくちゃ。」とするのだろう。
場面は替わって鴻上ファウンデーション会長室。そこでは伊達と鴻上会長が初めて顔を合わし、会長は例によって手作りケーキで「少し遅くなったが」としながらもバース誕生を祝った。しかし「バース誕生」って、英語では「Birth of birth」になってしまうから、英語圏での『仮面ライダーOOO』放映時にはややこしくなるな(苦笑)。
伊達の目的は集めたセルメダルの換金で、伊達も鴻上会長のハイテンションには戸惑い気味だった。だがセルメダルに特化したシステムの構築と、伊達の人選と云う自分の選択が正解だったと自負する鴻上会長は御満悦。「1億円」という分かり易い欲望の為にバースとして一生懸命働く意欲を見せる伊達にも好感を示していた。もっとも、好感の証たるバースデーケーキは伊達に気に入られず、「おでんない?」と里中に尋ねる始末だったが(苦笑)。憮然としながらも準備に向かったらしい里中が可愛い?
場面は替わってとある川辺。そこで伊達から受けたアドバイスを思い返しながらランニングに励んでいた後藤は隆が一人佇んでいるのを見つけた。もう夕暮れ時なので1人は危ないと諭す後藤。その後藤に隆は父親に叱られてしょげていた旨を話した。
純粋な子供故、「悪い奴を許すな。」と教えられながら、「危ないから大人には注意したらいけない。」という矛盾に納得がいかないのだろう。
「ねえ、僕間違ってないよね?」と尋ねる隆に後藤は首肯しながらも、「でも、危ないことをしてはダメだ。」とした。だがそんな後藤の回答を「お兄ちゃんもお父さんと一緒?悪い奴がいてもいいの!?」と怒り、走り去ってしまった。難しい年頃である。
正義感では人後に落ちない後藤にとって、隆の気持ちも純粋さも分かる一方で、逆ギレした大人の毒牙に掛かることへの懸念も必要だから複雑な気持ちだったことだろう。
そして日がとっぷり暮れ、バッタヤミーの登場に勇気を得た神林は人の迷惑も考えず公道にて大音量で音楽を流しケラケラ笑いながらたむろしている若僧どもを止めに入った。勿論この手の奴らが素直に従う訳なく、暴力をちらつかせて威嚇する若僧どもにすごすご引き返しかけた神林だったが、彼を嘲笑する若僧どもにバッタヤミーが襲い掛かった。
明らかに過剰制裁なのだが、遠巻きに見ていた人々も半ばバッタヤミーを歓迎している風を見せていて、理想が叶うと見た神林は、それを欲望の暴走に転じさせ、「俺は力を手に入れたんだ!いいぞ…やれ!もっとやっちまえ!」とほくそ笑むのだった。
そしてそこへ映司とアンクが到着。OOOに変身するとたちまち格闘戦となったのだが、バッタヤミーはジャンプ力のみならず、器用な足技にも長けていた(おまけに触覚から電撃を放つことも出来た)。劣勢に立たされたOOOはチーターやゾウのメダルを求めるも、それらはカザリに奪われてなく、アンクは代わりにクジャクのコアメダルを渡した。
タカジャバに多段変身したOOOは左手甲に取り付けられた円盤盾「タジャスピナー」を攻防に上手く駆使し、形勢を盛り返した。
ところがその間隙を縫ってチンピラども(←ひたすら逃げ惑うばかりで丸で謝罪も、許しを請う姿も見られないのが凄かった)がスクーターで逃走に掛かり、バッタヤミーがこちらへの制裁を優先したため、戦闘は一時中断となった。
まんの悪いことに、逃げる2台のスクーターはそこへやってきた隆を引きそうになった。だが間一髪、先回りしたバッタヤミーが間に入ってスクーターを食い止め、事なきを得た。なるほど神林の純粋な心から生まれたヤミーらしい行動だ。単純に気に入らない奴をぶちのめすだけでなく、悪事がなされようとしたのを未然に防いだというのは特筆に値する。
だがバッタヤミーはこれでチンピラどもを許した訳ではなく、スクーターから放り出されて負傷し、抵抗する気力もない2人に更なる制裁を加えようとにじり寄ったが、ここに伊達が現れた。
伊達はバースに変身すると、後藤に隆を安全な場に連れるよう要請すると、バッタヤミーの足技に苦戦しながらもドリルアーム、キャタピラレッグ、ショベルアームを駆使して互角以上に戦った。その後、バッタヤミーにはウヴァが、バースにはOOOが加勢し、2対2の混戦になったが、やや優勢になったOOOがバッタヤミーにタジャスピナーによる攻撃(セルメダルを3枚のコアメダルに置き換えた強烈攻撃)を見舞おうとしたとき、意外な邪魔が入った。
説明するまでもないと思うが、邪魔者の正体は神林だった。無力と思っていた自分が手に入れた正義実現の力であるバッタヤミーを我が身に替えてもやらせない、と云う。特に「腐ったの世の中を少しでも良くしたいんだ……。」との言が彼という純粋で小心な人間をよく表していた。
正直、「正義を為したくても自分は無力な人間」という想いはシルバータイタンにも共通するので神林の気持ちは大いに理解出来る(←但し「納得」はしない)。
そしてそこに「お父さん頑張れー!」と叫びながら隆も追随して父と同じポージングでバッタヤミーを庇ってOOOの前に立ちはだかった。正義感故に悪の暴力にさらされることを恐れ、その発露を止められていた隆にとって、何者も恐れず正義に体を張る父親の姿はまさに理想だったのだろう。
勿論この親子鷹を攻撃出来るOOOではない。愕然とし、純粋さが持つ危険性を漂わせながら以下次週へ。
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令和三(2021)年五月二日 最終更新