仮面ライダーOOO全話解説

第23話 キレイと卵と眠る欲望

監督:諸田敏
脚本:小林靖子
 今回の冒頭では、コアメダルを巡る戦いに身を投じた者達の紹介に加え、その戦いに巻き込まれた人々の救い主こそ仮面ライダーOOO・火野映司であるとの紹介が為された。

 舞台は漫画喫茶の個室から始まった。そこではカザリが数々のコアメダルを体内に入れて恍惚の表情を浮かべていた。そこへスカイプからDr.真木が近況を尋ねて来た。
 御満悦の返事を返すカザリに「2枚ではその程度でしょう。メダルの器になりたいのならもっと一気に入れてみては?」と問うDr.真木だが、カザリは暴走を警戒し、一先ずはヤミーを作って今の状態の力を試してみるとの意見だった。
 通信を遮断した直後、Dr.真木の研究室に炬燵と荷物を抱えた伊達が入って来た。その姿から住む環境を充実させようとしているのは分かるが、よくまあ伊達は肌の合わない博士の私室とも云える場に住もうと思うものだ………1億円貯める為には極力家賃を払わずに済ましたいということかな?
 そしてそんな伊達にDr.真木はメディカルチェックを受けるよう要請。バースシステムが装着者に与える影響を知りたい、という要請理由はDr.真木らしくて怪しむ余地が無いほどだが、伊達は「影響はゼロ!本人が云うんだから間違いないって!」と云って取り合わない。
 医学的な見ればこういう過信程あてにならず怖いものはないと云いたいところだが、「君の場合は特にチェックが必要です。」と、システム上の危うさを匂わしてメディカルチェックを勧めるDr.真木にも「俺の本職知ってるでしょ?」として暗にチェックを拒否。ということは伊達の本職は医療関係者?
 ともあれDr.真木は「心配はしていません。データが欲しいんです。」と本日はいつになく本音全開(笑)。いつもはDr.真木を敬遠している伊達も「いいね、そういう本音。結構好きよ。」と好感を示したのだが、その際不用意に人形に近づいたことでいつものドタバタ漫才となってしまったのだった(苦笑)。

 場面は替わってクスクシエ。もはや恒例と化した多国籍イベント、今回のテーマはおフランス。「フランスデザートフェア」と題され、ベルサイユ体制時代のコスプレに扮した知世子さん、比奈、映司、そして後藤。既に違和感が無いのが凄い(笑)。まあそれも後藤がようやく幾ばくかの接客スマイルを見せ始めたからかも知れない(←知世子さんも指摘していた)。ライドベンダー隊はどうなってんだろう?
 ともあれ、常連客の多いクスクシエにあって、後藤目当ての客が来るほど人気があるらしい。ちなみに映司目当ての女性客もいるのだが、おばあちゃん達とのこと(笑)。「それってモテてんのかなあ……?」と複雑な表情の映司だったが、比奈が肯定した様に商売柄立派な成果である。常連客に熟女が多ければ道場主が喜んでアルバイトするだろ…………ぐええええぇぇぇぇぇ……(←道場主のアルゼンチン・バックブリーカーを食らっている)。

 場面は替わってビューティ・マリン・ラボなる化粧品会社。そこではマスコミの取材が行われており、ヒット商品となった美容パック「海女神」の開発者で、同社のイメージモデルまでこなすという女社長・佐倉麗(水谷妃里)がインタビューに臨んでいた。
 確かに美しい女性だった。前述した様に経営と開発と宣伝をすべて1人でこなすとは、天は二物の三物も与えており、凄いを通り越して羨ましいほどである。
 ところがインタビュー中に台車を押したニット帽、マスク、黒縁メガネ、白衣の女性がえっちらおっちら通り掛かると、『仮面ライダーW』の園崎若菜張りの舌打ちを見せた。どうも裏表の有りそうな女性である。
 そしてガラス壁の向こうから台車を押す女性を見てにんまり笑うカザリ……視聴者は思った………以下同文(苦笑)。

 OPが終わるとインタビューが続いていたのだが、ここで最前の女性がまたも資材を倒すというミスをやらかし、眉をひそめた女社長は側近にマスコミの案内を命じ、転倒した女性に近寄った。  ドジを踏んでいた女性の正体は何と女社長・佐倉麗の実姉・佐倉優美(英玲奈)。麗は姉にも邪険に、会社のイメージダウンになるからテレビ取材の前に出てくるなと云った筈だ、と詰った。云われた姉は姉で妹の上から目線に怒るでもなく、すぐに詫びたのだが、関心は資材の方に行っていた。
 片付けて、TVが帰るまで出てくるなと命じた妹が去った後、横の扉を開いて現れたカザリが優美の額にメダルを投入した。一見大人しく自分の立場に甘んじているとみえるこの姉にどんな欲望があるのか………?

 場面は替わってクスクシエ。そこに映司を尋ねて伊達がやって来たが、おフランスに馴染めず、甘いものが苦手な伊達は映司を店外に呼び出した。単にスイーツよりおでんを選んだだけだったのだが(笑)。

 場面は戻ってビューティー・マリン・ラボ。そこでは優美が黙々と研究に取り組んでいた。雑用係にも見えた彼女だったが、開発研究主任との肩書を持ち、開発者としての手腕は研究員達も認めていたが、美的な意味で妹と「差が付き過ぎ。」とされ、能力の割には尊敬されていなかった。
 一方の妹も、開発は姉が担い、経営はコンサルタントの云うがままで、麗自身は見栄えが良くてマスコミ受けするだけの、文字通りの御飾り社長に過ぎなかった。それで姉に対してあの態度では一時の園崎若菜よりも性格ブスに見える………いずれにせよ、研究員達は会社の外部に対するポーズと、内部での役割に対し、完全に割り切っていた。
 だが、その見栄えを揶揄される優美の研究室の姿見の上では、メズールの生むヤミーが作るような卵が形成されていた。これもカザリが様々なコアメダルを奪っていればこそであろう。

 そんなヤミーの生体に疑問を覚えるように、会社から少し離れたところで様子を見守るカザリウヴァが話し掛けて来た。ウヴァが云うには「メズールの気配」を感じたとのこと。アンクがヤミーを感知するのと同様なのだろう。ウヴァの詰問にカザリメズールガメルのコアを取り込んだから、と説明。
 得心したウヴァだったが、「ヤミーの声が親に届いていない、あれではヤミーは育たない。」として、優美にメダルを投入したことを「失敗」と揶揄した。確かにヤミーの卵から呼びかける声に優美は反応せず、乳鉢で薬剤をすりつぶすことや、想い出写真に写るおでんやかつての仲間の方を気にしていた………と思っていたら、写真には伊達が映っている。こりゃ伏線だな(笑)。
 ともあれ、ウヴァの失敗判定に対し、カザリは「僕の選択には間違いはない。」と自信満々(口調は例によって気怠そうだったが)。変化は徐々に表れるともいう。
 そしてそれを証明するように優美の欲望は静かに成長していた。初めは麗に「メイクぐらいしたら?少しはマシに見えるわよ。」と見下されても、「私なんかメイクしてもねぇ……。」と自嘲気味だったが、ヤミーの巣が影響を与えようとしている様子は見られた(どうでもいいが、れっきとした功労者で、姉でもある人物にかかる無礼を重ねる妹をたしなめる重役はおらんのか?)。

 その頃、話す場所を変えておでん屋に映司を連れてきた伊達は、クスクシエにあった、知世子さんの写真の背景に偶然写った映司が気になってのことだった。映司は互いに海外にいたのであればどこかですれ違っているかも、としたが、伊達は映司のようなタイプを覚えていない筈がない、とした。
 「色んなことから1歩か2歩引いてる感じ、わけーのに。」というのが伊達の火野映司評だが、後藤や剣道少女・白鳥に対する観察眼にも見られるように、確かに伊達は自分でもいうよう「人を見る目」がある。
 だがここまで云っておきながら、思い出せそうにないからまあいいの一言でおでんに熱中する伊達。何か重要な話が聞けるかもしれないと思って尾行して来たのに肩透かしを食ったアンクが笑える(笑)。

 その頃、ウヴァカザリの対話は続いていた。今度はカザリの方が「どうして僕のようにコアを取り込んで進化しないんだい?」と尋ね、答えないウヴァに「もしかして怖いの?」と畳みかけて来た。4体のグリードの中で最も血の気の多いウヴァがこう揶揄されては黙っていられず、変身して掴みかかるも相手にならなかった。いみじくもこれがカザリの云った、「進化」の有無が生んだ差だろう。

 そしてそんな両者の争いを察知したアンクによって、火野・伊達対談は打ち切られた(映司は伊達の海外での仕事について尋ねていた)。アンクは気配だけで争っているのがウヴァカザリであること察知していたが、伊達のゴリラカンドロイドは無反応。どうやらバースシステムだけでなく、カンドロイドまでがセル専用らしい。
 ともあれ、映司達の後を追おうとして勘定を済ませた伊達は店を出ようとして1人の女性とぶつかった。その女性は優美で、研究室の写真通り旧知だった2人は互いを思い出したが、取り込み中の伊達は優美に夕飯時の6時に会おう、と告げて映司達を追った。

 そしてウヴァカザリの諍いだが、以前からの嫌悪感を前面に押し出しながら猛攻撃を仕掛けるウヴァの攻撃はカザリを捕らえられず、逆にカザリの掌から放たれたジェット水流で吹き飛ばれる始末。
 そこへ映司とアンクが到着。敵が増えたことにも「僕のメダル、返しに来てくれたの?」と余裕綽々のカザリ。「ほう、コイツは面白いことになってるな。」と映司にタカゴリラタコのメダルを渡すアンク。珍しいタカゴリに変身する映司。目標とする相手がヤミーではないと知って「あ?グリードだけ?まぁちったぁ稼げるか。」と相変わらずマイペースな伊達。
 かかる急展開を受け、まずウヴァカザリの進化に対する驚きを残して退散。OOOとバースが挑むも、カザリの強さは2対1でも優勢に戦いを運んだ。だが現時点で最強コンボともいえるタジャドルコンボは何とか互角に渡り合い、一先ずカザリは退却したが、口調も態度も余裕を見せていた。バースのドリルアームも半壊し、タジャドルコンボで僅かに戦っただけなのに変身解除後の映司がえらい疲労に襲われていたのだから、とにかくカザリは強過ぎる。

 場面は替わって研究室。そこでは食事から戻った優美を麗が待ち構えていた。頼んでおいた新商品の資料が出来ていない、とのことで、今日中に作っておくという姉に対してそこで会話を終わらせればいいものを麗は自分が社長でモデルだから会社が発展し、姉も研究に没頭出来る、と恩着せがましく告げた。
 業務的に役割分担が上手く行っているのはその通りなのだろうけれど、自分の業績だけを声高に告げ、姉の貢献を無視するこの妹の態度はやはり虫唾が走る。「前に出ようなんて思わないことね!」と揶揄する麗に「そんなこと……。」と呟きながら否定的な優美だが、心理学でいうところの識域下では不満や対抗心が増幅しているらしく、ヤミーの卵がそれに呼応するような蠢動を見せていた。
 そして1人になった優美は久方ぶりに再開した伊達が変わっていないことを喜び、同時に6時の約束を思い出し、出掛けようとした。その際に、妹に言われたことを意識したのか、少し身なりを整えようと姿見を覗き込んだ彼女にヤミーの巣が語り掛けた。
 「美しくなりたいか?お前も…妹のように、妹よりも…。」との呼び掛けにつられる様に唇に紅を引き出した麗。ここまで来ると自分の欲望が生んだヤミーに引きずられるこれまでの犠牲者と麗も変わらなくなっていた。その背後でほくそ笑むカザリは「眠っていた欲望は大きい。」ということに期待を寄せていた。正確には「無意識の内に積み重ねられた欲望」に期待しているんだろうな。
 ただ、欲望が「綺麗になる」だったので、風貌が醜くなることはなかった。道中、映司とアンクの妨害を卵から召喚した大量のエイヤミーを放つことでかわした優美は、ヤミーの卵の言葉に導かれるまま、夢遊病者の如き足取りで、高級ブティックや美容室を巡りながら劇的に変身していった。
 ついには白い高級ドレス、数々のアクセサリー、長く艶やかに下された髪で優美は別人の様に変貌。普段は女性の化粧による変化に対して関心が薄く、厚化粧に嫌悪感を示すことの多いシルバータイタンだが、この変化には驚かされた…………女性が化粧に一生懸命になるのも分かる気がした……。
 ヤミーの反応を察知し、優美の元に駆け付けた映司、アンク、そして伊達だったが、とにかく現場は異性同性問わず万人の眼が彼女に釘付けとなっており、結婚を後悔したり、彼女との別れを訣別したりするものまで続出していた。いくら美しくても、周囲のこの反応及び思考は異常である。恐らくこれもヤミーの力なのだろう。
 そしてそうこうしている内に、優美に追いついた映司と伊達。振り返ったその顔を見て優美の変貌に驚いた伊達だったが、映司の方はもっと驚き、すっかり魅入られてしまった!
 眼が型となり、完全に腑抜けて、ギャグ調キャラとなって、歩くのもままならない周囲の男達と同じ骨抜き状態に陥っていた。
 勿論、ヤミーの影響なのだろうけれど、見ていられないほど腑抜けている……。「主人公がこれでいいのか?」という疑問と、「何故、伊達は何ともない?」という謎を引きずりつつ以下次週へ。


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令和三(2021)年五月五日 最終更新