仮面ライダーOOO全話解説

第25話 ボクサーと左手と鳥ヤミー

監督:柴崎貴行
脚本:小林靖子
 今回の冒頭ダイジェストはこれと言って変わったところは無し。
 冒頭はクスクシエの厨房から始まり、映司がアンクにアイスキャンディーの偏食や、コアメダルを集めて尚変化のないことで詰問するが、アンクは取り合わない。偶然それを聞いていた比奈も兄を思って沈鬱な表情だったが、それでも買い出しから知世子さんと後藤が帰って来ると、努めて笑顔を出す2人が何とも健気だった。
 ちなみに知世子さんが大量の買い出しを行ったのは、貸し切りパーティーに備えてのもの。何でも怪我で引退するボクサーを励ますパーティーとのことだった。恒例の多国籍コスプレはスペイン調に決まっていたが、知世子さんによると「元気が出るように。」とのことだった。基準が分からん(苦笑)。

 場面は替わってとあるボクシングジム。そこでは件のボクサー・岡村一稀(福井博章)の引退記者会見が行われようとしていたが、肝心の岡村が到着していなかった。待ちぼうけを食う記者達の会話から、岡村は天才ボクサーとして一目置かれながら、怪我に泣かされ、無冠のまま年齢的にも潮時に差し掛かっていたことが分かった。
 その岡村だが、定刻に送れているのに焦るでもなく、公園で野良猫相手にブツクサ話し掛けていた。どうやら今後が見えていないらしく、猫相手に「この怪我じゃあお前の猫パンチにも負ける…。」ととかく自嘲気味。後輩に呼ばれて詫びながらジムに向かうそんな引退ボクサーを物陰から見つめる存在………いつものようにウヴァカザリかと思ったら、これが何とアンク。アイスを食っていた途中に泉刑事の体を離れてまで何をこのボクサーに見出していたのだろうか?

 場面は戻ってクスクシエ。そこでは予定されていた激励会が行われていたのだが、ボクシング一筋で生きてきた不器用な男ゆえか、仲間への感謝は間違いなくあるのだろうけれど、一言一言がどこか自嘲気味。それを見守るクスクシエの面々は、知世子さんがフラメンコダンサー、映司がマタドール、比奈がスペイン風メイド、そして後藤が牛………(笑)。
 ちなみに知世子さんと後藤はリングでの岡村を知っていたらしく、リング上で自虐的な人間が別人の様なハード・パンチャーとなるらしい。ともあれ、何かと塞ぎ込みそうになる岡村を周囲の人間が努めて明るく振る舞い、パーティーは無事終わったが、その途中で岡村は一度よろめいており、彼の閉塞感には長年受けて来たパンチの影響もあるようだ(後藤は岡村がパンチドランカーが入っていると断言していた)。

 散会後、寄り道途中で中止になった自分の試合ポスターを見て寂しそうにしていた岡村の前に武田直之(夛留見啓)なるボクサーが現れた。武田にとって岡村はボクシングを始めるきっかけとなった憧れの存在で、日本チャンピオンの座にあるも、岡村から防衛してこそ価値があると思うほど岡村に惚れ込んでいた。それゆえ防衛戦直前の引退が許し難いらしい。
 怪我で仕方ない、と岡村の後輩ボクサー川田(長谷部恵介)が擁護するも、それを乗り越えて来たのが岡村さんだと主張する武田に、岡村は年齢と、体中のガタを告げて力なく詫びるのだった。
 ボクシングには素人のシルバータイタンでもパンチドランカーの恐ろしさは知っている。正直、武田の言は無茶強いを感じる。そんな武田は更に「リングを降りたら俺達みたいなボクサーは、もっとボロボロですよ。アンタなら解ってると思ってた。」という酷な台詞を岡村に浴びせて立ち去った。
 川田は気にしないようフォローを入れていこうとしたが、武田の一言は岡村も感じていたところ、リングに復帰したいという欲望はグリードにとって格好の標的と思っていたら、何とアンクが岡村にメダルを投入してしまった!!………待てよ、メダルを投入した手は左手……アンクって、右腕だった筈………。
 ともあれ、岡村からは忽ち白ヤミーが這い出て来て、川田を襲撃。ボクサーとしての戦闘能力を駆使して戦うも、屑ヤミーならともかく、白ヤミーの相手は荷が重く、KOされ、羽毛の様なものが生じた。白ヤミーは川田の身を案じる岡村の腕に強引につかんで針を突き刺した。

 直後、現場に伊達と、彼から通報を受けた後藤と映司も駆け付けた。そこで映司はアンクが既に現場にいたことに気付いた。それを不審に思う映司だったが、まずは白ヤミーを放っておけず、伊達とともに仮面ライダーに変身した。だが、白ヤミーが進化した途端、OOOと後藤の表情が驚愕に張り付いた。
 誕生したのはオウムヤミーで、当然鳥系。素で考えるなら鳥系グリードであるアンクが生み出したと考えるのが最も妥当である。それを知るOOOと後藤は疑惑の目をアンクに向けたり、詰問したりしたが、アンクはこれを完全黙殺。
 ともあれ、グリードとヤミーの関係を知らないバース1人が奮戦するも、口から火炎を吐いて抵抗するオウムヤミーはそれなりの強敵。ブレストキャノンによるセルバーストを放たんとするも、オウムヤミーは岡村を抱え込んで、飛んで逃走。岡村への誤射を懸念してか、セルバーストも外れてしまった。

 映司と伊達は現場でうめく川田の容体を診た。命に別状はなさそうだったが、オウムヤミーに襲われた左腕は、アシュラマンに腕を奪われたときのテリーマンの様にどす黒く変色していた。
 一方、後藤はタカカンドロイドにオウムヤミーを追わせると、アンクに詰め寄った。グリーととヤミーの属性が共通する法則から、「貴様の仕業じゃないだろうな?」と詰問する後藤にアンクは小馬鹿にしたような笑いを浮かべるだけで肯定も否定もしない(←立場以前にコイツのこういう性格は本当に嫌いだ)。
 それを見た映司は、後藤にアンクは鳥のグリードではあるが、ヤミーは作れないことを、以前のアンクの台詞を引用して説明。それよりは岡村さんを探すのが先決と訴えた。この正論に伊達も賛同し、川田の様子からオウムヤミーを「結構質の悪いヤミー。」とした。
 そこへタカカンドロイドが帰還。残念ながら、オウムヤミーを見失ったとのことで、この事態を受けて「俺のゴリラ君とアンコが頼り」という伊達の言も、「お前のヤミーじゃないのなら倒しても問題ないな?」という後藤の詰問も黙殺してアンクは立ち去った。

 場面は替わって鴻上生体工学研究所の研究室。そこではDr.真木が知世子さんの写真入りチラシを「まさか…。」という想いで眺めていた。そこへメダル補充に伊達が入って来たので慌ててポケットに隠したが、それを見逃す伊達ではなかった。「見せなさい!」と言う伊達に慌ててポケットに手を入れるから、「こいつ馬鹿か?」と思ったら、Dr.真木はチラシを食べてしまった。確かに完璧な隠滅だったが、そこまで知られたくないとは……。

 場面は替わってクスクシエ。「お前は疑わないのか?」と尋ねるアンクに、映司は彼のしそうなことは大体分かる、とした。これも一種の信頼関係だとしたら面白い(笑)。
 そんな映司を「お前に何が分かる!?」と小馬鹿にした口調で吐くアンクだったが、映司は「多分他のグリードがお前のコアを使ってヤミーを作ったんだろ?」と推測。それに「さあな。」とぶっきらぼうに吐き捨てるアンクだったが、映司はすっかりそんなアンクに慣れた様子でそのまま寝てしまった。そこで散々突っ張った態度を取っていたアンクは何故か寂しそうな表情を浮かべるのだった。

 一夜明ける頃、オウムヤミーは次々と若い男を襲っていた。ゴリラカンドロイドの通報でそれを知った伊達と後藤が駆け付けると、犠牲者達は一様に川田同様、左腕をどす黒く変色させて呻いていた。
 状況を述懐する後藤に伊達は「完全に疑ってる訳ね、アンコを。」と問うと、後藤はアンクもグリードである以上その可能性は捨てられないとした。正論である。
 その頃、監禁されている岡村にはオウムヤミーが他のボクサーを襲って得た羽根を幹部に突き刺しに来ていた。岡村は誰かを犠牲にしてまでリングに立ちたくない、と述べて襲撃中断を要請するが、オウムヤミーは岡村のもう一度リングに立ちたいという欲望を代弁するのみ。いずれもが岡村の本音なのだろうけれど、やがては再びリングに上がるという誘惑に応じる姿勢を示そうとしていた………。

 場面は替わってクスクシエ。就寝中の映司は後藤に起こされ、オウムヤミーが次々とボクサー達を襲っていることを知らされた。寝ぼけ眼の映司がアンクの寝床を見るも、そこに彼の姿は無し。後藤は「火野、あいつもグリードだってことを忘れるな。」と冷たく告げる。
 ともあれ、そこへ後藤の携帯に通報が入り、映司と後藤はクスクシエを飛び出した。

 後藤は伊達と合流し、つい今しがたボクサーを襲ったばかりのオウムヤミーを迎撃。
 別途に現場に向かっていた映司はアンクにばったり出くわし、アンクから赤コアメダル3枚を渡された。相変わらず質問には一切答えず、現場に向かうように促すアンクだった。
 かくして映司は火炎攻撃に苦戦するバース・後藤に合流。そのままタジャドルコンボに変身した。それを見て、「炎対炎じゃあ勝負つかないんじゃないのか?」と疑問を呈するバース、それをもっともだと思いながら「でもアンクがこれで戦えって…!」とどこか馬鹿正直なOOO、そして「まさかわざと戦いにくいコンボを…。」と疑問の抜けやらぬ後藤が印象的。
 ともあれ、カザリとも互角以上だったタジャドルコンボが、後藤たちが懸念した様に劣勢に立たされた。これはイカン、とバースがブレストキャノンで援護射撃しようとすると、アンクがこれを妨害した。
 結局、バースが後藤に煙幕を張るよう指示し、その間隙を縫って3者は撤退した。それを遠巻きに見ながら「あいつを倒された困る。」と呟くアンク。ここまで疑わしい描写が露骨に続くと、逆に「違うだろ?」と考えてしまう(苦笑)。
 だが、視聴者的にはそうでも当事者的には疑うのが自然。後藤は疑惑を確信に、バースも不本意ながら疑わざるを得ない感じに変化し、OOOだけが信じられない、信じたくない気持ちでアンクの名を連呼したところで、以下次週へ。


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令和三(2021)年五月五日 最終更新