仮面ライダーOOO全話解説

第27話 1000と映画と戦闘員

監督:石田秀範
脚本:米村正二
 冒頭のダイジェストではアンクの属性である筈の鳥のヤミーが現れたことだけが述べられた。
 そして始まりは鴻上ファウンデーション会長室。映司とアンクを呼び出した鴻上会長はだみ声で延々とハッピー・バースデーを歌っていた。「歌の発表会か?」と皮肉るアンクに鴻上会長が発表したのは、「後一回で仮面ライダーが通算1000回目の放送を迎える!」ということと、「それを記念して私は仮面ライダーの映画を作ることにした!」というもの。
 「1000回も戦っていない」というボケをかます映司と、呆れて帰ろうとしたアンク。だが他の赤いコアメダルの手掛かりを知っている、と鴻上会長が仄めかすとあっさり協力を承諾した。さすがは欲望に忠実なグリードだ(笑)。

 鴻上会長は、タイトルは『仮面ライダーOOOVSショッカー!』で、主役は映司とアンクと説明し、内容に関してはわざわざ自転車に付けた紙芝居を用い、里中に紙芝居のおじさんにコスプレさせ、BGMは「レッツゴーライダーキック」が流れる中、「仮面ライダー・火野映司は改造人間である。彼を改造したショッカーは世界征服を企む悪の秘密結社である。だがショッカー科学者の協力で、正義に目覚めた仮面ライダーは人間の自由の為、ショッカーと戦うのであった!」と某有名ナレーションのパクリを展開した。
 ちなみに紙芝居にも強いられた絵は、本郷猛を火野映司(←御丁寧にも改造時パンツ一丁)に、1号をOOOに置き換えたものだったが、そのタッチは故石ノ森章太郎先生のそれに酷似していた。
 そんな凄いのか、くだらないのかよく分からない映画の監督は伊達。ともあれこの『仮面ライダーOOO』の第27話、第28話を、仮面ライダーシリーズの999回目、1000回目とした特別編が始まった。
 だがその裏では1人の清掃員・千堂院(村杉蝉之介)が癇癪を起していた(←ひでー駄洒落…)。仮面ライダーが1000回放映された事に対し、その陰で苦杯を舐めてきた存在の憤りを愚痴るその男の正体は何とショッカーの戦闘員!
 そしてそこに欲望を解放せよ、とカザリが接近したのだった。

 場面替わって鴻上生体工学研究所の研究室。そこでは伊達からカメラマンの任務を依頼されたDr.真木が「バカも休み休み云いなさい。私はこう見えても忙しいんです。」と拒絶していた。彼のようなタイプは自分に関係ないことに義理や愛想で協力することはまずないが、案の定だった。
 だが、伊達が知世子さんに頼むと云った途端にDr.真木が固まった。伊達の台詞によると、知世子さんにはかつて劇団にいたという過去があり、今回の撮影にノリノリとのこと。ま、彼女はいつもノリの塊だが(笑)。ともあれ、Dr.真木も「仮面ライダーの映画を撮れるカメラマンは私を置いて他にいないでしょう。」と唸りながら参加決定。

 場面は替わってクスクシエ。そこでは監督・伊達が台本を手にした面々に決意を述べていた。台本を逆さまにしていたアンクは「ギャラの為だろ?」と辛辣に言ったが、伊達は1000万の報酬の為であることをあっさり白状するとともに、アンクにお互いの報酬のために頑張ろう、と申し出た。
 ちなみに伊達が発表したキャストは、主役が映司、ショッカーの首領はアンク、科学者は後藤、主人公の恋人役が比奈、衣装・メイク・小道具役が里中(ちなみに里中は残業絶対拒否を宣言)、カメラマンはDr.真木、音声・照明役は知世子さんだった。
 配役はここに様々な意見もあったが、映司は戦闘員を誰がやるのかを尋ねると、伊達は困った様に「手の空いている人が」としたが、決まっていないのは明らか(笑)。そこに突如、鴻上会長の知り合いを名乗る男が「戦闘員の役なら私にやらせて下さい。」と言って現れた。勿論千堂である。ただ一人、アンクは千堂がヤミーの親になっていることに気付いたが、鳥系グリードの手掛かりを得られるかもしれない、と踏んでこれを黙認した。

 かくしてクランクイン。テンションの高低に違いは有れど、皆個々にノリノリだった。さすが特別編(笑)。撮影は映司が仮面ライダーに改造されるシーンから始まったのだが、手術台に拘束された映司がパンツ一丁なのはまあ許せるとして、パンツに「1000回記念」と大書してあったのは悪乗りが過ぎたと言える。
 そして撮影だが、悪のボスというポジションに結構満足気なアンクのノリは良かったが、科学者役の後藤が恐ろしいまでの棒読みで難航した。勿論、全員が俳優だから(笑)、下手な芝居もわざとなのだが、伊達にもっとはじけろと、アンクにだからお前はダメ、と言われた後藤は「世界に平和を守ろうとした俺が映画も守れないなんて……。」と意気消沈した。
 これを励ましたのは知世子さん。これを見て2人の男が激しく反応した。1人はDr.真木である。後藤を励ます知世子さんの姿に、幼き日の自分と仁美姉さんを重ね、カメラが壊れかねないほどにやきもきした。もう1人は伊達監督。後藤を励ます知世子さんの迫力に急遽科学者役を後藤から知世子さんに変更した。
 この配役変更は図に当たり、良いシーンが撮れたのだが、知世子さんのノリノリはカット後も続いた(笑)。

 その頃、街中にヤミーが現れ、道行く車を破壊していた。そのヤミーは何と前回倒したのと同じオウムヤミー。但しその体色は鮮やかな赤色だった(前回の個体は青色)。
 監督業に熱中する伊達はゴリラカンドロイドの呼び出しにも気づかず、一方、独自の能力でヤミー出現を察知したアンクは伊達に気取られぬよう映司を連れて現場へと向かった。
 場を離れる直前、アンクは千堂を一瞥。その千堂はもうすぐ自分のショッカー怪人が生まれ、ライダーを倒すと夢想。その想いに呼応するように千堂の下宿らしき部屋のタンスの中ではヤミーの卵が蠢動していた。

 現場に駆け付けた映司とアンク。アンクは何故か、タカウナギタコのコアメダルを渡し、映司はタカウタにて変身。人を小馬鹿にしたような奇声を発し、攻撃せずに逃げてばかりのオウムヤミーはかなりの素早さだったが、それでも2本の電気ムチ攻撃は数回に一回はオウムヤミーの体を捕らえ、勝負を優勢に運んだ。
 だが、いざとどめとなるとアンクがこれを制した。曰く、「そいつは俺のコアの大事な手掛かりだ!生け捕りにしろ!」とのこと。そんな無茶な、と言いたそうな映司を尻目にオウムヤミーは逃げに掛かり、電気ムチで絡め捕れば炎を吐き、アンクが取り付けたタコカンドロイドも気付かれて外されてしまった。

 場面は替わって千堂の下宿。黒電話、家具調テレビ、レコード、湯たんぽと昭和40年代を絵に描いた様な下宿でカザリは壁に貼られた1000回分の放映リストや戦闘員人形を眺めていた。
 そこに帰宅した千堂が「勝手に入るな。」と云いながらやって来た。その後の会話から、千堂を伊達達の映画に出演するよう唆したのがカザリであることが分かった。映画に出て、仮面ライダーの側に立つことで、ライダーに抱く1000話分の負の感情が増幅するのに比例してヤミーの欲望も増幅する、というのカザリの読みで、千堂自身、その想いが膨らむのは充分に感じていた。そしてその増幅が功を奏し、遂に打倒仮面ライダーの欲望からイカジャガーヤミーが生まれた(←ゲルショッカー怪人イソギンジャガーに似ている気がするのはシルバータイタンだけ?)。ただ、七輪で焼かれるスルメを見て腰を抜かす辺り、見掛け倒しな気がしないでもなかった。
 ただ、千堂自身はかなり満足気だった。

 場面は替わって撮影現場。そこでは試行錯誤が重ねられていた。アンク・首領、知世子さん・女幹部(←網タイツ!)、後藤・死神大使(←なんて安直な)、映司・比奈・千堂が戦闘員(←比奈、体のライン丸見え!)という配役で撮影が行われたが、知世子さんのアドバイスを自分に言い聞かせることに夢中になっていた後藤は台詞を発するのを忘れるというNGをやらかした。
 死神大使役はDr.真木との交代となり、今度も配役変更が功を奏した(ちなみに後藤は戦闘員役になった)。ただ最後にネズミに驚いた比奈がパニックを起こすというアクシデントがあり、ショッカー旗を持っていた彼女は怪力で暴れたため、危うく映司がセットの下敷きになるところだった。その危機を救ったのがなんと千堂。彼自身、敵である仮面ライダーである映司を助けたことに困惑していたが、根は悪い人ではないのだろう。

 そしてその頃、イカジャガーヤミーは2人のライダーを襲い、その気配を察知したアンクはネズミ騒動で揺れる撮影現場から映司を伴って離れた。そして「2度も抜け駆けはさせない。」と伊達もこれを追った。
 だがイカジャガーヤミーは、仮面ライダーでもない2人の女性ライダーに情けなくものされていた。女性ライダーを演じたのは森下千里氏と千秋氏。1000回記念に因んで名前に「千」の付く彼女達が起用されたとのことだった。何とか立ち上がるも女ライダー達は何故か七輪でスルメを焼いており、イカジャガーヤミーは例によって狼狽。弱過ぎてギャグやな(しかもウケない系の)。

 場面は戻って撮影現場。監督と主演が抜けた状況下で、まず残業拒否女・里中が(後片付けもせず)撤収。失敗連発で落ち込む後藤と比奈を知世子さんが慰めていたのだが、Dr.真木がいつもの口調と持論で、「あなた方二人は『失敗』という結果を出した。終わりです。大事なのは結果です。」と冷たく告げて立ち去った。
 だが知世子さんだけはそれでも2人を励まし続け、ノリノリのミュージカル口調とアクションで「失敗に学ぶことが成功するチャンスである。」と訴え、2人もこれに同調するのだった。
 立ち去ったと見せて物陰で様子をうかがっていたDr.真木は何を思う?

 その頃、現場では2人の女性ライダーにボコられて逃走するイカジャガーヤミーが映司&アンクと遭遇。バイクで轢かれまくるという踏んだり蹴ったり扱いだったが、映司がOOOに変身すると、執念もあって、手槍を駆使して善戦。だが続けて現れたバースにはショベルアームで再度ボコにされた。
 勝負あったかに思われたところにオウムヤミーが加勢に入った。最前遠方に飛ばされたOOOが戻り、アンクはシャウタのメダルセットを渡した。後藤も加勢したことで勝負は一気に優勢に転じるかと思われたが、OOO&アンク組が生け捕りにこだわったことが歯車を狂わせた。バースの攻撃からOOOがオウムヤミーを守る形になってしまい、呆れるバースにはイカジャガーヤミーが襲い掛かった。
 しかも後藤が何故か無茶な攻撃(バースバスター攻撃に転倒したイカジャガーヤミーに踏みつけキックを食らわせた)をしたため、イカジャガーヤミーの攻撃を受けてダウン。これを庇おうとしたバースはオウムヤミーイカジャガーヤミーの同時攻撃に曝された。
 これを見て、場合が場合だと断じたOOOはシャウタコンボに多段変身し、オクトバニッシュでオウムヤミーを倒してしまった。この展開にアンクが表情を強張らせたところで以下、放送1000回記念となる次週へ。


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令和三(2021)年五月五日 最終更新