仮面ライダーOOO全話解説

第28話 1000と仮面ライダーと誕生日

監督:石田秀範
脚本:米村正二
 前回の「3つの出来事」は「1つ、鴻上の欲望から仮面ライダーの映画を作ることになる。2つ、ショッカー戦闘員の欲望からヤミーが生まれた。そして3つ、アンクのコアメダルの手掛かりとなるヤミーをOOOが倒してしまった。」というものだった。
 ちなみにこの第28話放映の2日前に劇場版『オーズ・電王・オールライダー レッツゴーライダーキック』が封切られた。

 前回の続きでオウムヤミーを倒し(てしまっ)たOOOは返す刀ならぬ電気ムチでイカジャガーヤミーを滅多打ちにしたが、墨を吐かれて逃げられてしまった。
 戦いを終え、映司、伊達、後藤の三者がそれぞれに負傷・疲労に苦しむ中、手掛かりとなるヤミーを倒されたアンクが映司に激昂。勿論映司は伊達の命の方が大切だった、と反論。これはもう優先順位に違いで話し合いにならないのだが、アンクが指摘するよう、伊達の重症振りの方が深刻で、映司と後藤は伊達の搬送に掛かり、アンクは残された手掛かりは千堂のみ、と思いを馳せていた。

 場面は替わって千堂の下宿。そこでは天袋に隠されたヤミーの卵からショッカー戦闘員が生まれた。御丁寧にかつて戦闘員が大勢いたときによく混じっていたデブ戦闘員みたいな奴までいたから凝っている(笑)。だがこれに対してカザリは千堂の欲望が「打倒仮面ライダー」から「仲間が欲しい」に変わったと断じた。同時に弱い戦闘員など増やしても仕方ないと揶揄したが、千堂はこれに真っ向から反論。戦闘員は決して役立たずではなく、戦闘員を増やすことは打倒仮面ライダーに通じ、自分は戦闘員であることに誇りを持っているとした。勿論、カザリは生返事で応じるだけだったが。

 場面は替わって鴻上ファウンデーション会長室。そこでは鴻上会長が24の画面で歴代仮面ライダーの変身シーンを観ていた(←それ、まともに観れるのか?)。そこにアンクが現れ、伊達の負傷と映画撮影の中断を告げた。そして自分のコアメダルを持つ者の情報を教えろとも。
 だが、鴻上会長はそれには答えず、撮影済みの映像を見て、「この素晴らしい映画の続きが見れないなんて!」といつものハイテンションを発動。そこへ映司と伊達が現れ、撮影続行を申し出た。「そんなにギャラが欲しいか?」とアンクが揶揄するも、伊達は映画が持つ夢を与える力へのこだわりを示し、鴻上会長もその想いを絶賛して撮影続行を伊達に託した。

 撮影が再開され、映司に恋人の力で正義の心が戻るという名シーンを始めよう意気込む伊達の前に、自分の連れてきた仲間を「警官役」として使ってくれ、と申し出ながら千堂が現れた。仲間は勿論最前生まれた戦闘員なのだが…………戦闘人のコスチュームがそのまま警察官の制服を着たというふざけた存在(苦笑)。その風体に無理があることを千堂自身自覚していたのか、「覆面警察官」として紹介していたが、どこの世界に「覆面警察官」という怪しいこと極まりない公務員が存在するのか?(苦笑)それに対して「おおお千堂ちゃんGJ!」と大喜びする伊達も伊達だが(苦笑)
 何かに熱中すると周囲が見えなくなるのことに関しては先々週の旧友・佐倉優美といい勝負だな、伊達は(笑)。
 そんな中、アンクは現時点唯一の手掛かりとして千堂を注視するのだった。
 かくて撮影が再開され、アクションシーン後に、狂った様に警官(演・千堂&戦闘員)や自衛官(演・後藤&アンク)と戦うライダーを比奈が抱き締めることで正気が戻るシーンが撮影されたのだが、戦闘シーンは迫力不足、比奈の抱擁はベアハッグ化し、それぞれに伊達をやきもきさせた(ストーリーとは関係なしに、映画に対するミーハーな野次馬として、若槻夏さんが登場していた。「」絡みだな(笑))。
 そんな監督の叱責に、「わかった…本気だな。」と答える千堂。彼と彼の戦闘員は密かに殺気を漲らせるのだった。

 その頃、千堂の下宿で戸数を増やしていたヤミーの卵からはショッカー戦闘員のみならず、デストロン戦闘員、ドグマファイター、クライシス帝国のチャップ、ワーム、財団Xのマスカレイド・ドーパント、その他の怪人達が続々誕生………とその中にラメ入り赤マフラーをした妙な体格のショッカー戦闘員がいると思ったら、覆面を這い出見せた顔は近藤晴菜さん&箕輪はるかさん………つまりハリセンボンの2人……また「」絡みか……個人的には堂あきほさんを読んで欲しかった…………(笑)。

 その頃撮影現場では撮り直しが始まっていたの覆面警察官(ショッカー戦闘員)の殺陣は最前とは段違いの迫力。更に特殊部隊役として後藤がグレネード弾をOOOに命中させると、何とこれが本物で、アンクが後藤に「何やってんだよ!本気だからって、本物の銃を使う奴があるか!!」と普段とは立場の異なるツッコみ(苦笑)。
 勿論グレネードが本物になっていたのは後藤の預かり知らないことで、千堂によるすり替えだった。
 何故本物になっていたのかが理解出来ず狼狽える後藤にアンクが浴びせたのは、「もういい。お前はそこらで石にでもなってろ。」という呆れ台詞。それに固まる後藤だったが、これは1つのギャグ伏線となっていた。
 そして呆然とする後藤から銃を奪い取った千堂はOOOを銃撃を加えるとともに、戦闘員達にも攻撃を命じ、彼等は警官の制服を脱ぎ捨ててOOOに襲い掛かった。
 千堂も完全な戦闘員スタイルとなって短刀を手にOOOに襲い掛かり、伊達とDr.真木は何故か撮影続行(苦笑)。ただ1人千堂の正体を先刻承知していたアンクだけがOOOに戦闘員がヤミーで、千堂はその親であることを告げた。
 「お前達ライダーに1000回にも渡ってやられ続けた俺達の、戦闘員の痛みが分かるか!」という千堂の叫びはまさに魂の叫びで迫真だった………1000回記念用の特別ギャグ編でなければ(苦笑)。
 そして千堂の号令一下、最前生まれた歴代の戦闘員達も出撃し、1000回分の恨みのパワー化、OOOは数に押されて袋叩きにされた。
 だが、堪らずアンクがクジャクコンドルのメダルを投げ寄越し、タジャドルコンボに多段変身するや、マグナブレイズで戦闘員達は一掃された。結局、まとめてやられる雑魚扱いは変わらなかったか………拙作『菜根版戦闘員VOW』で唱えた千古の鉄則が揺るがず嬉しいような、寂しいような………。
 ただ1人生き残った千堂(←手掛かりをなくすことを恐れたアンクが標的から外させた)は数多くいた戦闘員達が一瞬で消え、メダルが残されたことに呆然。するとそこにイカジャガーヤミーカザリが現れ、前者はOOOに襲い掛かり、後者はセルメダルと化した戦闘員達の数に満足な態度を示しながら、同時に千堂達を利用していたことも暗に告げた。
 初めからそういう目的だったことに怒りを露わにする千堂だったが、勿論カザリはそんな怒りを意に介するような奴ではない。ショッカーを「所詮は過去の遺物」とし、自分の力で夢が見れたことを感謝すべきだと開き直った。
 千堂は茫然自失。そしてその千堂をヤミーの親としたのがカザリだったことを知って驚くアンク。そのアンクが持つコアメダルを奪わんとにじり寄るカザリの前には「クライマックスだ。俺が出ないでどうする?」と宣しながら伊達が立ちはだかってバースに変身した。

 かくして2対2のタッグマッチとなったのだが、前週の怪我が残るバースではどうにもカザリ相手には分が悪い。だがその戦闘に虚ろな目で後藤が近づいて行った。撮影中、「石にでもなってろ。」とアンクに揶揄されたことを捉える様に、路傍の石を手に「俺は石だ……頑固で、無口で、不器用で、だが石には石のプライドがある……」と呟きながら歩み寄った後藤は「俺は石だ……石頭だあぁぁぁっ!!!」と叫ぶや、カザリに頭突きを見舞った!
 一瞬、後藤の顔が路傍の石に置き換えられるギャグCG処理が為された攻撃だったのだが、なんとこれがカザリの余裕口調を崩すほどのクリーンヒット!
 怒り心頭のカザリは後藤を攻撃しようとしたが、それを阻止しながら「弾けたな!後藤ちゃん!」とサムズアップを送るバースに、後藤も凄い表情でサムズアップ(笑)。
 更には比奈も近くにあった巨大な岩(←ギャグ漫画級のデカさ)を持ち上げ、イカジャガーヤミーを押し潰してイカ足に絡め取られたOOOの危機を助けた。
 普段は女の子にあるまじき自分の怪力にコンプレックスを抱いていたが、それがOOOの役に立ったことを満面の笑みで喜ぶ比奈。後は任せろとばかりにトラクローでイカジャガーヤミーに斬撃を加えるOOO。そのイカジャガーヤミーの体から零れ落ちるセルメダルを見て、自分と共に戦っていたものがショッカーと無関係だったと悟って項垂れる千堂………だが、次の瞬間意を決してイカジャガーヤミーに突撃を敢行した!
 だが力及ばずあっさり掌底突きでKO。それを助け起こしながら何故自分を救うのかと問うたOOOに千堂は、「戦闘員にとってライダーは云わば超えるべき壁……ショッカーでもない連中に倒されて堪るか!」と云い放った。成程、これは紛れもなく自分の立場に誇りを持つ者の台詞だった。

 だがそこへシリアスな雰囲気をぶち壊しにするように巨大タブレットを持った里中が登場。勿論巨大タブレットには鴻上会長が映っている。鴻上会長にいい加減自分のコアメダルを持つ存在を云え、と凄むアンク。だが勿体付けた鴻上会長の答えは、おちゃらけキャラを演じる口調時の竹中●人or岸谷●郎っぽく述べられた、「私も知りたい。」というものだった(←早い話、コイツも知らなかった)。これではアンクでなくても「ふざけるな!」と声を荒げたくなる(苦笑)。
 だが(案の定と云おうか)、鴻上会長は動じず、ヤミー討伐を優先すべし、としてバースにセルメダル1000枚の投入を指示した。これにはさしものバースも驚いたが、すぐに後藤とゴリラカンドロイドの協力でミルクタンクからセルメダルを大量投入した。
 結構時間が掛かったにもかかわらず、その間ずっと待っていた妙なところで御人好しなカザリ (笑)。だがこれはさすがに「宋襄の仁」だった様だ。投入が完了すると、バースの6つの装備がすべてその体から離れるとバースCLAWs・サソリなる巨大なサソリ型戦闘支援メカに変形!
 その機能は、『キン肉マンU世』で例えるなら、バースを鬼畜超人ハンゾウとしたときのハンゾウ流極意傀儡人型で、バースのアクションを再現し、6つのパースを駆使して、カザリをボコボコにした!巨大メカを盾にして、自分は少し離れた安全な場所から冷静な遠隔攻撃を仕掛けられるのだから、素体の技量に差があってもかなり優位に戦えるシステムだろう。さしものカザリも「覚えていろ!」と悪役定番台詞を残して退散した。

 バースは返す刀でOOOに加勢。当然これにて劣勢に立ったイカジャガーヤミーはバースCLAWs・サソリのショベルアームパンチで川中へぶっ飛ばされた。
 アンクは追跡を命じ、青メダルを投げ寄越し、シャウタコンボに多段変身。バースも水上バイク化したバースCLAWs・サソリを使え、と勧めてくれた。OOOは電気ウナギウィップを手綱代わりに水上スキーにしてイカジャガーヤミーを追跡。イカ墨弾を連打して追跡を撒こうとしたイカジャガーヤミーも結局はショベルアームに捕まり、地面に引き戻された。一瞬はイカ墨弾でバースCLAWs・サソリをバラバラにしたかと見られたイカジャガーヤミーだったが、バースCLAWs・サソリはすぐに再合体し、サソリの尾から放たれた7色の光線でイカジャガーヤミーは木っ端微塵にされた。

 ラストシーン。夕闇の川辺に立つOOOの元に千堂が勝利を「はっ、よしてくれ。いいか忘れるなよ?戦闘員はいつかライダーを超える…だからその時まで誰にも負けんなよ!」と祝し、OOOは千堂の優しさを知っていたと告げた。それに対し、千堂は、と激励ともライバル宣言とも取れる発言を返した。
 それに対して、「ええ!負けませんよ!」と誓い返すOOOに、千堂は「応援してるぞ!」と云って握手を求めた。これはなかなかにいいシーンだ。悪のりが過ぎた感も多少はあった1000回記念作だが、記念作ならではの好シーンだろう。
 勿論OOOは握手に応じ、別タイプの握手や、腕組みまで交わすと両者は落陽に向かって各々のポーズを決めた。やはり「雑魚」、「やられ役」、「弱過ぎ」と散々揶揄されても「戦闘員」は長く仮面ライダーシリーズに貢献して来た大切なユニットなのである!!
 そんな2人をバックに「仮面ライダーOOOVSショッカー」のエンドロールが流れて幕引きし、それを見ていた鴻上会長が1000回記念の次は40周年、つまり40回目の「ハッピバースデイ!!」を祝おうと呼び掛けてこの特別編は終了した。少し始まったばかりの映画への宣伝が露骨だったかな(苦笑)。


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令和三(2021)年五月五日 最終更新