仮面ライダーOOO全話解説
第29話 姉と博士(ドクター)とアンクの真実
監督:田崎竜太
脚本:小林靖子
冒頭のダイジェストは少しアンク(が右腕だけであること)にクローズアップしたものになっていた。そしてそのアンクが夜中に外出しているのに映司が気付いたシーンから始まった。映司の呟きによると何度も何かを探して出掛けていたようだ。
場面は替わって鴻上ファウンデーション会長室。そこではDr.真木の誕生日が祝われていた。勿論大方の予想通りDr.真木は嬉しそうではなく、本人の弁によると過去何度も辞退していたという。まあトンガリ帽を被せられて、あのハイテンションに付き合わさせられるのを厭う者は多いと思うが(笑)。
ともあれ鴻上会長は「プレゼントの前に質問」として、自分が大切にしているものは何か?と問うた。勿論この実に簡単な質問(笑)をDr.真木は「欲望」と即答。それを正解とした鴻上会長は欲望の中でも最も大切なものは「私の欲望」として、あらゆる欲望を肯定する彼でも、自分の欲望の障害になるものは「どんなに素晴らしい欲望であっても排除する。」と宣言した。ある意味自己中宣言だな(苦笑)。極めて正直な、ではあるが(笑)。
そして鴻上会長は最近のグリードの動きの変化から、OOOが苦戦気味で、セルメダル収集の為にグリードが必要でも、OOOが倒されてしまっては元も子もない、と告げた。結論、「これ以上君があのカザリというグリードに肩入れするのは私にとって障害になる。君のその天才を見出した人を悲しませたくはないだろう?この忠告が私からの誕生日プレゼントだ。」と締め括った。きっちり部下の機密を把握しているところはさすがに会長である。
Dr.真木も動揺こそ見せなかったが、あてつけに息を吸うようにバースデーケーキの蝋燭を消し、トンガリ帽を捨てて無言のまま会長室を辞するしかなかった。
場面は替わってとある墓地。Dr.真木は亡き姉の墓前に花を手向けながらカザリと密談していた。Dr.真木はカザリに、彼がいまだ体内に取り込んでいない4枚のコアメダルを早く取り込んで進化するよう促したが、カザリは「それは僕が決める。」と暗に拒否した。ウヴァにあんなこと言っておきながら、彼自身暴走を懸念していた。
これに対してDr.真木は慎重過ぎたことで鴻上会長に2人の関係がばれたことを告げて、進化を急ぐよう再要請。だがカザリは進化を目指すにはコアが1枚足りないという。そんな状態で焦って進化を試みて終わっては元も子もない。
だがDr.真木は自身が持つ終末待望論を展開し、「終りを恐れているようではキミの器も大した器では……。」と云い掛けてカザリのメダル投入攻撃を食らってしまった!
「僕に命令しないでくれる?やりたければ自分でやったら?」と云いつつ、更にメダルを投入するやDr.真木の体から白ヤミーが這い出て来た。白ヤミーは仁美姉さんの墓に抱き着き、親(=Dr.真木)と同じ様子を見せるかと思いきや、いきなりベアハッグでこれを破壊。
半狂乱になって止めるDr.真木の云う事も聞かず、その背後ではカザリが自分と組むなら鴻上会長を敵に回す覚悟ぐらい持て、と唆し、ヤミーを消せと云うDr.真木の要求にも「あんたの欲望でしょ?」と取り合わず、自身はアンクの謎を求めて去って行った。
その頃、タカカンドロイドからアンクの居場所を知った映司は彼の単独行動を戒めた。勿論素直に聞くアンクではなく、側に人がいると「気が散る。」との考えだったが、差し入れの中にアイスキャンディーがあるのを示されると「それが気が散るんだよ!」と言いつつ、即座に飛びついた。さすがは欲望に忠実で正直なグリード(笑)。
同じ頃、伊達と後藤はバースバスターの射撃訓練に余念が無かった。既に後藤もその反動に体勢を崩されることはなく、更には今日から財団に戻ることに関しても内部であれば調べ得ることがあるのを狙ってであることをはっきり述べ、一時の落ち込みは完全に克服されたようだった。そんな後藤は、「火野とアンコはどーも危なっかしい。」と云って調査の必要性を感じながら、それが苦手な伊達にとっても頼もしい存在となっていた(←医者が調査嫌いでいいのか?)。
その頃、Dr.真木から生まれた白ヤミーは市民を襲撃していた。襲撃方法はベアハッグ、そして襲撃対象は女性のみ。やはりあの手のタイプはムッツリか?それをバッタカンドロイドの中継で見ていたDr.真木が呆れるほどの痴態だったが、そこはそこ、カザリが最前述べていたようにDr.真木の欲望である(笑)。
もっともDr.真木に言わせると、「それが何です。慈愛、母性の欲求。珍しくもありません。誰でもあるものです。」とのことで、彼自身幼き日に姉に抱き着いていた記憶を思い返していた。同時に世界の終焉が望みだったのでは?とするカザリの疑問にも、「私のそれは欲望などではありません。崇高なる使命です。」と否定し、自分とグリードとでは分かり合えないと結論付けていた。
ともあれ、白ヤミーはパンダシャチヤミーに成体化。やたら頭でっかちで、左目に人面があり、左手がシャチになっているという、所謂、キモ可愛い風貌。それを静かに見守るDr.真木だったが、偶然画面にクスクシエの割引券が映るや、そこにある知世子さんの画像を見て表情一変。やはり理論や信念は強くても、情に絡むところは弱い男の様である。
勿論パンダシャチヤミーの出現はゴリラカンドロイドとアンクが察知し、映司と伊達の知るところに。大量の小型シャチを放ってパトカーを炎上させて悦に入るのパンダシャチヤミー元にまずは伊達が現れた。だが同様に現場に向かおうとしていたアンクは自分が追っていた存在の気配に気づき、そっちへ踵を返した。同時にカザリもその存在が落とした赤い羽根を見て、おおよその見当を付けたようだった。
結局、腕力と変な耐久力に優れていても鈍重で不器用そうなパンダシャチヤミーはバースが市民の巻き添えを恐れて攻撃の手を緩めた隙に逃走し、第1R終了。その逃走途中でクスクシエ前で知世子さんを見たパンダシャチヤミーは抱き着きたそうにするのだった。
場面は替わってある高架下。そこでは赤い羽根を追跡していたアンクと映司がカザリと鉢合わせた。お喋りしている暇はない、とカザリを黙殺しようとするアンクだが、カザリは800年前の謎をちらつかせ、話に誘導しようとする。尚もアンクは黙殺しようとしたが、映司が興味を示した(笑)。しかしカザリは話すとしながら攻撃を仕掛けて来た。それも突風が効果を崩し、落盤を呼ぶ強烈な物。アンクも端からタジャドルコンボで戦うよう指示して来た。
場面は替わって鴻上ファウンデーション会長室。そこでは復職を申し出た後藤が会長に独断専行を謝罪していた。鴻上会長は(ケーキを作りながら)怒るでもなく、ただ後藤がバースのサポートをして戦っていたのを知っていたことを告げ、望む状態にあったにもかかわらず、何故戻る気になったのかを問うた。
その理由を「食えなくなったから」とする後藤に、単純な欲望が大好きな鴻上会長は大いに納得したが、生憎、ライドベンダー隊の新隊長は既決であるという。そこへ里中が自分のサポートを提案。ケーキを食いながら「ちょうど手が足りないので。」とほざいた。
さすがに「自分の代わりにケーキを食え。」と云っているに等しい提案に、鴻上会長ですらためらいを見せたが、後藤は一言、「失礼します!」と云うや驚く里中の横に座り、ケーキをがっつき始めた。そこには本当の目的の為にプライドを捨てた男の強さがあった。
そんな後藤に「変わったね、後藤君。」と言いながら鴻上会長は満足気な笑みを浮かべた。確かにしょーもないプライドに固執しない後藤は、鴻上会長の求めていた後藤だったよな。
場面は替わって戦場。OOOとカザリが互角の戦闘を繰り広げていたが、それは突如降り注いだ赤い羽根によって中断された。そして降り立ったのは左だけ長大な翼を生やした鳥系グリード………。もう1人のアンク、所謂、アンク(ロスト)だった。両者を比較するとOOOサイドにいるのが右腕だけのアンクで、アンク(ロスト)はそれ以外を持つ存在だった。
どうやらアンク同様、アンク(ロスト)もアンクを探しているようで、「僕はどこ?」というやいきなりOOOとカザリに向けて掌底から火炎放射を放った。そしてOOOに攻撃を仕掛けて来たアンク(ロスト)は火炎と飛翔能力でOOOを苦しめただけでなく、タジャスピナーから放つ火炎弾にも平気の平左。見ていたアンクは必死の形相でアンク(ロスト)を潰せとOOOに連呼した。
その頃、クスクシエ近辺やって来たパンダシャチヤミーの前にDr.真木が立ちはだかった。恐らくは知世子さんを守る為だろう。Dr.真木は初登場となるプテラカンドロイドを駆使してパンダシャチヤミーの行動を阻害せんとした(ちなみにコート内に収納されていたプテラカンドロイドを放つ時のDr.真木のポージングは露出狂のそれ(笑))が、さすがに分が悪かった。だがそこにこれを覆ってきたバースが到着。
戦いはバースとパンダシャチヤミーの一騎打ちとなったのだが、そこへ喧騒を聞き付けた知世子さんと比奈が駆け付けて来たからDr.真木としては気まずい展開だ。勿論知世子さんも比奈もDr.真木の過去など知らんから、気にかけるのは彼の負傷で、それこそ姉の如く我が身を心配する知世子さんにDr.真木は固まるしかなかった。
そしてCMを挟んだ後、バース対パンダシャチヤミーの戦いはドリルアームの一撃を食らったパンダシャチヤミーがトンズラして第2R終了。
OOO対アンク(ロスト)は、OOOがタジャドルコンボの技を次々繰り出すのに対抗する様にアンク(ロスト)も似たような技を出すという技の応酬となり、両者それぞれにダメージを負ったが、遂にOOOの方が先に力尽き、変身が解除されてしまった。
たまらずそこに駆け付けようとしたアンクだったが、それを見たアンク(ロスト)が「いた、僕だ……。」としてアンクににじり寄って来た。それに対し、「僕だと…笑わせるな。お前は俺だァああっ!」と絶叫するアンク。次の瞬間両者は腕を相手に突き出し、互いが互いを吸収しようとする波が流れた。恐らく、2人のアンクは片や「右腕」、片や「右腕以外」に別れて各々が自我を持った「本物」で、自分こそが「本体」として生き残ろうとしているのだろう。だが見た目通りと言おうか、右腕しかないアンクと、それ以外の全パーツが揃っているアンク(ロスト)ではパワーの差は歴然だった。物凄い勢いでセルメダルを吸われ、自身も引き寄せられるアンクピンチ、というところで以下次週へ。
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令和三(2021)年五月五日 最終更新