仮面ライダーOOO全話解説

第4話 疑いと写メと救いの手

監督:柴崎貴行
脚本:小林靖子
 前回の「3つの出来事」は「1つ、泉比奈が兄の体を使うアンクを目撃。2つ、食欲を抑えられない男にヤミーが寄生。そして3つOOOとアンクの前に新たな敵・グリードの1人が現れた。」というものだった。

 前回、アンクの前に姿を現したカザリ。その目的はアンクとのコンビ結成の申し出だった。その台詞によると「OOOなんて元は僕達を封印する存在じゃないか。」とのことで、前々からアンクを評価していたともいう。
 この提案にアンクも吝かでない態度を見せた。映司と組んだのも「成り行きから仕方なく」で、「人間はやはり色々と面倒くさい。」とも云った。だがすぐには応じなかった。「少し考える時間を寄越せ。」との提案にカザリは「君は頭がいいからね。必ず正しい答を出してくれると信じてるよアンク。」と言い残して立ち去った。

 カザリが立ち去ると、アンクは先の会話を元に映司、自分に服従をするならタッグを続ける旨を告げたが、映司はこれを拒否した。
 「バカが。お前も見ただろう?人間なんぞ一皮剥けば欲望の塊だ。いくら助けようがキリがない。」というアンクの台詞は映司も人間でありながら、「こいつは少し違う。」と見ているからだろうか?
 アンクの台詞に「そりゃ欲望に負けることもあるさ…でも最後にはちゃんと…!」と映司は言い掛けたが、アンクはそれを遮って、「最後も欲望に負ける。よく考えるんだな。その間俺はコイツ(=iPhone)のお勉強だ。」といってその場を去った。
 その直後、泉刑事の携帯が鳴り、着信表示には「比奈」の名があった。そして次の瞬間  「どうしてあなたがその携帯を持ってるんですか?それ兄のですよね?」という台詞とともに背後に比奈が登場。ますます隠し立てが効かなくなった状況の悪化が満身創痍に応えたのか、映司は気を失った。

 場面は替わって鴻上ファウンデーション会長室。一連の動きはすべて観察されていたようだ。鴻上会長はiPhoneのマスターに取り組むアンクを見て、アンクと映司のタッグが解消されるなら自分達も今後の対応を考えなければならないとし、里中はいくつかの選択肢があることを口にした。
 鴻上会長達が観察するアンクはiPhoneを操作しつつ、小学生のアイスをこっそり盗み食いするという器用さとセコさを見せていた。

 場面は替わってクスクシエ。気絶状態でそこに運ばれていた映司は遂に泉刑事の身の上に起きたことを比奈に説明したが、当然のことながら、比奈は戸惑い、そして兄を助けるためにどうすればいいかに悩んだ。
 それに明確な答えを告げられない映司は一先ずアンクに近づかないよう告げた。だが、話がぶっ飛び過ぎていて、比奈には信じられない。映司を疑っているというより、そのまま受け入れるには余りにも根拠が無さ過ぎる(原因の分からなさや、映司が見ず知らずだということも含め)といった風で、その考えを口にしている段階で映司に対して信じたい気持ち自体は有るようだったが………。
 それに対して映司は、「親切なんかじゃないよ全然。だから信じろなんて言えない。誰も彼も助けられる訳じゃないしね。ただ…手が届くのに伸ばさなかったら死ぬほど後悔する。それが嫌だから手を伸ばすんだ。と告げ、その脳裏には紛争地域で助けられなかった少女の姿が浮かんでいた。
 見返りや打算や自己満足の善意でもなく、後悔が根幹にあるというのがどこか物悲しい。
 ともあれ、何とか体も回復した映司は知世子さんからクスクシエを襲った門太が今度は近くのレストランに現れたと聞くや、ついさっきまでの重傷を心配する比奈の制止も振り切って現場に向かった。

 現場にはアンクが、そして隠れてカザリが待ち構えていた。
 アンクはiPhoneの使用方法をマスターしたことを告げ、映司に答えを求めたが、映司が出したのは、「答は同じだ。俺はお前の道具にはならない。」だった。
 それを待っていたかのように物陰から現れたカザリがアンクとのコンビ結成、そして映司抹殺を宣言した。
 映司は恐怖しながらも生身でメダジャリバーを構えたが、それに襲い掛かろうとにじり寄ってきたカザリとアンクがすれ違った瞬間、アンクが脇から不意打ちパンチを食らわせ、驚愕するカザリに対し、iPhoneの画面を見せつけた。
 アンク曰く、「お前は昔から疑り深い奴だったが、復活しても全く変わってないな。俺と映司が示し合わせて裏をかくんじゃないかと疑って、ウロウロ嗅ぎ回ってたろ?こいつは最近の人間の道具だ。黙っててもどんどん情報が集まる便利な代物でな。お前の行動は全部見られてたんだよ。人間達に。」とのことで、ネット上の掲示板やツイッターにアップされた珍生物としてのカザリがアンクを見張っている姿を見せた。
 本作に限らず、特撮の世界では名もなき一般ピープルは無力な犠牲者でしかないことが多いので、こういう名も無き人々の動きが悪を追い詰めるのに役立っているシーンは個人的に嬉しい。
 そしてアンクは、「疑い深いグリードはいつか裏切り、メダルを狙う。バカでも面倒でもこいつの方がマシだな。」カザリに対する三下り半を突き付け、コンビ結成を正式に拒絶し、映司を選んだ旨を告げた。
 メダルを投げ渡された映司はOOOに変身し、カザリとの戦闘が開始された。戦闘開始から程なくタカキリバに多段変身して戦うOOOだったが、空中での激突時にベルトのメダルが飛び出し、カマキリのコアメダル(←ウヴァの物らしい)をカザリに奪われてしまった!
 それを見て、映司を選んだのは間違いだったか?と悔やみかけたアンクだったが、次の瞬間カザリの体に異変が起きた。何とOOOは1枚メダルを奪われる一方で、カザリから黄色いメダルを3枚奪っていた。勿論「1<3」で争奪カウンターはOOOの勝利である。
 コアを奪われたことにより、甲冑ぽい部分がなくなって貧相な肉体をさらけ出したカザリは分の悪さを悟ったか、退散した。

 残るは門太の救出だけとなった。だが、欲望の満ちたネコヤミーは、もう自身は食べるのが嫌になり、手にした食べ物を口に持っていけないほど太り果てた門太を丸ごと飲み込んだ。アンク曰く、「まさに欲望に飲み込まれたってトコだ。」とのことで、その醜態を「人間の本性」とし、そんな人間を助ける価値はない、と改めて言い放った。
 だが映司は「人の価値は俺が決めることじゃない。」と返した。そうそう、主題歌でも摩季ネェが「自分の価値は自分で決めるものさ」と歌っているしね(笑)。
 アンクは「俺は決めるぞ。役に立たないと思ったらお前もすぐに捨てる。」と告げたが、逆に映司は、「俺はお前の隙を見つけて比奈ちゃんのお兄さんを助ける。例えお前を倒すことになっても。」と宣言。
 問答はここまでで、「やれたら褒めてやる。」と口では馬鹿にしつつも、アンクはメダルを映司に渡した。
 再びOOOに変身した映司は門太を助ける為にネコヤミーとの決戦に挑んだ。

 相変わらず、ハート様か、牛宝張りに斬撃を弾くネコヤミーにアンクは、「もっと深く斬り込め!」と助言するが、OOOはネコヤミーの体内にいる門太の安否を気遣って踏み込み切れない。
 だが、斬撃は全く効果が無かった訳ではなく、斬りつけた腹の中から門太の顔が僅かに見えたことから、「周囲のセルを押しのけることが出来れば…。」と考え、これに同意したアンクはついさっきOOOがガメルから奪ったメダルを投げ寄越した。

 黄色いメダルをセットすると、電子音は「タカトラチーター!」と叫んだ。基本であるコンボの下半身がチーターとなったタカトラーター初登場だった。
 その能力は勿論チーターの超駿足。凄まじい超スピードで超速射キックが放たれ、それによってネコヤミーの腹の肉は見る見る押しのけられ、中身の門太の姿がさらけ出された。
 辛うじて意識が残っていたのか、門太も差し出されたOOOの手を掴もうと必死に手を伸ばした。OOOの脳裏には先に比奈に告げた台詞がフラッシュバックしており、同時に、門太をネコヤミーから引きずり出す事に成功した!
 こうなると一切の遠慮は無用で、OOOは必殺技・OOOバッシュでこれを撃破した。

 ラストにて、駆けつけた救急隊によって担架で運ばれる門太は、唸るように「う〜んう〜ん…これからはもう暴飲暴食はしません…自制します…。」と反省の弁を述べていた。
 それを見て、「ほら見ろ!」とアンクにどや顔した映司は、人間は一度欲望に負けても、再びやり直せることが出来ることを口にしたが、次の瞬間、門太が「あのう、出来れば入院先は病院食の美味い所でお願いします。ハンバーグとかピザとか出るところが。えへへへ。」というほざいたことでぶち壊しとなった(苦笑)。
 その台詞にやはり自分の考えの方が正しかったとして、「人間は欲望1つコントロール出来ない生き物さ。ま、俺の勝ちだな。」とどや顔を返し、それに対して映司は「別に勝ち負けとかじゃねーし!」と言い合うところに、突然黒塗りの車が現れ、行く手を遮った。
 中から出てきたのは鴻上会長の秘書里中。だが、彼女自身は無言で、手にした巨大タブレットを2人に向けると、画面の中にいた鴻上会長が話しかけてきた。
 「やあ火野映司君、そしてグリードの1人アンク君だったね。まずは我々の出会いを祝して。人と人の出会いは何かが誕生する前触れでもある。」と切り出した。果たしてこの邂逅はいかなる影響を今後に及ぼすのか?


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平成三〇(2018)年八月七日 最終更新