仮面ライダーOOO全話解説
第31話 恩返しとたくらみと紫のメダル
監督:諸田敏
脚本:小林靖子
冒頭のダイジェストではアンクが2体存在することと、Dr.真木の鴻上ファウンデーション並びに人類との決別が述べられていた。
そして話は甘味処から始まった。そこに映司、アンク、伊達、後藤が会し、前回ラストのDr.真木が鴻上ファウンデーションを出奔したことに関する情報が交わされていた。後藤に云わせると、鴻上会長の様子からしてかなり重要なものを持ち出したらしい。
場面は替わって舞星ビルなる雑居ビル。そこにはブロンズ金融なる、一目で闇金と分かる金融屋内で多くの社員が電話を片手に督促を行っていた。取り立ては決して恫喝的なものでも、高圧的なものでもなかったが、日付の替わろうとしている時間帯のそれは違法である。
直後、時計の針が12時を指し、社長(西山浩司)が「時間だ!」と告げるや一斉に業務を一時中断。社員達はなんと屑ヤミーだった。社長は社員達からセルメダルを回収すると巾着に入れ、ビルに入ってきた1人の若者(坂東巳之助)に手渡し、「仕事だ!」と告げると業務は再開された。つまるところ、若者はウヴァの手先で、闇金はセルメダル収集システムとして快調に機能していた。人間企業を隠れ蓑にするとはなかなかに狡猾だが、うまいやり方である。現代社会を学習したな、ウヴァ (笑)。
そして「人間も屑ヤミーも使いようだな……。」と呟くウヴァは、2枚のコアメダルを手にして、メズールとガメルに対して、彼等のコアメダルを取り込まなくても自分のやり方で進化を遂げることを呟き、カザリとは違った進化を遂げることを宣言していた。
場面は替わって旧真木邸。今や、Dr.真木・カザリ連合の拠点である。そこではDr.真木が奇妙な盤面を取り出していた。Dr.真木が「退職金替わり」に、鴻上ファウンデーションから(無断で)頂戴して来たもの(←勿論窃盗)で、鴻上会長がヨーロッパ旅行から持ち帰った物の1つだった。
盤の中には赤と紫のコアメダルが綺麗に収められており、Dr.真木に云わせると、一度も世に出たことのない完全状態のものとのこと。更にメダルを盤から抜くことで「欠けた穴を埋めようとする欲望」が生まれ、それが生命体グリードを生むというのだった。
この説明にはさすがのカザリも驚き、それを尻目にDr.真木がメダルを外すや、盤内に残された9枚が不気味に蠢動するのだった………。
場面は替わってクスクシエ。新学期フェアというイベント開催中で、学ラン姿の映司とセーラー服姿の知世子さんが笑える(笑)。中学生の頃の道場主ならセーラー服姿の知世子さんに鼻息を荒くしただろうけれど、残念ながらセーラー服は高校生の時点でストライクゾーン外となった。
まあ誰も聞きたがらない道場主の制服趣味は置いておいて(苦笑)、そこに比奈が友人・三原鈴香(緑友利恵)を伴って来店した。比奈が友達を連れて来たのは不審事案の相談である。
鈴香宅の郵便受け現金が届けられるというのである。「三原先生」宛で届くそれは、昨年の秋頃から1ヶ月に1回だったのが最近は毎日(しかも夜中)という。それはかなり強欲な人物でも何だか気持ち悪くなる話だ。
宛名の「三原先生」とは、一昨年亡くなった鈴香の父で、高校教師だったという。宛名に書かれた子供っぽい字からすると、三原先生に恩義を感じる教え子によるものかという気がするが………?
いずれにせよ鈴香は母娘2人になった自分達を見かねた人の好意ではないかと考え、送り主に御礼が云いたい一心でいた。確かにいい話だ。仮面ライダーでなければ(苦笑)。勿論映司はこれを快諾し、深夜の配達人を張り込むことにした。
場面は替わって鴻上生体工学研究所の研究室。そこでは伊達と後藤が破壊された研究室を調べていた。物理的な破壊はさほどひどいものでもなかったが、データ関係はきれいに持ち去られていた。ただ1つ、トリケラカンドロイドを残して。
一方、会長室では鴻上会長が決別を選んだDr.真木を惜しみ、一口飲んだワインを何かに注ぎながら、「まさか紫のグリードを目覚めさせようとはね……。」と呟いていた。どうやら「紫のグリード」とやらが今後の台風の目になりそうだ………。
場面は替わって三原邸。深夜の配達人はウヴァの手先となっていた回収人だった。ウヴァに渡された日当(目測3、4万円)の内、1万円だけを自分の取り分として、残りはすべて封筒に収めると郵便受けに入れようとした。だが今夜は映司が張り込んでいて、彼は御礼対面の為、クスクシエに連れられた。
あっさり鈴香と会うことを了承した若者−坂田は、鈴香が来るまでの間、映司に送金の訳を話していた。早い話、「恩返し」で、学生時代に故三原先生に悪い仲間から抜けたり、独り立ちする資金を貸してもらったり、で何かと御世話になったことからせめて残された家族を陰ながら、というもので、喋り方はチャラく、聡明とは言い難いイメージだが、内容は真っ当で、真面目なものだった。
勿論、ウヴァの手先となっていることで、視聴者的には完全に心を許せないのだが(苦笑)。
そうこうしている内に鈴香が来店。どんな御礼シーンになるかと思いきや、鈴香はかなり悲壮な表情で、これ以上の送金を辞めて欲しいと要請した。
彼女に云わせると、母がすっかり送金に甘え、働かずに浪費して借金するまでになったという。そんな状態を見かねて、「今までのお金は返せませんが。」と正直な前置きをしつつ、これ以上の援助を断って鈴香はクスクシエを辞した。
意外な成り行きに若者が腰を落としたところに、セルメダルが零れた。それを映司に気付かれた坂田は脱兎のごとくクスクシエを飛び出し、更には映司、比奈、(メダルをこぼすのを見ていた)アンクも飛び出した。このドタバタ劇に「後藤君、戻って来てぇ。」と嘆く知世子さんが可愛い❤♪
ともあれ、坂田に追いついた一行。中でもアンクはかなり手荒にセルメダルのことを尋問しようとするのを映司と比奈が取り押さえている中、坂田は鈴香が闇金業者に返済滞りを詫びているのを偶然見かけた。取立人に見覚えの合った坂田は彼等がブロンズ金融の社員であることを思い出し、自分が回収し、三原家に渡していたお金が実は三原家に貸したお金を取り立てたものと知って、愕然とした(まあ実態はそこまで単純じゃないだろうけれど、坂田の考えは分かる)。
そしてその足でブロンズ金融に駆け込むと、社長に三原家の返済猶予を必死に懇願。だが、社長は冷たくあしらい、その中から屑ヤミーが登場。他の社員達も同様で、後を追って来た映司達が飛び込んだ時には屑ヤミーだらけとなっていた。
映司はOOOに変身し、屑ヤミーを蹴散らしにかかり、比奈と坂田には退避を促した。だが屋外に逃亡した坂田の前にはウヴァが立ちはだかり、せっかくの稼ぎ場に映司・アンクという「面倒な奴等」を招き入れた坂田にこのことを軽く愚痴ると、「最後にもうひと働きしてもらう。」と言って、セルメダルを投入にしてしまい、坂田はヤミーの親にされてしまった。
何とか屑ヤミー達を蹴散らしたOOOとアンクはその数の多さに、ウヴァの計算高さを感じて少なからず驚いていた。実際、周囲の様子からブロンズ金融の社員達も、坂田も、闇金融という悪事に手を染めている自覚はあっても、グリードやヤミーのことは何も知らなかったみたいだから、気付かれずにここまで為したウヴァの戦略家的手腕は決して侮れない。ともあれ、2人は比奈達の後を追い、愕然とする坂田と比奈に合流した。
大体予測の追認になったが、坂田はウヴァに誘われて回収業務に従事していた。仕事は簡単で、実入りが大きいことで恩返しに幅が出来たと思っていたのに、それが恩師一家を駄目にしていたということに項垂れる坂田だった。
だが、比奈に「たまたま」の結果であって、坂田が悪い訳ではない、と励まされるとすぐに自分は間違っていないとばかりに更なる金儲け、借金肩代わりに意欲を見せる坂田だったが、これをアンクが鼻で笑った。
坂田の想いの強さがさぞいいヤミーを生んだだろうと皮肉った訳だが、恩師への想いを「欲望」とされた坂田は当然面白くなくて、アンクに食って掛かった。これに対し、映司は坂田の想いは正しいとしながらも、「ただ、人を助けるときはその「たまたま」があることを忘れない方がいいですかねぇ。」
と諭した。
シルバータイタンは坂田の想いは正しく、かと言ってアンクの「欲望」という例えも間違いとは思わない。「欲望」という言葉のイメージが悪いだけで、お世話になった人に恩返しをしたいというのは「良き欲望」と思う。ただ、お世辞にも聡明とは云い難い坂田に限らず、映司の付け加えは大切だろう。本当に大切な人に尽くしたいのなら。御人好しの塊男・火野映司のこの一言には得も云えぬ重みがあった。
その頃、坂田から生まれた白ヤミーは信用金庫を襲い、襲って奪ったお金を信金の外に出た途端にばら撒き出した。ばら撒かれる札に道行く人々が群がるのは良いのだが、銀行から出たばかりの怪人物が撒くんだから、もうチョット考えようよ(苦笑)。ちなみに銀行から飛び出した警備員も金に飛びついていたが、「任務」と「欲望」のいずれで飛びついたのだろうか?(苦笑)。いずれによせ、白ヤミーはクロアゲハヤミーとなって飛び去った。
勿論これはアンクとゴリラカンドロイドの察知するところとなった。上空を飛ぶクロアゲハヤミーは札を撒き続け、道行く人々は時ならぬ札の雨に群がった。これにはシルバータイタンも飛びつきそうだ(笑)(←勿論法的には拾得物横領罪になる)。
ともあれ駆け付けた映司はアンクの勧めでタカウタに変身し、電気ウナギウィップで絡めとったクロアゲハヤミーと格闘になった。
一方、事の展開についていけない風に見えても、クロアゲハヤミーが自分の欲望から生まれたヤミーであると聞かされていた坂田はクロアゲハヤミーの行動と、驚喜してお金を拾い集める市民の姿に戸惑っていた。比奈は「欲望の暴走」として、坂田ではないと云って否定したが、どこまで通じたか微妙である。
そして少し遅れて伊達と後藤も到着、「随分と景気のいいヤミー」とする伊達に「一応云っておきますけど、あのお金は拾わないで下さいね。」と釘を刺す後藤。「分かってますって。」と云いながらバースに変身し、「お金はちゃーんと仕事で稼がないとな!」と云って駆け出す、バース。このコンビがいつになく2人らしい上に、小気味よくてステキ(笑)。そして後藤は金集めに夢中になる群衆に危険だから逃げるよう促した。
OOO&バースは戦いを優勢に進めていたが、そこにウヴァが加勢して来た。「2対1は卑怯だろう。」という台詞は、通常なら「どの口が云ってんだ?」と揶揄したくなるが、Wライダーのプライドをくすぐっての台詞だとしたら、本当にコイツは短期間の間に戦略家になっている。厄介なことに大量のセルメダル獲得に成功していたウヴァは頭だけでなく、耐久力の方も鍛えられており、ウナギの電気ムチにも平然としていた。
旗色の悪さに舌打ちしたアンクはOOOに赤コアメダルを投げ寄越し、バースの制止にもかかわらず、OOOは「背に腹は代えられないでしょ。」として、タジャドルコンボに多段変身した。
かくしてタッグマッチが再開。ウヴァは確かに強くなっていたが、強化されたカザリと数々の死闘を展開して尚互角以上だったタジャドルコンボは負けていなかった。
空中で蹴りの連打を受け、コアメダルをこぼすウヴァに、それを拾って「はっ!悪いなウヴァ。」とほくそ笑むアンク。お前、全然「悪い」など思ってないだろ(笑)。
ともあれ、OOOはタジャスピナーでクロアゲハヤミーを焼き尽くし、ウヴァは1人に(しかもコアを2枚こぼし、弱体化している)。さすがに逃げるしかないかと思われたが、ここで異変が起きた。
戦いの途中、旧真木邸で突如盤面から飛び出し、去っていた紫のコアメダル5枚がここに飛来。そのままOOOの体に飛び込んでしまった! 紫コアメダルを受けたOOOは苦しみ出し、その体からは2枚の赤コアメダルが飛び出し、1枚は慌ててアンクが回収したが、もう1枚はウヴァの手に渡ってしまった。
「俺はついてる…。」とほくそ笑んだウヴァはアンクにOOOに何が起きているかを尋ねるが、本当に分からないアンクは「知るかっ!」と吐き捨て。ま、知っていてもそう答えそうだが(笑)。ともあれウヴァはこれを1つの選果として撤収した(←戦略的には妥当な判断)。
そしてOOOの苦しみは徐々に収まったかに見えたが、全身が紫光に包まれると変身が解除され、眼を見開いたまま昏倒。伊達の見立てでは呼吸も脈拍も正常で、病院に運ばれることになったが、焦点の合っていないその眼も紫の光を放ち、如何にも不気味な不安を残しつつ以下次週へ。
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令和三(2021)年五月五日 最終更新