仮面ライダーOOO全話解説

第32話 新グリードと空白と無敵のコンボ

監督:諸田敏
脚本:小林靖子
 前回の「3つの出来事」は「1つ、恩返しの為に金を稼ごうとする坂田浩介と映司達が知り合う。2つ、Dr.真木は財団から禁断のコアメダル10枚を持ち出した。そして3つ、その内の5枚が突然映司の体に入り込んでしまった。」というものだった。

 場面はとある病院から始まった。どうやら伊達の医者仲間(窪寺昭)が勤務する病院の様で無理云って映司を診てもらった様だったが、レントゲン写真にはメダルはおろか異物らしきもは全く映らず、健康そのものとしか云い様のないという診断だった。それでも明日まで入院出来るようにしてくれたというからいい友達である。

 場面は替わって旧真木邸。そこではDr.真木が紫メダル飛び去りの原因を、メダル自身がOOOを「完全復活する為の器」として選んだことと分析していた。その意見をカザリは 「OOOなんて…下手したら封印されるだけじゃないか。」と不可解そうにしていたが、Dr.真木に云わせると、手付かずだった紫メダルは800年前の戦いを知らないゆえにそう判断したとのことだった。そしてDr.真木は、グリードと一緒で、暴走しなければいいだけの事として、ヤミーもしっかり生まれているゆえ、現状では心配無用と結論付けた。
 えっ、そんなヤミー何処に?と思っていたら高層ビルの上にプテラノドンヤミーが立っていた。それも2体!

 OPが終わると、雌雄2体のプテラノドンヤミーは街中で「欲望の渦」を対象に、「すべてを無に。」というや、大量の黒い霧を噴出。これに触れた人間達は苦しみながら跡形もなく消え去るという恐ろしいものだった。大量殺戮型だとしたら、これまでにない直接的脅威である………。
 その頃、映司はすっかり意識を取り戻していた。病院を辞し、帰る道々、坂田が自分の好意は間違っていた、と振り返っていた。映司や比奈のいうことに耳を貸さない訳ではないのだが、眼前で起きた三原先生一家の苦境や、生れ出たクロアゲハヤミー誕生を振り返り、映司の云う「たまたま」を想定出来ない自分は、良いことしても人に恨まれるだけではないか、と考え出していた。
 それに対して映司は、自分も失敗を繰り返して来た、と告げた。貧国の為に募金した筈が、悪人に利用されたり、時には内戦の資金にされたりしたこともあったとも。「内戦の資金」と聞き、坂田は(そしておそらくは視聴者も)、一体どれだけの金額なのやらと想像が飛びかけたが、どうやらそこに後悔があったらしい映司は「人が人を助けて良いのは自分の手が直接届くところまで。」と結論付けた。欲望に対してもその程度なら暴走しないとも。

 くどいが、坂田の恩師に報いたいという気持ち=欲望は決して悪いものではない。ただ分を超える域には無理が祟るということだろうか?故マザー・テレサは「私は1人を助け、余裕があればもう1人を助けるだけです。」と云われたそうだが、そこに通じるような気がする。ともあれ、坂田には通じた様だった。

 その頃、2体のプテラノドンヤミーは例の黒い霧で次々人々を消し、その霧を飲み込んでいて、その気配をアンクが察知した。現場に駆け付けると高層ビルの屋上からどんどん黒い霧が垂れ下がり、ビルの中からは人々が逃げ出してきていた。そしてそこにプテラノドンヤミー(雄)が飛来。ヤミーの出自を訝しがる映司だったが、プテラノドンヤミー(雄)は「我々は『消し去る者』…。」とだけ名乗り、口から火炎弾を吐いて攻撃して来た。勿論2人のライダーは即座に変身した(OOOはタカトラに)。
 「コアメダルは欲望。我等の前で欲望は無効!」と繰り返し唱えながら戦うプテラノドンヤミー(雄)はなかなかに強く、格闘でも2対1のハンディキャップマッチを物ともせず、更には紫電を放ってOOOの変身を強制解除。生身に戻った映司ににじり寄るプテラノドンヤミーを阻止しようとしたバースも片腕(片翼?)の一閃で弾き飛ばされ、変身解除。更にはもう1体のプテラノドンヤミー(雌)まで駆け付けてきてしまった。
 これは伊達ならずとも「逃げるが勝ち」と考えるところだが、ビルに取り残された人達を見た映司は真っ先に飛び出してしまう。勿論、プテラノドンヤミー(雄)に火炎弾を浴びせられることになり、これを辛うじて助けた伊達は「馬鹿野郎!死にてえのか!」と一喝。だが間髪入れず映司は「放っておけませんよ!伊達さんそうでしょう?!」と云い返す。だがそれに対して伊達は「生憎俺は医者でな。医者の仕事はまず自分が死なないことだ。でなきゃ誰も助けらんない!!」と極めて現実な正論を展開した。
 さすがにこれは様々な意味で伊達の論に軍配が上がるところである。さすがに映司も一瞬伊達に気圧された。が、「じゃあ、俺に医者は無理ですね。」というややはりビルに向かって走ってしまい、雌雄のプテラノドンヤミーは衝撃波の様な物を吐き合って大爆発を起こし、飛び去った。

 場面は替わってクスクシエ。幸い軽傷で済んだ映司だったが、さすがに伊達と後藤の説教(手当て付)に曝され、これには謝罪を余儀なくされていた。
 手当てを続けながら、映司のことを「前から危なっかしい奴だとは思ってたが…原因はこれだ。他人は助けようとするクセに自分の命を無視してる。」と断じた。痛い所を突かれ、 「そんな、俺は別に死ぬつもりだった訳じゃ…。」と反論せんとした映司だったが、「それが軽いんだよ。」と一喝され、閉口するしかなかった。
 続けて伊達は、「死ぬつもりならいいさ。懸ける命の重さが分かっているから。お前は懸けてさえいない。昔はちゃんと懸けてたのに…そうだろ?」と告げた。ここまで云い切るのも、伊達が過去に遭遇していた「火野映司」を思い出していたからだった。
 それは伊達がアフリカで働いていた時のことで、内戦に巻き込まれた日本の政治家のボンボンが命懸けで村を救い、大騒ぎされたことがあったと云う。
 勿論その「ボンボン」とは映司のことである。事は2年ほど前のことで、事件自体は後藤も知っていた。比奈は戦争に巻き込まれた女の子を助けられなかったという映司の話と食い違いを感じていたが、伊達に云わせると「美談は作られる。」とのことだった。
 というのも、映司が命を懸けて村を救おうとしたのは事実だったが、結果は、「親が払った身代金で火野だけが助かった。」というものだった。それだけでも相当気まずく、ボディーガード達に囲まれた映司は歩くのままならないほど落ち込んでいたが、「命を懸けて村を救おうとした。」という姿勢だけがマスコミによって大きく取り上げられたという。
 しかもその(嘘ではないにしても)都合のいいところだけクローズアップされた実体なき「美談」は政治家の親や兄弟が人気取りに利用したと云う。そりゃ余程売名欲求に貪欲な奴でない限り、良心の一欠片でもあれば居た堪れないこと極まりない話だ。
 まとめると、良かれと思ってした多額の寄付が内戦の資金になり、責任を感じてその村を救うために奔走するも、親の権力と金で自分だけが助けられた挙句、その話を都合のいい誇張で汚い政治活動に利用されたのだから
 一部始終を聞き、珍しく後藤も映司に同情。伊達はかかる立場に置かれた者の変遷として、「怒る奴もいるし、ジメジメと腐る奴もいるが…でたまーに妙に乾いちまう奴がいる。」と説明し、映司は最後の例とした。「乾いちまって…自分への欲がない。」と。
 つまるところ、定住地も、必要以上の金銭も持とうとせず、自分より他人を優先する火野映司の源泉はここにあったのであった。
 かかる話を聞いては、あのアンクまでもが、「お前の方がよっぽど欲望の渦にいたとはなあ……。」と語り掛けていた。決して揶揄ではあるまい。いっそ他人の眼を一切気にせず、自己中に生きれば決して取りつかれない苦しみである。それに対して映司は「もう忘れた。」としたが、本心ではあるまい。

 尋常ならざる映司を襲った過去を聞き、比奈も後藤も言葉が無かったが、伊達はあくまで映司の問題だから第三者は気にしなくていいとした。そして(似てない)鴻上会長の物まねで彼の欲望論を口にし、「自分の欲を無くしちまったら、生きているとは云えない。」と結論付けた。するとそこへ、噂をすればなんとやらで、例のハイテンションで「その通り!」と叫びながら鴻上会長がクスクシエに初来店した。
 鴻上会長は、伊達の指摘をいい線を突いているとしながらも、映司の無欲さこそが「メダルの器」たり得る点には気付かなかっただろう?と問うてきた。鴻上会長曰く、「メダルをあれだけ使いながら暴走しないで済んでいるのもそこだ!」とのこと。だが、状況が変わったこととその重大性を伝えるために会長自らクスクシエに来たという。
 だが、その伝え方がバースデーケーキを提示しての「ハッピー・バースデー!紫のグリード!そしてそのヤミー。」だから著しく真面目さと緊張感・危機感に欠ける(苦笑)。
 一応は、紫のメダルが絶滅したり、想像上の存在でしかなかったりするの生物の力を秘めたものであることや、その欲望が「無」にあるといった重大なヒントを伝えてくれてはいたのだが。
 ともあれ、「無」を求めるのが紫に属するグリード・ヤミーの特徴の為、映司の「無欲」に引き寄せられたとのことだった。そしてそれゆえに「欲望の空白」が埋まれば、「暴走」という危険性も高くなる、とも鴻上会長は述べた。
 さすがにこれには一同、不安を覚えずにはいられなかった。ただ1人、映司だけがマイペースを崩さず、アンクは「お前が馬鹿でよかった。」としたが、表情の端々から見ると全く気にしていないという訳でもなさそうだ。ま、ついさっき、伊達の説教を食らい、物凄く嫌な過去に触れられたばかりだから、表情は暗くて当たり前なのだが。

 翌日、2体のプテラノドンヤミーは遊園地上空に現れ、人間=欲望に黒い霧を浴びせ、それを無に帰する行為を再開した。例によってアンクがその気配を察知したのだが、同時に映司の瞳が紫になったも気になる。
 遊園地に着いた両名。アンクは昨日の例から映司に必ずプテラノドンヤミーの攻撃はかわすよう助言し、映司はOOOに変身し、戦いに挑んだ。OOOは2対1でもそこそこ善戦。程なく伊達&後藤も到着し、伊達=バースがこれに加勢。個々に互角の戦いを展開した。
 だが、逃げ遅れた幼女を見つけたOOOは、例の忌まわしい過去において救えなかった少女の姿を重ね、これを救わんとしたために不利に転じた。結局プテラノドンヤミー(雌)の電撃攻撃を受け、アンクが懸念した様にOOOの変身は解除されてしまった。
 幸い、少女は後藤が保護したが、映司は絶体絶命。バースもプテラノドンヤミー(雄)と交戦中で助ける余裕はない。常に誰かの為に体を張る映司だが、映司本人には体を張ってくれる人がいないことを思って比奈が突進せんとするもこれは後藤に止められた。

 だがプテラノドンヤミー(雌)が火炎弾を打ち出すと、映司の体内に会った紫メダルがこれに反応し、映司の体から飛び出るや、火炎弾を防いだ。そしてメダルはオーズドライバーに飛び込み、映司の瞳が紫になるや、オースキャンまでが勝手に動いて、自動的に変身が為された。
プテラトリケラティラノプットッティラッノザウルース!」と一際いつもより太い電子音声が響き、仮面ライダーOOO・プトティラコンボが初登場した!
 プトティラvコンボは変身が完了するや周囲の空気・地面をも凍てつかせ、更にはその凍結を吹き飛ばす衝撃波がプテラノドンヤミー(雌)をぶっ飛ばした!そして映司は激しく、且つ長い長い咆哮を挙げ、その場にいた全員がその異様さに目を奪われた………。
 プテラノドンヤミー側はプテラノドンヤミー(雌)の元にプテラノドンヤミー(雄)も駆け付け、両者はOOOから発せられる力を、「同類にして、敵!」と判断。即座に2体掛かりでOOOに襲い掛かったが、プテラの巨大な翼・エクスターなるフィンによる打擲力は2体掛かりの攻撃力を上回り、ティラノの尻尾によるテイルディバイダーが更なる打撃を加え、2体を地面に叩きつけた!そしてスキャニングチャージしたOOOはトリケラのワイドスティンガーを長く伸ばし、突き刺し、凍結させることでプテラノドンヤミー(雌)の動きを封じ、テイルディバイダーによる必殺技・ブラスティングフリーザーで凍った薔薇よろしく、その体を粉々に粉砕した!
 はっきり云って、パワーでサゴーゾを、飛行攻撃能力でタジャドルを上回り、設定におけるOOO最強形態というのも大いに頷けた。

 更にOOOは地面に向かって拳を突っ込むと、地中から専用武器メダガブリューを取り出した。恐竜の頭部の意匠を施した大型の斧は斧モードとバズーカモードにスイッチング可能で、セルメダルをメダガブリューにセットするや、「プットッティラ〜ッノヒッサ〜ツ」とコミカルな電子音声が流れ、バズーカモード必殺のストレインドゥームで破壊光弾が放たれ、プテラノドンヤミー(雄)もまた一撃で粉砕された。
 文句のつけようのない強さだったが、さすがにかかる強さには代償があってしかるべきなのか、2体のプテラノドンヤミーを片付けたOOOは次にバースを敵と定め、メダガブリューを斧モードとしてバースに斬り掛かった!!
 アンクが口するまでもなく、これが一同の懸念した「暴走」で、勿論、後藤が諭すも声自体が耳に入っていない様子。だが比奈が間に割って入ると、メダガブリューは間一髪比奈の額を割る寸前に寸止めされた。
 まだどこか暴走の雰囲気が冷めやらぬOOOに比奈は、「映司君……私、映司君の気持ちが分かるなんて云えないけど…でも、手を伸ばすことは出来ると思う! 映司君が辛い時は私が映司君の手を掴む!」と訴えてその腰に抱き着いた。
 続けて「お願い!元に戻って、映司君、お願い!」と比奈は懇願。手を差し伸べてばかりの映司に差し伸べられた手が響いたのか、OOO・プトティラコンボから苦しみながら変身が解除され、映司は意識と正常な思考を取り戻した。うーん、泉比奈に注目するなら、間違いなく一押しの回になったな、この第32話は。
 映司は比奈に礼を云おうとしてそのまま倒れ伏した。普通のコンボでも消耗が激しいところ、良くも悪くも最強のプトティラコンボでは昏倒もむべなるかな、である。比奈は倒れた映司に駆け寄り、それを見つめる伊達、後藤、アンクは無表情ながらも一安心した様でもあった。

 場面は替わって旧真木邸。そこではカザリがDr.真木に調子を尋ねていた。「上々です。」と答えるDr.真木に、何が?と思っていたら、カザリがDr.真木の額に紫のコアメダルを投入!「人がグリードに成れるって面白いよね。」と云いながら成り行きをニヤニヤ見つめるカザリ。そしてDr.真木がセルメダルを燭台に投げ込むや、謎のヤミーが誕生したところで以下、次週へ。ストーリーも所謂一つの山場か?


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令和三(2021)年五月五日 最終更新