仮面ライダーOOO全話解説

第34話 親友と利用とその関係

監督:石田秀範
脚本:毛利亘宏
 前回の「3つの出来事」は「1つ、未知のコンボの暴走に手を焼く映司。2つ、レジャーランドに招待された映司達の前に高校時代の友人・北村が現れた。そして3つ、伊達と後藤がフクロウヤミーに連れ去られてしまった。」というものだった。

 ストーリーは映司が伊達と後藤の行方を求めてレジャーランド内を奔走するところから始まった。一方、アンクは北村を(比奈に聞こえないように)密かに尋問していた。勿論アンクを罠に嵌めて捕らえた疚しさのある北村は眼を合わせるのも辛そうだったが、アンクが容赦する筈がない。まずはヤミーの親である北村の欲望についてアンクは尋問した。勿論黙秘すれば映司にバラすと脅して。
 「それだけは勘弁してくれ。」とばかりに北村が述べたのは「映司に頼られたかった」というもの。つまり比奈を攫ったのも、自作自演で比奈を助けることで映司の前でいい人を演じたかった訳だが、結果、ヤミーという化け物が生まれたことに項垂れるのだった。
 同時にカザリの唆しがあったことも述べられ、事の経緯をアンクは大いに納得。そしてそこに映司が戻るとアンクは即行で約束を反故にして、北村がヤミーの親であることを告げた。膝を落とす北村に幾許かの哀れを、約束をあっさり反故にするアンクに若干の怒りを覚えないでもないが、「黙っていて」という口約束ほど守られないものもなかなか存在しない。

 少し話は逸れるが、「喋らないで。」という嘆願は、相手の弱味を握るか、黙秘するメリットでもない限り、物凄く簡単に、且つ罪悪感無しに反故にされる。
 シルバータイタン自身、学生時代のテスト成績、異性問題、業務上で名前を伏せた協力要請、親に黙っての身内間の行動など、「云わないで。」を反故にされた経験は枚挙に暇がない。そして反故にした側を尋問しても相手は(人格に関係なく)丸で罪悪感を抱いていなかった。シルバータイタンの人望の無さもあるのだろうけれど、恐らくは相手がシルバータイタンより話した相手との関係を重視していたり、隠すことのメリット・喋ることのデメリットを感じていなかったりした結果だろう。
 本当に隠したいことは最初から喋らないか、隠さざるを得ないことを最初からしないかが理想だが、それも難しかろう。

 話を戻して、比奈を攫ったことまでバラされ、映司との仲も終わったと感じる北村は完全に力を落とした。だが究極の御人好し男・火野映司は突然比奈に、誘拐は自分と北村が組んだサプライズだったと云いながら謝罪して、北村を庇い始めた。
 勿論、視聴者の眼にも、比奈の眼にも、映司が北村を庇っているのはバレバレだったが、映司の気持ちを察してか、納得した振りをした。逆に納得いかないのはアンク。何せ自分は罠に嵌められ、拘束された厳然たる事実があるだけに映司が庇うことに怒り心頭で、伊達・後藤の捜索に向かった映司・北村の後を追った。

 その途中、アンクは映司に何故北村を庇うのかを問い詰めた。北村の非を鳴らしたい一心でうっかり自分が捕まったことを喋ってしまい、それを映司に突っ込まれて「うるさい。」と気まずそうにしていたアンクがチョットだけ可愛かったりした(笑)。ともあれ、映司は現状を北村に頼るしかないとし、北村の愚行は自分にも責任があるとした。
 その後、人間とグリードとで友情を求める価値観や思考の相違が見られたが、その過程で映司は北村から生まれたヤミーゆえ、レジャーランド内の北村のお気に入りが敵アジトとして濃厚と考え、植物園が導き出された。

 その頃、その植物園では、伊達と後藤がハウス内に吊るされた巨大な鳥の巣のようなところにいた(勿論簀巻き状態)。逞しいひげ面と、細面の美青年が頭を並べて横たわっているのだから、男色家か、ボーイズラブ好きの女性が喜びそうなシチュエーションである(個人的には嬉しくないが)。
 ともあれ、2人は辛うじて動く足先で巣内から蹴りを入れ、巣を地面に落とすことに成功。直後、後藤は伊達拉致直後にバースドライバーを纏って戦わなかったことを謝罪。だが伊達は、「出来ないと思ったから変身しなかった……その決断は間違ってない。身の丈以上の力は身を滅ぼすこともあるからな。でもな…お前ならもう大丈夫だ。勇気を持て。次にチャンスがあったら迷うな。その時は…お前がバースだ。」と最大限の信頼と激励を送った。
 確かに、人間的な意味では作中最も成長し、それを多くの人々に認められているのは後藤慎太郎だろう。意外な台詞だったのか、それでも自信無さげな後藤だったが、伊達は更なる信頼を口にし、まずは脱出を優先すべきとした。そして後藤は後ろポケットにしまっていたプテラカンドロイドを出し、その声を聞いた映司達も植物園へ駆け付けた。
 互いを呼び合い、再合流を果たした一同。しかし、伊達・後藤の拘束を解き切らない内にフクロウヤミーが襲撃。コアメダルを受け取り、OOOに変身しようとした映司だったが、例の黒布に足を縛られた映司は変身を阻止された。伊達の拘束を解くよりも映司の変身の方が先と見た後藤はハウス内の頑丈そうな蔦に捕まるや、ターザンの要領でフクロウヤミーに飛び蹴りを炸裂させた(←関係ないが、そういや昔、「ターザン後藤」というプロレスラーがいたよな(笑))。
 ターザンキックはフクロウヤミーを、ハウスの壁を破って屋外に排出するほどの威力を発揮。ようやく映司はへの変身に成功した。フクロウヤミー相手にサイの怪力で圧倒し、電気ウナギウィップで飛んで逃げるのを許さない展開に、当初「適当に選んだろ!」と文句を垂れた映司も、アンクのベストチョイスであったことを実感(勿論アンクに云わせるとベストチョイスなのは「当たり前だ。」)。メダルの効力はパワーに目を奪われがちだが、器用さでいえばウナギの有効性は群を抜いているかも知れない。
 しばらくして、後藤に拘束を解かれた伊達もバースに変身して参戦。完全に優位に立とうしたが、敵方にもカザリが参戦。例によってW一騎打ちとなった。

 だが一騎打ちは乱戦化し、その最中フクロウヤミーの捕縛布によって今度はアンクが連れ去られ、驚いた隙を突かれたOOOはカザリの一撃で変身が解除されてしまった。その際に零れたコアメダルも奪われ、生身の映司は絶体絶命化と思われたが、カザリは下手に映司を追い込んでプトティラコンボが発動するのを恐れ、緑のコアメダルを一応の選果として撤退した。
 映司、伊達、後藤はアンクを連れたフクロウヤミーを追わんとしたが、それに北村が待ったをかけた。カザリの入れ知恵もあって、アンクを映司を苦しめる元凶と見る北村は伊達と後藤が助かったことを良しとして、人間でもないアンクなど放っておけと云わんばかり。
 勿論聞き容れる映司ではないのだが、北村はそんな映司を「お前らしくない。」とした。だが映司は自分が高校時代と何も変わらない、と反論。あくまで「今自分に出来ること」を「出来る範囲」でやるだけだと主張。ま、視聴者にはOOOになったことで「出来る範囲」が拡大したことが分かるのだが、8ヶ月間の展開を知らない北村にその理解を求めるのは酷かな?

 一方、連れ去られたアンクは某所でフクロウヤミーカザリアンク(ロスト)、そしてDr.真木に囲まれていた。気配からDr.真木が映司同様紫のコアメダルを取り込んだこと察知し、人間がグリードに成ろうとしていることに驚愕していた。
 もっとも、アンクはただ拉致されただけでなく、バッタカンドロイドを利用して映司に救援を求めるという機転を利かせたが、救助を求める分際で「早く助けろ!」と命令形、場所を聞けば「知るか!」、映司がBGMから滝のある場所を察知してその行き方を尋ねてもやはり「だから知るか!」…………北村が見捨てるよう勧めるのも無理はなかった(苦笑)。ただ、その北村は最前の会話で映司の気持ちが通じていたようで、マイカーを駆使して案内役を買って出るべく映司の元に駆け付けてくれた。
 ランド内にある、「滝のある場所」に向かう途中、車を走らせながら北村は高校時代の本音を語った。度の過ぎたお節介を焼く映司に辟易しながらも屈託のない笑顔に心を開き、夢を買った北村に、何の根拠も無しに「絶対出来る!」としたかつての映司。
 それを聞いて映司は自分の力を過信して根拠のない成功展開を声高に語った自分を恥じる発言をした。そして何故アンクを助ける?利用されているのじゃないのか?と尋ねる北村に、「誰かを助ける為の力が欲しいから、絶対に失いたくない、アンクを利用してるのは俺の方なんだ!」と告げた。全く、欲望が完全に他者の幸福達成に向き、他者を責めないのだから、火野映司程人間性善説がぴたりと重なる御人好しは歴代ライダーの中でも珍しい。
 ともあれ、映司の考えを完全に理解した訳でなくとも、気持ちは感じ取った北村は目的地に向けてアクセルを深く踏み込んだ。そして目的地に到着すると北村はこっそり拾っていたコアメダルを映司に「お前たちにとって大切なモンなんだろ?」と云って返却した。

 この間、アンクとアンク(ロスト)は一体化と存在を巡って戦いが始めようとしていた。駆け付けたとはいえ、フクロウヤミーカザリアンク(ロスト)を相手にしての3対1ではOOOといえども勝ち目は乏しい。それを察してか、映司は自らの意志で紫メダルを召喚し、プトティラコンボを発動せんと念じた。
 それを見ていたグリードサイドの中から、まずDr.真木が10枚の紫メダルが集まるのは危険として、その場を退散。程なく映司は紫メダルの召喚に成功し、ぎこちない動きながらも自分の意志で変身ポーズを辿り、OOO・プトティラコンボに変身した。
 まだまだ問題はあるが、殊戦闘能力においてプトティラコンボは文句の着け様がない。まずフクロウヤミーを大木に叩きつけてこぼれ出たセルメダルでメダガブリューを発動。ドロップキックを食らったが、すぐに起き上がって反撃開始。堪らずカザリアンク(ロスト)フクロウヤミーがOOOに組み付いた隙に「これまでか。」と呟いてトンズラした。
 こうなるともはやヤミーの必敗パターンである(苦笑)。フクロウヤミーも飛んで逃げようとしたが、バズーカモードによるトスレインドゥームで爆殺された。

 勝利したはいいが、問題は映司の正気取戻しである。懸念されたように、OOOは銃口を北村に向けたが、これを救ったのは意外にもアンクだった。アンクはOOOの注意を惹き付けながら逃走を続け、一際大きな岩の上に飛び乗った。そして、「映司!お前がどうなろうと構わない!だがな!俺は何があっても完全に復活を遂げる!その為にはお前が必要だ!だから手伝えぇぇっ!!」と相変わらずな自己中宣言を発すると叫び声をあげながらOOOに飛びかかった。OOOもメダガブリューを一閃、右腕の身であるアンクはそのまま斬り裂かれてもおかしくなかったが、OOOの動きはすんでのところで止められていた。どうやら比奈のケースにせよ、アンクのケースにせよ、純粋で真剣な想いにプトティラコンボは戦意をなくすということだろうか?
 ともあれ、OOOに動きが止まった隙にアンクがドライバーの位置を正すと変身は解除された。そしてアンクに抱き止められた映司は、アンクならきっと自分を止めてくれると思っていたと告げて気を失った。そしてそこに映司とアンクの独特な信頼関係を見出した北村は敗北を悟ったように立ち去った。

 ラストシーンはクスクシエ。そこでは自分しかいない店内で知世子さんが予約を詫びながら断っていた。だがそこに一行が帰還すると顔色も声色も瞬時に変えて知世子さんは予約を受け付けた。予約内容は100名もの団体さんで、映司、比奈は勿論、後藤(←秘書補佐と兼業?)、更には伊達まで手伝いに1人動かず、一同を冷たく睥睨するアンクだったが、メダガブリューを受け止めたその手には包帯が巻かれており、痛みに顔を歪めるアンクもまたアンクなりに真剣だったことを示して第34話は終結した。


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令和三(2021)年五月五日 最終更新