仮面ライダーOOO全話解説

第35話 夢と兄とバースの秘密

監督:田崎竜太
脚本:毛利亘宏
 冒頭のダイジェストはプトティラコンボの強烈さと暴走阻止に簡単に触れたものだった。そしてストーリーはデザインコンクール会場から始まった。そこには服飾デザイナーを目指す比奈も出場しており、比奈はコンクールのレベルの高さに自信無さげながら、審査員長をフランスで活躍する一流デザイナー・沢口健太郎(影丸茂樹)が務める場に挑んでいることからも戦意は高かった。
 ウルトラ警備隊のカジ参謀………じゃなかった、沢口は比奈の憧れの人という。そしてそんな重要なチャレンジの場にエントリーNo.4として比奈の作品が登場。「和服を大胆にアレンジ!まさに現代という合戦場を戦う為の戦闘服です。」と紹介されたその服を纏って映司がモデルとして現れたのだが、例えていうなら丁髷を結わない前田慶次(笑)。ただ似合ってはいて、決して変なものではなかった。
 そして審査結果が発表され、比奈は見事優勝した!比奈は勿論、映司と知世子さんも我がことのように喜ぶのだったが、比奈は嬉しい中にもこの場に兄の体は有っても、兄の心が無いことに寂しげだったが、突如アンクの口から、「比奈、おめでとう…。」という泉刑事の呟きが漏れていた……。

 一方、審査結果発表時から比奈の横から時折比奈に妙なライバル視線を発する少女・杉浦祥子(竹本彩)がいた。彼女は級友らしく、優勝した比奈に祝福の弁を述べ、杉村自身は準優勝という好成績を修めたが嬉しそうに見えなかった。この時点で作風パターンから「今回はこの少女か…。」と思ってしまうのが複雑な気分(苦笑)。
 会場を出た杉村は、その父(岩寺真志)から優勝出来なかったことで約束通り専門学校を辞める様に宣告された。悔しそうに準優勝をもって退学に猶予を求めた杉村だったが、父親は当初の約束であった優勝しか認めない、と冷たく云い放った。
 成程、デザイナーになるのを反対していた父親が続ける条件を「優勝」としたというスポ根ものによくある約束が父娘間で為されていたという訳か、それを知れば杉村の切羽詰まった表情に理解が生まれないでもない。別に比奈が嫌いな訳じゃないのね。
 準優勝のトロフィーを意味がないとばかりにゴミ箱に投げ込む杉浦。スポ根ものなら準優勝でも許されるところなのだが、番組の始まりじゃ仕方ないか(苦笑)。
 ここで少し個人的感情を交えるが、俺はこの父親みたいな奴は嫌いだ。夢を追い続けるのに条件を出しただけ理解が皆無という訳ではないのだろうけれど、1位しか認めず、「2位もビリも一緒」という輩が嫌いなのだ(1位しか賞金が出ない大会とかなら分かるが)。
 例を挙げるとプロボクシングの世界チャンピオンに挑んで敗れた挑戦者や、柔道等の格闘試合で準優勝に終わった人間や、横綱になれず大関で引退する力士を鬼の首を取ったようにこき下す輩は是非とも世界ランク2位のボクサーによるストレートパンチか、銀メダリストの一本背負いか、大関のぶちかましを盛大に食らって欲しいものである。

 話を戻すと、場面は替わってとあるスタディアム。そこを歩いていたウヴァがいきなりカザリに一撃を食らわされた。アンク(ロスト)を紹介するのにいきなり攻撃を仕掛ける凶暴性は普段の口調と妙な対象性があってムカつく。
 早い話、2人の目的はウヴァの持つ赤コアメダルで、カザリ1人と互角に戦えるかどうかも怪しいウヴァは2人掛かりで良い様にいたぶられ、メダルを強奪され、触覚電撃でその場を逃れるのが精一杯だった。
 そして、這う這うの体で退却したウヴァはこうなっては使用を躊躇っていたメズールガメルのコアメダルを使うしかないのか?という表情を浮かべるのだった。

 場面は替わってクスクシエ。恒例のイベントは比奈の優勝記念を兼ねたものとなり、店員達のコスプレは比奈デザインのコスチュームだった。さすがに恥ずかしそうな比奈、本人より舞い上がる映司と知世子さん、無関心なアンクと四者四様だったが、過去に兄に喜んで欲しくてデザイナーを目指した比奈はアンクにも興味を持って欲しいみたいなことを云うが、当然自分に関係のない他人の夢にアンクが関心を持つ筈がない。
 そんなこんなを話しているところに1人の男が来店。来客はウルトラ警備隊のカジ参………えっ?しつこい?ごもっとも………最前のコンクールで審査員長を務めた沢口である。
 わざわざ比奈を尋ねて来たのは比奈の才能を見込んで、フランスの自分のアトリエでデザインの勉強をしつつ、一緒に働かないか?という勧誘だった。デザインに関しては全く無知なシルバータイタンでも、デザイナーにとって天に昇る心地になりそうな申し出であることは分かる。だが、いまだ戻らぬ兄の身を案じる比奈は回答の保留を申し出た。

 その頃、Dr.真木はごみ処理場と思しきところを歩き、転がるゴミを「欲望の成れの果て」と吐き捨て、その行き着く所は自分が普段唱えている通り「終末」と独り呟いていた。人と面と向かって話せないくせに饒舌な独り言だ(笑)。
 ともあれ、Dr.真木は杉浦が捨てた準優勝のトロフィーに目を着け、「どんな欲望が…」と呟きながら、セルメダルを投入すると、そこからはユニコーンヤミーが生まれ出た。ふーん、欲望の残骸と云えるものであれば、本人不在でもヤミーは生み出せるのか……。
 かくして生まれたユニコーンヤミーは、長距離ランナーやストリートミュージシャン(つよし・あやの)を襲い、「お前の夢はなんだ?」と『ROOKIES』の川藤幸一みたいなことを聞きながら、犠牲者の頭上に夢(優勝、CDデビュー、全国ツアー)を実体化させると「フン…夢は夜に見ろ!」とその場でそれ等を破壊するという性悪振りを繰り広げた(犠牲者は腑抜けた状態になった)。否定するぐらいなら聞くなや、ユニコーンヤミー!(怒)

 この凶行の場にゴリラカンドロイドを通すまでもなく伊達と後藤が駆け付け、しばらくすると映司も駆け付けた。久々にメダジャリバーを振るうも伊達を誤爆(苦笑)。苦戦するわけでもないが埒も開かず、アンクが青いコアを渡して戦況を変えようとすると突然ウヴァが現れてこれを引っ手繰り、慌てるアンクに屑ヤミー群が襲い掛かった。
 OOO対ウヴァ、バース対ユニコーンヤミーの二つ巴の中、アンクは「取り戻せ!」と命じながら白メダルを渡し、OOOはタカゴリに多段変身し、OOOとバースは優勢に戦った。
 だが今一歩のところで伊達は突然強烈な頭痛に襲われ、ユニコーンヤミーにぶっ飛ばされてOOOと衝突。変身状態も保てず、この間にウヴァには逃げられ、しばらくしてからユニコーンヤミーにも逃げられた。
 バトル後、駆け付けた後藤に大丈夫という伊達だが、普段無駄に陽気な表情とは明らかに異なった。そしてその伊達に大丈夫か?と問われたストリートミュージシャンの2人も抑揚のない声で「大丈夫です……。」と答えたが、夢を叶える道具であるギターを置いて虚ろな目で去るその姿は明らかに異常だった。

 場面は替わって旧真木邸。帰還したカザリはDr.真木に、彼が生んだヤミーを「面白い」とする一方で、ウヴァの変化を気にしていた。先程の戦いをのぞき見していたカザリは、ウヴァがアンクのメダルを奪うという行為を見て、急に他人のメダルに興味を示したことを訝しがっていたが、少し考えて、推測がついたらしく、「そういうことなら乗ってやるか…。」と呟いた。肝心な事を云わないから視聴者的にもこいつはウザい………えっ?そんなキャラもストーリーには必要?分かってまんがな、「乗ってやって」あげとんのやがな(笑)。
 そしてその頃、ウヴァは充分な量のセルメダル、ガメルのコアメダル3枚、メズールのコアメダル4枚を前にして、戦力的にまだ足りず、カザリのコアを奪うべきか、OOOのそれを奪うべきかを考察していた。

 場面は替わって鴻上ファウンデーション会長室。そこでは里中に伴われてやってきた伊達に鴻上会長が1枚のレントゲン写真を提示した。知り合いの青年を撮影したもので、深刻な容体と見る鴻上会長は伊達に医師としての意見を求めた。
 レントゲン写真を一瞥した伊達は、頭の中に弾丸が埋まっていて、生きているのが奇跡な程だという。そして鴻上会長が患者の名を告げようとしたが、それを遮って「伊達明。俺のですね。」とサプライズなことを平然と云ってのけた。頭痛の原因はこれか……。
 どこでこれを?と問う伊達に、鴻上会長に代わって里中が答えるには、Dr.真木が残した資料の中にそれがあったとのことで、銃弾は海外で原住民に撃たれたものであることも鴻上会長は知っていた。なるほど、伊達がメディカルチェックを拒否したり、後継者としての後藤の訓練に甲斐甲斐しかったりしたことがここで繋がった。
 この致命傷を理由にバースをクビになるのか?と伊達は尋ねたが、鴻上会長は「まさか。」と一笑し、伊達の欲望を気に入っているから、好きにすればいいと告げた。如何にも鴻上会長らしい回答だが、じゃあ何で呼び出したの?と云いたくはなる(笑)。

 その頃、比奈は草野球の行われている土手で漫然としていた。そこに映司が現れフランスに行きたいのだろう?と問うた。比奈の回答は意志ではなくて現実という意味でNoだった。勿論兄・泉刑事のあの状態を残していけないとのこと。
 そして比奈と映司は互いが過去に抱いていた夢について語り合った。映司の過去の夢が宇宙飛行士、サッカー選手、ミュージシャンと欲を張ったもの(笑)だったのに対し、比奈の夢は一貫して「服を作ること」だった。回想シーンでは、両親を亡くした家庭環境で進学を諦めかけたときの比奈を泉刑事が励ましていた。学費は自分が何とかするという泉刑事に、自分が今でも兄の迷惑なっていると自虐気味な比奈に泉刑事は、自分が刑事なるという夢が叶った時に比奈が一番喜んでくれたことを持ち出し、今度は自分を喜ばせろと云っていた。なるほど、この様な素晴らしい兄がアンクになっては、それを残してフランスには行けませんなあ(苦笑)
 しかしそれにしても泉刑事とアンクを見事に演じ分ける三浦涼介氏の演技力には恐れ入る…………もし同じ髪形をしていても別人に見えるのでは?と思うほどの演技力だ………。
 ともあれそんな会話を交わす中、留守中の泉刑事は自分に任せてフランスに行くべきという映司に対しても比奈は出来そうにないとしたが、そこへ突然杉浦が、だったら自分に譲ってくれ、と割り込んできた。
 沢口は比奈の才能が気に入ってのスカウトだから、優勝者が辞退したからと云って準優勝者に繰り上がるという単純な話でもないのだろうけれど、惜しい所で夢の断念を迫られ、退学届けまで用意した杉浦にとっては渡りに船に映ったようだ。気持ちはわかるのだが。
 だが「どうしても洋服の仕事がしたいの!小さい頃からの夢なの!」と半狂乱になって懇願する杉浦の背後には、「志村!後ろ!後ろ!」状態でユニコーンヤミーが迫っていた。

 例によって「お前の夢はなんだ?」と迫るユニコーンヤミー。当然映司は比奈と杉浦を庇って立ちはだかり、少し遅れてやって来たアンクから受けたメダルでジャに変身して戦った。ユニコーンとサイの角付き合わせ合戦は若干前者に分があったが、タジャスピナーを駆使することでOOOは優勢に戦いを進めた。
 だがここでウヴァが乱入。どうやら漁夫の利でOOOのコアメダルを奪うのが目的の様だ。大量のセルメダル獲得でそれなりの強さを得たウヴァユニコーンヤミーの2人掛かりでは苦戦は免れぬところだが、ウヴァに共闘する意志はなかった上に、伊達が駆け付けてユニコーンヤミーは自分が引き受けると宣言したので、純粋な一騎打ちとなった。
 だがそれでもウヴァは強く、アンクはコンボで戦うことを命じ、OOOはサゴーゾコンボに多段変身した。サゴーゾコンボにパワーで敵わないと見たウヴァは屑ヤミー群を召喚。数が厄介に見えたが、次の瞬間OOOの複眼は一瞬紫色になり、何かを感じたOOOが地面に拳を突っ込むと、サゴーゾ状態にもかかわらず、プトティラコンボの専用武器メダガブリューがその手に握られた!

 メダガブリューは屑ヤミー群を一掃。バースもユニコーンヤミー戦を優勢に展開したが、ここで多くの視聴者が懸念した様にバースが例の頭痛に襲われ、戦闘不能となった。ユニコーンヤミーは動けないバースを尻目に杉浦を襲おうとして、比奈が怪力を利してこれに抵抗したため、結局は比奈が例の「お前の夢は何だ?」にかかり、頭上に先のコンクールで優勝した衣装が浮かび上がった。
 この比奈の夢の危機に、アンクが泉刑事の体がから飛び出して阻止せんとしたが、衣装は破かれ、ユニコーンヤミーは「夢は夜に見ろ!」で立ち去った……。
 一方、OOO対ウヴァの戦いには何故かカザリが割って入り、しかもOOOに加勢した。恐らくはウヴァのコアメダル獲得を阻止せんとのものだろうけれど、新たな一騎打ちはウヴァが優勢で、カザリはコアメダルを弾き出され、3枚をウヴァに、1枚をアンクに奪われて撤退。カザリアホ過ぎ(笑)。

 何とも慌ただしい展開が繰り広げられたが、それでもまだ終わりではなかった。ユニコーンヤミーに逃げられ、一先ずアンクは泉刑事の体に戻ろうとしたのだったが、アンクは泉刑事の体に戻れず弾かれ、それまでアンク無しでは昏睡状態で、その時間が長ければ生命維持すら危ぶまれた泉刑事がついに比奈の名を口にしたのである!伊達、アンク、比奈、泉刑事と個々に重大局面を抱えたところで以下次週へ!!


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令和三(2021)年五月五日 最終更新