仮面ライダーOOO全話解説

第36話 壊れた夢と身体とグリード復活

監督:田崎竜太
脚本:毛利亘宏
 前回の「3つの出来事」は「1つ、比奈が服飾学校のコンクールで優勝する。2つ、真木が生み出したユニコーンヤミーが人の夢を壊す。そして3つ、アンクが憑りついていた泉信吾が意識を取り戻した。」というものだった。

 慌ただしさは前回から続いていた。意識を取り戻し、比奈の名を口にした泉刑事は再び昏倒。バースはようやく動けるようになってクレーンアームで加勢したため、不利を悟ったウヴァは撤退した。
 かくしてようやくバトルは一段落した。重症の伊達を後藤が、泉刑事を比奈が介抱する中、里中が駆け付けてくれたのは有り難いのだが、不愛想な大声で「乗せて!」だから「相変わらず」が抜けん女だ(苦笑)。
 ともあれ伊達と泉刑事は病院に搬送されることになった。一方、前話で夢を裂かれた比奈は他のユニコーンヤミーによる犠牲者の様に無気力になることもなく、問題なさそうに見えたが、夢の象徴であった、咲かれた衣装を踏んづけて気付かない様子に映司ならずとも違和感を覚えずにはいられなかった……。

 場面は替わって病院。気になる泉刑事の容体は、意識がいつ戻るか分からいものの命にかかわる危機は見られないという。一安心した映司と比奈だったが、おかしいのは比奈の方だった。一先ず家に帰り、兄の着替えを取ってくるというのは良いのだが、その為に学校を辞めると云い、兄がこんな状態なのに服飾を考えていた自分はおかしいと云い出した。
 心底兄の身を案じて、断腸の思いで夢を捨てるのなら「一理ある発言」と捉えられなくもないのだが、余りにもあっけらかんと述べていたからどう見てもユニコーンヤミーによるサイコ攻撃の影響としか思えなかった。そしてそんな比奈に、意識が戻っていない筈の泉刑事が「夢だったじゃないか…比奈…。」と呟いた。
 一方、泉刑事という依り代を失くしたアンクは土砂降りの中、濡れ鼠となり、途方に暮れていたのであった。

 その頃、カザリウヴァは各々の隠れ家で、今後の展開を有利にするために新たな仲間を欲していた。前話で簡単にコアメダルを奪われ、Dr.真木にも「君らしくない。」と云われたカザリは、「らしくない」以上、深い考えがあるように振る舞っていたが、都合のいい強がりか否か不明だ(笑)。一方、ウヴァの方は実行動に写っていた。
 ウヴァの目的はカザリに対抗する手駒として、メズールガメルを復活させるというもの。大量のセルメダルと、カザリから奪い取ったコアメダルとで、五ヶ月振りにメズールウヴァが復活した!復活した両者は消滅してから現在に至るまでの意識・記憶はなかったようで、ガメルはいきなりお菓子を探し出すなど、相変わらずだったが、メズールはそれ以前の記憶からウヴァカザリに対抗するために自分達を甦らせた、と推測したのでその態度は素っ気なかった。
 ウヴァはそれを否定せず、カザリに一泡吹かせ、カザリ・OOOのコアメダルを奪う、と宣言し、手伝え、と要請した。人間的な考えでは、ウヴァの腹に一物があったにせよ、復活出来たことに礼の一言があってもよさそうだが、グリードの価値観ではそうはならないようだ。ま、復活後余り強くなっても困るとしてウヴァメズール達のコアメダルを一部隠し持っているから、メズールウヴァに心を許さないのも分からなくはない。しかし、本当に頭使うようになったよな、ウヴァ……。

 一方、ユニコーンヤミーは更に犠牲者を増やしていた。1人の画家(槙田雄司)が犠牲になったところで映司が駆け付け、アンクと合流してOOO・シャジャーターに変身。プトティラコンボが安直に頼るのは危険とあってか、最近本当に様々な亜種形態を取るものである。戦いはOOOが優勢で、ユニコーンヤミーはすぐにトンズラ。一時的な姿隠しはシャチヘッドの機能が捉えたが、結局は煙幕で逃げられた。馬だけに逃げ足が速い。
 ともあれ、残された画家と、ユニコーンヤミーに破かれた絵、そしてアンクの推測から映司はユニコーンヤミーを、「人の夢を形にしてそれを壊す」というヤミーと推測。比奈の突然の変化にも合点がいったのだった。
 夢を失くしたら人はどうなるのか?と(比奈のこともあるので)更に映司は考察を重ねるが、アンクは無関心に「お前も似た様なモンだろ。」と云い放ち、泉刑事の近況に対しても「そうか…。」と呟いただけで、右腕状態でも不自由はない、と述べて飛び去った。果てさてそれが本心なのかどうか。

 場面は替わって比奈の専門学校。そこで杉浦は比奈の友人、七美・結花から比奈が学校にも来ず、フランス留学も断ったと聞くや、「許せない!」と怒気を孕んでクスクシエに押し掛けた。そしてそこで比奈がクスクシエにも来ていないことを知り、映司と顔を合わせると、ともに泉刑事の入院する病院を訪れた。
 そしてそこで映司は杉浦の境遇を知った。優勝出来なければ服飾の道を諦め、父の会社を手伝う約束になっていた杉浦にとって、強要されるのならともかく、自分から夢を諦めるのは許せない、とのことだった。どうやら彼女も、善悪以前に想いが強過ぎるタイプの様だ。だが、そんな話をしながらいざ病院を訪れると比奈はここにも来ていない。更にそこへ公園でユニコーンヤミーに襲われ、その時点では健康被害のなさそうだった画家が意識不明状態で搬送されてきた。この展開に『魁!男塾』の松尾鯛雄並みに猛烈に嫌な予感がして来た映司と杉浦は泉邸に急行。そこでは比奈が夢の対象である筈の服という服を斬り裂き、「大好きだったものが大好きじゃなくなっちゃった……。」と無表情で呟き、意識を失った……。

 その頃、映司の仲間達は個々に様々な展開を迎えていた。右腕だけのアンクはウヴァメズールガメルに襲われ、コアメダルを奪われんとしたが、自分を取り押さえるガメルにデコピンを食らわして危地脱出(笑)。姿を隠しながら、やはり右腕だけの訳にはいかないと考えていた。
 一方、鴻上生体工学研究所研究室では、後藤が伊達のレントゲン写真を見て、「こんな状態で今まで……。」と呟き、愕然としていた。だが伊達は今までと変わらず1億円を求めるという。後藤はこれにキレた。後藤の怒りはもっともだ。映司に「危なっかしい奴」、「自分が死なないことが第一」と云っておきながら、伊達の態度はまるで他人事だったのだから。
 場面は替わって泉刑事の入院する病院。昏睡する比奈を横に、比奈の容態を話しながら杉浦は夢を失って生きる気力を失くすぐらいなら最初から夢なんか見ない方がいいのでは?と疑問を呈した。それに対して映司は、「急がないことが大事だと思うんだ。大きな夢になればなるほど。叶えるために時間が掛かる。俺もそれで失敗しちゃったしね。」という持論を展開した。
 思わず「映司さんも?」と杉浦に問われ、更に「突っ走って、大失敗して、何もなくなった。だからゆっくり育てていきたいと思う。焦って夢がただの欲望になっても困るし。だからゆっくりじっくり育てていかないと。」と締めた。
 杉浦が映司とこんな会話を交わしたのも、他ならぬ杉浦自身が夢を諦めたくなかったからだろう。彼女は「でも父が…。」と口にしたが、それとて映司に背中を押して欲しかったのだろう。「だって夢を諦めたくないんでしょ?」と問われた杉浦はそれまでになかった穏やかな表情で頷いた。
 そしてそんな会話が終わった時、2人の背後には泉刑事が立っていた。但し、その髪型はアンクが憑りついているときのそれだったが。結局、アンクは泉刑事の体が必要だから出て行かない、と告げたが、些かオモロない結末だった……。前回融合できなかったのは何だったのか……。

 ともあれ、アンクとゴリラカンドロイドはユニコーンヤミーの出現を察知、映司とアンクは病院と立ち、後藤は「伊達さんを死なせません!」と告げて伊達に同行。伊達も「あぁ、頼む。」と返した。

 現場では相変わらず「お前の夢は何だ?」でユニコーンヤミーが人々を襲っていた。そこで生身のまま対峙してしまった映司はユニコーンヤミーの「お前の夢は何だ?」攻撃を食らってしまった!周囲から「無欲」とされる映司から何が現れるのかと怪訝に思っていたが、映司の頭上に現れたのは地球そのもの!否、地球に匹敵する大欲望ということか………いずれにせよ、「無欲」が聞いて呆れる(笑)、映司は「無欲」どころか、常人の升目では測れない程の大欲望の持ち主だったのである!云い方を換えれば、火野映司という男、「究極の理想主義者」と云えようか?とにかくそのデカさに気圧されたユニコーンヤミーが何も出来ず呆然とするしかなかったのはなかなかに痛快な展開だった!

 ともあれ、ユニコーンヤミーが呆然とする隙にWライダーは変身。2人掛かりで優勢に勝負を運んだが、敵方にはウヴァメズールガメルのグリード3体が加勢。さすがに1人で2体を相手とあっては、OOO&バースは不利で、忽ち追い込まれた。
 この状況打開の為にOOOはプトティラコンボの発動を匂わせた。バースは暴走を懸念して止めんとするが、OOOは何故か「多分、大丈夫です!」と云い切り、プトティラコンボに多段変身。しかも今回はコンボ発動後も映司の意識を残して会話が可能だった。
 コンボ発動時の凍結・衝撃波に加え、初めて見る姿にすっかり狼狽えるメズールガメル。そして映司の意識を残しても尚、プトティラコンボの豪勇は変わらず、(バースもドリルアームを駆使して戦っていたが)殆ど1人でグリード3体、ヤミー1体を圧倒した。
 かくして勝負はストレインドゥームを受けてユニコーンヤミーが倒され、グリード達は這う這うの体で逃げ出し、戦闘後もやはりOOOは暴走せずに済んだのだった。

 場面は替わってウヴァの隠れ家。息も絶え絶えに引き上げて来たグリード達の前に、それを揶揄する様にカザリアンク(ロスト)が現れた。右腕以外を完備したアンク(ロスト)の姿にメズールは当然覚えがあったが、アンク(ロスト)の方には記憶がなく、「誰?」と尋ねられたカザリは「敵…かな?」と答えた。
 1人人数が少ないとはいえ、こんな状態で勝ち目がある筈もなく、ウヴァは即座に退避をメズールガメルに促し、2体もこれに応じたが、即行でカザリアンク(ロスト)の攻撃を浴びせられ、3体は逃走も叶わなかった。
 するとここで何とメズールカザリに、味方するからウヴァを倒してそのメダルを分けないか?と仰天提案。カザリはこれに応じた。
 大慌てのウヴァは、カザリが自分達を裏切った事実に言及して、それでも自分を裏切ってカザリに着くのか?と詰問したが、ウヴァ自身以前にメズールガメルを裏切っていたことの報いが返ってきた形となった。
 メズールは「私達、またバラバラになるワケにはいかないの。」とし、メズール大事のガメルも彼女に追随してしまった。一気に味方0体、敵4体になったウヴァは一目散に逃げ出さんとしたが、4体のグリードによる4色のビーム攻撃を受け、その体は木っ端微塵に粉砕された………。メズールガメルは自分のコアメダルを1枚ずつ取り戻して御満悦だが、個人的にカザリの方が嫌いなこともあるから、どうにもこの展開におけるウヴァは哀れだった。

 場面は替わって病院。ユニコーンヤミーが倒されたためか、意識を取り戻した比奈は元に戻っていた。夢の中で兄に叱られたと杉浦に呟いてたが、恐らく夢を捨てようとしことを、だろう。そんな比奈に杉浦は「学校で待っている。」と告げた。彼女も夢を捨てず、父親とも向き合うことを決心したことが分かる。余計な台詞が無くても背景で自然と他の展開がどうなったかも分かるように構成することにかけては、『仮面ライダーOOO』の制作陣は歴代屈指かも知れない。
 ともあれ、目覚めた比奈に映司はアンクに出て行って貰うかどうかを問うた。勿論出ていく気のないアンクは映司に掴みかかろうとしたが、それより早く比奈が「もう少し、お兄ちゃんと一緒にいて。」とした。正解かどうかは分からないが、元の鞘を選んだということだろうか?それともその方が兄の回復が図れると見たからだろうか?ま、結論は次週意向だな。

 場面は戻って、最前のグリード仲間割れ現場。ウヴァが木っ端微塵にされたその現場では、緑のコアメダルが1枚、「このままじゃすまさん…。」と唸っていた。どうやらしぶとく粘ってくれそうだ。ともあれ、旧真木邸では人間体のカザリメズールガメルアンク(ロスト)、Dr.真木が顔を合わせ、カザリが「さあて…これからどうしようか?」としたところで終了したのだった。


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令和三(2021)年五月五日 最終更新