仮面ライダーOOO全話解説
第37話 眠りと1億とバース転職
監督:諸田敏
脚本:小林靖子
冒頭のダイジェストでは、メズール・ガメルの復活、ウヴァの消失、伊達の致命傷、アンクの出戻り、OOOのプトティラ状況等が簡単に振り返られた。
ストーリーは鴻上生体工学研究所の研究室から始まった。そこでは後藤が伊達の頭に埋まった弾丸のレントゲン写真、バースシステムの諸データを見ながら伊達の身を案じていた。そしてその心配が的中したかのように、病院から伊達が来ていないとの連絡が入った。
場面は替わってクスクシエ。服装から中国フェアかと思ったら、香港フェアだった。なるほど、それで挨拶の発音が北京語の「你好(ニーハオ)」じゃなくて、広東語の「你好(ネイホウ)」なのか……。まあ比奈に一世を風靡した格闘ゲーム『ストリートミュージシャンU』の春麗みたいなコスプレをさせていたのは少しやり過ぎな気がする。ああいう格好は知世子さんにだなぁ……(以下同文)。
店内では例によって比奈がアンクにアイス以外の食べ物を勧めていたのだが、アンクは何故前回の最後で比奈が兄ともう少し一緒にいて欲しいと云ったのかを訝しがりながらも、思うところがあったのか、いつになく素直に出されたものを食した。
一方、後藤がその行方を心配していた伊達はここにいた。カンフーポテトを食する伊達だったが、そこに後藤が来店。勿論食事ではなく伊達を探してのことで、新聞紙を広げるも即行でバレ、病院に行っていないことを咎められた。
映司にどこか悪いのかと問われても「虫歯」と誤魔化し、後藤にも明日こそは行きつけの病院に行くとする伊達はいつも通り飄々としており、これに不安を覚える後藤は自分もついて行くとした。
だが、彼等の前で飄々としていた伊達だったが、いないところでは耐え難い頭痛に、足元をふらつかせ、眼の焦点も合わないほど蝕まれていた…………。
場面は替わって旧真木邸。そこでは4体のグリードが思い思いに寛いでいたが、そこにDr.真木が現れ、メズールとガメルを仲間に加えることを賛同した理由として、勢力の統一を挙げながら、分散したコアメダルを集める為の大同団結を訴えようとした。
だが、メズールはそれを途中で遮り、自分達がカザリの様な裏切り者についたのはDr.真木が云わんとしたメダルの為であることを先刻承知していればこそと告げ、その為のグリードも既に生み出している、と述べた。
それを受け、自分の意見に賛成なのだな、と確認するDr.真木に肯定しながら、「これからよろしく、紫の坊や。」と云いながらその頬を指でなぞるメズール。現役女子中学生にそういう演技をさせるのはどうもなあ…………どうせなら知世子さんに……(以下同文)。
そんなやり取りに軽く嫉妬心を見せる、グリードの癖にどこか素直なガメル。一方、そんな呼び方するなとばかりに、「私のことは「ダクタァ」と呼ぶように。」とするDr.真木。なかなかに英語の発音が上手いじゃないか、と思う間もなく、メズールは「分かったわ。ドクターの坊や。」とほざく。こりゃ、グリードでない(現時点でなり切っていない)Dr.真木を仲間と認めてはいないな(苦笑)。
そしてその頃、メズールが既に用意したと云うところのヤミーである、ウニアルマジロヤミーが密かに暗躍を開始していた。口調や仕草が子供っぽく、聡明さを感じさせないヤミーだが、ビルの屋上から四方八方に発射されたウニ棘は軽い痛みを少し感じさせただけで、特に意識されることもなく多くの人々の体に潜り込み、その中には知世子さんもいたのだった……。
そしてその棘は、夜になると犠牲者達を不眠症に陥れていた。それも、眠気は物凄く感じるのに眠れない、というある意味、物凄い地獄を味わわせる恐ろしいものだった。
勿論知世子さんも例外ではなく、一睡もできなかった知世子さんは翌朝クスクシエで映司と比奈に即行で店を休みにして病院に行くよう云われるほどの疲労感を露呈していた。
病院に行くと待合室はウニアルマジロヤミーに棘の被害者で溢れ枯り、彼等は異口同音に眠気と、それでも眠れない苦しさを訴えていた。
一方、その病院は第32話で登場した伊達の医師仲間・藤田医師がいて、伊達の健康診断を進めていた。
伊達には診察の必要すらないんじゃないかと云わんばかりにざっくばらんな対応をする藤田医師だが、伊達に連れて来られた後藤を伊達に信頼されている人物と見て、詳細説明を行った。
早い話、伊達の脳に埋まった弾丸は「抜く」か「抜かない」で、このまま置いておくのも、そんな状態で激しい動きをするのも脳を大きく傷つけかねない危険が孕むのだが、取り出すにしても「非常にリスクが高い手術」が必要で、「手を出せる外科医はまずいない」というのが藤田医師の説明だった。
勿論、伊達が自分の現状を分かっていてあんな感じに振る舞っていることをも知りつつ、伊達の性格を知るゆえに「やりたいようにやらせて」いるのだという。
なかなか希望の見えない現状に項垂れた後藤は次に「1億円」という言葉に心当たりがないかを尋ねた。伊達がいつもはぐらかす、1億円を求める理由の一端でも藤田医師が知りはしないかを後藤は探らんとした。
やがてアンクと伊達がウニアルマジロヤミーの出現を察知。この間、伊達の身にアフリカであったことが藤田医師から後藤に語られていたのだが、別シーンに隠れて後のお楽しみ。嫌だね、こういうえげつない引きは………。
ともあれ、いつもの4人はウニアルマジロヤミーを追って病院を飛び出した。
まずは映司・アンクペアが先に到着し、オーソドックスに戦いを仕掛けた。変身中に棘を飛ばすという卑怯戦法がいきなり通じず、どこかガメルっぽい喋りとアクションを取るウニアルマジロヤミー。ともあれ、アンクが「メズールとガメルのヤミーか。」と推測した様に、カザリ・Dr.真木に合流したことで、メズールとガメルも合成型ヤミーを生み出せるようになったことが分かる。
いずれにせよ、歴代ライダー怪人の例に漏れず、アルマジロ型怪人でもあるウニアルマジロヤミーのボディは固かった。アンクに云わせるとガメル系のヤミーは頑丈さが取り柄とのことなので尚更だろう。それゆえアンクはメズールの特徴を示す部位を攻撃せよ、と助言。当然、ウニの部分を攻めることになるのだが、棘々ボディを殴って痛みに悲鳴を上げるOOO…………あのなぁ……見て分からんか?ある意味、ハリフグアパッチにボディアタックを敢行したV3並みの間抜けな戦闘だ……。
そこへ伊達が到着してバースに変身せんとしたが、これは後藤が止め、両者が変身する、させないでもめたため加勢は期待出来ず。OOOはメズールとガメルのヤミーが光に弱かったことを思い出してライオンのメダルを要求したのは良いのだが、現在アンクの手元にそれはなく、次善の策としてアンクはクジャクのメダルを渡した。
アンクの、「持ちメダルぐらい把握しておけ!」は当然の台詞で、どうも今回のOOOはアクションと云い、思考と云い、戦術と云い、丸で冴えてなかった。結局、タジャバに変身してのタジャスピナーからの火炎弾は有効ではあったが、ウニアルマジロヤミーには逃げられてしまった……。
戦いが一段落したところで、映司とアンクは伊達と後藤が険悪な状態にあることに気付いた。結局後藤の妨害で伊達は変身出来ず、そのことで後藤に怒りを露わにしていた。藤田医師から自分のことを聞いているなら、自分が分かっていてこれまでの行動を取っていたことは分かっている筈だ、とがなり立てる伊達。だが、何としても伊達を死なせないと考える後藤は絶対に変身を止めると云って譲らない。
呆れたことに、伊達は後藤が最前云っていた、「死なせない」の真意をこの時まで理解していなかった。結局、「1億には程遠い」と見る伊達は、後藤の考えが自分を止めることにあるならコンビ解消と告げて立ち去った。その直後、映司は伊達の体についてようやく後藤からすべてを聞かされた。
場面は替わってとあるオフィス街。伊達はベンチに腰掛け、水を飲んでいるだけで激しい頭痛に襲われていた。するとそんな伊達の前に現れたのはなんとDr.真木。要件は買収だった。グリードの勢力拡充に協力するなら、前金で5千万、成功報酬で5千万の1億円を出すという。
いくら金の為とはいえ、伊達が人格的にDr.真木につくとは思えないところだが、Dr.真木は「のんびり貯めている時間はない。」という伊達の急所を突いて来た。
その頃、後藤と映司との伊達に関する話は続いていた。伊達が必死になる1億円の使い道は明確ではないが、藤田医師とともに海外で医療支援に従事していた頃、伊達は情勢変化により幾度となく撤収を余儀なくされ、その都度自分がいなくなることでゼロ状態に戻ってしまう医療支援に空しさを感じていた。自分がいなくなった後も現地の人達の手で医療が続くようでないと意味がない………伊達は藤田医師の前でそう呟いていたのを、後藤は藤田医師から聞いた。
それを聞いた映司は、自分自身貧しい国に学校を建てる活動に参加したことがあったこともあって、医療関係の学校を作るための1億円ではないか?と推測した。勿論想像の域を出ないのだが、「自分が居なくなってもずっと残る…それって凄い事ですよね。」という映司の台詞は頷ける。
ただ、目的がどうあれ、そこに自分の命を顧みない伊達には頷けない。映司を諭した際の台詞にも反しているので。
場面は替わって旧真木邸。そこではメズールとガメルが合成ヤミーを生み出した過程を口にし、「やってみたら簡単だった。」とし、Dr.真木は彼女等の試みを良き決断とした(アンクに云わせると「数だけで練れていない。」というものだったが)。そしてDr.真木は自分達の陣営にまた1人加わったことを紹介した。伊達であることは足だけでも分かり過ぎるほど分かるが、果たして伊達の真意や如何に?
場面は替わってあるビルの屋上。そこではウニアルマジロヤミーが犠牲者達の状態を頃合い、と見て何らかの力を発動させた。その途端、それまで幾ら眠くても眠れなかった人たちが高鼾をかいて眠り出し、彼等の睡眠欲が満たされることでのウニアルマジロヤミー体内にはセルメダルが山積みとなり、ウニアルマジロヤミーは快感にのたうち回った。
だがこの「頃合い」はアンクも待っていて、この状態に達したウニアルマジロヤミーを「大物」とした。また紫メダルの影響か、映司も瞳を紫にするとウニアルマジロヤミーの活動開始を察知した。
現場に駆け付けたOOOは通常のタトバコンボにメダガブリューを手に戦ったが、ウニアルマジロヤミーは相変わらずの硬さで、そのままではパワー不足だった。
後藤の援護射撃が多少なりともウニアルマジロヤミーをたじろがせているのを見たOOOは、純粋に力の問題と見て、アンクからウナギメダルを受け取ると、タカウバに多段変身した。
多段変身したOOOは電気ウナギの電力を注入し、バッタレッグの跳躍力で破壊力を増したメダガブリューでの脳天唐竹割りでウニアルマジロヤミーを粉砕した!アンクの読みも的中で、ウニアルマジロヤミーが粉砕された後には大量のセルメダルが残され、珍しくアンクもOOOを「よくやった。」と素直に褒め、回収に掛かろうとした。だが、次の瞬間、CLAWsサソリが横入りし、セルメダルを横取りしてしまった!
セルメダルは背後にいたカザリ、メズール、ガメル達に浴びせられ、ガメル・メズールは膨大な量のセルメダルの効能を堪能していた。つまるところ、Dr.真木によるグリード強化計画の一環で、これに協力したのは伊達だった。
これまで共闘した後藤、OOO、アンクの前にグリード側として立ち、あっけらかんと「こっちに就職したからよろしく!」といつもの口調で述べる伊達。勿論映司達は驚愕する他なかった。そんな彼等の前で伊達はバースに変身し、バースバスターの銃口を向けたところで以下次週へ。単純にストーリーを見れば、意外極まりない裏切り劇だが、熱き男伊達明が金でDr.真木の味方に変節したとしたら、オモロないことこの上ないので、却って「裏切った。」とは思えないな(苦笑)。
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令和三(2021)年五月五日 最終更新