仮面ライダーOOO全話解説
第39話 悪夢と監視カメラとアンクの逆襲
監督:石田秀範
脚本:小林靖子
冒頭のダイジェストは、伊達から後藤へのバース交代と、Dr.真木とグリード提携による敵方の勢力拡大が触れられていた。
そしてストーリーはクスクシエから始まった。ヤミーの気配を感じ、映司を起こそうとするが無反応。業を煮やして布団を引っぺがすと、そこにいたのは口から血を流し、赤い羽毛に覆われた泉刑事……。そして狼狽えるアンクの背後から紫の眼をした映司が現れ、メダル全部もらう上に、アンク(ロスト)と組むという。突如現れたアンク(ロスト)に吸収される危機が迫り…………と、まあ多くの人がここまでに気付くように、これはアンクの見ていた夢だった。
悪夢から目覚めたアンクは尋常じゃないほど狼狽えていた。どうやらアンクは睡眠中に夢を見る生き物ではないらしい。映司に気付くと彼が普段と変わらないことを確かめ、紫のメダルが異常を起こさないように絶対に抑え込め、と告げた。普段を夢を見ないだけに、何の根拠もなしにあのような夢を見る筈がないという不安だろうか?
それからほどなく、クスクシエに1人の男がやって来た。夢見町町内会長の名刺を提示する、やたらエコーのかかる喋り方をする男の名は下田構造(春海四方)。
『ペナントレースやまだたいちの奇跡』のキャラクターだったスポーツ解説者・下山田権蔵とは関係……………ないよな(苦笑)。
結論から言えば下田町会長の来店目的は映司とアンクの退去要請だった。町の安全の為にかなりの数の防犯カメラを設置した結果、昼夜問わず窓から出入りするアンクと、以前公園で寝泊まりして浮浪者同然だった映司が町を健全にそぐわない不審人物としてとらえらたとのことだった。勿論いきなりそんなこと言われても従える訳がない。
やたら終始腰が低く、申し訳なさそうに喋り、近隣住民にも治安第一な声掛けをするこの町内会長、悪い人間ではないのだろうけれど、少なくとも町内会長ごときに住人の退去を命ずる権限などない(治安を乱す証拠を基に裁判所からの処分滅入れでも出されれば別だが)。
そしてその様子を、体を取り戻すために見つめていたのがアンク(ロスト)だった。果たしてアンクの夢は正夢になるのか?
程なく、知世子さんが帰還。普段誰にでもフレンドリーな彼女だが、今回のこれ見よがしな防犯カメラ増設によるプライバシー侵害男、映司・アンクの退去要請には怒りを露わにした。もっとも、アンクはそんな要請無視するのみと思っているのか、「出て行かなければいい。」とした。そのアンクの言葉に賛成した知世子さんだったが、次の瞬間知世子さんは誕生日の祝辞を述べた。
身に覚えのないアンクだったが、これはチョットした誤解だった。その日は泉刑事の誕生日で、兄への誕生日プレゼントを選んでいた比奈を知世子さんが見かけ、成り行きからアンクの誕生日と知世子さんが思い込んだものだった。
店を休んででもお祝いをするべきと舞い上がったり、町会長に断固抗議すると気勢を挙げたり、感情的に忙しい知世子さんだったが、比奈から背景を聞いた映司は、アンクを代理とした誕生パーティもいいんじゃないか、とした。
そしてその頃、鴻上ファウンデーション会長室では別の誕生日が祝われていた。誰かの誕生日を半ば強引に祝うのが趣味と化している鴻上会長が、二代目仮面ライダーバース誕生を祝わない筈が無かった(笑)。
そしてピアノを弾きながら例のだみ声で歌いながら、伊達に替わる活躍を期待する鴻上会長と、正式な許可を貰えたことを律儀に感謝する後藤だったが、1つ問題が残っていた。
後藤が経験した様に、バースにはサポートしてくれるパートナーがいた方がいいというのが鴻上会長の意見だった。伊達とコンビを組んでいた経験からも、後藤もパートナーがいた方がいいと思いつつも、そう簡単になり手など探せないと思っていた。だが既に鴻上会長は新パートナーを用意していた。目くばせした先を追うとそこにいたのは何と里中……………「よろしく。」と言いながら握手の求めるも、表情はいつもの不愛想…………後藤嫌だったろうなぁ………鴻上会長の秘書が務まっている以上、有能な女ではあるのだが、パートナーにしたい女じゃないよなあ……そもそもパートナーシップという言葉を知っているかどうかが怪しい。
場面は戻ってクスクシエ。そこでは映司が泉刑事の代理として誕生パーティーに参加してほしい旨をアンクに伝えていた。もう書くまでもないと思うが、そんな愛想に応じる生き物ではない、アンクは。
映司は以前、泉刑事がアンク無しでも大丈夫となったときに比奈が一緒にいて欲しいと言ったことを持ち出して、比奈の為にも応じて欲しいとしたが、アンクは泉刑事の体を使うも、捨てるも自分が決めることで、音を着せるな、と聞く耳を持たなかった。
そんな2人の会話を戸口の外で聞いていた比奈は、映司にあの時自分がアンクに出て行って欲しいと答えていたらどうしたか?を問うた。勿論いきなりそんなことを聞かれても答えられる訳がない。しかもこの映司と比奈の会話はアンクに聞こえていた。
声を潜めて話す、ということを知らんのかこの兄妹………。
場面は替わって下田邸。そこでは知世子さんがプライバシー侵害や退去要請の不当性を訴えていたが、インターホン越しに町内会長の妻・下田智子(つみきみほ)が二言目には「主人のしたこと」として抗議を聞き入れず、「主人は留守」、「いつ戻るか分からない」の一点張りで知世子さんを門前払いされてした。
ちなみに町内会長の不在は大嘘で、彼の人前での腰の低さもまた虚偽の姿だった。いくつもの防犯カメラ画面を見ながら、下田は知世子さんを「反抗的」とメモり、他にも些細なルール違反をする町民達を重箱の隅つつきでリストアップしていた。
するとほどなくしてから、下田がリストアップした人達が次々と白ヤミーに襲われ出した。つまり、この町内会長がヤミーの親な訳ね……。
そして白ヤミー出現を察知した映司とアンク。2人は橋の上から粗大ごみを不法投棄していた若者を襲っていた白ヤミーと対峙した。白ヤミーはやがて軍鶏ヤミーに成長。軍鶏を闘鶏に用いているタイと関連してか、そのファイトスタイルはムエタイだった。
それにしてもオウムヤミーやフクロウヤミーを「ニワトリ」と呼んで後藤に突っ込まれていた伊達が去ってからニワトリのヤミーが登場したとは皮肉だ(笑)。
ただ、立ち技最強と言われるムエタイを駆使するとあってか、無駄なアクションが多い割に軍鶏ヤミーは肉弾戦に強かった。おまけに奇妙な赤帯をどんどん放出してはOOOの動きを封じたため、OOOはシャチ・ゴリラ・チーターのシャゴリーターに多段変身。チーターの俊足で帯攻撃をかわし、シャチの放水で相手の鶏冠からの火炎を防いだのは良い選択だったが、ゴリラパンチを食らわせてぶっ飛ばしたところを逃げられてしまった。
この間、旧真木邸ではアンク(ロスト)とチェスを囲うカザリが、アンク(ロスト)の知能的な急成長を指摘し、それに対してDr.真木とメズールがもう1人のアンクを確実に取り込むであろうことや、800年前とは異なるアンクが誕生するであろうことを推測していた。
もっとも、800年前にアンクに敵対されたメズール・ガメルにアンク(ロスト)に対する好意はなく、逆にメズールに好意を寄せらていると(カザリに)指摘されたDr.真木は即座に「迷惑です。」と言い切り、プレイ中のチェスに介入するわ(Dr.真木&メズール)、盤をひっくり返すわ(ガメル)、1人自分を取り戻すことを呟くばかりだわ(アンク(ロスト))で、コイツ等の行く末が仲間割れである伏線は充分だった(笑)。
場面は替わって鴻上ファウンデーション会長室。心ならずも里中をニューパートナーに迎える羽目になった後藤は、里中にチームワークを説くも、明らかに里中は真面目に聞いていなかった。チームワークに対しては「もうチームじゃないですか。」と言って、会長秘書(里中)と会長秘書補佐(里中)という肩書を持ち出して上司風を吹かせるし、しかも休憩時間中を理由にゴリラカンドロイドのスイッチを切っている始末(←それゆえOOOが軍鶏ヤミーと戦っていることをこの急造コンビは全然察知していなかった)。
非難する後藤に「チームワーク」を持ち出してどこ吹く風の里中。後藤と視聴者が「ダメだこりゃ」と思ったのは想像に難くない(苦笑)。有能でも正確に何のあるやつとは組みたくない好例だ。否、無能で素直な方がまだ使い勝手はいいかも知れない……。
逃げた軍鶏ヤミーを追跡する映司とアンクは、鳥系ヤミーの特徴である「巣」を求めて街中を探索していた。そんな街中では軍鶏ヤミーになる前の白ヤミーに襲われた人々が呻いたいた。
それを見た映司は紫メダルの能力を発動させようとしたが、これをアンクが止めた。1度上手くいったからと言って無警戒に乱用するなというのである(←正論である)。言われた映司はアンクこそ鳥系ヤミーがいることから、「もう1人のアンク」による襲撃を警戒しろと言い返した(←正論だが、意固地でもある(笑))。
ちなみにアンクは「もう1人のアンク」に対して、「「俺の偽物」と言え。」と吐き捨てた(←気持ちは分かるが意固地である(笑))。
そんな映司とアンクの名コンビ(迷コンビ?)振りは町会長によって監視されていたのだが、突然、その画面が次々と暗転し始めた。それは知世子さん&比奈の仕業で、実力行使に出た知世子さんは防犯カメラに次々布を被せ、機能停止に追い込んだ。
こんなことしていいのか?と心配する比奈に知世子さんが言ったのは、「こういうのは話し合ってから付けなきゃ。それまでは保留。」とのことだった。
少し話は逸れるが、この知世子さんの行為は実に理に叶っていた。防犯カメラの増設は、プライバシー侵害という側面を持つが、防犯や指名手配犯の動きを追う意味では実に有効な手段である(もっとも、このことが顕著になったのは『仮面ライダーOOO』放映から2、3年してからだったが)。町会長の独断専横が咎められるべきものだとしても、改めて町内会でこの処置が賛同される可能性は決して低くない。また否決されたとしてもカメラは町内会の「財産」である。転売するなどして予算を取り戻す為にも、知世子さんの取った、壊さずに布で遮断して「無効」の意を示すのは実に理に叶ったやり方だった。
話を戻すが、勿論これを察知した町会長は鶏冠……もとい、頭に来た。当然報復に軍鶏ヤミーが放たれた。知世子さん&比奈を襲撃した軍鶏ヤミーだが、映司&アンクが駆け付けるまで、その展開は実にコミカルだった。
逃げる比奈が担ぐ梯子を抑え逃がさんとしたのは良いが、例の怪力に翻弄され、投げ付けられた梯子の下敷きになって呻いていたのだから、強いのか弱いのか分からん奴だ(笑)。ともあれ、程なく映司達が駆け付け、映司は女性2人に逃げる様に促し、自らはOOOに変身して軍鶏ヤミーに向かった。その際、知世子さんのヘルメットを抑えて、変身を彼女に見られないように尽力していた比奈が笑えた(笑)。
かくして第2ラウンドが始まった。タカトラーターで赤帯攻撃をかわしていたOOOだったが、いつまでも同じような訳にはいかない様で、しばらくすると簀巻きにされた。そこへタイミングよく後藤が駆け付けた。ちなみにニューパートナー君はゴリラカンドロイドの通報を受けてから戦闘用の着替えを始める始末で、業を煮やした後藤が1人で駆け付けたのだった(苦笑)。ヤミー出現を知ってから着替え始めるなんて、怪獣出現を知ってからウルトラアイやベータカプセルが無いのに気付いて狼狽える時のウルトラ兄弟より質が悪い(嘆息)。
ともあれ、後藤はバースに変身。カッターウィングによる遠隔攻撃(ついでにOOOを拘束していた赤帯を切断)とドリルアームによる接近攻撃を駆使。格闘では伊達版バースの方が強そうだったが、装備運用においては後藤版バースの方が優れているようだった。ただ相変わらず軍鶏ヤミーは格闘に強く、バースとしての戦いに慣れていない悲しさか、バースバスターに充填していたセルメダルが付き、補充せんとしたところに隙が出来、OOOともども簀巻きにされてしまった。
このピンチにOOOは紫メダルを召喚してプトティラコンボを発動して拘束を破った(幸い暴走は免れた)。またバースの拘束を破ったのは遅参した里中だったのだが…………貴重な時間を浪費して整えた衣装は何ともメルヘンチックなコスプレ……吹くしかなかったが、動けば有能で、里中はセルメダルが充填されたカートリッジを後藤に渡し、自身もバースバスターを掃射して軍鶏ヤミーの足止めに貢献した(里中が発したのは威嚇用でもあった)。
堪らず軍鶏ヤミーは赤帯をドーム型にした防御態勢を張った。このドームはプトティラのストレインドゥームで粉砕されたが、軍鶏ヤミーは上手く逃げてしまっていた。
勿論、この一部始終も下田家で監視されており、忌々しそうに顔を歪める町会長だったが、実はそれ以上に妻の智子の方が怒りを示していた。それまで物静かだった智子だたが、実際には権造を恐怖で支配下に置いており、町会長は情けないぐらいにへこへこしていた。「人を支配するって本当に気持ちがいいわ。」と宣い、和室の床には支配への願望を墨書した半紙だらけ。早い話、ヤミーの親は妻の方だったのね。
ラストシーン。映司は倒れる泉刑事の下に駆け寄った。泉刑事は戦闘中アンクが離れた際に軍鶏ヤミーの攻撃の巻き添えを食っており、映司はアンクと一緒だとこのような危険が付きまとうことを今更ながらに感じていた。そしてそこに思うところあってか、泉刑事の体に戻ろうとしたアンクを制する映司。何か様子を見ようとしているようだが、果たしてその真意は?というところで以下次週へ。
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平成二七(2015)年一一月二二日 最終更新