仮面ライダーOOO全話解説

第40話 支配と誕生会と消えるアンク

監督:石田秀範
脚本:小林靖子
 前回の「3つの出来事」は「1つ、アンクを取り込もうと動き出すもう1人のアンク。2つ、クスクシエのある町が監視カメラで支配された。そして3つ、戦いの中、アンクが利用している刑事・泉信吾が負傷してしまった。」というものだった。

 前回あれほど引くだけ引いておきながら、結局後藤後里中の助言もあって、アンクは泉刑事の中に戻った(苦笑)。だがこの間も軍鶏ヤミーの魔の手は夢見町を襲っていた。軍鶏ヤミーから発せられた羽毛は町内の警察官や達に突き刺さり、その支配を受けた彼等は町民に対して高圧的に「車は一家に1台まで」、「外出は8時まで」、「路上での私語は禁止する」等、ナチス統治下におけるイスラエル人に対するゲシュタポもかくやという弾圧を加えていた。勿論戦前ならいざ知らず、この現代でいきなり無茶な要求を示す警察官に市民も簡単に従う筈がなく、街中は小競り合いで溢れ返ったのだが、警官達に刺さった羽根を見たアンクは、彼等がヤミーに操られており、ヤミーの欲は「支配欲」と断じた(それを視聴者に示すかのように、下田邸では智子が権造を下僕の様にしてマッサージさせていた)。

 その頃、旧真木邸では、ヤミーを生みながら自らが動かないアンク(ロスト)に対してカザリが疑問を呈していた。アンク(ロスト)に言わせると、もう1人の自分にはOOOがついているからヤミーを派して隙を伺っているとのこと。
 そんなアンク(ロスト)を「アンクに似て来た。」と指摘するカザリに、アンク(ロスト)は「もう1人の自分だ(だから似て当然)。」と言い、それを証明するかのようにチェスの駒を乱暴に振り払った。どっちにしても傍迷惑な奴(等)だ(苦笑)。

 OPが終わり、映司と負傷したアンクはクスクシエに帰還した。アンクの手当てをしながら、泉刑事の肉体を負傷させたことを詫び、今後も同様の危険が付きまとうことを説明する映司に、比奈は自分の選択だから気にしないで、とした。ただ、アンクに兄の体に留まることを求めた気持ちは変わっていないが、何故そう言う選択をしたのかは彼女自身はっきりしていなかった。それゆえ彼女は第36話で映司に、もしアンク追放を願っていたらどうしたかを病床で尋ねたのだった。
 それに対してその時ははぐらかした映司だったが、この時ははっきりアンク追放に動いていたと断言した。この間、泉刑事の肉体に留まることに執着するアンクは度々余計なことを言うなとばかりに噛み付いていたが、それでも負傷の度合いがひどいのか、いつもよりは頻度が落ち、比奈の意に沿うと明言する映司に対し、自分の味方でないと感じてうな伊達リるようでもあった。

 その頃、町会長は妻の命じるまま、町民に行動規範を時間で定め、町への奉仕を強要する規約(違反者は町追放)を配布し、高札まで(笑)立てており、支配欲に酔う町会長夫人は町会長=裏で糸引く自分の支配が形にあることに悦に入っていた。
 そして軍鶏ヤミーの気配を感じた映司達がクスクシエを出ようとするとそこに警察官や警備員達がたちはだかり、映司とアンクをこの町から強制排除すると宣言し、拒絶すればクスクシエも連帯責任で営業停止処分という無茶を要求した。
 勿論、「何の権利あって…。」という知世子さんの抗議すらも不服従と見做して強制執行しようとする警官を宥め、映司はその場しのぎに、自分達は出て行くから店は関係ない、としてアンクとともに出動した。だが意外に収まらなかったのは知世子さん。引き上げようとした警察官に抗議し、その行為を掴んで強制執行を蒸し返そうとした警察官に知世子さんが発動したのはなんと暴力的抵抗!! 余り詳しいアクションは描写されなかったが、比奈が目を見張るほどの豪勇振りだった。マスカーワールドの女性が格闘に強いのは大いに歓迎すべきところだが、強さの出所ははっきりしてね(笑)。

 一方、映司とアンクは下田邸にヤミーの親がいるのを突き止め、邸内から軍鶏ヤミーの赤帯が襲い掛かって来るのでOOOに変身し、アンクともども突入したが、そこには操られた警官・警備員が待ち構えていた。程なく後藤も駆け付け(ちなみに里中は「支度」が間に合わなかった)、アンクは警備員の背後で申し訳なさそうにする下田権造がヤミーの親でないことを看破し、中にいるヤミーの親めがけて突入するよう促したが、アンクはともかくOOOと後藤が操られているだけの人間を攻撃できないのは明らか。
 3人は一先ず引き、クジャクカンドロイドとバッタカンドロイドを組み合わせた偵察装置の様なもので中を探ることにした。いずれにしても下田邸で戦っては操られているだけの人々を巻き込む。映司は、鳥系ヤミーならいずれ餌となる欲望を求めて邸宅を出る筈だから、それを狙うべきと進言。それにヒントを得た後藤は大量のカンドロイドを召喚して軍鶏ヤミーを見張るよう命じると一先ず鴻上ファウンデーションに引き返した。
 もっとも、映司達は状況を解決するまでクスクシエには戻れない。

 何かをする当てもなく、河原をぶらぶらする映司とアンク。初めて2人が出逢った頃を思い出し、「お前もすぐに乱暴な事しようとするから…止めるのも大変だったよ。」と述べる映司に、「今じゃ俺を追い出せる気でいるとは、偉くなったなぁ。」と皮肉った。
 それに対して映司は今なら出来ると呟き、それを証明する様に瞳を紫にした。それを見たアンクは800年前のOOOとなった王の例を挙げながら、過信を戒めた。なるほど、実体験から出た教えは説得力がある。
 比奈が追い出しを望んだ際にそれが可能と思っているのか?と問うアンクに映司は「そう言わないで欲しいって思った。今は…まだね。」と答えた。特にアンク(ロスト)が油断ならない今は何かとアンク=泉刑事が心配なのである。
 だが、これを見下しと思い込んだものか、タイミング悪く2人の為に弁当を持ってきてくれた比奈の首を掴み、「自惚れんな映司。お前も比奈も俺はいつでも潰せる。最初の頃と同じだ!」と凄んだ。どうもグリードとして人間より優位な立場を保つことに必死な様だ。
 だが、比奈は不思議と抵抗しないし、アンクもそれ以上の力を籠められなかった。
 そんなアンクに映司は、「違うと思うけど。何、焦ってんだよ。」と諭すや、アンクは不貞腐れるように比奈の首を離した。どうやら3者の間には行動を共にした者同士にしか芽生えない、理屈や倫理を越えた情が芽生えているようだ、お互いに。
 そしてそこに知世子さんが現れ、クスクシエが営業停止になったから、この場で誕生パーティーを行おう、と朗らかに(笑)宣言した。

 かくしてささやかながらも野外誕生パーティーが始まった。知世子さんのギター演奏、バースデーケーキ、祝福を踊りで示す比奈と映司にアンクは無表情。その間、比奈の心境を語るナレーションが流れた。
 「あの時私が思ったのは、お兄ちゃんが戦いに協力したいんじゃないかな?とか、意識のないお兄ちゃんをずっと見てるのが辛いって勝手なこととか。でもたぶん大きな理由はなくて…ただ一緒に居た時間が積み重なっちゃったのかな?嫌いとか好きとかより前に、一緒にいる時間が…。」
 そして終始無表情だったアンクも時折、ケーキの蝋燭を吹き消したり、頭から落ちたトンガリ帽を被り直したりしていた。いずれの以前のアンクなら考えられないことで、やはり理屈を超えた情は芽生えていたようだ。そして夜が明けると映司、比奈、アンクは同じ姿勢で河原に立っていた……。

 場面は替わって下田邸。結局一晩待っても軍鶏ヤミーは動かなかった。しかしその間、下田邸の塀の上で何台ものカンドロイドが監視しているのに誰も気に掛けないのが凄かった(笑)。監視カメラを見過ぎて、監視装置に鈍感になったのかな?
 ともあれ、なかなか下田邸から出てこない軍鶏ヤミーに映司も後藤も業を煮やしかけていたが、突如映司は町中に取り付けられた監視カメラこそが「餌」であることを看破し、軍鶏ヤミーを誘き出す為にカンドロイド達に監視カメラ前で挑発行動に出させた。
 そしてその映像にブチ切れた智子は権造に折檻を加え、狙い過たず軍鶏ヤミーが邸外に飛び出した。勿論その気配はWライダーの知るところとなり、映司、アンク、そして会長室に「すぐ出撃出来れば、俺のギャラから5%払う、頼む 後藤」という里中への置手紙(笑)を残した後藤が駆け付けた。後藤、本当に精神的に成長し、それに伴ってクレバーになったな……(里中は5%では足りないような面していたが……)。

 慌てて飛び出した軍鶏ヤミーだったが、カンドロイド達の妨害に遭い、すぐにOOO&バースにも攻められることとなった。例によって赤帯を発する軍鶏ヤミーだったが同じ手が何度も通用するほどOOOもバースも馬鹿じゃない。OOOはメダジャリバーで、バースはバースバスターで赤帯攻撃を防ぎ、OOOが斬り付けては離れ、離れてはバースが銃撃を加えるというヒット&アウェイの連携が功を奏した。
 だが途中のメダル切れが戦況を不利にした。この辺りは学習能力の高い後藤も今少しの修業が必要の様だ。だがそこへ5%に釣られた里中(笑)が駆け付け、カートリッジを投げ寄越した。5%ではその程度の協力だという、里中の人を馬鹿にしたとしか思えない行為にもバースは「上等だ!」と言い放った。いい意味で伊達に似たな(笑)。
 かくしてバースと里中の援護射撃が軍鶏ヤミーを赤帯シェルターに追い込み、ラトラーターコンボに多段変身したOOOはライオンヘッドから放つフラッシュで軍鶏ヤミーを追い出し、ウルヴァリンXスラッシュでこれを焼き尽くした。

 軍鶏ヤミーの死で夢見町は元通りとなった。初めから嫁が旦那を尻の下に敷いていた下田家を除いて(笑)。変わりのない下田家を案じる映司にアンクは「家の中でもめる分にはいいだろ。」と言って高札を倒したのだった。ちなみに戦いが終わった途端に後藤の祝福を無視してタクシーで帰る里中も変わってなかった(苦笑)。

 ラストシーンはクスクシエ。戦いから戻ったアンクに比奈は兄に渡す予定だった誕生日プレゼントをアンクに差し出した。馬鹿にした様な冷笑を浮かべたアンクだったが、次の瞬間引っ手繰るようにこれを受け取った。何だかんだ言ってアンクも心を開いた様子を見せるようになったことを喜ぶ映司、比奈、知世子さんだったが、次の瞬間自体は急転直下した!
 アンクが部屋に戻り、プレゼントを開けようとしたその背後にいたのはアンク(ロスト)!戦い終えて安堵する一時こそがアンク(ロスト)の狙っていた「隙」だった。忽ち吸収合戦となり、そのただならぬ気配を察知した映司が駆け付けると戦いは明らかにアンクが不利で、次々とセルメダルを吸収され、体ごと吸い込まれようとしていた。
 そうはさせじ、と比奈はアンクの手を掴み、映司は比奈の手と柱を掴むという、ゼブラ戦におけるキン肉マン・ラーメンマン・ロビンマスクの「友情のシェークハンド」状態で抵抗(『キン肉マン』の場合はキン肉マンが投げ飛ばされるのを防ぐものだったが)。
 だが、赤いコアメダルに続いてアンクの右腕体までもが吸い込まれ、映司と比奈の元の残されたのは泉刑事の体だけだった……最後の最後におけるアンク(ロスト)による狡猾な急転直下を受けて、波乱万丈の第40話はここで終了、以下次週へ!


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平成二七(2015)年一一月二二日 最終更新