仮面ライダーOOO全話解説

第41話 兄妹と脱出と映司去る

監督:舞原賢三
脚本:小林靖子
 冒頭のダイジェストは想いの異なる映司、アンク、比奈が共に過ごした時間による結びつきが生まれた途端にアンク(ロスト)に襲われたことが振り返られた。
 前回の終わりが終わりだったので、奇数話ながら第41話はそのまま第40話に続けて始まった。アンクを吸い込まれ、慌ててクスクシエの外に飛び出た映司と比奈の前に現れたのは巨大な双翼を広げて空中にホバリングする、アンク(ロスト)ならぬ、アンク(完全体)だった。勿論その右腕はアンクのそれだった!
 だが、念願叶って、「これで僕は僕になる…。」と呟くアンク(完全体)だったが、そうはなってなかった。アンクの抵抗は続いているようで、その原因は赤のコアメダルが1枚足りないからだった。そう、前回の抵抗時にアンクは密かに比奈に赤コアメダルを1枚渡していたのであった。
 だがそれを察したアンク(完全体)は比奈に襲い掛かった。アンクがあんな状態ではOOOへの変身はままならない。映司は比奈を連れ、あちこちを逃げ回ったが、アンク(完全体)はその飛行能力を駆使してすぐに追いついて来た。
 かくなる上はプトティラコンボ発動しか残されていなかった。変身し、幸い理性を保てたOOOは、まだかすかにアンクの気配が残り、消えていないことを察知した。そしてアンクを取り戻さんと戦いを挑んだOOO。ところが、これまで戦闘能力では無敵を誇ったプトティラコンボすらアンク(完全体)は凌いでいた!
 アンク(完全体)がから腕を大きく振るうだけでOOOは衝撃を受け、殴り合えばOOOの攻撃は丸で当たらず、アンク(完全体)の攻撃は次々クリーンヒットした。だが勝ち目がないとも割れた次の瞬間、右腕(=アンク)が激しく抵抗。片腕が効かない状態でもアンク(完全体)はそこそこ戦えたが、結局はトンズラした。

 その頃、アンクが完全に離れた体では泉刑事の意識が完全復活!丁寧に初対面の挨拶をする泉刑事を直前までアンクと思っていた知世子さんは驚愕の声を上げるのだった。
 気を取り直した知世子さんは月桂冠を被ってギリシャフェアを開催。そこへ映司と比奈が引き返して来たので、更なる驚愕の中、兄妹対面が為された。
 外観はヅラを被っているか否かの違いだけなのに、表情、声のトーン、立ち居振る舞いで完全に別人を演じ分ける三浦氏の演技力は相変わらず恐れ入る……。ともあれ、「やっと戻った、心配かけたな、ごめん。」と記憶通りの兄そのままに語り掛けられては比奈も感極まった。「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」と何度も叫んで抱き着く比奈。
 これがアンクならベアハッグに苦しみ、馬鹿力を揶揄するところだが、さすがに実の兄は優しく受け止めていた。

 感動の再開後、アンクの部屋で話し合う映司、泉刑事、比奈。そこで映司は泉刑事から、アンクが最前の危機にメダルホルダーを隠していたことを知らされた。泉刑事曰く、「土壇場で出来る限りの可能性を残したんだよ。自分が消えない為の。」とのことだった。
 泉刑事にはアンクが憑依していた際の記憶があり、映司が自分と比奈の身を守るためにどれだけ尽力してくれていたかも知っていたので、改めて丁寧な謝意が示された。アンクと同じ体でアンクでは考えられない礼儀正しさで礼を言われ、理屈で分かっていてもどこか戸惑う映司。「何か調子狂う…。」とのことだったが、心配するな映司、視聴者も同じだ(笑)。
 ともあれ、泉刑事は今後への協力を申し出た。「自分達だけ助かって、これで終わりという訳にはいかない。」という人格者振りに、「頼む!何もできない悔しさはもう充分味わった。」という熱血振り………第1話で見せた人格者としての姿も、様々なエピソードで見られた熱血漢振りも、ここに完全復活を遂げていた。

 ようやく無事な姿を取り戻した泉刑事を更なる戦いに巻き込みたくない映司ではあったが、熱意にはほだされたようで、泉刑事がアンクの役割を代理する為の特訓が始まった。
 記憶を保っていた泉刑事は状況に応じて有効なコアメダルを選択する判断力には優れていたが、さすがにメダル3枚を1度に投げ寄越す器用さまでは持ち合わせてなかった(苦笑)。
 良い機会だからとゴリータ、タカ、ラゴリといった様々な亜種形態を繰り広げ、特訓するOOO。「悪ノリ」というのはチョット言い過ぎかな?

 そんな特訓の様子は、バッタカンドロイドを通じて鴻上ファウンデーション会長室にて、鴻上会長、後藤、里中がモニタリングしていた。泉刑事が完全復活し、OOO用の各種コアメダルが残されていたことに安堵する鴻上会長。もうアンクがいなくても大丈夫という里中。その一言に後藤は、「どうしてそうビジネスライクなんだ?」と呆れる。それに「ビジネスですから。」と平然と返す里中の言は好感抱けるものではなかったが、「というか、グリードに取り憑かれた人が元に戻って、妹さんと一緒に暮らせるようになった……これってハッピーエンドじゃないですか?」という彼女の言は一応、正論ではあった。人間本位に立つならば、だが。勿論後藤には映司、比奈同様に行動を共にした者同士の情があるだろう。
 一方で、鴻上会長は戦いよりも人間が紫のコアメダルを取り込んでいることの方を心配していた。

 その頃、鴻上会長が懸念する、紫コアメダルを取り込んだものの1人であるDr.真木はアンク(完全体)と話していた。まだ1つになり切れていないとするDr.真木に、「もう1人の僕なんていない。」と意固地な反論をするアンク(完全体)だった。
 が、「アシュラム対バルバス」や「レイリア対カーラ」の様に意志の強い者相手の体を巡る戦いは時間が掛かって当然とするDr.真木は、OOO・アンク連合が無い今こそコアメダル獲得のチャンスとして、魔法瓶から氷を取り出すと、そこにセルメダルを投げ込んでアンキロザウルスヤミーを生み出した……。

 場面替わって泉兄妹の住むマンション。そこで兄妹と一緒に食事していた映司は、平和で幸せな日々を取り戻した兄妹を眼前にして、2人の意に反して、2人が事件やアンクに関わる必要はない、と考えていた。ましてやアンクは戻ったら泉刑事の体を乗っ取り、自分の意識を優先するのは火を見るより明らかで、楽しい団欒後、泉宅を辞する際に「アンクの事何かわかったらすぐ連絡してね。」という比奈に本音を打ち明けられず、密かに2人に関わらないことを決意し、置手紙だけを残した。そんな団欒の途中で映司は味覚に異常を覚えていたようだったが、これは鴻上会長が懸念する紫コアメダルの悪影響か?

 ただ、映司はアンクを助ける気持ちを揺るがせてはいなかった。前話のアンクらしくない懇願に「パンツの雨でも降るかもね。」という訳の分からない例えを呟いた映司は次の瞬間、アンキロザウルスヤミーの気配を感じてそっちへ向かった。
 そこへ「一人で行く気か?」とカンドロイドからの中継で一部始終を見ていた後藤が現れた。すっかり御見通しの後藤に、グリードであるアンクを助けに行くのだから、と暗に後藤の助勢は要らないと匂わせた映司だったが、「俺はお前を助ける。お前を死なせたら伊達さんに怒られるからな。」として後藤は映司に同行した。まあ、こんな言い方してはいたが、後藤もアンクを助ける気なんだろうな。

 CMを挟み、2人のライダーはアンクの気配がした場所に到着した。そんな2人を先へは進ませまじ、と現れたアンキロザウルスヤミーの台詞に2人はアンクがこの先に要る証拠と見て変身するや、戦いを挑んだ。
 格闘テクニックでは明らかにWライダーの方が上だったが、鎧竜とも分類されるアンキロサウルスのヤミーはさすがに硬かった。OOOは有効なメダルの選出に戸惑い、失くして初めて知るサポーターの有難味を感じていた(苦笑)。
 その隙に火炎弾の乱射を食らって変身解除された映司。これを見たバースはドリルアームを振るい、キャタピラレッグの突進でアンキロザウルスヤミーにしがみついて映司に先に向かうよう促した。

 後藤の行為に甘え、アンクの気配を頼りに先に進む映司。しかし彼が遭遇したのはアンク(完全体)ならぬ、Dr.真木。アンクを諦めろと告げるDr.真木が瞳から紫光を放つと、同様に紫の瞳に変じて苦しみ出す映司。Dr.真木の狙いが映司の持つ紫メダルなのは明らかだが、何故映司だけが苦しむのか?波乱の展開を引きずって以下次週へ。


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平成二七(2015)年一一月二二日 最終更新