仮面ライダーOOO全話解説

第42話 氷とグリード化と砕けた翼

監督:舞原賢三
脚本:小林靖子
 前回の「3つの出来事」は「1つ、比奈の兄・泉信吾がアンクから解放され、比奈と再会。2つ、2人を巻き込まないために映司はクスクシエから去る。そして3つ、アンク救出に向かった映司の前にDr.真木が現れた。」というものだった。

 前回の続きで苦しむ映司は、紫メダルを欲するDr.真木に世界の終末を目指す彼には渡せない、としてこれを無視して苦しみながら先に進んだ。
 一方、バースVSアンキロザウルスヤミーは凍結ガスで下半身を固められたバースが危機に陥っていた。だが、そこへバースの「上司」が「出勤」し、AKB48の一員の様な格好をした里中(←(´Д`*) ……)が到着し、セルメダルを満載したカートリッジを得たことでセルバーストを放って、何とか危機を回避した。

 場面は戻ってアンク救出に向かう映司。息も絶え絶えに森の中を進む映司が倒れ込むと、そこには先ほど無視して避けた筈のDr.真木が先回りしていた。そしてDr.真木は映司にグリード化する自分自身のことを、「知ってて見ないふりをしているんですか?」と問いかけて来た。図星ともいえる質問に衝撃を受け、大木を背にもたれかかる映司に、更にDr.真木の説明が続いた。
 その説明によると、グリードはその名の通り「欲望の塊」で、逆を言えば「欲望」しかく、欲することしか出来ないゆえに、満たされて喜ぶことが絶対に無いと云う(食欲で例えれば飢えるだけで、決して満腹感を味わえないことを意味し、想像するとかなりの地獄……)。
 そしてそれゆえ、満足を知る筈の五感が、グリードのそれでは美しい色彩もくすみ、妙なる音楽も濁って聞こえるという。そう考えるとグリード達がいつも気怠そうにしていたり、何かに苛ついていたりするように見えるのも理解出来、同時に彼等が少し哀れになった。
 ともあれ、Dr.真木は映司に対しては、「そろそろ何かを感じている筈です。いや…感じなくなっていると言った方がいいですか?」と問い掛けた。そして映司の答えを待たず、グリードは欲するゆえにコアメダルを揃えて完全復活した暁には人の感じる五感すべてを貪る為に人間ごと喰らい、更に暴走することで世界そのものを喰らう、と締め括った。
 勿論それこそがDr.真木の目指す終末で、彼はそれを「塵ひとつ残らない」世界と例えた。

 Dr.真木のグリード論を聴いていた映司は、苦痛の中で自分が砂漠に立つ幻覚を見た。確かに細かく砕けた砂礫のみの一色の砂漠はある種の「美しさ」を持つ。だがそれは生命の一欠片すらなくした荒涼とした「美しさ」だ。
 勿論そんな終末論を映司が受け入れる筈なく、尚更メダルは渡せないとしたが、それに対してDr.真木は、メダルを渡せば、美しいものを美しいと思える内に終わりを迎えられる、つまりは化け物化する前に人として死ねる、と投げ掛けて来た。
 そして化け物化することを現実であると示すように、Dr.真木が見せた彼の両腕は既にグリード化していた………。その一部異形とここまでの説明に更なる苦痛を感じ、悶える映司だったが、密かに追跡していた後藤と里中に助けられ、取り敢えずその場を逃れたのだった。

 場面は替わって鴻上ファウンデーション会長室。そこで鴻上会長は里中からの報告を受け、同じ紫メダルを受け入れた者同士でも、グリード化に差があることを、「メダルを積極的に受け入れようとした者と、抑えつけようとした者の差」と分析した。続けて鴻上会長は(人がグリードになった前例がないので、完全断言は出来ないとしつつ)800年前のOOO暴走を、王が「OOOとしての器なき者」だったゆえにグリード化した、と結論付けた。

 場面は替わってクスクシエ。そこでは後藤の報告を受けた泉兄妹が映司にグリード化の危機が迫っていると知って動揺していた。Dr.真木の推測を聞いた泉刑事は、前回の夕食時に映司の様子がおかしかった事から、味覚が失われていたからだと判断した。さすがに刑事という職業柄、分析能力に優れている様だ(ちなみにその時点の映司は焼き魚を食べながら、「味の抜けたガムを噛んでいるみたい。」と評していた)。
 そしてその泉刑事の推測を(視聴者に)裏付けるような展開がメズールガメルの間で為されていた。いつも通り大量のお菓子をさも美味そうに食していたガメルだったが、どうやら「食べる」という行為が楽しい余り、分かりもせずに「美味い!」を連呼していただけの様だった。何せ菓子類の中に混じっていたけん玉を丸囓りにして「美味い!」って言っていたのだから。
 そしてガメルに好意でお菓子を渡されたメズールは、喜ぶ振りをして実際にはそのお菓子を捨てていたのだった。つまり『究極超人あ〜る』の主人公であるアンドロイドのR・田中一郎がBB弾を向う脛に食らった際に、「物が当たったら痛いに決まっているではないか。」という知識で痛がっていたのと似た様なものだった(←そうか?)。
 ちなみに映司分析では、アンクがアイスキャンディーにはまったのも、元々味覚を持たないアンクが、泉刑事の体に入ったことで初めて得た味覚で「美味い」と感じたのがアイスキャンディーだったから………雛鳥が生まれてすぐに見た動くものを母鳥と思い込むようなものだったのだな。

 そんな感じもしない感覚を知識で喜ぶガメルを馬鹿にしながらカザリアンク(完全体)にメダル獲得に走るのかを尋ねると、アンク(完全体)は、Dr.真木の動きを利用するとほくそ笑み、そのDr.真木はアンキロザウルスヤミーに誘き寄せと思しき命令を下していた。だがグリード達と連合を組んで以来、人形を落としたときを除いて常に平静を見せていたDr.真木も、実は紫コアメダルによるグリード化を受けて映司同様に苦しんでいたのだった。

 Dr.真木の作戦は一言で言って無差別テロである。事件を起こし、助けを求められればOOOは無視出来ない、というもの。単純だが、それゆえに恐ろしいものだった。
 街中に現れたアンキロザウルスヤミーは人々の下半身を凍結させ、助かりたければOOOを呼べ、と脅迫した。OOOが何者か分からず、助けを躊躇ったサラリーマンが全身凍結された上に木っ端微塵に粉砕されたのを見せつけられた人々は、訳も分からないまま助かりたい一心でOOOの名を連呼し、助けを求めた。
 そんな気配を察知して現場に向かう映司だったが、そこに泉兄妹が立ちはだかった。少しは周囲の人々に任せて自分のことも考えろと諭す泉刑事に根拠なく「大丈夫」と言おうとした映司だったが、言い終わる前に比奈から強烈な否定が浴びせられた。
 味も分からなくなった体で何が大丈夫なのか、と責める比奈にさしもの映司もぐうの音も出なかった。だが、折悪しく、アンキロザウルスヤミーが叫ばせたOOO救援を求める声が映司達の元にも届いた。それを聞いて駆け出そうとした映司だったが、比奈がその腕を掴んで止めた。比奈は大丈夫と言い張る映司も、助けを求める人々も批判した。「やめて……勝手に呼ばないで…映司君は神様じゃない!」と叫んで……。
 だが結局映司は、比奈に「ゴメンねでも…ありがとう。」と告げてOOO・ラトラーターコンボに変身しながら駆け出してしまったのだった。

 現場に着いたOOOはライオンヘッドのフラッシュと、トラクローの一閃で囚われの人々を解放。既にバースとアンキロザウルスヤミーの戦いも始まっていた。そしてOOOにはアンク(完全体)が対峙した……。
 そしてそのアンク(完全体)からはアンクの気配が感じられなくなっていた。アンク(完全体)の肉体争奪戦勝利宣言に項垂れるOOOだったが、「アイスって美味しいの?」の質問に、アンクはそう簡単に消えるほど素直じゃないと宣って(笑)、戦意を取り戻した。そう、アンクが完全に消えていれば、アイスの味を問うことなどないのだから(笑)。
 「僕のメダルを返してよ!」と叫ぶアンク(完全体)に、「違う。お前のメダルじゃない……アイツのだっ!」と叫び返すOOO。プトティラコンボを発動させ、激戦に身を投じた。
 直後、現場に駆け付けた泉兄妹。結局映司が「俺達の望んでる通りに戦ってしまうんだな彼は。」という兄の台詞に、自分は映司君に戦って欲しいって思っっていないと反論する比奈。だが泉刑事は、「比奈はアンクのことだって助けたいと思ってたんじゃないのか?同時に俺のことも助けたい。けど、映司君が戦うのは嫌だ…俺も同じだよ。さっきの人達もそうだ。みんな勝手な望みを言う。それを黙って全部引き受けるんだ彼は。そんな事出来る人間だけがきっと…。」と核心を突いた発言をしたのだった。
 確かに仮面ライダーとはそういうヒーローである。

 やがて戦いは佳境を迎えた。アンキロサウルヤミーの怪力に苦戦していたバースは一瞬の隙を突いた至近距離からのブレストキャノンでこれに勝利。OOO対アンク(完全体)は互角の勝負が続く中、遂にOOOの暴走が始まろうとした。
 後藤が暴走停止を求めて絶叫し、比奈ががっくり肩を落とす中、泉刑事は妹に映司の手を掴むよう促した。泉刑事曰く、「このまま彼を都合のいい神様にしちゃいけない。」とのことで、本当にいい人である。長くアンクに取り憑かれていただけに余計そう見える(苦笑)。

 やがて激しい空中戦となり、OOO・プトティラコンボは凄まじい力でアンク(完全体)の両翼を捥いで地面に叩きつけるという荒業を見せた。やはりこれまでのプトティラコンボは暴走を抑えるためにリミッターが掛かっていたということだろうか?
 そして落下のダメージで動けないアンク(完全体)にメダガブリューが振り下ろされ、その一撃はアンク(完全体)の体内にあったコアメダル3枚を粉々に粉砕!メダルが破壊されたことが信じられないという様子の絶叫を残し、アンク(完全体)は爆発四散した……。
 そして息絶え絶えで正気とは思えない呻き声を上げるOOOだったが、その手を比奈が握り締めた。すると相当苦しみながらもOOOは映司に戻り、比奈は「大丈夫だから。と語り掛けるのだった。やはり暴走へのストッパーは誰かの真剣な想いなのだろうか?

 ともあれ、恐れていた暴走並びにグリード化には一応のストップが掛けられた。映司はアンクの様子を気にしたのだが、現場に残された赤いコアメダルを中心にセルメダルが集まると、それは泉刑事無しの状態でも、泉刑事に憑依していた時のアンクの姿になった。自爆後、18号抜きでも完全体として復活したセルみたい(苦笑)。
 要するに、アンク(完全体)の破壊は、アンク(ロスト)の方を破壊した形になった訳だったが、すんなりハッピーエンドとはいかなかった。相変わらずひねたもの言いながらも映司に今回のことへの御礼を述べたアンクだったが、薄ら笑いを浮かべながら泉刑事に近づく・…………映司ならずとも万人が「まさか…。」と思う中、以下次週へ。う〜ん、えげつない引きだ(苦笑)。


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平成二七(2015)年一一月二二日 最終更新