仮面ライダーOOO全話解説

第43話 ハゲタカと対立とアンクリターンズ

監督:柴崎貴行
脚本:小林靖子
 もう、ここまで読んでくださった方には奇数話のダイジェスト紹介は不要と思うので略(笑)。前話の続きで、アンク(完全体)が敗れた際に、都合よくアンク(ロスト)だけ消えたことで独立した存在を取り戻したアンクは泉刑事に迫り、彼をネックハンギング・ツリーに捕らえた!
 が、どうも本調子じゃないらしい。泉刑事を締め上げる力は中途半端(←完全に締め上げていたら呻き声などでない)で、体からはセルメダルが零れまくり、アンクは紫のメダルによるコア破壊の余波で、自分の偽物とともに大量のセルメダルも消えたと解釈し、忌々しげに吐き捨てると、まだまだ泉刑事の体が必要、と宣言し、セルメダルで作った体を捨てると再度泉刑事に憑依した。

 偽物が消えたことで、800年前の力を取り戻した、と宣うアンク。長大な両翼を広げ、周囲を睥睨する笑顔に、珍しく後藤が他人のことでキレた。兄を再度失った比奈の気持ちや、助け為に尽力した映司の気持ちを踏みにじる行為に。
 さすがにアンクもどこかでそれは感じていたのか、2人の気持ちは否定しなかったが、「それとこれとは別だ。それとも、助けてやったんだからこの腕1本で我慢しろって言うつもりか?冗談言うな。」と反論した。確かに五体満足な体が掛かっているとなるとアンクがそういうのも分からないでもないが、やはり恩を仇で返しているのも事実。

 肉体の所有権をめぐるだけでも難しい問題(←グリードの存在を前面否定するなら、アンクを叩き出すだけで良い)なのに、アンクは残りのコアメダルも寄越せと抜かす。それに対して映司は泉刑事の体を返してからだと叫ぶ。勿論話は両者とも(文字通り)目の色を変えての怒鳴り合い平行線となったのだが、拒むならコアメダルを全部砕くという映司の叫びはさすがに迫力がいつもと違った。
「そんなことをやってみろ…。」と台詞こそ凄みつつも、紫の本流を全身から滾らせる映司相手にアンクは飛び去らざるを得なかった。

 直後、後藤が制止したことで暴走化は阻止されたが、そんな一部始終を見つめる1人のおっさん(剛州)がいた。その瞳は緑色………ウヴァの関係者か?と思っていたら、おっさん・草田はその後直ぐに画面に登場した。
 映司の気迫の前にその場を逃れたアンクがある橋の上でアンク(完全体)消滅時に3枚の赤コアメダルが失われ、完全復活が無理という状態になっても諦めきれず、「まだ可能性はある……。」と呟くアンクの背後に軽トラに乗った草田が現れたのだった。
 草田の瞳の色を見て、もしやと思ったアンクはセルメダルを投入。案の定、以前は不可能だったヤミー生み出しに成功した……第26話での後藤の謝罪も無にしやがって……(怒)。

 一段落し、一先ず比奈をマンションに返した映司と後藤。帰途、ようやく再会出来た兄とすぐに別離を強いられた比奈の胸中を思いやる2人。また2人はアンクとこれまで過ごした時間が想いを複雑にしていることや、完全復活が遠のいたアンクがせめて馴染んでいた泉家時の体にこだわった気持ちが分かるとも述べていた。勿論だからと言ってアンクのやったことは許せないという後藤と頷く映司。ホント、初登場時の後藤ってこんなに人の胸中を考える人間じゃなかったよな………。

 その頃、アンクが生んだ白ヤミーは横浜の山下公園(らしき場所)でデート中のカップル(←男ばかり)を襲い、ハゲタカヤミーに成長した(そういや、『仮面ライダーOOO』の世界ってどの辺りだろう?クスクシエの近くには山手線が走り、鴻上ファウンデーション会長室からは東京タワーが見えていたが……)。
 気配を察知して駆け付けた映司と後藤、たまたま新コスプレの試着で近くに来ていた里中(笑)は即座に戦闘開始。里中が牽制射撃する中、映司はラトラに変身した。
 さすがにWライダー+里中の援護射撃を受けてはハゲタカヤミーも切り札である両翼での突風攻撃に出た。

 その頃、マンションで比奈は、アンクと過ごした時間に重ねて、敵に回ったアンク、兄の行く末、映司とアンクが戦う可能性に苦悩していた。そんな中、兄が少し前に言っていた、映司がすべてを背負い込む男との評を思い出し、「私、また勝手ことばかり考えてる……辛い事は全部映司君に任せることになる……。」と思い至り、兄の言った、自分に出来ることを考えるのだった。

 場面は戻って山下公園(と思う。1回しか行ったことに無い上に、アベックだらけが頭に来てすぐにバイクで走り去ったもんなあ……)。Wライダーは黒い突風を起こすハゲタカヤミーを攻めあぐねていた。ちなみに里中は飛ばされないように何かの柱にしがみついていた。普段生意気な女故に、命の危機が無い分には悲鳴を上げている姿は笑える(冷笑)。
 一計を案じたバースはショベルアームで柱を掴んで体を支え、バースバスターを掃射。そしてその隙に上空からOOOは飛び蹴りを食らわせ、堪らずハゲタカヤミーは軽トラの荷台に乗ってトンズラ。その逃げる様子から2人は、運転手がヤミーの親で、トラックが巣ではないかと推測した。

 アンクがヤミーを生んだこと&罪もない人々を襲ったことで、映司と後藤さんは改めてアンクが本気あることを理解。その対決姿勢を強めるのだった
ちなみに冒頭のアンク離反の際、タカメダルを奪われてしまったので今のOOOはコンボが使用不可。これが今後の展開に関係してくるのか?

 その頃、とある森の中ではアンクとDr.真木が密約交渉をしていた。殆どグリード化していると見たDr.真木に、映司の紫メダルを狙っているだろ?ととうアンク。これに対してDr.真木は肯定し、「暴走したグリードが世界を滅ぼした後、そのグリードを排除するのは私の役目」であるがゆえにもっと力が必要で、その基が映司の紫メダルであることを暗示した。
 勿論Dr.真木が望む世界にはアンクも存在し得ない。だがアンクは「協力してやってもいい。」という。一見おかしな提案だが、Dr.真木がその方法を問うと、「俺をメダルの器にしろ。」と投げ掛けた。腹に一物あるのは火を見るより明らかだが、果たしてDr.真木の回答は如何に………?

 場面は替わって鴻上ファウンデーション会長室。報告受けた鴻上会長は映司とアンクの対立を少し悲しげにしながらも、「いずれそうなるとは思っていたよ。」と呟いた。「OOOはグリードの天敵のような」であるがゆえに。
 そんな会話の中、里中は、完全復活したグリードが人間を喰らうことから、「結局人類の敵」としたが、後藤は紫メダルの力でコアメダルを破壊すれば、グリードの完全復活はないとした。だがコアメダル破壊には鴻上会長が反対した。それは良いが、人々への被害を懸念する後藤に「それは君が防ぎたまえ。まさに『世界を救う仕事』だよ?」と来たから、どこか無責任で相変わらず食えない親父である(苦笑)。
 ただ、そんな鴻上会長も紫のメダルは敵視し、これだけは破壊しなくてはならないとした。すべてを無にする力は欲望すら無にしてしまうゆえに、紫の力を持ったグリードは「世界の天敵となる」とした。人々の安全を軽視する傾向は眉を顰めたくなるが、欲望が人類の為に必要という彼の考えは些かもぶれていなかった。

 その夜、映司は例によって河原で一人寂しく野宿をしていた。突如として右腕が疼き出し、異形なものに変貌したことに狼狽える一方で、すぐに戻り、熱さはまだ感じる………そんな変貌途上に戸惑う映司の前に比奈が弁当を持って現れた。
 その弁当は、あたかも味覚を失った映司に味覚を取り戻せと言わんばかりに、甘いもの、辛いもの、と様々な味が揃えらえていた。つまりはこれが比奈の「自分に出来ること」だった。自分の都合は口にせず、何があっても映司の傍にいる………と。
 少し下衆い表現に入るが、『欲望』を重要命題としたこの作品の主人公でありながら、エイサイヤミーの毒芳にあてられたときを除いて、肉欲は勿論、プラトニックな意味でさえも映司は性欲というものを見せなかった。ゆえに映画版でのバイトにおける映画撮影(つまり芝居)を除いて映司と比奈の間で恋愛感情が描かれることが無かった。それゆえ比奈の純粋な想いが普段の2人の関係と浅くしかオーバーラップしないのが惜しまれる。いいシーンだけに……。
 いずれにしてもライダーとともに戦うということは、文字通りの格闘だけを意味するのではないことが改めて思い出されたシーンだった。

 翌朝、ハゲタカヤミーは再びアベック襲撃を開始し、映司と後藤は現場へ急行した。しばしの殴り合いの後、OOOはシャゴリに変身してタコの吸盤で、バースクレーンアームのウインチで突風に対抗。両者はゴリラアームからのバゴーンプレッシャーと、バースバスターを受けてハゲタカヤミーはセルメダルの塊と化して軽トラの荷台に落ちた。

 ハゲタカヤミーの脅威はこれで去ったが、つまるところこの事件はセルメダル大量獲得を狙ったアンクの仕業。軽トラの荷台に現れたアンクは運転手にその場からの逃走を促した。これをライドベンダーで追う映司。暴挙の理由を問う映司に、アンクはグリードの目的何て決まっていると叫ぶ。完全体になれないのにか?問う映司には「誰かさんのおかげでな。」と相変わらずの皮肉を効かせるアンクは「800年前からの俺の欲望」を捨てられるかと吐き捨て。だからと言って無関係な多くの人々に危害を加えるなど許せない、とした映司だったが、アンクは説教はたくさんだ、と火炎弾を発して映司の追走を妨害。映司はバイクから転落した。

 上手く逃げおおせたアンクは、運転手に声を掛けた「全くお前の執念深さには感心する。よくメダル一枚でここまでこれたもんだ。」と。草田の眼が緑色だったのは、予想通りウヴァの仕業。
 第36話で甦らせたメズールガメルにも歯向かわれてコアメダル1枚で辛うじて生き延びていたウヴァは、幸せそうなアベックを逆恨みする草田の怨念に取り入ることで彼に張り付き、その身を操っていたのであった。
 ともあれ、アンクによって集められたセルメダルを吸収し、その肉体を復活させたウヴァ。「俺のおかげだ。きっちり恩返ししろよ。」とするアンクにも「フン、(復活は)俺の実力だ。」と呟いた。些か不遜だが、以前復活させた相手に裏切られ、自身もアンクも集合離散を厭わないグリードであることを思えば、その物言いが全く分からないというものでもない。ま、執念は確かに実力と言っていいほどのものだったが。
 ともあれ、アンクとウヴァは旧真木邸に向かった。さすがにこの両者が登場したことにはガメルメズールカザリも顎を落とした。特にカザリにはいつもの憎々しいまでのにやけ面が見られず、無表情で固まっていた。
 「久しぶりだな…どうした?古い仲間を歓迎してはくれないのか?」というアンクの台詞に、旧グリード陣営の再結集が鳴るのかならないのか?映司とアンクは本当に戦わざるを得ないのか?等々、様々な疑問を孕んだところで以下次週へ。


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平成二七(2015)年一一月二二日 最終更新