仮面ライダーOOO全話解説

第44話 全員集合と完全復活と君の欲

監督:柴崎貴行
脚本:小林靖子
 前回の「3つの出来事」は「1つ、アンクが比奈の兄・信吾に再び憑りつく。2つ、それによって映司とアンクは対立。そして3つ、アンクは真木に接近。復活したウヴァとともにカザリ達の前に現れた。」というものだった。

 冒頭、Dr.真木が人形相手にままごとセットを整えながら、前回語られなかったアンクとの交渉を回想していた。自分をメダルの器にしろと言ったアンクに、暴走の可能性が高いとしたDr.真木だったが、アンクはそれゆえに「俺はどうしても完全で確かな存在が欲しい。その為ならどんな危険だろうが冒す価値がある!」と絶叫していた。もっとも、世界を終わらせたいDr.真木には「暴走」は望むところなのだが………。
 そして前回ラストで旧真木邸にウヴァとともに現れたアンクは、カザリ達にグリードの団結を迷っている暇はない、とした。何故なら今のOOOは紫コアメダルの力でコアメダルを破壊出来るのだから。もうそうなるとグリードは誰しもアンク(ロスト)と同じ運命をたどりかねない。それは彼等にとって「封印」よりも絶望的な話で、カザリメズールも、普段足りないガメル (笑)も、顔色を変えずにはいられなかった。
 ともあれ、グリード達はアンクの、「消えたくなければ俺と組め。」という台詞を軽視出来
 場面は替わって鴻上清田工学研究所研究室。前回アンクにバイクから落とされた映司を手当てしながら、クスクシエには戻らないか、と映司に問う比奈。いつ起こるか分からない暴走に知世子さんを巻き込む可能性を懸念して映司はこれを肯定した。それを聞いた後藤が体調を尋ね、それは大丈夫だと答えるも、表情的に嘘の下手なこの男は河原での腕の変貌を気にかけていた。それを何とか治せないか、と後藤に問いかける比奈だったが、突如「教えるとも!」と叫びながらPC画面に鴻上会長が現れ(笑)、地下保管庫に来いと告げた。
 いつもながら怪しいおっさんだが、「私としても火野映司君のグリード化は是非とも避けたいところだ。」という台詞は利害的に信用出来る(笑)。
 ともあれ映司達は地下27階という深さにてある保管庫に向かった。そしてそこは「王の部屋」とされ、鴻上会長が映司達を歓迎した。

 場面は替わって旧真木邸。アンク提唱のグリード団結はその是非を巡って紛糾していた。勿論グリード達は互いを信用していない(苦笑)。団結賛成派のメズールでさえ、「信用何てセルメダル1枚の価値もない。」と断じていた。故に「信頼」ではなく、「利害」による団結が暗黙の内に承認されたが、自分が主導権を握って来たと思っていたカザリは、トンビ(アンク)に油揚げ(主導権)を攫われたのが気に入らなかった。
 カザリはアンクを外に呼び出し、主導権を渡さない、アンクは必要ないと掴みかかった。その際の「君を信用するのは無理がある。」と言う、自分のことを思いきり棚に上げた台詞が笑えるが、アンクは「相変わらず疑い深いな…いや、臆病か?」と嘲笑した。
 ともあれ、両者は一騎打ちを展開。程なく、カザリに深い恨みを持つウヴァも参戦し、さしものカザリも劣勢に立たされた。

 場面は替わって鴻上ファンデーション保管庫改め王の部屋。そこでは鴻上会長がいつも欲望論を詳細説明していた。欲望=進化のエネルギーと捉える彼は、800年前にある王が世界支配の欲望から錬金術師達にコアメダルを作らせ、OOOとなった例を出し、欲望のエネルギーはやがて人類を神の領域にすら導くだろうとした。但し、それほどの欲望を受け入れられるだけの「器」となると話は難しいとも。
 そして「欲望の器」は大きくても、内容量が多ければすぐ溢れることになり、800年前の王の失敗=暴走もそこにあった。だが映司は大きな器を持てる環境にあり、且つそれを1度空にした。空になればまた大容量を受け入れられる…それゆえ映司は「OOOの器」となり得る、というのが鴻上会長の火野映司論だった。
 そんな彼にとって唯一の計算外が「紫のコアメダル」で、欲望を無にしかねない存在はまさに天敵で、その不安要素は映司だけでなく、Dr.真木にもある、と説いた。ここまでの説明を受け、ではどうすればいいのか?と問う比奈に「難しくもあり、簡単でもある!」と禅問答みたいなことを言ったところで、えげつなくも場面は移った(苦笑)。

 場面は戻って、旧真木邸。さすがのカザリも2対1では劣勢で、ウヴァに2枚の緑コアメダルを奪われた。だがここでメズールによる放水仲裁が入った。「(ボコボコにして、メダルを奪たことで)少しは気も晴れたでしょ!」とするメズール。もっとも先に手を出したのはカザリだったのだが、そのカザリも「僕だって5人で組んだ方が得だってのは解ってたんだ。例え気に食わなくてもね。」と渋々同盟を了承した。
 だが、ガメルメズールへの想いを耳打ちして気持ちを動かし、後々の伏線とすることは忘れていなかった。懲りないと言おうか、食えないと言おうか……。

 場面は替わってクスクシエ。比奈は皆の弁当を作っていた。それを見ていた知世子さんは姿を見せない映司が旅に出た訳ではなかったと悟っていた。自身旅好きである彼女には映司が旅立とうとしているならその気配を発していたら分かる、と。そしていずれ映司には映司らしく旅立って欲しいとも。ただ持論は述べても余計な詮索はしないのが知世子さんのいいところだ。
 ちなみに比奈が弁当を作っていたのは、映司と後藤との行楽の為。鴻上会長が話した「今後どうするべきか?」の答えは、「欲を持つことだ。君自身、君個人に対する。君の欲望だ。それが紫のメダルの暴走を止める。」というもので、後藤と比奈は映司の欲望を見つける為に敢えて「忙中閑あり」な時間を過ごした。とはいうものの、「映司の欲望」と言っても、ピンと来ている訳ではなく、服を買ったり、白鳥のボートに乗ったり、バッティングセンターに遊んだりしたり、と手探り状態だった。何せ後藤も遊ばなかった口で、かつての映司は物質的に欲しいものは何でも手に入る環境にあった。
 もっとも、映司自身は比奈と後藤がともにいて、親身になってくれた時間は喜んではいた。帰りの車内で、後部座席で熟睡していたから目いっぱい楽しんだのは本当だとは思うが。

 だが、その帰路、後藤が運転する車の前にグリード連合が立ちはだかった。もはや言葉は不要とばかりに戦わざるを得ないことを認識し合う映司とアンク。アンクは突然火炎弾で車を破壊するという強烈な先手を打ってきた。
 ラトラに変身したOOOと、5対2では不利なので分散して極力1対1に持ち込めと提案したバースのコンビはグリード達に応戦。OOOにはメズールガメルが、バースにはカザリウヴァが対峙したのだが、やはりOOOサイドの不利は否めなかった。ラトラーターコンボに多段変身し、ライオンヘッドのフラッシュ攻撃でメズールガメルを怯ませたOOOだったが、様子を見ていたアンクの火炎弾で、OOOは変身を解かれ、コアメダルも落としてしまった。
 それを見て悠然とメダルを拾うべく近づいたアンクだったが、それより先に駆け寄った比奈がメダルを拾い集め、アンクを睨みつけた。そんな比奈に「死にたくなかったらメダルを渡せ。」と脅迫すらするアンク。まだ信じられないという想いの比奈に「俺はグリードなんだよっ!一番欲しいものは手に入れる!」と凄んだ。
 その対象が映司達の命ではないと悟った比奈は、ならば自分の一番欲しいものは映司と兄を助けることであると宣言。そんな比奈を威嚇するようににじり寄るアンクだったが、これには生身の映司が突進して突き飛ばした。
 比奈からコアメダルを受け取った映司は、彼女に逃げるよう促すと改めてラトラーターコンボに変身しようとした。しかし次の瞬間、カザリの姦計が発動した。カザリに「アンクがメズールを連れて行こうとしている。」と吹き込まれていたガメルカザリの合図を受けるや、その抗議の為にアンク・OOOに向けて膨大なセルメダルを放った。
 この思わぬ横槍にOOOもアンクも怯み、コアメダルも吹き飛ばされ、この隙にガメルは黄のコアメダル9枚獲得という想いを遂げたのだった!

 9枚の黄コアメダルをついに取り入れたカザリは完全体となり、全身のパーツが伸び出し、特に頭髪はメデューサ状態を越え、樹齢1000年を超えた古木状態。うねるその触手でOOO、バース、アンクまで吹き飛ばした。「ゴメン、信用出来ないのは僕だったね。」とほざくカザリ。誰もが予測済みだったと思うが、コイツの共闘意志なんてやっぱこんなモンだった。
 だが奢れるカザリにバースが特攻を敢行。頭髪ミサイルに撃たれ、接近戦でボコボコにされ、頭髪で締め上げられ、半壊状態に追い込まれながらも、殆ど根性で至近距離からの最大出力ブレストキャノンを放射し、完全体カザリをぶっ飛ばした。
 とはいえ、然したる痛手には至らず、重症のバースはOOOに追撃を託し、OOOはプトティラコンボを発動。その後メダガブリューを振るい、バースと2人掛かりで戦うも、カザリには爪で斬り裂かれる一方だった。
 だがバースがしがみつき、その隙にワイドスティンガーでカザリの動きを封じたOOOは渾身の力を込めてメダガブリューでカザリを頭から真っ二つにした!
 その斬撃はカザリのメインとなる黄メダルに及び、カザリは狼狽して何度も「コアが、コアが…。」と呻きながら戦線を離脱した。正にアンク(完全体)アンク(ロスト)を倒し、アンクが懸念した、「コアメダル破壊」がカザリを襲ったのだった。
 さすがに映司も後藤も息絶え絶え状態に陥っていたが、必死に立ち上がり、鋭い眼光を放つ映司に、アンクもにらみ返しただけでその場を立ち去った。

 そして、憎らしい敵キャラであったカザリに最期の時が迫っていた。夜のトンネルでDr.真木に遭遇したカザリは、自分をメダルの器にするよう要請することで延命を図らんとした。だがDr.真木はそのどてっ腹をグリード化した手でぶち抜き、コアメダルを奪った。
 メダルと引き換えにDr.真木がカザリに投げ掛けた言葉は、カザリ君、結局暴走しない君に用は有りません。」で、好みの台詞・「良き終わりを。」を告げて去って行った。
 そしてプトティラに割られたライオンメダル1枚だけになったカザリは街の雑踏の中、セルメダルを零しながらふらつき彷徨った。普通に考えるなら病人化重症者のような足取りだが、道行く人々は見えているのかいないのかカザリのことを意にも介さない。
 勿論、そこに数々の謀略を駆使し、いち早く合成ヤミーを作ってOOO達を苦しめ、グリード達が集まればリーダーたらんとした、憎らしいまでの自信家だった姿は無かった。
 そしてついに地面に倒れ伏すと、その体は黄色い煙とセルメダル群と化し、転がり出たライオンメダルは完全に砕け散り、グリード最初の完全戦死者を出して第44話は終わった。


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平成二七(2015)年一一月二二日 最終更新