仮面ライダーOOO全話解説

第45話 奇襲とプロトバースと愛の欲望

監督:諸田敏
脚本:小林靖子
 この第45話は2011年8月7日に放映される予定だったが、高校野球で順延した。ちなみに8月6日には劇場版『仮面ライダーオーズWONDERFUL 将軍と21のコアメダル』が封切られたが、劇場版では第44話で落命したカザリが健在だったので、ちょっと複雑(笑)。
 ともあれ、冒頭のダイジェストでは映司とアンクの対立が語られ、カザリの最後が映像で流された。

 始まりは旧真木邸から。帰宅したDr.真木がアンクの横にあったテーブルに19枚ものコアメダルが無造作に置いた。それがカザリのメダルであることに気付いたアンクがカザリはどうしたのか、と尋ねるとDr.真木は「カザリ君自身であるコアメダルを破壊されました。」と説明。その意味するところを悟り、「死んだか…。」と呟くアンクをDr.真木は「随分人間に馴染んだようですね。」と皮肉った。
 勿論皮肉られたアンクが面白ろい筈なかったが、Dr.真木は「メダルの塊であるグリードに命などありません。死んだのではなく、ただ『消えた』。それだけです。」として、「死ぬ」という表現を使ったアンクを人間臭いとした理由を示した。
 それを受けて、意外にもアンクは自分達が「モノ」でしかないという侮辱とも取れる暴論をあっさり受け止めた。「今は、な。」という付け加えはあったが。そしてDr.真木はそんなアンクを「君は進化する。」と肯定し、暗にOOOの紫メダルを奪うよう示唆した。

 その頃、旧真木邸には映司達の攻撃の手が迫っていた。コアメダルが少なく、バースシステムが故障中とあっては映司と後藤は圧倒的に不利だった。だが映司は逆転の発想で、不利だからこそ先手を打った奇襲を提案していたのだった。
 数少ないコアメダルと、バース・プロトタイプ(←性能は正規版に劣らないが、使える武装がクレーンアームとブレストキャノンのみ)を武器に映司達は奇襲を敢行した。もっとも、不利を百も承知で行くのだからそこは策を練っていた。

 他方、襲撃の手が迫っている事をこれっぽっちも気付いていないグリード達。メズールは人間に憑依したことで800年前と様子が変わったアンクのことを気にしていた。Dr.真木が語るように、五感で満たされたと感じる機能を持たないメズールは、「人間の身体で味わう世界」を気にかけていた。
 だがアンクは素っ気なく、「お前等グリードには解からん味さ。」と吐き捨て。「お前もグリードやないか。」とツッコみたいところだが、メズールが「丸で自分は違うみたい。」と返していたから、思うところは皆一緒の様だった(笑)。
 それに対し、「ああ。俺は人間が気に食わないが、グリードはもっと気に食わない。」とグリード同士の団結を提唱した者とは思えない発言を返した。前回カザリが完全体になった瞬間に裏切ったのを根に持っているのか、それともDr.真木と組んだ「メダルの器」に意識が行っているのか………。
 ともあれ、メズールはアンクが人間の身体で味わったことをは大したことなく、物足りないものに過ぎなかったとの憎まれ口を返して階下に立ち去った。

 そしてウヴァが妙な気配を感じた次の瞬間、映司達の攻撃が始まった!
 まず後藤の投げ込んだ手榴弾が閃光と煙を撒き散らし、グリード達を苦しめた(←スタングレネードと催涙弾を兼ねた物か?)。
 そして映司が頃合いを見て2階に飛び込み、アンクを奇襲するとコアメダルを数枚奪った。「返せ。」と迫るアンクに「悪いがこっちもメダルが足りないんだ。」と返す映司の台詞が正直且つ、この作品らしくてステキ(笑)。それに対して「グリードらしくなってきたな。」と皮肉るアンクに、「かもね。」と皮肉っぽく応じる映司。
 一方、閃光とガスに苦しんだウヴァガメルは外に飛び出したのだが、まずガメルが里中の仕掛けたワイヤーロープですっ転ぶと言う間抜けさを展開。しかも転んだ先にあるお菓子に喜び、そこに仕掛けられたダイナマイトにふっ飛ばされた。ちなみにダイナマイトはリモートコントロールで爆発させられたのだが、スイッチを押すときの里中、メッチャ嬉しそう(苦笑)。丸でいたずらに成功した時の子供だ。

 ガメルに仕掛けられた攻撃を見て、里中に気付いたウヴァはこれを追った。行く手には落とし穴が仕掛けられていたのだが、そこにウヴァを追い込む為に里中が取った挑発が「あかんべえ」だから、本当に今週のコイツは子供だった。
 ともあれウヴァは見事に落とし穴にはまり、里中は御丁寧にもそこに手榴弾を投げ込んだ(←勿論この時も嬉しそうなの全開)。
 そんな里中にメズールが襲い掛からんとしたのだが、そこにはバース・プロトがクレーンアームを利したターザンキックを食らわし、更にはアンクが嵌ったこともある網の罠で宙吊りにしたところをバースバスターの掃射を浴びせた。拘束されて嫌がる時のメズール、チョット色っぽい声だった。現役中学生にやらせなくて正解だな(苦笑)。
 これらの攻撃がグリード相手に致命傷を与えたとは思えなかったが、精神的にはかなりの打撃になったことだろう。殆ど子供のいたずらの様な方法に翻弄されたのだから(笑)。

 そして久々にコンボに変身する準備を整えた映司は、無駄とは思いつつ、アンクに泉刑事の体を返す気はないかを問うた。
 まあ、ここでДа(Yes)を期待するあほな視聴者はいないと思うが、アンクは質問に答えず、その肉体に黄色のメダルを投入し、目を黄色に光らせ出した。
 その行為に嫌な予感を感じた映司は必死に制止したが、アンクは「足りないコアメダル3枚分はこの体で補う。俺はこいつごと『メダルの器』になるんだよ!グリードなんかより、もっと強い存在になぁっ!」という台詞で泉刑事の肉体返還を拒絶した。
 こうなるとアンクが泉刑事の体を必要としなくなる日なんていつ来るか分からない……。

 一方、その頃他のグリード達はようやく子供のいたずらの様な罠に嵌められたことから立ち直ろうとしていた。だがそこにはバース・プロトのブレストキャノンと、里中のバースバスターが撃ち込まれた。
 そこへ生身の殴り合いを展開していた映司とアンクもなだれ込んで来たのだったが、アンクはDr.真木が現れ、自分に任せろと言うや、あっさり手を引いてしまった。
 今日こそ紫のメダルを貰うと宣言するDr.真木が瞳を紫にすると例によって映司は苦しみ出した。がしかし、映司もまた紫の突風を全身から発してDr.真木に対峙し、「俺もだいぶ慣れて来ましたよ!」と応戦姿勢を見せた。だがこれは結果としてDr.真木を追い込むことになり、彼は「私も急がないといけないということですね?」と呟くや、恐竜グリードに変身!周囲の立ち木も枯らせる紫の突風を発するや、敵も味方も吹っ飛ばされてしまった!

 場面は替わってとあるビル街。車載型のTV電話を通じての(化粧をしながらの)里中と鴻上会長との通話から、Dr.真木を止められず、コアメダルは90%以上が敵の手に渡ったことが語られていた。
 鴻上会長と里中はともにかつてない危機感を感じていて、Dr.真木を「思いっきりグリードでした。」とし、グリードが何体か完全復活する可能性に触れ、策があるならいつも物凄く拒否している「残業」をするとすら言った(ちなみに手段が無ければ直帰する気でいた)。
 鴻上会長もいつもと口調が異なり、「これはいささか…イヤかなり…イヤ非常にマズイよ。」と評し、「戦いの助けになるモノ」の存在も口にした(その際、キショいウィンクをしてはいたが)。

 場面は替わって鴻上生体工学研究所研究室。そこでは映司と後藤が善後策を練っていた。Dr.真木のグリード化度合い、後藤が辛うじて戦いの中で確保したコアメダルなどを話す中で、映司はアンクと泉刑事の一体化を何としても阻止しなければ、と気勢を挙げたのだが、そんな映司に対して後藤が「何故自分のこともそう思えない?火野、お前の方がグリード化が進んでいるんだぞ?比奈ちゃんが言っていた通り、どうして自分を守ろうとしない?」と詰問した。
 ふむ………、この辺りが映司が「自分への欲望」が無いと言われる所以だな。第36話の解説でも触れたし、この第45話放映時に上映されている劇場版も見ても明らかなのだが、映司の欲望は決して小さくない。それどころか常人と比較して桁外れと言っていい。だが、鴻上会長を初めてとする周囲の人々が指摘するよう、「自分のこと」となると極めて怪しい。
 映司自身、「俺だったなりたくないですし!」と言っていたように、人を思う以上、人と接する自分に対して「どうありたいか?」と言う願望はあるだろうけれど、その優先順位は著しく低い………。
 ともあれ、映司も後藤も結論が出せなかった。

 場面は替わってとあるビルの屋上。そこではアンクとDr.真木がコアメダルを分けて密談していた。これによりアンクはコアメダルの半分以上を入手したが、望む進化には足りない、とDr.真木に皮肉られると、「お前が望む暴走にもな。」と皮肉りかえるアンクだった。
 だが、次の瞬間アンクのメダルホルダーが奪われた。奪ったのはメズールで、その背後にはガメルとウヴァもいた。彼等がやって来たのはアンクとDr.真木が共謀してメダルを2人占めしていると思ったからだった。アンクを詰り、猫なで声でDr.真木に自分のコアメダルを返すよう計らえと迫るメズールだったがアンクは黙殺し、真の五感を持たないグリードがごっこ遊びでしなを作っても響かない、と言い放った。
 だが、怒りはウヴァガメルも同様で、一触即発となってもおかしくない雰囲気だったが、ここでアンクが嘲笑して、「メダル、メダル、メダル…お前ら他に何かないのか?」と問うた。ウヴァがそれのどこが悪いのか、アンクもグリードじゃないか?と問い返せば、アンクはそれを肯定し、「最悪だ!お前らといると嫌でも思い知る……これ持ってとっとと消えろっ!」とコアメダルを3者に叩きつけた!
 最も渇望したコアメダルがあっさり渡されたとあっては、一先ず3者のアンクへの矛先は逸れた。3者は自分のコアメダル選別に必死になり、アンクはそんな彼等を嫌悪するようにその場を辞した。そしてDr.真木はそんなアンクを「気が短い。」としつつも、「メダルをいずれ取り戻せばいい。」ともした。

 ともあれ、自分のコアメダル9枚を手にしたメズールは恍惚の表情となり、完全体となるや、全身を液体化してそこらじゅうビシャビシャ跳ね回り、ガメルも無視してその場を去った。ちなみにガメルも9枚揃ったが、特に完全体になる訳でもなく、メズールの後を追った。そして残るウヴァは1枚足りず、残る1枚を持つであろうOOOへの戦意を燃やした。
 そして街中に降り立ったメズールは、追ってきたガメルに、自分は本物を味わうから「ままごと」や「ごっこ遊び」は終わりで、「もうあなたじゃ私は満たされない。さようなら…ガメル。」と告げて川の中に飛び込んだ。何度か触れたが、所詮これがグリードの仲間意識で、あれほど自分を慕ったガメルも、メズールには「ごっこ遊び」による可愛がりでしかなかったのだから、チョットガメルが可哀想だった(感情無き模倣だったにしても、ガメルは一途で迷いが無かったからね)。

 完全体となったメズールは、ガメル達の元を去った時と同様、液体状の巨大魚(?)となって、街中で人々を呑み込んでいった。人々にとっては水流に襲われる無差別テロだったが、実際にはメズールは標的を定めていた。
 メズールが呑み込んだのは、家族連れの中の母親と幼い子供ばかり。カップルの男ばかり襲ったハゲタカヤミーと対照的だ(笑)。真の感覚を得るには感覚ごと人間を食うしかないとのことだったので、遂にメズールが食人鬼と化したかと思われたが、呑み込まれた母子は浄水場の様な所で膨大な数の卵の中に閉じ込められていた。
 「感じるわ…これが愛おしいという事!愛し合う快感!全部私のモノ!」と悦に入りながら、しかし次の瞬間、激昂した口調で「でもまだ足りない!全然足りない…もっと!もっと!」と飢えを示すメズール。結局これとて「ごっこ遊び」でしかない(だから満たされない)のだが、彼女は気付かない。だが彼女は別のことには気づいていた。

 それは、映司と後藤がやって来た気配だった。浄水場に踏み込んだ映司と火野は卵に閉じ込められた人々と、完全体とかしたメズールを発見した。その姿に映司はDr.真木が言っていた、グリードが人を食らうという現象であることを悟り、戦慄した。
 「メズール!この人達を元に戻せ!」と激昂する後藤に、メズールが答えたのは、「冗談でしょう?まだ味わい始めたばっかりよ。美味しくなくなったらあげるわ。その時には命はないけど。」だったから、「愛し合う快感」が聞いて呆れる(嘆息)。
 直後、メズールは映司と後藤に退去を命じたが、2人が従う筈なく映司はOOO・ラトラーターコンボに、後藤はバース・プロトに変身し、バトルに発展した。だがグリードの完全体はやはり強かった。これまでメズールから生まれた水棲系ヤミーに有効だったライオンフラッシュも聞かず、OOOとバースは2対1であるにもかかわらずメズールに翻弄された。
 程なく、強烈なダメージを受けて全身から火花を散らしてバースが戦線離脱。自分に構うなと言われ、必死に戦うOOOだが、やはり完全体カザリ同様、完全体メズールは強かった。
 体一つで戦っても勝てないと思ったか、OOOは久し振りにトラカンドロイドを使い、ライドベンダーをトライドベンダーにして、メズールの素早い動きに対抗。メダガブリューを出して騎馬武者(騎虎武者?)となって、水流を数回打つ内に、プトティラコンボの持つ冷却機能が発動し、メズールは完全体じゃない状態で地面に凍結され、そこにメダガブリューの一閃を食らい、メズールのコアメダルも破壊された!

 致命傷を負い、力なく倒れこんだメズールの元に、ガメルが駆けつけ、半狂乱になってその名を呼んだ。だが彼女が息絶え絶えでガメルに答えたのは「まだ全然…足りないの…。」だった。その理由問われて答えたのは、「グリーだから。」という、グリードにとっては何とも救いのない答えで、最期の最後でそれを悟らされたとあっては随分みじめな最期だった。

 そしてついに最期の時が訪れた。メズールの体はセルメダルの塊となり、カザリの最期同様、弾き出た青いコアメダル=シャチメダルが破裂する様にして壊れた……。

 掌中に残された1枚の青いコアメダルを見つめ、号泣するガメルメズールの愛情はグリードによる人真似に過ぎなかったが、ガメルの感情は本物の様で、完全体に変身するガメルの衝動波を食らってOOOとバースは海中に転落。絶叫し、行かれるグリードはどのような行動に出るのか?といったところで以下次週へ。


次話へ進む
前話に戻る
『仮面ライダーOOO全話解説」冒頭へ戻る
特撮房『全話解説』の間へ戻る
特撮房へ戻る

平成二七(2015)年一一月二二日 最終更新